曇り、16度、75%
香港島の北は、西から東まで坂道なくしてはお話しになりません。トラムが通る通りから山の斜面にそってマンションが立ち上がっていきます。我が家だって、一歩外に出れば、坂を下らなければどこにも行けません。もちろん、帰りは坂を上ります。坂は不思議なもので、上りと下り、心持ちも違うけれど、なんといっても景色が違います。見下ろす景色、 見上げる景色。当たり前になっている日常のことですが、興味深いものです。
香港島のセントラル、トラムが通る道から少し上がったところにハリウッドロードがあります。そのハリウッドロードからもう一つ上のケインロードにまたがる坂道のひとつが、城皇街です。ヒルサイドエスカレターより西に3本目の道です。この辺りは、古くからの街、小さいビルが建て込んでいました。それが、エスカレターの開発とともにSOHOと呼ばれる一大飲食店街に変身してしまいました。でも、この城皇街、なんだかとり残されてひっそりとしています。
ずっと昔から、この坂道が好きでした。それは、 これ、ベンチがあるからです。香港、町中にベンチが少なく感じます。坂道の階段沿いに3つあるこのベンチは、初めてこの道を通った20年以上前からあります。付近は、大きなバニアンツリーが気根を出して生い茂っています。このベンチは、そのバニアンツリーの木陰に置かれています。緩やかな階段の坂道ですが、このベンチのおかげで、夏の暑さをホッとひと息抜くことが出来ます。
このベンチの向かいには、 公衆のトイレとシャワーがあります。以前は、この公衆トイレと一緒のシャワーを良く見かけたものですが、ほとんど無くなって来ています。小さなベットだけのスペースで生活する人たち、台所もありません。もちろんシャワーだってないわけです。そんな人たちの為に作られたシャワーです。
あいにく、十一月から四月までは、お休みと貼り紙が出ています。何故か、何処も男性用のシャワーは2階にあります。
階段を下りきると、左手に露店ではありませんが、小さな床屋さん。
ここも、初めて通った時からずっとやっている店です。
高層ビルの建ち並ぶ香港島、ちょっとした道や曲がり角でタイムスリップしたような場所に入り込むことがあります。それも、時間の問題、しばらくぶりに通ると古いビルの解体、昔からの店が無くなっています。寂しく思うのは、私ばかりではないはずです。