宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論 etc etc

ホーキング放射とブラックホール・51-2・ホーキング放射を再考する(2)

2021-03-06 22:32:21 | 日記

、さてそれで次は英文のWikiにあたってみましょう。ー>ホーキング放射

『ホーキングの洞察は、仮想粒子として知られる量子物理学の現象と、事象の地平線付近でのそれらの振る舞いに基づいていました。
空の空間でも、原子より小さな「仮想」粒子と反粒子が一時的に存在し、その後、互いに相手を消し去る事で再び(存在から)姿を消します。
ブラックホールの近くで、これは光子のペアとして現れます。[2]
これらの光子の1つは事象の地平線を越​​えて引っ張られ、もう1つはより広い宇宙に逃げる可能性があります。
注意深い分析は、これが起こった場合、量子効果が負のエネルギーを運ぶ「パートナー波」を生成し、それがブラックホールに通過し、ブラックホールの総質量またはエネルギーを減少させることを示しました。[2]
 事実上、観測者には、重力によってブラックホールのエネルギーが減少し、より広い宇宙のエネルギーが増加したように見えます。
 したがって、ブラックホールは徐々にエネルギーを失い、時間の経過とともに蒸発する必要があります。[2]
ブラックホールの熱特性とこのプロセスに影響を与える保存法則を考慮して、ホーキングは、目に見える結果は非常に低レベルの正確な黒体放射、つまり温度がブラックホールの質量に反比例する黒体から放出されるかのように生成される電磁放射になると計算しました。[2]

プロセスへの物理的洞察は、粒子-反粒子放射が事象の地平線のすぐ向こうから放出されることを想像することによって得られるかもしれません。
この放射はブラックホール自体から直接来るのではなく、仮想粒子がブラックホールの重力によって「ブースト」されて実際の粒子になる結果です。[要出典]
粒子と反粒子のペアはブラックホールの重力エネルギーによって生成されたため、粒子の1つが逃げると、ブラックホールの質量が減少します。[5](注:粒子、反粒子のうちどちらの粒子がBHに落ちるのか、ここでは明示していません。)

プロセスの別の見方は、真空の変動により、(注:仮想粒子ではなく実粒子の)粒子と反粒子のペアがブラックホールの事象の地平線の近くに現れるというものです。
ペアの一方はブラックホールに落ち、もう一方は脱出します。
全エネルギーを保存するために、ブラックホールに落ちた粒子は負のエネルギーを持っていたに違いありません(ブラックホールから遠く離れた観測者に対して)。
これにより、ブラックホールの質量が減少し、外部の観測者には、ブラックホールが粒子を放出したように見えます。(注:粒子、反粒子のうちどちらの粒子がBHに落ちるのか、ここでも明示していません。)

 別のモデルでは、プロセスは量子トンネリング効果であり、(注:実粒子の)粒子と反粒子のペアが(注:ブラックホール内部の)真空から形成され、一方が事象の地平線の外側にトンネリングします。(注:粒子、反粒子のうちどちらの粒子がBHに落ちるのか、ここでもまた明示していません。)

ホーキングによって計算された黒体放射と黒体から放出される熱放射の重要な違いは、後者は本質的に統計的であり、その平均のみがプランクの黒体放射の法則として知られているものを満たし、前者はデータが良く適合していることになります。(注:黒体から放出される熱放射はおおよそその分布がプランク分布になる、というものであり、個々の放射にはそれなりの情報を載せる事が可能。だがしかし、ホーキング放射は個々の放射それ自体が純粋にランダムにプランク分布に従うためにそこには温度以外の情報が何もない。)

したがって、熱放射にはそれを放出した物体に関する情報が含まれますが、ホーキング放射にはそのような情報は含まれていないようで、ブラックホールの質量、角運動量、および電荷のみに依存します(ブラックホール無毛定理)。
これは、ブラックホール情報パラドックスにつながります。』

一番最初の段落がホーキングの計算について書かれたものであり、ホーキング自身は計算プロセスを「マイナスエネルギーの流れがBHに流れ込んでいる」として解釈した模様です。

それに対して以降の「物理的洞察」の所ではホーキング放射を説明できそうな3つの異なった物理モデルが紹介されています。そうして多分、どのモデルで計算してもホーキングさんの計算結果を再現できるものと思われます。

、さてそれで、以降はネットで紹介されているホーキング放射関連のあれやこれやを見ていきましょう。

2-1「3分間早わかり!スティーブン・ホーキングのブラックホール理論」

ま、見ていただけば「ホーキング放射の一般的な説明の概要」がよく分かる、と言うものです。そうしてBHに落ちる粒子は「マイナスエネルギーの粒子」であり、「その粒子が粒子か反粒子か、どちらであるのか」については言及がありません。

2-2ブラックホールの最後は? 「軽くなって消える」説が有力

BHに落ちるのは反粒子なのですが、その反粒子がBH内の粒子と対消滅すると2つの粒子を合計した質量分がエネルギー(光)になるだけで、それではBHの質量が重くなる一方なのですが、、、。

2-3ホーキング博士が語っていた「ノーベル賞がもらえない」理由

ここでもやっぱりBHに落ちるのは「反粒子」でした。

2-4衝撃的だった「ブラックホール蒸発」 ホーキング博士、宇宙論に影響大きく

ここでもやっぱりBHに落ちるのは「反粒子」でした。

2-5ブラックホールが,実は“蒸発”する可能性があることを示しました(ホーキング放射)

ここでもやっぱりBHに落ちるのは「反粒子」でした。

2-6【ノーベル賞】ブラックホールの最後はどうなるの?ホーキング放射とは?

ここでもやっぱりBHに落ちるのは「反粒子」でした。

2-7ホーキング放射

さて、ここでの記載は粒子、反粒子をいわないものになっています。(BHに落ちるのはどちらの粒子か不明です。)

2-8実はブラックホールは蒸発している!? 謎のホーキング放射の実態に迫る

ここでもやっぱりBHに落ちるのは「反粒子」でした。そうしてBHに落ちた反粒子がBH内の粒子と対消滅すると質量がエネルギー(光)になるだけで、それではBHの質量が重くなる一方なのですが、、、。

2-9ブラックホールが粒子をゆっくりとランダムに放射すること(「ホーキング放射」)

ここでは「仮想反粒子がBHに落ちこむ」のでした。

2-10インフォメーション・パラドックスとはなにか

『物質の量子効果を考えると,真空でもミクロなスケールでは仮想粒子の対生成が起こることになる.この対生成が地平面の外で起きたとしよう(図 2).この粒子対(以下,ホーキングペアと呼ぶ)は,正エネルギーと負エネルギーの粒子からなる.正エネルギーの粒子は,ブラックホールから逃れることができる.一方,負エネルギーの粒子はブラックホールに吸い込まれる.負エネルギー粒子が吸い込まれるため,結果的にはブラックホールのエネルギーは減り,ブラックホールは次第に小さくなっていく.遠方の観測者には,正エネルギーの粒子が届くので,あたかもブラックホールから粒子が届いたように見える.これがホーキング放射である.』

↑ ここでは何故か理由は不明ですが「負エネルギーの粒子はブラックホールに吸い込まれる.」という事になっています。そうしてまたホーキングさんの行った計算を物理的なイメージに変換するとこういう描写になってしまうのでした。

2-11重力崩壊するダスト時空の量子化による厳密な Hawking 輻射の導出

ホーキングさんがやった計算をより厳密にやった、というものになります。したがって「粒子ー反粒子の描像」は出てきません。

2-12弦理論から見たHawking 輻射 

弦理論の説明の前にホーキングさんが行った計算のレビューが行われています。

 

ネットロア:『インターネット上に起源が求められ、主にインターネット上で流布している都市伝説(フォークロア)を意味して用いられる語。

主に掲示板、ブログ、チェーンメールなどを介して、不特定多数に伝えられることが多い。』

ホーキング放射についてのネット上での説明もこの「ネットロア」に非常に近いものの様に思われます。

3、まとめ

ホーキングさんが先鞭をつけたBHの放射計算、その後多くの方々がいろいろな方法で計算し直しましたが、ホーキング放射そのものの物理的な合意されたモデルまでには至っていない様です。そうして「どうやらホーキング放射はありそうだ」という事にはなってはいるのですが、それを示す計算とそれを物理モデルに結び付ける事、つまりホーキング放射計算の裏にある物理現象についての理解についてはいまだ合意されたものがない、という事を示している様です。

真空が仮想粒子の対生成によって粒子・反粒子で満ちている、と量子論がいうならば、その描写から始まってホーキング放射を説明する「絵」が描かれなくてはなりません。その絵にはもちろんBHに落ち込む粒子の種別が、粒子・反粒子の種別が明示されている必要がり、それはつまりホーキング放射として観測される粒子もまたその種別が明示されている事が必要である、という事になります。

たとえば ブラックホール/ホーキング放射:反粒子のみをキャプチャする理由 の様な議論があります。 

あるいは ホーキング放射はどのくらい正確にブラックホールの質量を減少させますか? な議論もあります。

そうしてまた ブラックホールの地平線ではホーキング放射は発生しません。 そういう議論もあります。

以上の様な議論はホーキング放射を説明する「絵」を描くうえで参考になるものと思われます。

追記:(2021/5/9):日経サイエンス6月号記事「量子情報で解き明かす重力理論」の記事中にあるホーキング放射のイラスト(p40)では、少なくとも反粒子がBHから飛び出すように見えるホーキング放射もある、と示されています。つまり、BHに飛び込むのはこの場合は通常の粒子である、と主張している事になります。ふむ、ようやくにして「BHに飛び込むのは反粒子のみ」という「伝統的ホーキング放射世界観からの変更」がなされつつあるようです。

・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク

https://archive.fo/zdjDj

 

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ダークマター・42-3・輻射-物質拮抗時期と宇宙の晴れ上がり時期

2021-03-06 14:18:53 | 日記

まずは前ページの記述から引用します。->『さてそれで、その2成分のフリードマン方程式の厳密解ですが
「物質+Lambda モデル」
https://www.cosmology.jp/intro-to-cosmology/node33.html
(or http://archive.fo/o02Wr )
の(5・26)式を使います。』

その式にパラメータを代入して微分して最小値を出した、そしてその最小値を付けたところから宇宙が減速膨張ー>加速膨張に転じた、そこまでの記述は良いのですが、教科書の記述内容を誤解してそのタイミングをビッグバンから102億年後とした所が間違いでした。

教科書に書かれている内容はあくまで『平坦な質量-Λ宇宙モデルが正しければ、宇宙は生まれてから102億年 の間は質量優勢、その後36億年の間は Λ優勢であったことになる。』というものであって、「102億年を境にそこから宇宙が加速膨張に転じた」とは書かれていませんでした。そうして、その様に解釈をしてしまったために「時間軸のスケール化」で間違いを犯してしまいました。

もともと教科書の目的は『今、質量と宇宙定数 の密度がそれぞれ等しくなる質量-Λ同値時刻時刻t_mΛを求める』というものであって、「いつから宇宙が減速膨張から加速膨張に転じたのか」を求めてはいませんでした。

そうしてまた時間軸をスケール化するのに「加速膨張が始まった時期」を使う必要もない事も明らかになりました。

さてそれで、「2成分のフリードマン方程式の厳密解」のグラフをスケール化しないとそれを使って「輻射-物質拮抗時期と宇宙の晴れ上がり時期」を決める事が出来ませんので、以下その手順を示します。

それで、その際に厳密解に代入するパラメータですが、プランク衛星が最後に公表した2018年版の「プランク ベストフィット データ」を使う事とします。(参照時はグーグルを使って和訳して見て下さい。)

2018年プランク最終データリリース(レガシーデータ)

デカップリング時のRedshift   z_d    1090.30±0.41

宇宙の年齢(Gy)t_o            13.830±0.037

物質密度  Ω_m           0.321±0.013

ダークエネルギー密度 Ω_Λ      0.679±0.013

ハッブル定数(km s -1 Mpc -1) H_o      66.88±0.92

H0 は 66.88となっていますが1に変えます。
そうすると
a(x)=(0.321/(1-0.321))^(1/3)*(sinh(3/2*sqrt(1-0.321)*x))^(2/3)
が2成分系での厳密解となります。
そして宇宙年齢を138.3億年とした場合にa(138.3億年)=1になりますので、この情報を元に上記厳密解の時間軸をスケール化します。ちなみにビッグバンはスタートは x=0の所になります。

ウルフラムでa(x)=1の時のxの値を求めます。

「1=(0.321/(1-0.321))^(1/3)*(sinh(3/2*sqrt(1-0.321)*x))^(2/3) の根」を入れると

実行アドレス

x=0.945936 を得ます。これが時間軸で138.3億年相当の値になります。

次にデカップリング時のRedshift   z_d=1090.3 より「宇宙の晴れ上がり時期での宇宙の大きさが現在に対して1/1091.3倍であった」という事が分かります。

それで次にはa(x)=1/1091.3 としてxの値を求めます。

「1/1091.3=(0.321/(1-0.321))^(1/3)*(sinh(3/2*sqrt(1-0.321)*x))^(2/3) の根」を入れると

実行アドレス

x=0.0000326392 を得ます。

これを宇宙年齢に換算すると

晴れ上がり時期=0.0000326392/0.945936 x138.3億年=47.72万年となります。

さて次に輻射-物質拮抗時期を同様にして求めましょう。参照する教科書は「第6講 熱的宇宙」です。
http://osksn2.hep.sci.osaka-u.ac.jp/~naga/kogi/konan-class06/ch6-thermal-cosmos.pdf

5ページより(1+zeq)= 3250ですから、a(x)=1/3250としてxの値を求めます。

「1/3250=(0.321/(1-0.321))^(1/3)*(sinh(3/2*sqrt(1-0.321)*x))^(2/3) の根」を入れると

x=6.35084X10^-6 を得ます。

これを宇宙年齢に換算すると

晴れ上がり時期=6.35084X10^-6/0.945936 x138.3億年=9.29万年となります。

以上をまとめますと使うフリードマン方程式の種類によって

        従来方法(物質100%)VS 物質32%+DE68%

輻射-物質拮抗時期    7.4万年   9.3万年(26%アップ)

宇宙の晴れ上がり時期  37.5万年  47.7万年(27%アップ)

という結果になります。(注1)

そうして当方の主張は「物質100%の式で宇宙初期を推定するよりは物質32%+DE68%の式を使う方が妥当であろう」と言うものになります。

さてそれから、CMBの解析によるハッブル定数の推定には宇宙の晴れ上がり時期を37.5万年程度とするのではなく47.7万年という値を使うのが妥当であろうとも主張致します。

それで宇宙の晴れ上がり時期の変更による、ハッブル定数の推定に関しての影響についてはページを改めて「ダークマター・43ー1」、「ダークマター・43ー2」にて検討する事と致します。

注1:ここで示した「従来方法(物質100%)での輻射-物質拮抗時期および宇宙の晴れ上がり時期の値」は 「第6講 熱的宇宙」 からの引用となります。

・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク

https://archive.fo/FtLgs

 

 

 

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