シネブログ

このブログは映画に関する記事を書いています☆

『イントゥ・ザ・ブルー』

2007年04月30日 01時51分01秒 | 映画レビュー
原題:INTO THE BLUE
製作年度:2005年
上映時間:111分
監督:ジョン・ストックウェル
出演:ポール・ウォーカー 、ジェシカ・アルバ 、スコット・カーン 、アシュレイ・スコット 、ジョシュ・ブローリン 、ジェームズ・フレイン
オススメ度:★★★☆☆

ストーリー:
カリブ海に浮かぶバハマでダイビング・インストラクターをしているジャレッド。いつか沈没船を見つけてお宝を手に入れたいと夢見る彼は、ハリケーンが通り過ぎた海で、ついに沈没船の一部を発見する。それが何百万ドルもの金塊を積んだまま難破したと伝えられる“ゼフィア号”と確信したジャレッドは、恋人のサム、幼なじみのブライスらとともに自分たちだけで引き上げようと誓い合う。ところが、そのすぐそばには麻薬を積んだ密輸飛行機も墜落していた。しかし、せっかく見つけた沈没船の存在を隠しておきたい彼らは、警察への届け出をためらうのだったが…。



コメント:
ポール・ウォーカーとジェシカ・アルバの肉体美を全面的にアピールしたポスターなどを見れば、誰でも想像するのは”海を舞台にしたラブストーリー”ではないだろうか?自分の勝手な思い込みで観てしまった本作…まさかサスペンス・アドベンチャーというシリアスな内容だとは思ってもみなかったので驚きの連続であった。

鑑賞する前までは、ちょっとしたトラブルがきっかけで恋仲に危機が訪れるが美しいカリブ海を舞台にハッピーエンドで終わってしまうような、そんな普通のストーリー展開を想像していた。ところがどっこい、お宝、麻薬、鮫、銃などサスペンスには欠かせない要素がわんさか出てきて事態はどんどんドロ沼状態に…。とにかく詰め込めるだけネタを詰め込んでトラブルの連続もいいところ。意地でも観客を楽しませてやろうという、製作者側の意気込みが逆に空回りしているような感じがしてちょっと疲れる作品だ。

この映画の問題はなんといっても「宣伝方法」にある。特にあのポスター…あれはずるい。まあジェシカ・アルバの肉体美を見たいという不純な動機で観てしまった僕が一番アホなのだが、それにしてもやっぱりこれはやり過ぎだ。出演者の肉体美といってもそんなに見入るほどのものではなくて至って普通。それなりに鍛えてるなぁとは思うもののストーリーとは全く関係がないのだ。そんな美しいシーンどころか、本作ではかなり痛いシーンが次々と登場する。鮫に食われるシーンなんかは『ジョーズ』に匹敵するほどのリアリティがあってかなり痛い。そんなことは一言も宣伝文句にしていないので、苦手な人は注意した方がいいだろう。

本作での収穫といえば、俳優の新しい一面を見れたことかな。と言っても主演ではなく脇役のジョシュ・ブローリンとジェームズ・フレインの二人だ。とにかく彼らの悪役ぶりはかなりハマっている。ジョシュ・ブローリンなんかはどちらかと言えば硬派な役柄のイメージが強かったので、ヒゲ面でイカレタ役が似合うことにちょっと驚いた。ジェームズ・フレインは「24  TWENTY FOUR」の4シーズンでしか見たことがないが、この人も麻薬組織のリーダーとしてワンシーンしか登場しないがとても強いインパクトを残している。

なんだか微妙なレビューになってしまったが、作品自体が微妙だったということで…。ひとつのテーマに的を絞ってやれば結構いい映画になっていたと思うだけにちょっと残念。ひとつだけ褒めるとすれば、沈没船の捜索はなかなかワクワクして楽しかったというところだ。

『スパイダーマン2』

2007年04月28日 16時45分30秒 | 映画レビュー
原題:SPIDER-MAN 2
製作年度:2004年
上映時間:127分
監督:サム・ライミ
出演:トビー・マグワイア 、キルステン・ダンスト 、アルフレッド・モリナ 、ジェームズ・フランコ 、ローズマリー・ハリス 、J・K・シモンズ
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
あのグリーン・ゴブリンとの死闘から2年、ピーターは新聞社へ写真を売り込みながら大学生活を送る一方、スパイダーマンとしてニューヨークの街を守っていた。しかし、愛するメリー・ジェーンは念願の舞台女優になったことで少しずつ距離ができ、親友のハリーは亡き父の会社の跡を継ぎつつ仇を取るためスパイダーマンへの復讐に燃えていた。複雑な人間関係に悩みが増すばかりのピーター。そんな時、ハリーの会社のもとで研究を続けていたDr.オクタビアスが実験中の事故で怪人ドック・オクとなってしまい、4本の金属製人工アームを自在に操り暴れ回りながらスパイダーマンの前に立ちはだかるのだった…。



コメント:
前作の名場面をアニメ・タッチで描き、ばっちりテーマ曲に合わせてダイジェストのように見せてくれる本作のオープニングはとにかくかっこいい!これがホントよく出来ていてのっけから感動してしまう。ファンとしてはうれしい演出だ。

本作ではとにかくサム・ライミの手腕が発揮された作品だといえよう。元々ホラー映画出身の監督だけに、それを思わせる演出がいくつか見られた。僕が一番恐怖を感じたのは、ドック・オクが病院に運ばれて手術を受けるシーンだ。影の演出や医療器具が凶器なってしまう様、悲鳴を上げまくる看護婦など、このシーンは明らかにホラー色が強く、見ていて思わず力が入るものになっている。

そのままダーク系で進んでいくのかと思いきや、今度は突然『雨に濡れても』が流れて、めちゃくちゃ爽やかなシーンを挿入したりと、とても明暗のはっきりした作品になっている。しかしそんな演出があったからこそ、本作の見所となる人間関係を完璧に描くことができたのではないだろうか。前作で中途半端に終わったピーターとMJの恋、スパイダーマンとハリーの確執(まあこれは3で最終決着となるはず)などストーリーの流れは全て引き継いだものになっている。更にドック・オクの悲哀感溢れるストーリーも絡んでとても内容が濃い。

今回、スパイダーマンことピーターは自分がスパイダーマンであることでMJとの恋を諦めなければならないというとても辛い役どころだ。あまりに辛い恋の悩みのせいで一時的にクモの能力を失ってしまい、本来の生活に戻ろうとする。しかしその間も世の中では犯罪が多発し自分のやるべきことは何なのか悩み続ける。このあたりの複雑な感情がとても丁寧に描かれているためとても感情移入しやすいだろう。スパイダーマンの感情には普通の人間らしさが溢れているため今までのヒーローものよりおもしろさを感じる。やっぱりこのシリーズはストーリーがしっかりしてるなと再確認できた。

もちろん見所であるアクションも前作より遥かに進歩していることに驚かされる。相変わらず高層ビルを使ってのアクションがメインだが、ホントうまいこと利用しているなと。特にあの電車を止めるシーンはスパイダーマンの能力をフルに活かした演出である。その直後に市民にマスクの下の顔を見られてしまうのだが、このシーンはなんだかとても感動してしまった。辛いことをたくさん抱えているピーターだが、この瞬間自分のやるべきことが市民を守ることだということを実感させられたはずだ。

「大いなる力には、大いなる責任が伴う」

まさにベンおじさんが残したこの言葉の全てが集約されているシーンであると思う。
さあ次はいよいよ『スパイダーマン3』だ!!
きっとすばらしい作品に仕上がっているはず、期待して観よう。

『スパイダーマン』

2007年04月25日 23時25分50秒 | 映画レビュー
原題:SPIDER-MAN
製作年度:2002年
上映時間:121分
監督:サム・ライミ
出演:トビー・マグワイア 、ウィレム・デフォー 、キルステン・ダンスト 、ジェームズ・フランコ 、J・K・シモンズ 、クリフ・ロバートソン
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
幼くして両親を亡くし、伯父夫婦のもとで大切に育てられたピーター。高校3年生となった彼は、6歳の頃からずっと思いつづけている隣家のメリー・ジェーンに未だに打ち明けることができないちょっと冴えない高校生。ある日ピーターは親友のハリーから彼の父親ノーマン・オズボーンを紹介される。ノーマンは巨大軍需企業オズコープ社の経営者にして天才科学者。ノーマンはピーターの科学の才能を高く評価、彼に目を掛けるようになる。そんなピーターは、大学の研究所を見学した際、遺伝子組み換えでスーパースパイダーとなったクモに刺されてしまう。その瞬間、ピーターの身体に異変が起こり始める。



コメント:
この映画の魅力…それはあの高層ビルが立ち並ぶ街を、手から出す糸によって自由に飛び回るスパイダーマンの姿を観れることだ。まるで”摩天楼のターザン”とも呼べるそのヒーローは、クモの糸で見事に観客のハートをがっちりと掴んだといえるだろう。

とにかく僕はこのクモをモチーフにしたスパイダーマンが大好きだ。クモだからといって、映画『ザ・フライ』のように姿・形が全てハエのようになるわけではないのでご安心を(序盤に若干それを思わせるシーンがあるが…)。冴えない高校生ピーターが大学の研究所を見学した際、遺伝子組み換えでスーパースパイダーとなったクモに刺されてしまう。その瞬間、クモの能力を手に入れると共に超人的なパワーも備わりスパイダーマンとして活躍するというお話。一番おもしろいのは最初にも言ったように、糸を使ってビルからビルへと飛び回るシーンだ。こんなシーンは日本の街を舞台にしても到底作り上げることは無理だろう。舞台がニューヨークだからこそ、そこに立ち並ぶ高層ビルを利用して見事なアクションシーンを見せることに成功している。

そしてこの映画が大ヒットした理由は、登場人物の人間関係がしっかり描かれているからこそだ。自分の不甲斐なさのために愛する伯父を亡くし、それをきっかけに恋を諦めて世の悪党と戦うことを決意するピーター。ピーターの気持ちなど知る由もなく交際を始めるMJと親友のハリー。そして追い討ちをかけるようにして、ハリーの父ノーマンがスパイダーマンの天敵となって襲ってくる。複雑に絡み合った人間関係が物語を更に盛り上げる。が、実際のところストーリーが進むにつれて関係はかなりドロ沼状態に。シリーズの1作目ということもあり、恋も友情も全てが中途半端に終わり観ているほうからすればかなりじれったい展開だといえる。だが、この基盤があったからこそこのシリーズは大成功を収めることができたのだ。

とりあえず1作目は、それぞれのキャラクターをしっかり頭の中で整理しておくといいだろう(2,3作目もみんな登場するので)。これは壮大なヒーロー映画のほんの序章に過ぎないのだから。

『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』

2007年04月23日 00時14分48秒 | 映画レビュー
製作年度:2007年
上映時間:142分
監督:松岡錠司
出演:オダギリジョー 、樹木希林 、内田也哉子 、松たか子 、小林薫 、冨浦智嗣
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
1960 年代、オトンに愛想を尽かしたオカンは幼いボクを連れ、小倉から筑豊の実家に戻ると、妹の小料理屋を手伝いながら女手一つでボクを育てた。1970年代、 15歳となったボクは大分の美術高校に入学、オカンを小さな町に残し下宿生活を始めた。1980年代、ボクは美大生となり憧れの東京にやって来るが、仕送りしてくれるオカンに申し訳ないと思いながらも学校へもろくに行かず自堕落な日々を送ってしまう。留年の末どうにか卒業したものの、その後も相変わらずフラフラした生活を送るボクだったが…。



コメント:
ボクは現在25歳。年齢的にも立場的にも登場人物の誰にも当てはまるわけではない。しかしボクはこの映画にとても感情移入することができたのだ。というのも、実はボクはちょうど1ヶ月前におばあちゃんを癌で亡くしたばかりなのである。そのおばあちゃんが妙に樹木希林が演じるオカンとかぶる部分があり、生前だった頃とつい重ね合わせて観ることができた。常に家族のことを心配してくれているところ、周囲を明るくしてくれるキャラ、決して弱音を吐かないところ全てが当てはまっていたのだ。

ボクは原作もドラマも全く未見のまま鑑賞した。映画版も全く観る気はなかったが、相方の誘いに応じて渋々観に行ったというのが正直なところだ。観る前はどうせよくあるお涙頂戴映画だと思っていたし、結末は予告編などですでにわかっていたので、一体どこでどう泣かせる気なんだ?と、全く期待しないままでの鑑賞だった。だがこの映画はそこらへんのお涙頂戴映画とは違うことに気付かされる。物語は至ってシンプルで最後まで淡々と進行する普通の映画。しかしそこには普通ながらも誰もが心温まる物語が存在していたのだ。おそらくほとんどの人が鑑賞中に自然と涙を流してしまう映画であるといえる。

この映画では、どんな家庭に生まれようとも家族というかけがえのないものは決して失うことはなく、一生心のどこかで輝き続けるものだということを教えてくれる。それは不安や苦しみ、怒りや感謝など様々な形で人々の心の中に存在しているものなのだ。
たとえ親が死んでしまっても親子という関係は崩れない。子供の心の中には永遠に消えることのない記憶として残り続けるから。その記憶が生きていくうえでとても大きな力となって支え続けてくれる。

また親子だからといって特別なことはしなくてもいい。
ただ親として子としてお互いに愛することが出来れば、死というのもそんなに悲しいことではない。ラストでオカンが遺した箱を開けた瞬間、この瞬間がこの物語の全てを語ってくれている。別に特別な物語ではない。誰にでも経験したことのある普通の物語、それがこの『東京タワー』なのだ。


それにしてもキャストがすばらしかった!みんな自然な演技で物語りにぐいぐい引き込まれた。だが俳優たちも別に演じているわけではないのではなかろうか?なぜならこの姿こそが人間として親子としての自然の姿なのだから。とはいえやはりそれを体現できるキャストで本当によかったと思う。

この場を借りて自分の親、そしてこの映画に携わった方々に心からこう言いたい。
”本当にありがとう”

『卒業』

2007年04月20日 00時27分29秒 | 映画レビュー
原題:THE GRADUATE
製作年度:1967年
上映時間:107分
監督:マイク・ニコルズ
出演:ダスティン・ホフマン 、キャサリン・ロス 、アン・バンクロフト 、マーレイ・ハミルトン 、リチャード・ドレイファス 、エリザベス・ウィルソン
オススメ度:★★★★☆

ストーリー:
大学を卒業したばかりの前途洋々の若者ベンジャミン(ホフマン)は、祝賀パーティの席で知り合った中年女性ロビンソン夫人(バンクロフト)と逢瀬を重ねることになる。だが彼女の娘エレン(ロス)が現れた事で、その関係は崩れていく。親の勧めで不承不承エレンとつきあっていたベンジャミンは、次第に彼女に惹かれていったのだ。しかし、そんな若い二人に嫉妬したロビンソン夫人は、ベンジャミンとの関係を娘にぶちまけてしまう……。



コメント:
青春だねぇ~
はっきり言って今の僕からしてはベンジャミンとエレンの行動がいまいち理解できないが、これこそ青春だと思わせる映画であったことに違いない。よくドラマなどのラストで見られる、教会で花嫁を奪っていくシーンはもしかしてこの映画が発端?今となってはお決まり過ぎてあっけに取られがちなオチだが、本作ではそれも勢いがあっていいんだなぁ。なんだかよくわからないが飽きずに最後まで観ることができた。

その理由のひとつとしてサイモン&ガーファンクルが唄う『サウンド・オブ・サイレンス』、『ミセス・ロビンソン』が最高にマッチしているという点だ。もうこれが全てといってもいいほどすばらしいバランスを生んでいる。

本作は前半コメディタッチで描かれているが、後半はドロ沼状態。それにしても前半のダスティン・ホフマンのタジタジ演技が見事だこと。この当時は童顔だったということもあってか、ロビンソン夫人に誘惑されるシーンはかなりリアルに感じた。この辺のやりとりは流石だと思うので必見だ。
後半はストーカーとなってエレンを追っかけまわし、挙句の果てに教会で奪い去ってしまうのだからなんかめちゃくちゃで楽しいぜ。若気の至りってやつ?後先考えず前に突き進む若者って見ていて気持ちいい。もうそれだけ!

最後にひとつ言わせてもらうが、ダスティン・ホフマンが21歳を演じるという設定にはちょっと無理がある。なんたって当時30歳だし。しかもロビンソン夫人を演じたアン・バンクロフトとは約6つしか歳が離れていない・・・どう考えても無理だろ(笑)

『バタリアン』

2007年04月17日 23時10分57秒 | 映画レビュー
原題 BATTALION/THE RETURN OF THE LIVING DEAD
製作年度:1985年
上映時間:91分
監督:ダン・オバノン
出演:クルー・ギャラガー 、ジェームズ・カレン 、ドン・カルファ 、トム・マシューズ 、ビヴァリー・ランドルフ 、ジョン・フィルビン
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
ゾンビ映画の元祖「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/ゾンビの誕生」で描かれた事が実際にあったという前提で作られた間接的な続編。ロスにある科学資料庫の地下で発見された謎のタンク。そこから吹き出した特殊なガスには死者を蘇らせる作用があった……。



コメント:
一般的にゾンビ映画といえばジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』が挙げられる。しかし僕はその作品を未だ観たことがない。というのも、1978年公開でちょっと古い映画ということもあるせいかレンタルショップでDVDを見かけたことがない。また僕の世代的には1985年に製作された『バタリアン』のほうが主流であったということが理由だ。

そこでこの二つの作品には大きな違いがあることに気付くだろう。そう、ゾンビの移動速度だ。基本的にジョージ・A・ロメロが手掛けた作品ではゾンビは歩くものだと決まっている。だから一般的には”ゾンビ=歩く”という法則が成り立っているように見受けられた。だがその基本を崩した映画がこの『バタリアン』だ。

特殊なガスにより蘇った死者たちがゾンビとなって襲ってくる。しかもこいつらはみんな口を揃えてこう叫ぶ…

”脳みそをくれ~~”

生きている人間を見つけるとためらうことなく頭に狙いを定めて”走って”襲ってくる。その光景はまさに餌に群がるハイエナのよう。これこそゾンビの真の姿だと思った。死体は腐ってるから歩くのが普通だとか、頭を撃てば死ぬというルールはこの映画には通用しない。本作では誰にも救いようのない地獄絵図が繰り広げられてしまうのだ。

しかしこんな内容がコミック・タッチで描かれていることに感心する。全くといってもいいほど恐怖は感じないのだ。劇中に出てくる“オバンバ”やら“タールマン”といったゾンビのキャラクターはどこか愛嬌があっておもしろい。そんなゾンビと真面目に会話を始める人間もバカっぽくていい。登場人物は少ないがよく出来たストーリー構成で観ている者を飽きさせない。結局ラストは政府の手により町ごとミサイルで吹き飛ばされる。そのミサイルが投下されるまでの”ひゅ~~~~~”という音が今でも耳に残っている。あっけない最後だが、それもシンプルでわかりやすくてとてもいいのだ。

ゾンビ映画といっても世の中にはかなりたくさん存在するが、僕が一番オススメするのはこの『オバタリアン』だ。ゾンビ系が苦手な人も気が向いたらぜひチャレンジして欲しい。最後に、このゾンビ映画を観た以降、僕は”走るゾンビ”を好きになってしまったということは言うまでもない。

『グレムリン』

2007年04月14日 04時26分02秒 | 映画レビュー
原題:GREMLINS
製作年度:1984年
上映時間:107分
監督:ジョー・ダンテ
出演:ザック・ギャリガン 、フィービー・ケイツ 、ホイト・アクストン 、フランシス・リー・マッケイン 、ポリー・ホリデイ 、グリン・ターマン
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
チャイナタウンの骨董屋で発明家ペルツァーが手に入れた不思議な動物モグワイ。彼はそれを息子ビリーへクリスマス・プレゼントとして贈るが、モグワイには、水に濡らさないこと、太陽光線に当てないこと、真夜中すぎにエサを与えないことの三つの誓いが必要だった。だが、この誓いが破られた時、可愛いモグワイは恐るべき凶悪な怪物グレムリンへと増殖していく。かくして平和な田舎町キングトン・フォールズは悪夢のクリスマスを迎えることになるのだ。



コメント:
子供の頃から何度も観ている大好きな映画のひとつ。一応パニック映画というジャンルだが、遊び心満載でアイディアをフルに活かしており、素直に楽しませてくれる映画だ。ツッコミどころ満載だがそれはこの映画の愛嬌なので軽く流しておこう。コメディ要素も存分に取り入れられていて、ただのパニック映画で終わらせていないところが流石。なんたって監督にはコミカルセンス抜群のジョー・ダンテ。脚本は『ハリー・ポッター』シリーズの監督・製作に携わったクリス・コロンバス。そして製作総指揮にはあのスティーヴン・スピルバーグが絡んでるくらいだからおもしろくならないわけがない。

この映画の主人公はなんといっても、モグワイ=グレムリンというユニークなキャラクター。おそらく誰もがそのキャラクターを一度は観たことがあるはずだ。それにしてもギズモは本当にかわいい。こんなペットがいたら絶対子供たちの人気商品になるだろうな。だがこのかわいい生き物を飼うためにはいくつか守らなければならないルールが存在する。

 1.水に濡らさない
 2.真夜中過ぎに餌を与えない
 3.光に当てない
  
こういうルールは大好き!
水、食べ物、日光という人間には欠かすことのできない三要素。生活していて常に存在するものだけに、これらがグレムリンにどういう影響を及ぼすのかワクワクするだろう。それにこういったルールはストーリー構成を作るにもとても重要だ。結果を言ってしまうと見事この三要素がテンポのよいストーリー展開を生んでいる。

そしてこの映画の一番の見所と言ってもいいのが「グレムリンvs母」の戦いだ。十分逃げる余裕があるにも関わらずグレムリンを皆殺しにしようとする母はとにかく鬼気迫るものがある。まず一匹目はミキサーによるぐちゃぐちゃ死。そして二匹目は包丁によるメッタ刺し。三匹目は電子レンジによる爆死。そして四匹目は息子との連携で焼死させるという見事な戦いを演じている。このシーンはグレムリンが気の毒になるほど酷い殺され方をされているが、ぜひその死を最後まで見届けてあげて欲しい。ホント酷いから…。

あとはとことんグレムリンの悪さっぷりを見せ付けてくれる。町中を好き放題荒らし回るグレムリンを観ているとなんだか気持ちいい。日頃のうっ憤を晴らすかのように酒を飲みたばこを吸い銃をぶっ放す、まるで人間の魔の部分を映し出したかのような暴れようだ。
でも実は製作者も、グレムリンは人間の悪魔の部分という意味で描きたかったのだと思う。
この映画の最後でモグワイの飼い主がいうセリフに「あんたらの社会は自然を破壊した」「モグワイにも同じことをしている愚かなやつらだ」というものがある。結局このグレムリンを増殖させてしまったのも、人間による不注意と自己中心的な考え方によるものが原因で、自然を粗末に扱うと後から災いが自分たちに降りかかるという警告として描きたかったのだろう。見方によってはとても意味のある映画であるといえる。まさに隠れた名作!?ともいえる作品だ。

とにかく本作には映画を楽しむ要素がフル活用されているというわけだ。映画の基本を学ぶにはもってこいの作品な気がする。ぜひまだ観たことのない人にはオススメしたい。

余談だが、スピルバーグの70年代から80年代前半に手がけた作品が一番おもしろかった気がするのは僕だけだろうか?この『グレムリン』の前後に手がけた作品として(全部監督というわけではないが)『JAWS/ジョーズ』『未知との遭遇』『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』『E.T』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『グーニーズ』などなど。どれも10年以内に製作された名作ばかりが名を連ねている。全ての作品にアイディアが溢れており映画人としての才能をフルに発揮していた時代だと思う。最近その勢いが薄れてきている感もあるが、この映画を観てまたその勢い取り戻して欲しいという気持ちも高まった。久々にスピルバーグの楽しい映画を観たいなぁ~…と思う今日この頃である。

『イージー・ライダー』

2007年04月13日 00時11分03秒 | 映画レビュー
原題:EASY RIDER
製作年度:1969年
上映時間:95分
監督:デニス・ホッパー
出演:ピーター・フォンダ 、デニス・ホッパー 、アントニオ・メンドーサ 、ジャック・ニコルソン 、カレン・ブラック 、ルーク・アスキュー
オススメ度:★★★★☆

ストーリー:
コカインの密輸で大金を得たワイアット(キャプテン・アメリカ)とビリーは、金をフルカスタムされたハーレー・ダビッドソンのタンク内に隠し、カリフォルニアからマルディグラ(謝肉祭)の行われるニューオリンズ目指して旅に出る。



コメント:
  ”ぼ~んとぅびぃ~わ~~ぁいる”

序盤から誰でも知っている名曲が連ねている本作。元々ロードムービーが苦手な僕でもそんな音楽が流れてしまったらいちころだ。カリフォルニアからマルディグラ(謝肉祭)の行われるニューオリンズを目指して旅に出たキャプテン・アメリカとビリー。序盤はこの二人の自由奔放な旅を見せられ、まるで音楽のプロモーションビデオのようにダラダラとストーリーが進んでいく。

しかし本作はアメリカン・ニューシネマの代表作であるということを忘れてはいけない。正直僕は前半そんなことはすっかり忘れて作品に見入っていた。

だがこれぞアメリカン・ニューシネマの基本と言わんばかりに、徐々にストーリーに暗い影を落としていく。そしてラスト…全く予想もしなかった結末が…。バイクに乗って走行中の二人は、通りかかった車の同乗者にショットガンで射殺されてしまうのである。その最後はあまりにもあっけない。

”自由”をテーマに描かれた作品だが、一体”自由”とは何なんだと聞き返したくなる。生きるも”自由”なら、殺すも”自由”。本当の意味での”自由”など存在しなかった時代だということを痛感させてくれる。今の時代であればこの映画の主人公は「自由に生きててカッコいい!」というイメージを持つだろう。なのにただ長髪だからだとか周りの生活を乱すからという現代では当たり前のことをやっただけで周りから非難を浴び終いには殺されてしまうのである。自由を求めるのことは当時の人間にとってとても大きなチャレンジであり、人生の楽しみを切り開くチャンスでもあったのだろう。その夢も叶わなかった二人を見ると悲壮感でいっぱいになってしまった。が、やはり時代を駆ける二人の姿はカッコいいのだ!

終盤の墓場でのシーン。あれこそ当時の若者の本来の姿を描き出したものだ。何かに取りつかれて当てもない何かを求める姿。とても強いインパクトを感じるシーンであった。

『ニュー・シネマ・パラダイス』

2007年04月10日 01時05分00秒 | 映画レビュー
原題:NUOVO CINEMA PARADISO/CINEMA PARADISO
別題:ニュー・シネマ・パラダイス 完全オリジナル版
製作年度:1989年
上映時間:175分
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:フィリップ・ノワレ 、ジャック・ペラン 、サルヴァトーレ・カシオ 、マルコ・レオナルディ 、アニェーゼ・ナーノ 、プペラ・マッジオ
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
シチリアの小さな村にある映画館パラダイス座。そこで青春時代を過ごした映画監督サルヴァトーレが、当時、慕っていた映写技師アルフレードの訃報を聞き、故郷に帰ってくる。そして、少年時代、青年時代の思い出に浸っていたサルヴァトーレが受け取ったアルフレードの形見には、映画への愛とアルフレードの想いがぎっしり詰まっていた……。



コメント:
ひとつの人生を完全に描き切った最高の感動巨編。子供の頃から映画を愛する主人公トトが村の唯一の映画技師で人生の師でもあるアルフレードや家族、そして村の人々を通じて成長する姿が描かれている。僕にとってこの作品は、昔から名作だということで認識している作品ではあったが、少々古い映画というイメージが強く今まで避けてきた作品であった。そして今日、ついにこの『ニュー・シネマ・パラダイス』という名作を観た記念すべき日となったのだ(ちなみに初公開版は未見)。

感想をひとことで言うとしたら”すばらしい”という言葉しか見つからない。

175分という上映時間だが全く無駄に感じることなく最後まで感動の渦に巻き込まれてしまった。トトの少年期、青年期、そして中年期という過程がとても丁寧に描かれており、数え切れないほどの様々な”愛”を見事に表現している作品だ。こんなすばらしい映画を今まで放置していたことを後悔してしまったほど。とにかく観終わった今は、この壮大な人間ドラマに深く感銘を受けてしまっている。

この映画で僕が好きな点はなんといっても脚本だ。映画の舞台となっているシチリアの小さな村にポツリと建つ小さなパラダイス座。村人の唯一の娯楽がそこで上映される映画で、トトもその観客のひとり。母親にはいつも反対されているが、そんなことで子供の好奇心がなくなるわけがない。映画をいつも楽しんでいるトトを観るとこっちまでうれしくなってしまう。本作では場面場面で16本もの映画が挿入されており、映画ファンなら必ずうれしくシーンの連続だろう。この映画を観た一人ひとりがこのパラダイス座の観客になってしまうに違いない。

この映画で賛否がわかれる部分は”アルフレードとの親友としての愛”もしくわ”エレナとの真実の愛”そのどちらに重点を置いて観るかにより、思いやりや憎しみが天秤のように揺れ動くことになる。アルフレードがトトとエレナに下した決断は見方によっては決して許せることではない。愛し合う二人を二度と会えないように仕向け、トトには自分の夢を追いかけるように強制しているからだ。しかしそれも一概には言えない。アルフレードは生涯この村で生きてきたがトトにはこんな小さな村だけに留まって欲しくないと願っている。世界は広くそして人生は長い。トトには映画を愛する者であると共に、自分の夢を叶えて欲しいと願ったのだろう。

結果的にトトは愛を諦め自分の夢を叶えることになる。それが正しい選択であったかどうかは誰にもわからない。実際トトは最後の最後までエレナとの過去を捨てられずにいるし納得のいかない部分があったのは確か。しかしこの映画にはそんな後悔の念を吹っ飛ばすくらいのラストが待っている。アルフレードが形見として残した、昔検閲でカットされたキスシーンのフィルムを繋ぎ合わせて作った最高のプレゼント。このシーンを見た瞬間僕の全身には鳥肌が立った。そしてそれまでのシーンが僕の頭の中でフラッシュバックのように駆け巡る。この映像を見ながらだんだん笑みが溢れてくるトトの顔を見ると感動せずにはいられない。最高のラストだ。

もうこの映画の感動は話して伝わるものではない。とにかくたくさんの人に観て欲しい。そして映画を好きになって欲しい。きっとかけがいのないものを感じるはずだ。

僕は初公開版を観る前にこちらの作品を観てしまったが、どうやらいろんな人のレビューを見る限りでは全く別物の作品に仕上がっているらしい。初公開版のほうが良かったという人の割合のほうが多いがそういう比較はまた別物。どちらの編集もきっといい作品であることには違いないと思う。また忘れかけた頃に別ヴァージョンの作品を観ようと思う。きっとそのときはまた感動をくれる作品であると信じている。というよりこの映画に感動できるような人生を送りたい。

『イルマーレ』

2007年04月08日 10時20分14秒 | 映画レビュー
原題 THE LAKE HOUSE
製作年度:2006年
上映時間:98分
監督:アレハンドロ・アグレスティ
出演:キアヌ・リーヴス 、サンドラ・ブロック 、ショーレ・アグダシュルー 、クリストファー・プラマー 、ディラン・ウォルシュ 、エボン・モス=バクラック
オススメ度:★★★★☆

ストーリー:
静かな湖の岸辺に建つガラス張りの一軒家。ここに住む女医のケイトはシカゴの病院に着任することになり、愛着のあるこの家から引っ越すことに。彼女は次の住人に自分宛の手紙の転送を頼もうと、郵便受けにメッセージを残した。一方、建築家のアレックスは子ども時代の懐かしい家族の思い出が詰まった湖の家を買い取り、そこへ引っ越してきた。彼はそこで郵便受けに奇妙な手紙を発見する。それは、ケイトが残していったあの手紙だった。しかし、この家は長いこと空き家になっていたはず。不思議に思い、アレックスはケイト宛に返信を送る。やがて2人は、ケイトが2006年、アレックスが2004年の時代にいることを知るのだったが…。



コメント:
あまり感情を表に出さず、どんな状況であっても常に冷静に対応しあうアレックスとケイト。そんな大人の恋愛を思わす純愛ラブストーリーだ。いうまでもないがこの映画のキーアイテムは2004年と2006年を結ぶ不思議な郵便箱である。まず「こんなのあり得ない!」と言いつつも、それを文通だけの道具として真面目に使っている二人に感動を覚える。僕がそんな不思議な郵便箱を見つけたらもっと別のものに使うことに違いないだろう…ってそんなことは今はどうでもいいな(笑)とにかくこの郵便箱は2年という時間差をもっているところがとてもリアルでおもしろい設定だ。

過去に同じような設定で『オーロラの彼方へ』という映画があった。この映画は、現在の自分と30年前の父親が無線機を使って繋がるというファンタジードラマである。こちらも未来と過去をうまく利用して展開する物語がとてもおもしろい。これらの映画を一言で語ってしまうと、「何か特別な状況下で繋がった人間には目に見えない特別な感情が芽生える」ということだ。それは誰の人生の中でも必ず一度はある出来事だと思う。まさに運命の出会いというやつだろう。

本作のような郵便箱はあり得ないが、やっていることはただの文通であって特別なことをやっているわけではない。この映画で伝えたいことそれは、恋愛は目に見えているものが重要ではなく心の奥に眠る気持ちを一番大切にするべきだということなのだろう。シンプルなことだがそれが一番難しいということを本作では気付かせてくれる。諦めてしまう恋がどんなに辛いものかということも…。

主演のキアヌ・リーヴスとサンドラ・ブロックは『スピード』以来の再共演。実際の絡みは少なかったもののなかなかお似合いのカップルでいい雰囲気を醸し出している。また本作で気付いたのだが、サンドラ・ブロックは心の感情を表現するのがとてもうまい女優だ。恋に悩む大人の女性をやらせるととても自然でリアルに感じることができる。それを発掘できただけでも観てよかったと思える作品であった。

『ディセント』

2007年04月06日 00時52分28秒 | 映画レビュー
原題:THE DESCENT
製作年度:2005年
上映時間:99分
監督:ニール・マーシャル
出演:シャウナ・マクドナルド 、ナタリー・メンドーサ 、アレックス・リード 、サスキア・マルダー 、マイアンナ・バリング 、ノラ=ジェーン・ヌーン
オススメ度:★★★☆☆

ストーリー:
冒険好きのサラは、一年前の交通事故で愛する夫と娘を失ったショックからいまだ立ち直れずにいた。そんな彼女を励まそうと、友人たちが冒険旅行に誘う。リーダーのジュノが企画したのはアメリカのアパラチア山脈奥地の地下洞窟探検。参加したのはサラとジュノを含め女性ばかりの6人。ロープを伝って穴の中へと降りていく一行。最初は順調だったが、突然の崩落事故で出口をふさがれてしまう。さらに悪いことに、功名心にはやるジュノは皆に内緒で前人未踏の洞窟を選んでいたのだった。地図もなく、捜索隊も期待できないことを知った彼女たちは、別の出口を見つけるため迷路の中を進んでいくのだったが…。



コメント:
いや~久しぶりに”痛い”映画を観た。恐いというよりは完全に”痛い”描写の方が多い。しかも全く予想していなかった展開だったので激疲れ。上映時間99分となっているけど絶対それ以上長く感じること間違いなしの作品だ。

最初から”痛い”を連発してしまったが、一応ジャンルはホラーなのでもちろん恐い要素も盛り込まれている。本来ホラー映画といえば得たいの知れないやつらが出てきて人々を殺しまくるというのが基本。本作でも『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラムの様なモンスターがうじゃうじゃ出てきてそれはそれで恐い。しかしこの映画は違った。実はその恐怖の核となる存在…それは登場する”女6人”である。途中から出現するそのゴラムの様なモンスターはあくまで女6人の本性を引き出すためのきっかけに過ぎない。そのモンスターを血だらけになりながらも怒りに任せて殺しまくる女性たちの姿は想像を絶するものだ。

で、映画はそのまま意味のわからないうちに終わってしまうのだがそこで初めて気付く。肝心のストーリーが完結していないことに。普通の映画なら最後は洞窟から脱出してハッピーエンドといくはずなのだがそんな希望すらない。
実は主人公の女性は冒頭に交通事故で夫と娘を亡くしている。これだけ最初からその事故死を印象強く見せているのだから、どこかで彼らの存在が絡んでくると予想していたにも関わらず、そんなエピソードは最後まで全くなし。こんなちょっと意味のわからない展開のせいで、一体この映画で何を描きたかったのかわからなくなってしまった。僕が勝手な解釈をするとしたら、この世で一番恐いのは”理性を失った女”ということになるのだが…本当にそれでいいのか?若干不本意なラストだったので残念で仕方がない。

しかし総合的に観ればそこまで批判するほどの作品ではない。むしろホラーとしてはなかなか出来のいい作品だといえる。この映画の楽しみ方としては、前半は洞窟の暗闇を生かした演出やサバイバル的な要素を楽しむといいだろう。そして後半から突如ホラーと化す本作は、あなたにとって未だかつてない”理性を失った女性の本性”を恐怖映像と共に体験させてくれることになる。

『16ブロック』

2007年04月05日 00時53分02秒 | 映画レビュー
原題:16 BLOCKS
製作年度:2006年
上映時間:101分
監督:リチャード・ドナー
出演:ブルース・ウィリス 、モス・デフ 、デヴィッド・モース 、ジェナ・スターン 、ケイシー・サンダー 、シルク・コザート
オススメ度:★★★★☆

ストーリー:
NY市警のジャック・モーズリー刑事は、かつて捜査中の事故で足を負傷、今では酒浸りの冴えない日々を送っていた。夜勤明けのある日、彼は上司から証人エディ・バンカーを16ブロック先の裁判所まで護送してほしいと頼まれる。15分もあれば終わる仕事と説得され渋々引き受けたジャック。ところが、車で移送する途中、エディが何者かに襲われる。間一髪でエディを助け出したジャックは、バーに身を潜め応援を要請する。しかし、そこに現れた同僚刑事フランクの口からは、意外な事実が告げられるのだった…。



コメント:
「最も不運な刑事」の「最も過酷な任務」
運の悪い男をやらせれば右に出るものはいないブルース・ウィリス。”不運”というのが彼の代名詞のように使われているが、そもそも『ダイ・ハード』という大ヒットシリーズに出演したことでそういうイメージがついてしまったのも仕方ないことだろう。当の本人からすればそう呼ばれることがとても”幸運”なことに違いないのだが。

それにしても本作でもブルース・ウィリスがいい味を出している。最初から最後まで常に酔っ払いで顔面蒼白、違和感のある鬘(それはいっちゃだめ)にボテッと出たお腹、それに過去の怪我からか足を引きずっていてどう見ても頼りない中年の刑事を演じている。だがやるときはやってくれるのがこのおっさんなのだ。正義感に火のついた彼の姿からは刑事としての誇りが漲っている。こうして正義に目覚めた男は後先考えず最後まで突っ走っていく。ブルース・ウィリスにこういった開き直った役を演じさせれば誰にも劣ることはないだろう。もうそれを観れるだけで満足のいく映画だ。

正直、観る前はアクション映画だと思っていたのだが、なんだか結構人間味のある内容で素直に感動してしまった。いろいろな形の友情を一度に見る事のできるし、人間として大事なことを思い出させてくれる作品だ。共演者のモス・デフとデヴィッド・モースもいい味を出していて個人的には結構好き。モス・デフの声は生理的に受け付けないがそれでも嫌いになれないキャラなのだ。

普段の生活の中で何かの”一線”を越えることができなくて困ってる人。そういう人にはぜひ観てもらいたい。主人公のジャック・モーズリーが越える”一線”を見れば、きっとあなたも勇気をもらえるはずだ。

『ウルトラヴァイオレット』

2007年04月04日 00時07分27秒 | 映画レビュー
製作年度:2006年
上映時間:87分
監督:カート・ウィマー
出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ 、キャメロン・ブライト 、ニック・チンランド 、ウィリアム・フィクトナー
オススメ度:★☆☆☆☆

ストーリー:
21 世紀末、新種のウィルスが蔓延、感染した人間は超人的な知能と運動能力を身につけるが、“ファージ”と呼ばれた彼らは感染後わずか12年で命を落とす運命にあった。ファージの能力を恐れた人間たちは、彼らの根絶を企て、政府によるファージ掃討作戦が開始される。追い詰められたファージは地下組織を結成、人間政府との激しい抗争を繰り広げる。やがて政府はファージ絶滅の切り札となる最終兵器の開発に成功する。ファージ側はその情報をつかむと、最終兵器強奪のため、最強の殺し屋ヴァイオレットを送り込む。かつて、感染した夫と子どもを政府に殺され復讐に燃えるヴァイオレットは、兵器の入ったケースを難なく奪い去る。しかしその直後、彼女は最終兵器がわずか9歳の少年であることを知るのだった。



コメント:
全く期待はしてなかったもののそれでも全く受け入れることのできなかった作品である。良かったところといえば、あのミラ・ジョヴォヴィッチの見事に割れた腹筋だけだろう。オープニングを観たところアメコミの映画化って感じがしたのだがどうやらそうではないらしい。1980年に公開されたジーナ・ローランズ主演作『グロリア』をコミックブック・アクションアドベンチャーとして甦らせたいというカート・ウィマー監督の情熱からスタートさせたものらしい。しかし結果的にその情熱すら感じることのできない仕上がりの作品だといえよう。

とにかく何から何まで雑な部分が多すぎる。まずストーリーだがこれは本当にわからなかった。87分というかなり短い上映時間にも関わらず、ほとんどがアクションシーンで使用されておりセリフがとても少ないのだ。前もって予備知識を蓄えておかないとちょっと理解しづらい内容だろう。そしてこの映画でほとんどの時間を費やしているアクションシーンも、現代のCG技術を使用した割にはお粗末な結果となっている。特に違和感があったのが、バイクでビルの壁を滑走するシーン。どう観ても背景と人物が合成しきれていない。もしわざとこういうシーンにしたのであれば申し訳ないが、とても見れたもんではない。

以前鑑賞した『イーオン・フラックス』も同じだが、近未来アクションというのはネタ的にも映像的にも限界がきているように思える。未来の世界を作るときに、建物はシンプルな構造にして、乗り物をちょっとおもしろいものにしただけで製作者側が満足している。本作ではそれでは物足りなかったらしく、意味もなく髪や服の色を変えて遊んでいるのだ。はっきり言ってそんなのはどうでも良かったりする。やはり一番大事なのは誰でもわかるストーリー展開とわくわくするような映像表現なのだ。

この先それらを満たした近未来アクションが出てくることはあるのだろうか…

『恋愛適齢期』

2007年04月03日 01時09分57秒 | 映画レビュー
製作年度:2003年
上映時間:128分
監督:ナンシー・マイヤーズ
出演:ジャック・ニコルソン 、ダイアン・キートン 、キアヌ・リーヴス 、フランシス・マクドーマンド 、アマンダ・ピート 、ジョン・ファヴロー
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
ハリーは未だに30歳以下の女性としか付き合ったことがないと豪語する63歳の独身プレイボーイ。ある時、彼は若い女性マリンと海辺に建つ彼女の母親の別荘で甘い週末を過ごしていた。だが、そこへマリンの母エリカもやって来る。エリカは人気劇作家でバツイチの54歳。自分よりも年上の男と付き合う娘に面食らいながらも、当人同士の問題と口出ししないことに。そんな時、突然ハリーが心臓発作で倒れてしまう。大事には至らなかったものの、しばらくは安静にする必要があるとのこと。エリカは仕方なくハリーの健康が戻るまで看病することにしたのだが…。



コメント:
昨日は『ホリデイ』で感動させられた。そしてその感動が冷めやらぬうちに今日は『恋愛適齢期』を鑑賞。そう、二日連続でナンシー・マイヤーズの作品を堪能させてもらったのだ。そしてこれを観終わったあと完全に気付かされた。ナンシー・マイヤーズは間違いなく恋愛映画の天才だということを。

2本の作品を観てまず凄いと思ったのは、最初は先が読めないほど複雑なシチュエーションにも関わらず、最後はとても自然な流れで話をうまく収めているというところだ。しかも本作では熟年恋愛という少々難易度の高い設定。物語の入り方やキャラの設定がとても複雑な関係なだけに、最後まで誰と誰がくっつくのかわからない展開になっている。
この年の差を感じさせない若々しい恋愛を演じてくれるたのが、ジャック・ニコルソンとダイアン・キートンの二人だ。そしてその二人の魅力を存分に引き出してくれたのがナンシー・マイヤーズ。もうこの人の演出に関してはパーフェクトとしかいいようがない!主演の二人がとても若々しくそして生き生きしており、素敵な男女を演じることに成功しているのだ。

しかし熟年恋愛をただ描くだけではおもしろくない。そこに何が必要かといえば”ユーモア”とそれなりの”知性”だ。ナンシー・マイヤーズはそれもちゃんと理解している監督である。例えば、セックスの直前に血圧を測るシーン、老眼だということをアピールするシーン、ニコルソンが階段を息切れしながら上るシーンなどの”ユーモア”的要素。これらは別に挿入しなくても物語に差し支えのないシーンだが、観ている者を安心させる要素になっている。そういった気配りがより一層物語をリアルに感じさせてくれるのだろう。そしてセリフの全てに”知性”を感じることができる。まあ”知性”というよりは”駆け引き”といった方が正しいのだが、チャットのシーンなどではその駆け引きがうまく表現されている。恋愛っていくら歳をとっても結局そういったことの繰り返しなんだということを感じさせてくれるシーンの連続だ。

またキアヌ・リーヴスをサブキャラとして扱ってるところが憎い。あの大スターがこうも薄く見えてしまうのが不思議でたまらない。それだけ他の俳優を魅力的にみせてくれる映画なのだろう。

これから観る人には、ぜひ見事に表現されたナンシー・マイヤーズの世界に溶け込んで頂きたい。

『ホリデイ』

2007年04月01日 17時45分01秒 | 映画レビュー
製作年度:2006年
上映時間:135分
監督:ナンシー・マイヤーズ
出演:キャメロン・ディアス 、ケイト・ウィンスレット 、ジュード・ロウ 、ジャック・ブラック 、イーライ・ウォラック 、エドワード・バーンズ
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
ロンドンの新聞社に勤めるアイリスは、未だに忘れられずにいた元恋人の婚約発表を目の前で見せられ動揺する。一方、ロサンジェルスで映画の予告編製作会社を経営するアマンダは、相手の浮気が原因で同棲中の恋人とケンカ別れしてしまう。そんな傷心の2人は、インターネットを介して出会い、“ホーム・エクスチェンジ”することに。それは、お互いの家を交換し、相手の家具や車を自由に使えるという休暇の過ごし方。こうして、まったく違う環境で2週間のクリスマス休暇を送ることになったアイリスとアマンダ。やがて、アイリスはアマンダの仕事仲間マイルズと、一方のアマンダはアイリスの兄グラハムとそれぞれ出会い、そして恋に落ちるのだが…。



コメント:
とにかく俳優をうまく起用した映画だなと思う。
ロンドンを舞台にキャメロン・ディアスとジュード・ロウのストレートな恋愛を。そしてL.A.ではケイト・ウィンスレットとジャック・ブラックの少しスパイスを効かせた恋愛を。どちらもきれいに収まった内容で、特に違和感を感じることもなく入りやすい展開でとても心温まるラブストーリーに仕上がっている。
それにしてもキャメロン・ディアスとケイト・ウィンスレットの可愛いこと。恋に悩む役柄とはいえ、二人とも明るくて見ているだけで元気が出てくるとても魅力的な女性だ。キャメロンはこの上ないほどの笑顔を見せてくれてとにかくかわいい。笑顔だけは誰にも負けない存在だ。ケイトは感情の変化を演じるのがうまい。今まで様々なジャンルの映画に出演し幅の広い演技を経験してきたことを存分に発揮している。
個人的にジュード・ロウは『クローサー』のときのちょっと情けない役のせいで恋愛映画は無理だろうと思っていたのだが、今作で一気に高感度が戻ってきた。なんとなくエロかっこいい感じの役をやらせると勝るものは他にいないことを実証している。
ジャック・ブラックに関してはやっぱりコメディアンだね。まあ恋愛には笑いも大事な要素なので、彼の演技にはとても魅力を感じた。特にビデオショップでのユニークな映画紹介はおもしろかった。彼にうってつけの役であったといえよう。ちなみにこのシーンでダスティン・ホフマンが出てくるのも映画ファンとしてはうれしいおまけだ。
おそらくこの映画を観たら出演者のほとんどを好きになることは間違いないだろう。

あと使用されえいる音楽がいい。ほとんどが有名なクリスマスソングだけど、映画の内容とピッタリでとても気分が載せられる。最高の組み合わせだと感じた。

本作で監督・脚本・製作のナンシー・メイヤーズは恋愛ものに関しては一流の存在だ。実は彼女の手がけた作品をほとんど観たことがないのだが、本作を観てぜひ過去の作品を観てみようという気になった。今後も彼女が関わる作品には期待したいと思う。

残念なのは、この映画がクリスマスシーズンに公開されなかったこと。映画の内容がクリスマスなので同じ時期に観ると更に良い作品にみえること間違いなし。もしレンタルまで待とうと思っている人は、ぜひクリスマスに恋人と一緒に観ることをオススメする。