7月18日
アニメイトというお店に行った。
名前とどういうジャンルのお店かということだけは知っていた。
しかしどこにあるのかということを知らなかった。
夏休みに入ってテレビを多少見るようになってから、アニメイトのCMを初めて見た。
地図が一瞬だけ画面に映り、中央公園の北西にあることだけ分かった。
休日だったので市民図書館へ涼みに行ったのだが、祝日だったので開いてなかった。
弟と一緒にDVDとかビデオを鑑賞して、その後は別行動にする予定だったが、ポッカリと空き時間ができてしまった。
弟に、
「で、どうする?」
と尋ねると、
「お兄ちゃんが行く予定のとこに行こう」
と言った。
そうして僕(と弟)の「アニメイト探しの旅」が始まった。
とりあえず、中央公園に自転車をおいて、歩いて探すことにした。
ひととおり探して見つからなかったら、交番で訊くつもりだった。
アニメイトがあると思しき辺りをぐるっと回ってみた。
ひととおり探して見つからなかったので、交番で訊いた。
交番には三人の人間がいた。
巡査と部長と署長だったら面白いのに、どうやらそうではなかった。
「アニメイトというお店を探しているんですが」
僕が他人用の丁寧口調で尋ねると、
「あにめいと……?」「もしかして最近できたやつ?」と二人が答えた。
「えぇ、そうです」と、僕。
「新しいと、地図や電話帳には載ってないかもなあ」
こっちは丁寧口調で話してやっているのに、あっちはタメグチだった。
ともかく、電話番号案内で電話番号を調べて店の人に直接場所を訊いてくれたので、良しとしよう。
「ありがとうございました」
僕は丁重に礼を言って、交番を出た。
外で待っていた弟に、お待たせ、と言ってアニメイトに向かった。
アニメイトは、ダイエーの地下1階にあった。
僕はよくダイエーの前でビラ配りのバイトをするのに、今まで全然気づかなかった。
灯台下暗し。
それにしても、人が多かった。
僕はよくそこでバイトをするけど、それは仕事でのことであって、プライベートでは決してこんなところに近づかない。
自意識過剰と人間嫌いという二つの要因が、僕を人の集まりから遠ざけているのである。
僕は人ゴミに酔わないよう、神経を張り詰めて、つとめて無表情で街を歩かなければならなかった。
正直、疲れる。
こうしてダイエーなんていう若者の多く入る店に入るのは、それがほとんど初めてだった。
中にはたくさんの人間がいて、うわ、と思った。嫌悪。
ともかく、地下に下りる階段を探す。
階段はすぐに見つかり、僕(と弟)は地下1階に下りた。
アニメイトはすぐに見つかった。
僕はてっきり、そのフロア全てがアニメイトなのだと思っていたけど、そうじゃなかった。
フロアの隅(すみ)のほうで仕切りによって隔てられた空間。
それがアニメイトだった。
まるで社会におけるオタクのような扱いの店だった。
要するに、なんだか迫害されているような雰囲気。
仕切りには色々なアニメキャラクターたちが描かれており、どう見たってオタクムード満点だった。
これが高知県に唯一存在する「アニメイト高知」か。
店内に入ると、思ったより客が普通だった。
普通に親子連れとかいた。
ヤンチャなガキとかいた。
無論、オタクもいた。
そういえば、僕がここにきた目的を言い忘れている。
忘れたままにしようか。
やっぱり言ってしまおう。
僕は「酒井ミキオ」というミュージシャンを誰よりも心酔し、尊敬している(誇張表現)。
しばしば「酒井ミキオ大先生」と呼ぶ。
テレビで「堺師匠」と言っているのを「酒井ミキオ」と聞き間違えたりする(事実です)。
それはどうでもいいとして、ミキオ先生はアニメソングを手がけることがたまにある。
いつも(自身が歌うものは)、谷口悟朗監督の作品で起用される。
「スクライド」とか「プラネテス」がそうである。
スクライドの曲はオリジナルサウンドトラックを持っているので完璧だ。
しかし、プラネテスの曲は持っていない。
ミキオ先生は、プラネテスのオープニングとエンディングの両方を手がけた(挿入歌も1曲手がけている)。
それも、作詞・作曲・編曲・唄・楽器演奏、音楽を構成するほとんど全てを一人でやっている。
これはすごいことである。
たとえば、つんく氏は作詞作曲はやっても編曲はしない。楽器演奏もしない。
彼はほとんどシンガーソングライターのような才能である。
編曲や楽器演奏ができて偉いかというと決してそうではないが、やはりすごいと思う。
尊敬する。
と、話がかなり脱線してしまったので、元に戻す。
つまり、僕はプラネテスの曲を求めてここにきたわけである。
色んな中古ショップを何回も回ったが、なかなか見つからなかった。
アニメ好きでアニメを作ろうとしている友人Iが、「プラネテスのやつ、アニメイトにあった」と言うのを聞いていたので、来てみたわけである。
目的の品は、あった。
オープニングとエンディングを収録したシングルCD(もちろん、酒井ミキオ名義)が1枚と、オリジナルサウンドトラックの1と2があった。
やばい、さすがアニメイトだー、と思った。
僕は(語弊があるけれども)親戚からだましとった金で、シングルを1枚買った。
ミキオ先生のCDを新品で買うのは初めてだった。
「先生ぇ!」(←アニオタなら分かるネタ)
店内にはさまざまな商品があったが、詳細は言わない。
とりあえず、僕ごときでは1割ほども理解できないアニメ作品の数だった。 それでも思ったよりは分かって、やばい、オレ、オタクだー、とか思った。
周りがアニオタやマンガオタばかりだと必然的にこうなる。
かく言う僕だって(かなり語弊があるけれども)、アイドルヲタではないか。
買ったとき、ポスターをもらった。
「男性向け、女性向け、ランダム、の三種類からお選び下さい」
と言われたので、
「男性向けで」と答えた。
家に帰って、心もちワクワクしながらポスターを開いてみた。
Ζ(ゼータ)ガンダムが映っていた。
なーんだ、と思った。期待はずれ。女性向けにしておけばよかった。
弟が「デスノート」の1巻を読んでいるあいだ、ヒマだったので「月姫」の公認マンガ(公式ではない)を読んだ。
月姫というのは、『空の境界』で一躍有名になった奈須きのこ先生の、同人誌時代の伝説的作品である。
それが現在、ゲームになったり、マンガになったり、アニメになったりしているのである。
ともかく僕は1巻を立ち読みしていた。
すると、二人組の男が現れて、
「あ、月姫……」などと言った。
一人が2巻を手にとって、もう片方が、
「1巻は?」と言った。
「ここで立ち読みした」と彼は答えた。
そうしたやりとりをして、彼らは去っていった。
僕は邪魔だったなー、と思いつつ、月姫って結構、有名なんだなぁ、と再認識した。
しかしここだけの話、月姫はエロゲーと言われている。
エロゲーというものを実際に見たことがないので僕にはなんとも言えないけれど。
でもなんか、プレイしてみたいとは思わない。
時間が無駄になるだけだと思う。
友人の話だと、月姫はクリアするのに五十時間以上かかるらしい。
僕はそんなに膨大な時間を持て余せるほど暇人ではないので、僕が月姫をプレイすることはないだろう。
しかし。
月姫のキャラクターの公式の絵はいい。
イラスト担当の武内崇先生は、非常にデフォルメされた絵を描く人で、特に女性キャラが巧い。
僕も絵を描くが、男しか描かないので女の子が描けない。
周りの友人たちからは「女(の絵)を練習しろ」と馬鹿のひとつ覚えのようによく言われる。
さいですか。
7月19日
昨日の日記で、
「Ζ(ゼータ)ガンダムかよ。なんだよ、ナメてんのかよ!」
と言ったけれども、よく考えてみると、これは運命的な偶然だった。
CLAMP的に言うと、「必然」ですか。(←また分かりづらいネタ)
ゼータはアルファベットでいうところのZ(ゼット)である。
ゼットといえば、乙一先生である。
というのはもちろん、根拠のある繋がりで、「乙一」の由来に関係している。
この奇妙なペンネーム、実は乙一先生自身が使っていた計算機「Z-1」をもじったものなのである。
「Z-1」→「乙一」
乙一先生は本のカバーでこんな感じのことを語っている。
『芸能界に「Z-1」という女の子のグループが出てきてあせった』
ちなみにZ-1というのは、上戸彩さんの所属していた、とってもマイナーなアイドルグループである。
乙一先生は、ギター侍以上のテレビっ子かもしれない。
(ボクも知っていたから、同類だけど)
ボクと乙一先生には結構、共通項がある。
1つ。西日本生まれ。約二分の一の確率である。
2つ。秋生まれ。約四分の一の確率である。
3つ。根暗。
4つ。頭がおかしい。
5つ。そろそろ真面目にいこう。
6つ。高専生。乙一先生は久留米高専卒、ボクは現役高知高専生。
7つ。活字より、映像やマンガが好き。たいていの人がそう。
8つ。週刊少年ジャンプの読者。たいていの男がそう。
9つ。アイドルグループ「Z-1」を知っていた。ここでくるのか。
十つ。妄想の力だけで作品を書く。要するに妄想バカ。
なんと十項目も挙げてしまった。
特に3と4は、人間の本質的な部分が合致しているという意味で重要である。
だからか。
だからボクは乙一先生と同じで暗くてうしろめたい作品をよく書くのか。
よし、これからも黒い作品をたくさん書こう。
若いジャンプ読者を、暗黒の闇にいざなってやる。
……と、そういうことはジャンプ小説大賞でデビューできてから言いなさい。
今日はバイトの面接に行ってきた。
母が二階のお店だと言っていたが一階だった。
あやうく遅刻するところだった。
母のしたり顔が脳裏に浮かんだ。確信犯か。
店は思っていたよりずっと小さく、四畳半くらいだった。
ところで四畳半ってどのくらいですか。
ともかく、店は小さくて客席があまりなかった。
「アルバイトの面接に来た者ですが」
僕は相変わらず、他人用の丁寧口調で言った。
「奥の席で待ってて」
むこうも相変わらず、タメグチだった。
休憩時間なのか、店に客はいなかった。
僕は待ちながらいろいろなことを考えた。
飲食店でのバイト面接って、かならず客席でやるよなあ。
やばい、急いでてヒゲ剃ってない。歯も磨いてない。
履歴書に写真貼ってないし、誤字もそのまんまだ。
服装は一見シックにまとめているけど、実は総額四百円だ。
もう、いろいろな意味でナメていた。
それでいて、外見はとっても真面目な青年だった。
ビン底メガネと総額四百円が、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
すぐに店長が来た。
ひょろながいメガネザルだった。
手つきもなんだか怪しかった。
僕と店長は薄暗い照明のもと、質疑応答をした。
まるで取調べ室のようだった。
店長「接客で一番大切なことはなんだと思いますか」
僕 「ゼロ円スマイルです」
というようなやり取りをした。
店長は笑ってくれたが、目が笑っていなかった。
「じゃあ、三日後くらいに電話します」
それが店長の残した最後の言葉だった。
僕は、二度と店長と会うことはなかった。
(本当にそうなるかもしれないので恐い)
7月24日
本当にそうなってしまった。
理由は分からない。
ゼロ円スマイルが悪かったのだろうか。
21日。
高知大学に行った。
ビラ配りのバイトである。
10時50分に現地集合と言われていたので、ボクは余裕を持って10時に家を出た。
10時10分についてしまった。
とりえず近くのコンビニに行ってみた。
閉店していた。もう、コンビニは消えていた。
近くにもうひとつコンビニがあったので、そちらに向かった。
雑誌の棚を見ると、週刊少年ジャンプとかマガジンとかサンデーがなかったので、見るものに困った。
しかたなく、モーニング娘。が表紙の「ザ・テレビジョン」とか見た。
新メンバーが真ん中に居たけど、なかなか気づかなかった。どうもすみません。
お詫びとして少し宣伝しておくと、彼女はモーニング娘。の7期メンバーとしてただ一人加入した逸材です。
久住小春という名前だそうです。
つんく♂さんがミラクル級だと言っていたらしいので期待してください。
ボクは知りません。
ふと思ったのは、「亀井さんがなっちに似ているな」ということでした。
分かるひとは分かると思います。マニアックなネタですみません。
とにかくそのようにして時間をつぶしたボクは、10時30分に正門をくぐった。
しかし待ち合わせ場所には誰もいなかった。
10分待った。まだ来ない。
また10分。やはり来ない。
とうとう、11時になっても、誰も来なかった。
ボクは日を間違えたのだろうか。だまされたのだろうか。
そういうことを考えていると、一台の車が近くに停まって、中からバイト担当の社員が出てきた。
「○○さん、待ちましたよ」
ボクはいかにも、待たされた、という顔と声で言った。
勝手にボクが待っただけなのだけど。
「すまんすまん」
彼は土佐弁で謝った。酷似しているけど、関西弁ではない。
車から、一人の外国人女性が現れた。
裕に175センチはあった。さすが英語圏の人。
彼女は英会話の先生で、どこの国の人なのか、ボクは知らない。
建物の中に入ると、彼女が、
「は~ぅわあ~ぃゆ~?」
と、ボクに言った。
ボクは反射的に、
「あぃむ、ふぁあいん、せんきゅー」
と言ったけれども、これで合っていたのだろうか。
その後、建物の中(涼しい場所)で待っていた女の子二人が現れて、一緒にビラを配ることになった。
ここの学生さんは慣れた様子で、
「あ、いいです」とか「いりません」と言って断る人が多かった。
実に多かった。
押しの弱いボクはあまり多い枚数、配れなかった。
それにしても、女学生が多かった。
だって、ボクのクラスには女子が三人しかいない。
隣のクラスなんて、一人だけである。
そういう環境にいるボクからすると、半分が女性というこの学校は驚異だった。
えらく体を強調した服装の人がたくさんいて、目のやり場に困った。
街で配るより困るくらいである。
お願いだから、もっと普通の服を着てください。
きっと、先生方も困っているはず。
そうやって、惨めな気分(照れと恥ずかしさで大変だったのである)をたっぷり味わったボクは、すごすごと退却した。
社員の人がソフトクリーム(120円)を三人におごってくれた。
さっきたくさんのビラを配った学生さんたちのいる中、ボクたち三人はソフトクリームをなめた。
他の二人はどうということもないようだったが、ボクはいたたまれない気分満点だった。
仕事はそれで終わりだったので、ボクは一目散に大学を出た。
こんな場違いな場所、仕事じゃなければ絶対来られない。
帰り道、ボクは新しくできたTSU○AYAに寄ってみた。
入るのははじめてである。
CDコーナーへいくと、何やら見慣れぬ機械があった。
「INTERGUIDE」という名前らしい。
いろいろなCD情報を得られる機械だった。
ボクははじめにランキングを調べた。
そういえば最近、ランキングに疎い。
昔はデイリーもチェックしていたのに、最近ではウイークリーすら、あまりチェックしていないのだ。
知らない曲がほとんどで、自分の知識のなさを改めて痛感した。
以前日記でも書いたけれども、「ハッピーマテリアル」というアニメソングが三位にあった。
あれだけ色々語っておいて、実はまだ聴いたことがなかったボクは、その曲を試聴してみた。
ひとのいる場所でヘッドホンなんていうおしゃれなものを装着することにためらいがあり、いささか勇気が要った。
感想は……まぁ、あまりよく覚えていない。
大した曲ではなかったと思う。アニソンはアニメで聴いてなんぼであるから、正当な評価はできない。
あとは適当に、聴きたい曲を試聴した。
ふと思いついて、「酒井ミキオ」で検索してみる。
けっこうな数の楽曲がヒットして、驚いた。
ミキオさんは最近、よく働いている。
たとえばオリコン1位になったタキツバ(タッキー&翼)の「仮面」だってミキオさんの提供した楽曲である。
もちろんミキオさんご自身の作品もあったが、ほとんどが廃盤になっていて試聴できなかった。
一番面白かったのはアニメ「スクライド」のドラマCDであった。
主人公カズマに対してライバル、劉鳳(リュウホウ)というのがいる(漢字があっているか不安)。
リュウホウの声は、緑川光という有名な声優さん(ガンダムで言えばヒイロ)がやっているのだけれど、彼の声はかっこいい。
CDの最後に声優さんのあいさつがあって、それがおもしろかった。
緑川さんは別キャラのセリフを吐いていた。
「ラディカル・グッド・スピード!」
なんでも、一度言ってみたかったのだという。
ボクは思わず笑ってしまった。
ボクもラディカルグッドスピードは好きである。
そのキャラの口癖に「スローリィ」というのがあるが、ボクは夜中の公園で、そのセリフを十回以上吐いたことがある。
自分のスローさ(のろま)に嫌気が差したときに言う。
速くなりたいときには、先ほどのセリフを叫べばいい。
それでは皆さん、ご一緒に……、
「ラディカル・グッド・スピード!!!!」
これで私も立派なアニオタである。
24日。
また宗教(仏教)の行事に連れて行かれた。
どうせヒマなので『キノの旅』5巻を持っていく。
ほぼ前回と同様だった。
前回いた女子高生二人組もいて、ビックリした。
おまけに、ボクの許婚(いいなずけ)のお母様までいた。キレイなひとだった。
許婚というのは、多分に嘘を含んだ言い方だが、まんざら嘘でもない。
親たちが頼んでもないのに、その娘にボクを紹介したのである。
なんということだ。
ボクは彼女の顔を知らないのに、向こうはボクの顔を知ってしまっているわけである。
しかも、親たちが言うには、この世で最も可愛い娘らしい。
あんたたちが拝んでるのは仏様じゃなくて、その娘かい?
ともかく、そんなに可愛いのなら、ボクには不釣合いである。
差し詰め、電車男とエルメスちゃんみたいなものである。
いや、もっと酷いか……。
月とスッポン……違う。
天国と地獄――うん、たぶんこれだ。
この世で最も綺麗な存在とこの世で最も醜悪な存在。
その二つの存在が邂逅(かいこう)するのは、一体いつのことやら。
とりあえず、お母様はたしかに美人でした。
アニメイトというお店に行った。
名前とどういうジャンルのお店かということだけは知っていた。
しかしどこにあるのかということを知らなかった。
夏休みに入ってテレビを多少見るようになってから、アニメイトのCMを初めて見た。
地図が一瞬だけ画面に映り、中央公園の北西にあることだけ分かった。
休日だったので市民図書館へ涼みに行ったのだが、祝日だったので開いてなかった。
弟と一緒にDVDとかビデオを鑑賞して、その後は別行動にする予定だったが、ポッカリと空き時間ができてしまった。
弟に、
「で、どうする?」
と尋ねると、
「お兄ちゃんが行く予定のとこに行こう」
と言った。
そうして僕(と弟)の「アニメイト探しの旅」が始まった。
とりあえず、中央公園に自転車をおいて、歩いて探すことにした。
ひととおり探して見つからなかったら、交番で訊くつもりだった。
アニメイトがあると思しき辺りをぐるっと回ってみた。
ひととおり探して見つからなかったので、交番で訊いた。
交番には三人の人間がいた。
巡査と部長と署長だったら面白いのに、どうやらそうではなかった。
「アニメイトというお店を探しているんですが」
僕が他人用の丁寧口調で尋ねると、
「あにめいと……?」「もしかして最近できたやつ?」と二人が答えた。
「えぇ、そうです」と、僕。
「新しいと、地図や電話帳には載ってないかもなあ」
こっちは丁寧口調で話してやっているのに、あっちはタメグチだった。
ともかく、電話番号案内で電話番号を調べて店の人に直接場所を訊いてくれたので、良しとしよう。
「ありがとうございました」
僕は丁重に礼を言って、交番を出た。
外で待っていた弟に、お待たせ、と言ってアニメイトに向かった。
アニメイトは、ダイエーの地下1階にあった。
僕はよくダイエーの前でビラ配りのバイトをするのに、今まで全然気づかなかった。
灯台下暗し。
それにしても、人が多かった。
僕はよくそこでバイトをするけど、それは仕事でのことであって、プライベートでは決してこんなところに近づかない。
自意識過剰と人間嫌いという二つの要因が、僕を人の集まりから遠ざけているのである。
僕は人ゴミに酔わないよう、神経を張り詰めて、つとめて無表情で街を歩かなければならなかった。
正直、疲れる。
こうしてダイエーなんていう若者の多く入る店に入るのは、それがほとんど初めてだった。
中にはたくさんの人間がいて、うわ、と思った。嫌悪。
ともかく、地下に下りる階段を探す。
階段はすぐに見つかり、僕(と弟)は地下1階に下りた。
アニメイトはすぐに見つかった。
僕はてっきり、そのフロア全てがアニメイトなのだと思っていたけど、そうじゃなかった。
フロアの隅(すみ)のほうで仕切りによって隔てられた空間。
それがアニメイトだった。
まるで社会におけるオタクのような扱いの店だった。
要するに、なんだか迫害されているような雰囲気。
仕切りには色々なアニメキャラクターたちが描かれており、どう見たってオタクムード満点だった。
これが高知県に唯一存在する「アニメイト高知」か。
店内に入ると、思ったより客が普通だった。
普通に親子連れとかいた。
ヤンチャなガキとかいた。
無論、オタクもいた。
そういえば、僕がここにきた目的を言い忘れている。
忘れたままにしようか。
やっぱり言ってしまおう。
僕は「酒井ミキオ」というミュージシャンを誰よりも心酔し、尊敬している(誇張表現)。
しばしば「酒井ミキオ大先生」と呼ぶ。
テレビで「堺師匠」と言っているのを「酒井ミキオ」と聞き間違えたりする(事実です)。
それはどうでもいいとして、ミキオ先生はアニメソングを手がけることがたまにある。
いつも(自身が歌うものは)、谷口悟朗監督の作品で起用される。
「スクライド」とか「プラネテス」がそうである。
スクライドの曲はオリジナルサウンドトラックを持っているので完璧だ。
しかし、プラネテスの曲は持っていない。
ミキオ先生は、プラネテスのオープニングとエンディングの両方を手がけた(挿入歌も1曲手がけている)。
それも、作詞・作曲・編曲・唄・楽器演奏、音楽を構成するほとんど全てを一人でやっている。
これはすごいことである。
たとえば、つんく氏は作詞作曲はやっても編曲はしない。楽器演奏もしない。
彼はほとんどシンガーソングライターのような才能である。
編曲や楽器演奏ができて偉いかというと決してそうではないが、やはりすごいと思う。
尊敬する。
と、話がかなり脱線してしまったので、元に戻す。
つまり、僕はプラネテスの曲を求めてここにきたわけである。
色んな中古ショップを何回も回ったが、なかなか見つからなかった。
アニメ好きでアニメを作ろうとしている友人Iが、「プラネテスのやつ、アニメイトにあった」と言うのを聞いていたので、来てみたわけである。
目的の品は、あった。
オープニングとエンディングを収録したシングルCD(もちろん、酒井ミキオ名義)が1枚と、オリジナルサウンドトラックの1と2があった。
やばい、さすがアニメイトだー、と思った。
僕は(語弊があるけれども)親戚からだましとった金で、シングルを1枚買った。
ミキオ先生のCDを新品で買うのは初めてだった。
「先生ぇ!」(←アニオタなら分かるネタ)
店内にはさまざまな商品があったが、詳細は言わない。
とりあえず、僕ごときでは1割ほども理解できないアニメ作品の数だった。 それでも思ったよりは分かって、やばい、オレ、オタクだー、とか思った。
周りがアニオタやマンガオタばかりだと必然的にこうなる。
かく言う僕だって(かなり語弊があるけれども)、アイドルヲタではないか。
買ったとき、ポスターをもらった。
「男性向け、女性向け、ランダム、の三種類からお選び下さい」
と言われたので、
「男性向けで」と答えた。
家に帰って、心もちワクワクしながらポスターを開いてみた。
Ζ(ゼータ)ガンダムが映っていた。
なーんだ、と思った。期待はずれ。女性向けにしておけばよかった。
弟が「デスノート」の1巻を読んでいるあいだ、ヒマだったので「月姫」の公認マンガ(公式ではない)を読んだ。
月姫というのは、『空の境界』で一躍有名になった奈須きのこ先生の、同人誌時代の伝説的作品である。
それが現在、ゲームになったり、マンガになったり、アニメになったりしているのである。
ともかく僕は1巻を立ち読みしていた。
すると、二人組の男が現れて、
「あ、月姫……」などと言った。
一人が2巻を手にとって、もう片方が、
「1巻は?」と言った。
「ここで立ち読みした」と彼は答えた。
そうしたやりとりをして、彼らは去っていった。
僕は邪魔だったなー、と思いつつ、月姫って結構、有名なんだなぁ、と再認識した。
しかしここだけの話、月姫はエロゲーと言われている。
エロゲーというものを実際に見たことがないので僕にはなんとも言えないけれど。
でもなんか、プレイしてみたいとは思わない。
時間が無駄になるだけだと思う。
友人の話だと、月姫はクリアするのに五十時間以上かかるらしい。
僕はそんなに膨大な時間を持て余せるほど暇人ではないので、僕が月姫をプレイすることはないだろう。
しかし。
月姫のキャラクターの公式の絵はいい。
イラスト担当の武内崇先生は、非常にデフォルメされた絵を描く人で、特に女性キャラが巧い。
僕も絵を描くが、男しか描かないので女の子が描けない。
周りの友人たちからは「女(の絵)を練習しろ」と馬鹿のひとつ覚えのようによく言われる。
さいですか。
7月19日
昨日の日記で、
「Ζ(ゼータ)ガンダムかよ。なんだよ、ナメてんのかよ!」
と言ったけれども、よく考えてみると、これは運命的な偶然だった。
CLAMP的に言うと、「必然」ですか。(←また分かりづらいネタ)
ゼータはアルファベットでいうところのZ(ゼット)である。
ゼットといえば、乙一先生である。
というのはもちろん、根拠のある繋がりで、「乙一」の由来に関係している。
この奇妙なペンネーム、実は乙一先生自身が使っていた計算機「Z-1」をもじったものなのである。
「Z-1」→「乙一」
乙一先生は本のカバーでこんな感じのことを語っている。
『芸能界に「Z-1」という女の子のグループが出てきてあせった』
ちなみにZ-1というのは、上戸彩さんの所属していた、とってもマイナーなアイドルグループである。
乙一先生は、ギター侍以上のテレビっ子かもしれない。
(ボクも知っていたから、同類だけど)
ボクと乙一先生には結構、共通項がある。
1つ。西日本生まれ。約二分の一の確率である。
2つ。秋生まれ。約四分の一の確率である。
3つ。根暗。
4つ。頭がおかしい。
5つ。そろそろ真面目にいこう。
6つ。高専生。乙一先生は久留米高専卒、ボクは現役高知高専生。
7つ。活字より、映像やマンガが好き。たいていの人がそう。
8つ。週刊少年ジャンプの読者。たいていの男がそう。
9つ。アイドルグループ「Z-1」を知っていた。ここでくるのか。
十つ。妄想の力だけで作品を書く。要するに妄想バカ。
なんと十項目も挙げてしまった。
特に3と4は、人間の本質的な部分が合致しているという意味で重要である。
だからか。
だからボクは乙一先生と同じで暗くてうしろめたい作品をよく書くのか。
よし、これからも黒い作品をたくさん書こう。
若いジャンプ読者を、暗黒の闇にいざなってやる。
……と、そういうことはジャンプ小説大賞でデビューできてから言いなさい。
今日はバイトの面接に行ってきた。
母が二階のお店だと言っていたが一階だった。
あやうく遅刻するところだった。
母のしたり顔が脳裏に浮かんだ。確信犯か。
店は思っていたよりずっと小さく、四畳半くらいだった。
ところで四畳半ってどのくらいですか。
ともかく、店は小さくて客席があまりなかった。
「アルバイトの面接に来た者ですが」
僕は相変わらず、他人用の丁寧口調で言った。
「奥の席で待ってて」
むこうも相変わらず、タメグチだった。
休憩時間なのか、店に客はいなかった。
僕は待ちながらいろいろなことを考えた。
飲食店でのバイト面接って、かならず客席でやるよなあ。
やばい、急いでてヒゲ剃ってない。歯も磨いてない。
履歴書に写真貼ってないし、誤字もそのまんまだ。
服装は一見シックにまとめているけど、実は総額四百円だ。
もう、いろいろな意味でナメていた。
それでいて、外見はとっても真面目な青年だった。
ビン底メガネと総額四百円が、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
すぐに店長が来た。
ひょろながいメガネザルだった。
手つきもなんだか怪しかった。
僕と店長は薄暗い照明のもと、質疑応答をした。
まるで取調べ室のようだった。
店長「接客で一番大切なことはなんだと思いますか」
僕 「ゼロ円スマイルです」
というようなやり取りをした。
店長は笑ってくれたが、目が笑っていなかった。
「じゃあ、三日後くらいに電話します」
それが店長の残した最後の言葉だった。
僕は、二度と店長と会うことはなかった。
(本当にそうなるかもしれないので恐い)
7月24日
本当にそうなってしまった。
理由は分からない。
ゼロ円スマイルが悪かったのだろうか。
21日。
高知大学に行った。
ビラ配りのバイトである。
10時50分に現地集合と言われていたので、ボクは余裕を持って10時に家を出た。
10時10分についてしまった。
とりえず近くのコンビニに行ってみた。
閉店していた。もう、コンビニは消えていた。
近くにもうひとつコンビニがあったので、そちらに向かった。
雑誌の棚を見ると、週刊少年ジャンプとかマガジンとかサンデーがなかったので、見るものに困った。
しかたなく、モーニング娘。が表紙の「ザ・テレビジョン」とか見た。
新メンバーが真ん中に居たけど、なかなか気づかなかった。どうもすみません。
お詫びとして少し宣伝しておくと、彼女はモーニング娘。の7期メンバーとしてただ一人加入した逸材です。
久住小春という名前だそうです。
つんく♂さんがミラクル級だと言っていたらしいので期待してください。
ボクは知りません。
ふと思ったのは、「亀井さんがなっちに似ているな」ということでした。
分かるひとは分かると思います。マニアックなネタですみません。
とにかくそのようにして時間をつぶしたボクは、10時30分に正門をくぐった。
しかし待ち合わせ場所には誰もいなかった。
10分待った。まだ来ない。
また10分。やはり来ない。
とうとう、11時になっても、誰も来なかった。
ボクは日を間違えたのだろうか。だまされたのだろうか。
そういうことを考えていると、一台の車が近くに停まって、中からバイト担当の社員が出てきた。
「○○さん、待ちましたよ」
ボクはいかにも、待たされた、という顔と声で言った。
勝手にボクが待っただけなのだけど。
「すまんすまん」
彼は土佐弁で謝った。酷似しているけど、関西弁ではない。
車から、一人の外国人女性が現れた。
裕に175センチはあった。さすが英語圏の人。
彼女は英会話の先生で、どこの国の人なのか、ボクは知らない。
建物の中に入ると、彼女が、
「は~ぅわあ~ぃゆ~?」
と、ボクに言った。
ボクは反射的に、
「あぃむ、ふぁあいん、せんきゅー」
と言ったけれども、これで合っていたのだろうか。
その後、建物の中(涼しい場所)で待っていた女の子二人が現れて、一緒にビラを配ることになった。
ここの学生さんは慣れた様子で、
「あ、いいです」とか「いりません」と言って断る人が多かった。
実に多かった。
押しの弱いボクはあまり多い枚数、配れなかった。
それにしても、女学生が多かった。
だって、ボクのクラスには女子が三人しかいない。
隣のクラスなんて、一人だけである。
そういう環境にいるボクからすると、半分が女性というこの学校は驚異だった。
えらく体を強調した服装の人がたくさんいて、目のやり場に困った。
街で配るより困るくらいである。
お願いだから、もっと普通の服を着てください。
きっと、先生方も困っているはず。
そうやって、惨めな気分(照れと恥ずかしさで大変だったのである)をたっぷり味わったボクは、すごすごと退却した。
社員の人がソフトクリーム(120円)を三人におごってくれた。
さっきたくさんのビラを配った学生さんたちのいる中、ボクたち三人はソフトクリームをなめた。
他の二人はどうということもないようだったが、ボクはいたたまれない気分満点だった。
仕事はそれで終わりだったので、ボクは一目散に大学を出た。
こんな場違いな場所、仕事じゃなければ絶対来られない。
帰り道、ボクは新しくできたTSU○AYAに寄ってみた。
入るのははじめてである。
CDコーナーへいくと、何やら見慣れぬ機械があった。
「INTERGUIDE」という名前らしい。
いろいろなCD情報を得られる機械だった。
ボクははじめにランキングを調べた。
そういえば最近、ランキングに疎い。
昔はデイリーもチェックしていたのに、最近ではウイークリーすら、あまりチェックしていないのだ。
知らない曲がほとんどで、自分の知識のなさを改めて痛感した。
以前日記でも書いたけれども、「ハッピーマテリアル」というアニメソングが三位にあった。
あれだけ色々語っておいて、実はまだ聴いたことがなかったボクは、その曲を試聴してみた。
ひとのいる場所でヘッドホンなんていうおしゃれなものを装着することにためらいがあり、いささか勇気が要った。
感想は……まぁ、あまりよく覚えていない。
大した曲ではなかったと思う。アニソンはアニメで聴いてなんぼであるから、正当な評価はできない。
あとは適当に、聴きたい曲を試聴した。
ふと思いついて、「酒井ミキオ」で検索してみる。
けっこうな数の楽曲がヒットして、驚いた。
ミキオさんは最近、よく働いている。
たとえばオリコン1位になったタキツバ(タッキー&翼)の「仮面」だってミキオさんの提供した楽曲である。
もちろんミキオさんご自身の作品もあったが、ほとんどが廃盤になっていて試聴できなかった。
一番面白かったのはアニメ「スクライド」のドラマCDであった。
主人公カズマに対してライバル、劉鳳(リュウホウ)というのがいる(漢字があっているか不安)。
リュウホウの声は、緑川光という有名な声優さん(ガンダムで言えばヒイロ)がやっているのだけれど、彼の声はかっこいい。
CDの最後に声優さんのあいさつがあって、それがおもしろかった。
緑川さんは別キャラのセリフを吐いていた。
「ラディカル・グッド・スピード!」
なんでも、一度言ってみたかったのだという。
ボクは思わず笑ってしまった。
ボクもラディカルグッドスピードは好きである。
そのキャラの口癖に「スローリィ」というのがあるが、ボクは夜中の公園で、そのセリフを十回以上吐いたことがある。
自分のスローさ(のろま)に嫌気が差したときに言う。
速くなりたいときには、先ほどのセリフを叫べばいい。
それでは皆さん、ご一緒に……、
「ラディカル・グッド・スピード!!!!」
これで私も立派なアニオタである。
24日。
また宗教(仏教)の行事に連れて行かれた。
どうせヒマなので『キノの旅』5巻を持っていく。
ほぼ前回と同様だった。
前回いた女子高生二人組もいて、ビックリした。
おまけに、ボクの許婚(いいなずけ)のお母様までいた。キレイなひとだった。
許婚というのは、多分に嘘を含んだ言い方だが、まんざら嘘でもない。
親たちが頼んでもないのに、その娘にボクを紹介したのである。
なんということだ。
ボクは彼女の顔を知らないのに、向こうはボクの顔を知ってしまっているわけである。
しかも、親たちが言うには、この世で最も可愛い娘らしい。
あんたたちが拝んでるのは仏様じゃなくて、その娘かい?
ともかく、そんなに可愛いのなら、ボクには不釣合いである。
差し詰め、電車男とエルメスちゃんみたいなものである。
いや、もっと酷いか……。
月とスッポン……違う。
天国と地獄――うん、たぶんこれだ。
この世で最も綺麗な存在とこの世で最も醜悪な存在。
その二つの存在が邂逅(かいこう)するのは、一体いつのことやら。
とりあえず、お母様はたしかに美人でした。
主に筆者の愚痴ですが、我慢して下さい。
なにかあれば、コメントお願いします。
ヤングサンデーだか少年マガジンだか、なっちが表\紙だったので買った時に、見たような気がします
間違ってたら、ごめんなさいf^_^;
とりあえず、初めまして、ということになります。
漫画家の名前ではありません。
それはおそらく、ミキオさんが主題歌や挿入歌を手がけた人気アニメ「プラネテス」の原作が『週刊モーニング』で連載されていたからでしょう。
安倍さんって、モーニングにも出てたんですか。