谷垣総裁の御労苦に感謝、安倍元総理に期待。
軍隊に対する国際的なルールである「やってはいけないことを決める」軍隊にしなければ、いつかはどこかの国に侵略されてしまうだろう。
今の自衛隊は「やって良いことだけが見められている」。不測の事態には手も足も出ない。
この問題の根幹が現行憲法にある。
産経新聞20120908 主張
国家主権、とりわけわが国の領域を保全する法体制が早急に整備・強化されなければならない。
野田佳彦首相は8月24日の記者会見で、韓国国家元首としてあるまじき李明博大統領の島根県・竹島への上陸、香港活動家らの沖縄県・尖閣諸島への上陸を受けて、「わが国の主権に関わる事案が相次いで起こっており、誠に遺憾の極みであり看過できない。国家が果たすべき最大の任務は平和を守り国民の安全を保障し、領土、領海を守ることだ。首相としてこの重大な務めを毅然とした態度で冷静沈着に果たし、不退転の覚悟で臨む決意だ」と明言した。こうした首相の「決意」表明は、遅きに失したとはいえ、評価できる。
≪海上保安庁法改正は第一弾≫
第一弾として、今国会でようやく「海上保安庁法」と「外国船舶航行法」の改正法が成立した。前者の改正は、海上保安官に離島での陸上警察権を与え、犯罪対処を可能にする。8月15日の香港活動家らの尖閣諸島上陸では、あらかじめ察知されていたので、警察官を配備し、逮捕に踏み切ることができた。今後は警察官が速やかに駆け付けることができないような遠方の離島でも、海上保安官が被疑者に対して質問、捜査、逮捕することができるようになる。
後者の改正では、活動家らを乗せた船舶が日本領海で停泊、徘徊している場合、海上保安官が立ち入り検査をすることなく、退去の勧告を行うとともに勧告に応じない船舶に対しては、罰則付きで退去命令を発することができるようになる。海上保安官の権限を拡大したことにより、領域保全の法整備が一歩、前進したといえる。
≪領域警備法の制定が第二弾≫
取るべき第二弾として、新たに領域警備法を制定することが求められる。同法の制定については、平成11(1999)年3月23日に発生した北朝鮮の工作船による領海侵犯事件後に検討されながら、その後、放置された状態になっている。この事件では、巡視船が北朝鮮の工作船を追跡し、至近距離に護衛艦がいたにもかかわらず、「海上警備行動」が発令されるまで何の行動も取ることができず、工作船の領海外への逃走を許すという大失態を演じた。当時の反省が生かされないままになっているというのは不可解極まりない。
諸外国において、領域警備は、軍隊がその役割の中枢を担う。わが国への領海侵犯は、今後ますますエスカレートし、偽装船団が大量の武器を保有してやって来る可能性がある。領域警備は、治安の維持を目的とする警察作用というより、国の安全保持を目的とする防衛作用と把握すべきである。
そのような側面から、自衛隊法を改正し、自衛隊に領域警備の任を与える必要がある。自衛隊、海上保安庁、および警察が普段から連携を密にし、共同訓練などを通じて、隙のない領域警備体制を整えておかなければならない。同時に、自衛隊の領域警備時における武器使用も警察官職務執行法を準用させるのではなく、国際法規に準拠させるよう改めるべきだ。
藤村修官房長官は、8月20日の記者会見で、領域警備法の制定には否定的な発言をしたが、野田首相は、領土、領海を守るために、「不退転の覚悟」を表明したのではなかったのか。もし、藤村発言が中国・韓国に対する「配慮」からなされたということであれば、「弱腰」のそしりは免れまい。
≪現行憲法に主権保全規定なし≫
そして第三弾として、憲法改正にまで踏み込まなければならない。なぜなら、現行憲法では、国家主権を保全するための規定は皆無だからである。憲法は、前文で「自国の主権を維持」することをうたっているが、その具体的方策を示していない。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」(前文)しても、何らの方策にもなり得ないし、また、9条には、平和主義の宣明を目的に侵略戦争の放棄や戦力の不保持などが定められているにすぎない。
国の平和を維持しつつ、国家主権が侵犯されないようなあらゆる措置を講じることは、「国家が果たすべき最大の任務」である。憲法を改正して領土・領域の保全を明記する条項を導入することは、国家主権を保持するための当然の帰結といわなければならない。
8月31日付産経新聞オピニオン欄には、憲法9条に関するアンケート(4678人から回答)の結果が載っている。それによると、9条改正に92%が賛成し、自衛隊を軍隊と位置付けるべきだとする意見が91%にも達したという。今や、憲法9条改正へのタブー視は払拭されているといってよい。
9月1日に、21世紀を担う若者の人間力育成を目指して、同紙が主宰する「産経志塾」で講義する機会があった。塾生たちは、私の9条改正論に熱心に耳を傾けてくれた。質問などを通じ、国の守りをどうするのか真剣に考えようという健全な若者が輩出してきていることに安堵した次第である。
国家主権を確保するための憲法条項を導入する問題と真摯に向き合うときが、来ていると思う。(にし おさむ)
何故報道しないのか?
反日国に関することはつぶさに報道すべきであろう・・・
産経新聞20120906
抗議船の尖閣上陸、「打倒小日本」などと叫びながら暴徒化する反日デモ、日本大使車襲撃事件…と連日連夜、中国による蛮行が報じられている。が、報道の視点は「(国旗持ち去りの)犯人は?目的は?」などと矮小(わいしよう)化され、評論家は当たり障りない持論を披露…。ゲンナリだ。
それよりこの機会に、メディアは中国の“不都合すぎる真実”を国民に懇切丁寧に伝え、警戒を呼び掛けるべきでは? 隣国は、各地でガラガラ音を立てながら崩壊しているのだから。
まず、道路(高速道路含む)の陥没による大小事故が、北京、上海、杭州、広州、瀋陽など日本人も多い大都市で頻発している。車がスッポリ埋まりそうな巨大な穴が開いた例もある。また、橋の崩壊事故も多発。先日も黒竜江省ハルビン市の高架橋崩落事故で死傷者が出ている。そして、7月に北京を襲った豪雨では数千人が死亡、被災者は数百万人とされ(情報隠蔽(いんぺい)により正確な数字は不明)、北京市長と副市長は早々に辞任、失脚した。
これら災禍の大部分は、共産党幹部が牛耳る人命無視のおから工事&技術不足が要因だ。党幹部の権力闘争が熾烈(しれつ)化し、粛清も強まる中、お次は「裸官(裸の国家&地方官僚)」の“海外逃亡ラッシュ”。妻子らは海外暮らし、ウン億元の不正蓄財も海外へ移し、自身は国内で職権乱用&汚職三昧を続けてきた官僚=裸官が、「逃げるが勝ち」レースに出ている。
先月末には奇怪な事件-中国国際航空の北京発ニューヨーク行き便が、出発から7時間後に北京空港へ引き返す-が起きた。「機長が『脅迫の情報を受けた』と乗客に説明」「米当局が『危険物が載っている恐れ』を寄せた」など報道はおおむね不可解だが、「米国亡命を試みた党幹部3人が搭乗、その阻止のため」と報じた反共産党紙もある。なお、深セン航空の国内便が離陸後の脅迫電話で、近くの空港に緊急着陸した事件も同時期に発生した。
笑えない“三文映画”を地で行くトンデモ国家・中国。それでも日本の「友好国」なのか?
ごもっとも
産経新聞 40×40 20120903
今度は尖閣諸島を国有化か。しかも都知事に後れをとってや。あかんあかん。現政権下で国有化したって、何もしよらん。現政権には北京の代表、中国の国会議員みたいなセンセイがゾロゾロおるんや。菅政権下の海賊船長、釈放したときのことをもう忘れたんか。
自民党政権下もそうやで。不肖・宮嶋が西村真悟元衆院議員らとともに尖閣に上陸した際、時の自民党政権の首相は北京の顔色をうかがい、日本の国会議員が日本の領土である尖閣に立ったことを非難しよったのである。
東京都が尖閣を買い取ったら直ちに警視庁の警察官常駐した要塞もとい交番をおく。灯台と緊急避難用の港の維持のための海保の巡視船も、石垣市(沖縄県)の行政下の出張所も希望があったらおく。不肖・宮嶋も東京都猟友会会員として島で増えすぎて固有種生物に悪影響を与えとるヤギの駆除に参加できる。
その資材と人員運ぶための海上自衛隊の輸送艦に機動施設隊も緊急展開や。その後で国有化して、ちゃあんと国境の島らしく、自衛隊部隊常駐させるんやったら、国に払い下げたってもエエ。
あっ、都の予算がもったいない、都知事のポケットマネーで買え、とほえとる都議会の“プロ議員”のセンセイ方、国に払い下げたとき、ふっかける必要はないが、十分元取れるんやで、都民の皆さま、ご安心ください。ワシも今まで住民税払い続けてきたかいがあったというものや。
それでやっと完全な実効支配や。そうなったら中国もおしまいや。せやからそうなる前に中国はどんなに汚い手を使(つこ)うても妨害してくる。不幸にも国会にも都議会にもおる“北京の代理人”も使ってくる。
見とってみぃ。やれ、福祉や災害対策を主張しながら、ヒステリックな反対を叫ぶやからがそうや。
その時こそ、外国人の手先を見極める絶好のチャンスやで。
大阪維新の会は??
すんなり受け入れ難いところが多々ある。
産経新聞 主張 20120902
26日投票が決まった自民党総裁選に問われているのは、次期衆院選で政権奪回を目指す政党として、内外の危機を抱えた日本のかじ取りをどのように進めていくのかを明らかにすることだ。
だが、今の自民党からは、日本をどうするかの全体像、具体像の発信が極めて乏しい。重要案件を残しながら、首相問責決議で国会を事実上終わらせてしまった党利党略優先の無責任さは、政権復帰への本気度さえ疑わせる。
総裁選の候補者たちは、失政を重ねてきた民主党政権への批判に終始するのではなく、国益と国民の利益を守る理念、具体的な政策を提示し、競い合うべきだ。
谷垣禎一総裁の下で、執行部は次期衆院選マニフェスト(政権公約)の最終案をまとめているが、その内容には野党ぼけとも思える点が少なくない。政権党なら真っ先に取り組むべきエネルギー政策などについて、明確な見解を先送りしている。
社会・経済活動を維持する電力の確実な確保を唱えているものの、原発再稼働をどう進めるかの具体論はない。新たにできる原子力規制委員会の専門的判断を最優先する姿勢だが、成長に不可欠な電力確保へ政治が責任を果たす覚悟がうかがえない。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への交渉参加でも「聖域なき関税撤廃が前提なら反対」という拒否姿勢のままだ。新たな自由貿易の枠組みづくりから取り残される状況を脱却できない。
尖閣諸島や竹島をめぐり中国、韓国との緊張が高まり、外交・安保政策も重要な争点となる。自民党は政権当時から領域警備法の制定を検討した経緯がある。今の状況を迎え、なぜ政府を巻き込んで制定に動かないのか。
社会保障で「自立」を強調しながら、膨張を続ける社会保障費用に切り込む具体策は乏しい。
党内には、地域政党「大阪維新の会」を率いる橋下徹大阪市長との連携論もある。だが、橋下氏らの首相公選制の主張は自民党の新憲法改正草案と相いれない。国のかたちにかかわる部分での差異を曖昧にしてはならない。
総裁選には、再選をねらう谷垣総裁のほか安倍晋三元首相、町村信孝元官房長官、石破茂前政調会長らの名前が挙がっている。これらの課題に明確な見解を導く政策論争を望みたい。
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国難: 政治に幻想はいらない |
石破 茂 | |
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約束の日 安倍晋三試論 |
小川 榮太郎 | |
幻冬舎 |
産経抄20120901
参院で野田佳彦首相に対する問責決議が可決され、センセイたちは、衆院選がいつあるのか気もそぞろだ。このどさくさにまぎれてとんでもない法案が閣議決定されようとしている。法務省の外局に新たな人権救済機関である「人権委員会」を設置しようという法案だ。
▼趣旨は「いじめや差別など人権侵害をなくそう」という至極まっとうな「正義の衣」をまとっているが、きれいなバラには刺(とげ)がある。正義の衣の下には、黒々とした鎧(よろい)が透けてみえる。
▼人権委員会は独立性が高く、コントロールできる大臣がいない。偏った人物が委員長に選ばれれば、どうなるか。すべての市町村に配置される委員会直属の人権擁護委員が、「どこかに差別はないか」とウの目タカの目で見回る監視社会になりかねない。
▼ことに問題なのは、委員会が「深刻な人権侵害」と認定すれば、勧告のみならず警察や検察ばりに出頭要請や立ち入り検査もできるようになることである。何よりも救済対象となる「不当な差別、虐待」の定義が曖昧なのだ。
▼小欄は先週、竹島に上陸しただけでなく、天皇陛下に謝罪を求めた韓国の李明博大統領が反省するまで「韓国製のモノは買わない」と書いた。法案が成立すれば、「不当な差別的言動」と解釈され、委員会に呼び出されてこっぴどく叱られるやもしれぬ。
▼戦前の治安維持法も立法趣旨は当時の「正義」だった。それが法改正で死刑を加え、恣意(しい)的な運用をしたために天下の悪法となった。なぜ民主党は、現代の治安維持法づくりに熱心なのか。ずばり言えば、「人権団体」の票欲しさからだ。民主党やどこかの国の悪口を書いて牢屋(ろうや)にほうり込まれるのはまっぴら御免である。
河野談話を破棄する機運が高まっている。今がチャンスだ。
産経新聞20120901 主張
慰安婦の強制連行を認めた河野洋平官房長官(当時)談話の見直しを求める声が高まっている。李明博韓国大統領が竹島不法上陸の理由として慰安婦問題への日本の対応に不満を示したことによる。
野田佳彦政権は河野談話を再検証したうえで、談話の誤りを率直に認め、それを破棄する手続きを検討すべきだ。
河野談話は、自民党の宮沢喜一内閣が細川護煕連立内閣に代わる直前の平成5年8月4日に発表された。「従軍慰安婦」という戦後の造語を使い、その募集に「官憲等が直接これに加担したこともあった」などという表現で、日本の軍や警察による強制連行があったと決めつけた内容である。
≪見直し論の広がり歓迎≫
公権力による強制があったとの偽りを国内外で独り歩きさせ、慰安婦問題をめぐる韓国などでの反日宣伝に誤った根拠を与えた。
しかし、それまでに日本政府が集めた二百数十点に及ぶ公式文書の中には強制連行を裏付ける資料はなく、談話発表の直前に行った韓国人元慰安婦16人からの聞き取り調査だけで強制連行を認めたことが後に、石原信雄元官房副長官の証言で明らかになった。
今回、李大統領の竹島上陸後、最初に河野談話の問題点を指摘したのは大阪市の橋下徹市長だ。橋下氏は「慰安婦が日本軍に暴行、脅迫を受けて連れてこられた証拠はない」「河野談話は証拠に基づかない内容で、日韓関係をこじらせる最大の元凶だ」と述べた。
安倍晋三元首相も本紙の取材に「大変勇気ある発言」と市長を評価し、河野談話などを見直して新たな談話を発表すべきだとの考えを示した。東京都の石原慎太郎知事も河野談話を批判した。参院予算委員会でも、松原仁国家公安委員長が河野談話について「閣僚間で議論すべきだ」と提案した。
こうした河野談話見直し論の広がりを歓迎したい。
石原元副長官が本紙などに河野談話の舞台裏を語ったのは、談話発表から4年後の平成9年3月だ。同じ月の参院予算委員会で、当時、内閣外政審議室長だった平林博氏は、元慰安婦の証言の裏付け調査が行われなかったことも明らかにした。
談話に基づく強制連行説が破綻した後も、それを踏襲し続けた歴代内閣の責任は極めて重い。談話の元になった韓国人元慰安婦の証言をいまだに公開していないのも、国民への背信行為である。
安倍内閣の下で、河野談話を事実上検証する作業が行われたこともある。米下院で慰安婦問題をめぐる対日非難決議案が審議されていた時期の平成19年3月、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示す記述は見当たらなかった」との政府答弁書を閣議決定した。
≪当事者は「真実」語れ≫
決議案には、「日本軍は第二次大戦中に若い女性たちを強制的に性奴隷にした」など多くの事実誤認の内容が含まれていた。
これに対し、安倍首相は「官憲が家に押し入って人さらいのごとく連れていくという強制性はなかった」と狭義の強制性を否定し、「米下院の決議が採択されたからといって、われわれが謝罪することはない」と明言した。一方で、「間に入った業者が事実上強制していたケースもあったという意味で、広義の強制性があった」とも述べ、河野談話を継承した。
だが、この安倍首相発言の趣旨は当時のブッシュ政権や米国社会に十分に理解されなかった。中途半端な対応ではなかったか。
今夏、アーミテージ元米国務副長官ら超党派の外交・安全保障専門家グループが発表した日米同盟に関する報告にも、「日本は韓国との歴史問題に正面から取り組むべきだ」との文言がある。
こうした誤解を解くため、日本は河野談話の誤りを米国など国際社会に丁寧に説明する外交努力を粘り強く重ねなければならない。河野氏が記者会見で強制連行を認めたのが問題の発端だ。国会は河野氏らを証人喚問し、談話発表の経緯を究明する必要がある。
安倍氏は河野談話に加え、教科書で近隣諸国への配慮を約束した宮沢喜一官房長官談話、アジア諸国に心からのおわびを表明した村山富市首相談話も見直す考えを表明している。今月行われる民主党代表選や自民党総裁選で、一連の歴史問題をめぐる政府見解に関する論戦を期待したい。
稲田先生の仰る通りである。
20120831産経新聞 正論
ロシアのメドベージェフ首相の北方領土訪問、韓国の李明博大統領の竹島上陸、香港の活動家たちの尖閣諸島上陸と、相次いでいる隣国からの領土侵犯行為の根底には、歴史認識の問題がある。
≪河野、村山、菅談話の破棄を≫
日本はこれまで、戦後レジームの中核を成す東京裁判史観に毒されてきているせいで、歴史認識について言うべきことを言わず、なすべきことをしてこなかった。むしろ、言うべきでないことを言い、すべきでないことをしてきた。その典型が河野談話、村山談話、そして菅談話である。
領土と歴史認識を同じ土俵で論じることには違和感がある。が、相手側が歴史認識を論じる以上、それにも冷静に反論することが必要だ。その前段として、有害無益な談話類は受け継がないと宣言する新談話を即刻出すべきだ。
李大統領は天皇陛下が訪韓する条件として独立運動家への謝罪を求め、日本国民を怒らせた。「光復節」演説では「慰安婦」問題の解決を求めた。韓国国会も「慰安婦」賠償要求決議を出した。
韓国の憲法裁判所は昨年8月、韓国政府が「慰安婦」の基本的人権を侵害し、憲法に違反しているという驚くべき判決を下した。李大統領が昨秋以来、異常とも思える執拗さで、野田佳彦首相に「慰安婦」への謝罪と補償を求めている背景にはこの判決がある。
野田首相は、国際法上決着ずみだとする従来の日本の主張を繰り返している。だが、韓国にはもう通用しない。憲法裁判所は、「慰安婦」問題が昭和40年の日韓請求権協定の範囲外で、「慰安婦」の賠償請求権は消滅しておらず、それを解決できていない韓国政府の不作為が、憲法違反に当たると断じているからだ。事実関係を否定しない限り、謝罪と補償を要求され続けるということになる。
≪個人賠償請求権で不当判断≫
こうした考え方は戦後補償全般に及ぶ。韓国最高裁はこの5月、戦時中の日本企業による朝鮮人強制労働に関する裁判で、日韓基本条約にもかかわらず個人賠償請求権は消滅していないという、国際法の常識に照らせば不当というほかない判決を言い渡している。
これで、日本での戦後補償裁判では法的に解決ずみという理由で勝訴してきた日本企業が、韓国国内で再度裁判を起こされれば、敗訴することになった。在韓資産を持つ日本企業は、敗訴判決に基づいて差し押さえを受け、資産を合法的に収奪されることになる。
しかも、日本政府は戦後補償、「慰安婦」裁判では、事実関係を争わない方針を採るので、日本での判決には証拠のない嘘が書き込まれている。裁判では、当事者が争わない事実は真実として扱われる。韓国の裁判でそんな日本の判決書が証拠として提出されれば、日本側に勝ち目はない。日本企業の財産を守る責務は国にある。政府は、戦後補償裁判でも事実関係を争う方針に転換すべきだ。
「慰安婦」問題については、日本の政府や軍が強制連行した事実はない、と明確に主張しなければならない。問題の核心にある「強制連行」がなかったのだから、謝罪も補償も必要ではない。当時は「慰安婦」業は合法だった。
それにもかかわらず「強制性」を認めて謝った河野談話を否定し、韓国や米国で宣伝されているような、朝鮮半島の若い女性を多数、強制連行して慰安所で性奴隷にしたといった嘘でわが国の名誉を毀損することはやめていただきたいと断固、抗議すべきである。
≪配慮外交から主張外交へ≫
司法だけではない。韓国は立法においても、盧武鉉前政権時代に親日反民族行為者財産調査委員会を設け、親日であった反民族行為者およびその子孫の財産を没収する法律を作っている。要するに、韓国では、歴史認識を背景に、日本に対しては何をやっても許されるという特殊な価値観で司法も立法も行政も動いているのだ。
であるからして、韓国に向き合って日本のなすべきことは、今までのような抽象的な贖罪(しょくざい)意識に基づいた、あるいは、日本特有の寛容の精神で相手と接してきた、「配慮外交」を改め、戦後補償であれ「慰安婦」であれ、言うべきことを勇気をもって主張する外交へと方向を転換することである。そうしないと、日本の名誉も韓国国内の日本企業の財産も守れないし領土侵犯も続くのである。
北方領土問題をめぐっても、プーチン大統領とメドベージェフ首相が「第二次世界大戦の結果であり譲歩する必要はない」と述べていることに、きちんと日本の立場を発信しなければならない。
日ソ中立条約を一方的に破棄して、日本に原爆が投下された後に旧満州に侵攻し、わが国同胞を60万人もシベリアに強制連行し、日本が武器を置いた後に、北方四島を奪取した旧ソ連(ロシア)の行為には、一片の正義もない。
今、求められるのは、こうした歴史認識をリーダー自らが堂々と語ることである。領土侵犯の理由に歴史認識を持ち出されれば、政治家が歴史認識をもって対抗しなければならない時代がきた。(いなだ ともみ)