だが、まだ事態は結末を迎えていない。
「で、どうする? 『1人で来い』と書かれていない以上、1人で行く必要はないけど。
まぁ、1人で行くってのも、度胸試しにいいかもしれないけどな」
タイチが、今度はいたずらめいたシニカルな笑みと声音で、恐い事を言い始める。
「や、やめろよ~……」
冗談に聞こえなかったのか、将太は少し怯えて言った。
(こりゃ、いいカモだわ……)
タイチは、気弱で、ネガ . . . 本文を読む
「長谷川、この問題を解いてみろ」
突然、どこか怒りを含んだような声が響いてきた。
妙に声が大きく感じられるのは、当の長谷川の席が一番前だからだ。
(なんで怒ってるんだ?)
呼ばれて、その少年――長谷川タイチ――は自分の机の上を見た。
(あぁね…)瞬時に悟る。
タイチの席は一番前だというのに、肝心の教科書が出されていなかったのだ。
タイチにしてみれば、ほとんど不要な物なのに。
「――=3 . . . 本文を読む
帰り道。太陽は沈みかけ、夕日が街を朱に染めている。少し遅めの帰路についている2人も、同じく朱に染まっている。
「今日はホントにありがとう」
いきなり礼を言う将太に、タイチは、
「礼ならさっき聞いたぞ。それよりお前、聞きたい事があるんじゃないか?」
彼の心中を察しつつも、相変わらず抑揚のない声で言う。
「う、うん……。あのさあ……。
ほんとに、《ブラッドライカー》とは、何もなかったの?」
「 . . . 本文を読む