雨、26度、80%
私が小学生の頃、昭和30年代の夏の朝のことです。「おきゅうと売り」がチャルメラのような笛を吹きながら毎朝やって来ました。「おきゅうと〜、おきゅうと〜、おきゅうとはいらんかえ。」「おきゅうと」は「ところてん」のような食べ物です。小鍋や皿を持って道に出て買いました。
福岡は近年、九州や中国地方の他県から人が流れて来ています。昔からの地元の人が少なくなっています。この「おきゅうと」を知る人も数少なくなり、「おきゅうと売り」の姿はありません。スーパーでもほんの数パック売っているだけ、「ところてん」の売られている数よりはるかに少なくなっています。
「おきゅうと」もエゴノリやテングサといった海藻を煮詰めて作ります。煮出した寒天質が固まる性質を利用した食べ物です。 小判形に薄く延ばして固めた「おきゅうと」はくるりと巻かれて売られています。これを細切りにして食べます。
香港にいた時、義母がこの「おきゅうと」の元になる海藻を送ってくれました。乾燥の海藻でしたがかなりの量でした。寸胴鍋でクツクツ煮て大量の「おきゅうと」を作りました。どうやって薄く延ばすか分からずに、大きな塊の「おきゅうと」でした。主人も息子も食べません。賽の目に切って私が食べあげました。後にも先にもこの時だけの「おきゅうと」作りでした。
「ところてん」は同じようにしてできた物を「ところてん突き」で押し出して麺状にします。「ところてん」はやや透明、さっぱり、冷んやりが持ち味です。「おきゅうと」は「ところてん」よりもっちりと歯ごたえがあります。そして何よりも海の香りを強く感じます。「ところてん」より濃いひじきに似た色目です。
福岡独特の食べ物らしく「博多おきゅうと」と書かれて売られています。夏になると喉ごしの良いさっぱりしたものが欲しくなると「おきゅうと」です。一般的にはおろし生姜とお醤油を添えますが、サラダに入れてもいいし好みで食べ方はいろいろです。私はゴマをちょっと振って、「柚子ごしょう」と「ゆずぽん」で食べるのが好きです。
福岡独特の食べ物なのに元になる海藻を売っているのを目にしたことがありません。昔のこととはいえ、義母はどこであんなにたくさんの海藻を手に入れたのやら、今度、尋ねててみようと思います。
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