私は・・・
私は、母さんを侮っていたのかもしれない。
おはようございます。
いつのころからか、母さんを見ていて、
私は、不安を抱くようになった。
物忘れが激しい上に、情緒が不安定で、
なんだか、とっても苦しそうだった。
もともと、趣味らしい趣味といえば、
読書だったはずだが、その本に興味を示さなくなり、
もう数十年ライフワークとなっているパチンコへも、あまり行かない。
行っても、負け越してくると、非常に不機嫌になる。
そこは、昔からだが、
不機嫌になって、タチの悪い酔っ払いになる。
そこも、昔からだ。
コラ、母さんめ!
出かけてもストレス。
家に居てもストレス。
母さんは、どうやら自分を持て余しているようだ。
どうしたもんかと考え、
ある日、毛糸と編み棒を実家に置いてみた。
すると、母さんの中の、
眠っていたクリエイティブ精神が、覚醒したのだった。
あれよという間に、
売るほど、出来上がった。
これは、母さんの作品の一部にしか過ぎない。
恐ろしい生産性の高さだ。
このままのペースで行くと、
我が家は、上半期の段階で、ニット作品であふれて、溺れてまう。
そこで、私は、母さんにある依頼をした。
「母さんや、今度はさ、猫用のボールを作ってくれよ。」と。
すると、母さんは、
「ほっほー、そりゃええ。よっしゃ、作ったる。
いーっぱい、作ったるで。」と。
やべっ、やべーと思ったが、小さい物なら大丈夫だと、
思い直していたところに、母さんは、さらに続ける。
「でっかいのが、ええよな。ドッジボールくらいのがええな。」
あかん、あかんと焦っている私を、しり目に、
母さんは、ノリノリだ。
「でっかい方が、猫も喜ぶで~。でっかいのがよぉ~。」
そんな母さんのキラキラ輝く笑顔を見ていたら、
ボール御殿が、頭の中に浮かんできた。
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思いのほか、メルヘンチックだ。
ボールの海に溺れたっていいじゃない。
と、あらぬ事を一瞬夢見てしまったが、
いや、戻ってこい私!と我に返り、
なんとか、小さいボールをと切望した結果、
たった一日で、6個。
実は、姉の家の猫3匹のための4個を合わせて、10個。
私は、侮っていたんだ。
母さんの凄さをさ。
きくさんや、
せっかくだから、母さんのボールで遊ぼう。
全然ノッてこないので、置いてみた。
ねつらって
ダッシュ!
アターック!
ジャーンプ!
楽しそうやんかいさ~
よかったやんかいさ~
ねぇ、きくさん。
どうして、私が持ってると、ノッてこんの?
きく「お前の顔が気持ち悪いから」
あっ、そこ~?