宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

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ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・25・BH(ブラックホール)は消滅可能なのか?(3)

2019-05-16 05:47:34 | 日記
従来の寿命の計算式は「エネルギー保存則」は明示的に考慮されています。
しかしながら、以下の2つの事を暗黙の了解としています。
①、どんなにBHの質量が小さくなっても、BHのホライズン径が小さくなっても仮想粒子はBHに飛び込む事が出来る。
  それゆえどんなに小さなBHでもそれまでと同じ様にしてホーキング放射を出す事が出来る。
②、最後にこのBHに飛び込む事になる仮想粒子のエネルギーをその時にBHが持つエネルギーと同じ値にできる。
  そうであればこのBHはホーキング放射として仮想粒子がBHから持ち出すエネルギーによって消滅する事になる。

さらに今回指摘している様に、「運動量保存則」は考慮されていません。
それは「考慮しなくとも良い」かのように扱われています。

それに対して前回の検討では「運動量保存則」を考慮する様にしたものです。
その結果は「計算が⑤の状況ですでに成立しなくなる」という所まで確認できました。

以下は前回の結果の再掲示になります。
この計算ではエネルギーと運動量の保存則を同時に考量しています。
                   ニュートリノ吸収後の
   ΔE     P     E      BHの質量M
① 2.195E+08 0.73230  1.956E+09  1.916E-08   
② 2.473E+08 0.82489  1.736E+09  1.634E-08   
③ 2.884E+08 0.96190  1.489E+09  1.297E-08    
④ 3.576E+08 1.19295  1.201E+09  8.492E-09   
⑤ 5.094E+08 1.69911  8.429E+08  ------    

そして、そこで指摘した様に「より少ないエネルギーの放射であれば⑤の状況でも可能である事」をコメントしておきました。
従いまして、「話の続きはそこから」と言う事になります。

以下の表より⑤ の状況を再確認して起きます。
  M(Kg) T(K) ⊿M(Kg) M-⊿M(Kg)  2*Rs/Lp
④ 1.336E-08 9.186E+30 3.979E-09 9.378E-09 2.46
⑤ 9.378E-09 1.308E+31 5.667E-09 3.711E-09 1.72
(ちなみにこの表の計算では運動量保存則が考慮されていません。)

質量は9.378E-09(Kg)、これはプランク質量の4割程度の値です。
そしてホーキング温度が1.308E+31(K)。
このホーキング温度で一番発生頻度が高いエネルギーでの放射を計算するとNGとなった、と言うのが前回の結果でした。
そして⑤の計算でもホーキング放射前にはBHは静止していた、という実際にはありえない条件で解くのですが、これは簡便な計算をする上では仕方がない事でした。

(E-⊿E)^2=P^2*C^2+M^2*C^4
において今回のホーキング放射のエネルギーが⊿Eの時にはP*Cの値も⊿Eとなっています。
(これが「放射前はBHは静止していた」という条件のありがたみです。)

そうなるとホーキング放射の条件式
(E-⊿E)^2>=P^2*C^2

(E-⊿E)^2>=⊿E^2
となり、整理すると
E*(E-2*⊿E)>=0
最終的にはE>0である事よりこの条件は
E-2*⊿E>=0
従って
E/2>=⊿E
という事になります。
つまり「その時のBHの全エネルギーの半分までのエネルギーを持つホーキング放射であれば可能である」という訳です。

しかしながら通常はホーキング放射前のBHが止まっている、という状況は、このBHが一番最初にホーキング放射を出した時のみに成立していた状況です。
そうでありますから一般的にはホーキング放射を出す前にP>0であって、従って
E/2=⊿E
と言うような限界条件ではホーキング放射は起こりえない、と言う事になります。
(ホーキング放射を出す前にすでにBHは運動量Pを持っていた、とすると今回BHに飛び込んだ仮想粒子がもっていた運動量を、BHが持っていた運動量Pとベクトル加算する事になり、従って
(E-⊿E)^2=P^2*C^2+M^2*C^4において
この式のP^2*C^2の値はかなりの確率で⊿E^2を上回る事が予想できます。
それは結局のところホーキング放射の条件式
(E-⊿E)^2>=P^2*C^2
がより成立しにくくなる、と言う事につながります。)

そう言う訳でここでは
⊿E=<0.5*E
ではなく
⊿E=<0.4*E
として以降の話を進めさせていただきます。

ちなみに前回、計算できなくなったエネルギー⊿Eは5.094E+08であって、これはBHのエネルギーEの0.6倍になっていました。
このことから分かります事は、BHはこのレベルになると「BHのホーキング温度に対応した黒体放射スペクトルの振動数の高い方の放射はできなくなる」、つまり「BHはハイカットフィルターになる」という事になります。

ここでは計算ステップを小さくする事は可能ですが、話が煩雑になりますので
⊿E=0.4*E
として⑤のステップを計算しましょう。

M=sqrt((E-⊿E)^2-P^2*C^2)/C^4)
において
⊿E=0.4*E
P^2*C^2=⊿E^2
を代入し整理しますと、
M=sqrt(0.2)*E/C^2=0.4472*(ホーキング放射前のBHの質量)
となります。

以上より
放射前BH質量A(Kg)と放射後BH質量B(Kg)、放射前BH直径をプランク長さで割った値を以下に示します。
    A(Kg)    B(Kg)  BH直径/Lp
⑤ 9.378E-09   4.194E-09   1.72
⑥ 4.194E-09   1.875E-09   0.769
⑦ 1.875E-09   8.387E-10   0.344
(なお⑥、⑦は⑤と同じ条件で繰り返しホーキング放射をした場合の計算結果です。)

こうしてみると「ホーキング放射前のBHはほぼ静止している」という条件と「⊿E=0.4*E」の条件でホーキング放射は無限に続くかの様に見えます。
その有様は0.4472を比例係数とした等比数列になっていますから、そのように見えるのは当然の事になります。
しかしながら、BHの質量が小さくなる、と言う事はBHの温度が上がる、と言う事につながりその結果としては、「エネルギーの低い放射が起きる確率が下がる」という結果につながります。


そう言う訳で、次はそのような放射が起きる確率Pを計算する事になります。
そうして、実はBHのホライズン直径が2Lpを切ったあたりからこのような確率計算が必要になってくる模様です。

さて質量MのBHのホーキング温度Tは
T=h*C^3/(8*Pi*Kb*M*G)でした。
温度Tの時の黒体放射スペクトルでもっとも多く放射されるエネルギーEpの放射は
Ep=2.82*Kb*Tでした。(プランク則参照)

Tにホーキング温度を入れて整理すると
Ep=2.82*h*C^3/(8*Pi*M*G)となります。

今回は⊿E=0.4*E=0.4*M*C^2としています。
この⊿EがEpの何倍になっているのかを確率計算の目安とします。
R=⊿E/Epに上記を代入して整理すると
R=(0.4*8*Pi/2.82)*(M/Mp)^2
となります。
ここでMpはプランク質量MpでMp=sqrt(C*h/G)です。.
(そうしてMp= 2.176E-08(Kg)でもあります。)

今回の条件では限界であるエネルギー⊿E以下のエネルギーの放射が可能である、と言う事ですので、その条件で確率計算をします。
(⊿E=<0.4*Eですので、最大値が⊿E=0.4*E、でも計数0.4は0<計数<=0.4でOKですのでその範囲で積分する事になります。)
    A(Kg)     R      P   (参考:積分した値)
⑤ 9.378E-09   0.6621   0.1561  101383000
⑥ 4.194E-09   0.1324   0.002316   1504120
⑦ 1.875E-09   0.02647  0.00002076   13480

確率Pの求め方は「ホーキングさんが考えたこと・17」で行ったやり方に準じ、ウルフラムを使って
「0からR*282の範囲でx^3/(e^(x/100)-1) の積分」を行い、得られた値それぞれを
母数を6.49394*10^8として、その値で割ってPを求めます。<--リンク
(ここで母数は「0から無限大の範囲でx^3/(e^(x/100)-1) の積分」を行った値となります。)

そうしますと⑤では10回に一回ほどは放射が起こりそうですが⑥では1000回に2回、⑦では10万回に2回とBHの質量が小さくなるにつれて、なかなかホーキング放射が起きなくなる、という状況になる事が分かります。
これはホーキング放射可能なエネルギーレベルを超えた仮想粒子の発生が原因です。
その様な場合はBHはその仮想粒子のBHへの飛び込みを無視する事になります。
ちなみに上記の計算では「BHの質量Mの減少に伴うホライズン直径の減少が原因で仮想粒子がBHに飛び込めなくなる」という「従来から当方が主張している効果」は考慮されていません。


・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク


http://archive.fo/tsEvG
http://archive.fo/qp4Qb

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