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ダークマター・43-1・ハッブル定数の食い違いについて(1)

2021-03-07 14:03:52 | 日記

日経サイエンス4月号にそのいきさつが書かれています。それによればこの食い違いによって「笑えない様な研究者間の言い争い」にまで発展しそうな勢いであります。

さてCMBを使ったハッブル定数の推定はそれ以外の宇宙論パラメータの決定と同時に行われてきました。そのやり方の詳細についてはWMAPについての解析報告ではありますがたとえば

・宇宙論はどこまで分かったか?WMAP、初年度の成果,  

あるいはより簡略化された形では

・4.宇宙論パラメータの決定

と言うようなものがあります。そうしてここでは一応「4.宇宙論パラメータの決定」をベースにして話を進めたいと思います。とはいえ最初に当方の結論を提示しておきましょう。

『CMBの解読にあたってまず最初に、宇宙の晴れ上がり時期を物質100%を前提としたフリードマン方程式を使ってWMAPでは37.2万年、プランクでは38.3万年ほどに設定しているが、その決め方に問題がある。より正しくは物質30%ダークエネルギー70%程のフリードマン方程式を使うべきであり、たとえばプランクではそれを使う事で晴れ上がりのタイミングは24.5%ほど後ろにのびて、47.7万年となる。(注1)

これによってハッブル定数の推定値もより大きな値に変更する事が必要となる。』というものです。

さてこのCMB解読の出だし部分、「4.宇宙論パラメータの決定」によれば以下の様に書かれてあります。

『1. 宇宙晴れ上がりの時期zdecを推定する
a. 理論モデルを用いて観測されているCMB温度地図の宇宙時刻(宇宙が中性化・晴れ上がった時)を計算
b. これは、赤方偏移パラメータにしてzdec=1089±1
c. 宇宙の大きさが現在の1/(1+zdec)~1/1089 の時期に対応。(宇宙モデルを仮定して)時刻に換算すればtdec=37.2±1.4 万年』

物質100%のフリードマン方程式の解は スケール因子のふるまい の中にある平坦モデルの  (C.4.58)式になります。ここでHoは現時点でのハッブル定数となりますが、宇宙の大きさから宇宙年齢を推定する場合はHo=1と規格化して扱います。

さて「赤方偏移パラメータにしてzdec=1089±1」ですので宇宙は晴れ上がりの時には現時点よりも1/1090倍の大きさであった、という事になります。それはまた現時点で宇宙空間を満たしているCMBの温度2.73Kの1090倍の温度が晴れ上がり時点での温度であった、という事でもあります。

ここで物質100%の時の宇宙の膨張の仕方と物質30%ダークエネルギー70%の時の宇宙の広がり方を見ておきましょう。

物質100%の宇宙

t=0(現時点)でx=1(規格化された今の宇宙の大きさ)を示し、t=-2/3の所が宇宙のスタート、ビッグバンの始まりを示しています。そしてこのページで示されている厳密解の式のビッグバンの位置をt=0にずらしますと前述した平坦モデルの  (C.4.58)式になります。したがって (C.4.58)式ではt=2/3の位置が現時点を表すことになります。

物質30%ダークエネルギー70%の宇宙 <--一般的に言われている宇宙モデル

物質32%ダークエネルギー68%の宇宙 <--プランクのデータを反映した場合

いずれのグラフでも青色の数値解と示されたカーブが宇宙の成長を示しています。そしてこのグラフでもt=0(現時点)でx=1(規格化された今の宇宙の大きさ)を示し、プランクのデータを反映した場合の宇宙ではグラフにカーソルをあわせてX=0の点を読み取るとt=-0.945あたりがこの宇宙のスタート、ビッグバンの始まりである事が分かります。そしてこのグラフのビッグバンの点をt=0にずらしますと平坦モデルの  (C.4.57)式になります。そしてその場合には  t=0.946の位置が現時点を表すことになります。こうしてウルフラムの数値解もそれなりの精度をもって(C.4.57)式の厳密解と一致している事が分かります。(注1)

そうして「2種類の宇宙の成長曲線の違い」が宇宙の晴れ上がり時刻を決める時に差を生む原因となっています。

さてこの厳密解を用いて宇宙の晴れ上がりの時刻を推定するのですが、上記2つの場合のいずれにせよ宇宙の現時点での年齢を「与えられたもの」として入力してやらないと晴れ上がり時刻は推定できないのです。それでWMAPの上記の例では『6. 現在の宇宙年齢・・・ c. t0=137±2 億年』としています。

これを用いて

『1. 宇宙晴れ上がりの時期zdecを推定する・・・c. 宇宙の大きさが現在の1/(1+zdec)~1/1089 の時期に対応。(宇宙モデルを仮定して)時刻に換算すればtdec=37.2±1.4 万年』を確認して見ます。ちなみにここで仮定している宇宙モデルは物質100%のものです。

宇宙の大きさが現在は1であったものがその大きさが1/1090倍の時刻 t を厳密解を使って求めます。

実行アドレス

答えは t=1/(1653*sqrt(1090))=0.0000183237

t=2/3 が137億年でしたから(「・4.宇宙論パラメータの決定」では宇宙年齢は137億年となっています。)

tdec=137億年/(2/3)*0.0000183237=37.7万年 となります。「4.宇宙論パラメータの決定」ではこの数字は「tdec=37.2±1.4 万年」としていますが、まあ誤差範囲ということにしておきます。

というわけで、WMAPでのCMB解読の第一歩では「物質100%の宇宙モデルが使われている」という事が分かるのでした。

そうしてまた2018年プランク最終データリリース(レガシーデータ)を使って同様の事を行いますと

実行アドレス

答えは t=2/(3273*sqrt(1091))=0.000018450

t=2/3 が138.3億年でしたから(プランク レガシーデータより)

tdec=138.3億年/(2/3)*0.000018450=38.3万年 となります。

ESA - Planck reveals an almost perfect Universe 「プランクはほぼ完璧な宇宙を明らかにします」によれば『この画像は、プランクからの最初の15.5か月のデータに基づいており、宇宙で最も古い光のミッション初の全天画像であり、わずか38万年前に空に刻印されています。

その時、若い宇宙は約2700℃で相互作用する陽子、電子、光子の熱くて濃いスープで満たされていました。陽子と電子が結合して水素原子を形成すると、光は解放されました。宇宙が拡大するにつれて、この光は今日、絶対零度よりちょうど2.7度高い温度に相当するマイクロ波波長まで引き伸ばされています。・・・』とのことであり、38.3万年とほぼ同じ、つまり「プランクの解析でもCMB解読の第一歩では物質100%の宇宙モデルが使われている」という事が分かるのでした。

 

注1:(C.4.57)式の厳密解での計算結果(t=0.946)、および47.7万年の導出詳細については ・42-3・輻射-物質拮抗時期と宇宙の晴れ上がり時期 を参照願います。

・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク

 

https://archive.fo/2njB9

 

 

 

 

 


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