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おやままさおの部屋

阿蘇の大自然の中でゆっくりのんびりセカンドライフ

読書感想=梶よう子『一朝の夢』

2015年01月08日 09時14分32秒 | 読書
噴煙が1000mに達したという昨日の噴火。

久しぶりに楽しい本に出会った。

この梶よう子という女性作家の作品は初めて読んだ。まったくこの人については知らなかった。

書名が「一朝の夢」という何だかロマンティックな印象だ。

読み始めると時代は幕末。桜田門外の変がクライマックスで登場。その主人公井伊直弼、安藤信正、水戸藩の関鉄之助、薩摩藩の有村次左衛門などのある意味スターが登場する。

そして主人公は北町奉行所同心中根興三郎。ぱっとしない役職で職場では日陰の存在。しかしこの人には堂々たる別の顔があった。

朝顔作りでは世間の注目を集めている。その朝顔に惹かれて井伊直弼が宗観という号を使い登場してくる。
興三郎は気付かない。

そして風雲急を告げるこの時代。興三郎の周りで事件が頻発する。辻斬りの横行。

この犯人探しの中で先にあげた歴史上の有名人たちが現れ、主人公もその動乱の渦に巻き込まれていく。

そして同じ奉行所にいた同心の娘が親の死で生活に窮していた時、興三郎はさり気無く一鉢の朝顔を彼女に差し上げて救う。

そして同居。心ではこの後家への思いを熱く持つのだが、一緒になろうと言えない。そうしている内に女は攘夷派の浪人達にまわされ自害。
実は彼女は、興三郎の身辺に蠢く水戸、薩摩の反体制派の侍達に気付く。そして自分を救った興三郎が朝顔を通じて知り合った宗観=井伊直弼を巨悪の根源と見なしている彼らは興三郎が幕府の「いぬ」だと決め付け命を狙っていた。

そこで彼女は本の夫も属している攘夷派(反井伊)の懐に飛び込んで内情を探り、興三郎を助けようとする。しかし・・・

この時代小説には二つのテーマがあると思う。

幕末史をどう読み解くか?表側から勝利を掴んだ薩長の志士たちの栄光を描く本は無数にある。しかし、パッとしない一御家人を主人公に描くことで、動乱の十五年史をより客観的に見ることができるのではないかー
そして、井伊直弼の評価。

歴史上は安静の大獄という反体制派への大弾圧をやった極悪人・・・というのが一般的。しかし、内実は本当にそうか?

朝顔と井伊の関係はフィクションなのだろうが、よく井伊の人間像を浮彫りにしている。

そしてもう一つは朝顔だ。

流石に梶は女性である。繊細な感覚でその花の美しさ、貴重を描きだしている。

昨日は朝風呂を村の温泉に浸かりながらゆったりと読んだ。今、阿蘇は観光客が風評被害で少なくなって温泉もがら空きだった。

但し、阿蘇の活動昨日は特別酷かったが・・・