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音符の話になるが、三連符というのがある。
あの有名なラヴェルのボレロは、「タッタカタ、タッタカタ、タッタッ」、「タッタカタ、タッタカタ、タカタタカタ」と始まる。 頻出する「タカタ」の部分が三連符で、英語では triplet(s) と呼ばれるわけだが、それでは、最後の「タカタタカタ」の「六連符」は何と言うのだろう。 これについては私自身、失敗談がある。
昔、弦楽四重奏の練習をしていたときのこと。 その最中に、どうしても「六連符」を英語で言わなければならなくなった。 周りはすべてアメリカ人だったのだが、悲しいかな、単語がわからない。 そこで咄嗟に口を突いて出たのが、「二十四分音符」なる造語。 まことにインチキな逃げだった。
24th notes! そんなの、あるわけないよね。 四分音符を六等分すれば、4×6 で 24。 だから、そのぐらいはいいじゃないか…、というのが私の屁理屈だったが、もちろん通じるはずはない。 相手は当然のことながら、「あいつ、一体何を言ってるんだ」とでも言いたげに、顔を見合わせてポカンとしていた。 アメリカ人に限らないだろうが。
大切な練習のひと時はそこで中断され、「六連符は sextuplet(s) と言うのだ」と教えてもらった。 セクストゥープレット、へえ、そうなのか。
その上、四連符、七連符…と立て続けに単語を並べられたが、こっちは一度に覚えられるわけがないよね…。 そのうちに彼ら自身も、「あれ、九連符は何だっけ?」とお互いに訊き合う始末だった。
(続く)