07/16 私の音楽仲間 (515) ~ 私の室内楽仲間たち (488)
最高の最低音
これまでの 『私の室内楽仲間たち』
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「この曲には、何か愛称はついてないの? ハイドン
の弦楽四重奏曲 ト長調 Op.76-1 のことだけど。」
そういえば、聞いたこと、ないなぁ。 『皇帝』(76-3)、
『日の出』(76-4)、『ラルゴ』(76-5) は有名だけどね。
76-6 は、『ファンタジア』って呼ばれることもある。
キミの『五度』は 76-2 だったね。
「また始まった…。 『皇帝』、『日の出』は解りやすいよ。」
『ラルゴ』、『ファンタジア』はね、そういうテンポや標題が
ついている、“楽章” があるからなの。 どちらも緩徐楽章
だよ。
「この 76-1 にも、ゆっくりな楽章、あるの?」
第Ⅱ楽章の “Adagio sostenuto”、2/4拍子だよ。 テンポは
ゆっくりだけど、中には色々な世界があるの。 次の[譜例(1)]
は、一度ご覧いただいたものだけど、面白いでしょ?
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「何だ、これ!?」
楽譜を見ると、びっくりするかたがいるかもしれないね。
でも演奏は、そんなに難しくないよ。 流れに乗るように
すれば。 一個一個を “しっかり” 決めるんじゃなくて。
「もうろん、後打ちのことだよね?」
今回は、その続き。 [譜例(1)]の最後の 72小節から、
終りまで。 次の[譜例(2)]の、右上が同じ箇所だよ。
「変な楽譜だなぁ。 ハ長調らしいけど。」
そう、冒頭と同じテーマが出て来るの。 そのときは
“a mezza voce” って書いてあったよ、四人全員に。
はいソフト君、これ、どういう意味?
「“半分の声で、低い声で”。」
ありがとう。 二回目のときは、“m.v.” ってあったの。 でも
今回は三回目なので、省略して何も書いてないんだろうね。
「“molto vibrato” じゃないな…。 [演奏例の音源]です。」
すぐに “più forte” っていうのが出てくるでしょ? 字は
小さいけど。 これはね、…。
「“f より強く” ではなくて、“前より大きく” の意味です。」
…まいりました。 よく覚えてるな…。
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「そして f に達した後は、“dimin.” して、最高音の p に辿り
着きます。 音程が悪いのは、この楽章を通したのが一度
だけだったので、編集のツギハギが利かなかったからです。
“五度” ぐらいやれば、少しはマシになったと思われます。」
…やられました……。
「最後は全員が pp なのに、あんなに鳴ってていいの?
チェロ。」
ああ、とても弾き易かったね。 みんながその音の中に、
充分溶け込めたから。
「確かに一番よく聞えるよ、チェロが。」
pp が書いてあるからといって、ただ遠慮してればいいとは
限らない。 ハーモニーの最低音がよく鳴ると、上のパートが
楽なんだ。
「オーケストラの曲でも、よく出て来るよ。」
指揮者だけに任せてちゃいけないんだよね、音量バランスの
問題も。 出す方は勇気が要るかもしれないけど。 これほど
しっかり支えてもらえた覚えは、あまりないんだよ、ボクも。
音量よりも、“持続” が大事なのが、よく解るね。
「いい経験したね。」
チェロの H.さんを、ぜひ参考にしてほしいな。
「最低の最高音も、サンコウにしてほしい?」
………。
[音源サイト ①] [音源サイト ②]