シネブログ

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『ニュー・シネマ・パラダイス』

2007年04月10日 01時05分00秒 | 映画レビュー
原題:NUOVO CINEMA PARADISO/CINEMA PARADISO
別題:ニュー・シネマ・パラダイス 完全オリジナル版
製作年度:1989年
上映時間:175分
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:フィリップ・ノワレ 、ジャック・ペラン 、サルヴァトーレ・カシオ 、マルコ・レオナルディ 、アニェーゼ・ナーノ 、プペラ・マッジオ
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
シチリアの小さな村にある映画館パラダイス座。そこで青春時代を過ごした映画監督サルヴァトーレが、当時、慕っていた映写技師アルフレードの訃報を聞き、故郷に帰ってくる。そして、少年時代、青年時代の思い出に浸っていたサルヴァトーレが受け取ったアルフレードの形見には、映画への愛とアルフレードの想いがぎっしり詰まっていた……。



コメント:
ひとつの人生を完全に描き切った最高の感動巨編。子供の頃から映画を愛する主人公トトが村の唯一の映画技師で人生の師でもあるアルフレードや家族、そして村の人々を通じて成長する姿が描かれている。僕にとってこの作品は、昔から名作だということで認識している作品ではあったが、少々古い映画というイメージが強く今まで避けてきた作品であった。そして今日、ついにこの『ニュー・シネマ・パラダイス』という名作を観た記念すべき日となったのだ(ちなみに初公開版は未見)。

感想をひとことで言うとしたら”すばらしい”という言葉しか見つからない。

175分という上映時間だが全く無駄に感じることなく最後まで感動の渦に巻き込まれてしまった。トトの少年期、青年期、そして中年期という過程がとても丁寧に描かれており、数え切れないほどの様々な”愛”を見事に表現している作品だ。こんなすばらしい映画を今まで放置していたことを後悔してしまったほど。とにかく観終わった今は、この壮大な人間ドラマに深く感銘を受けてしまっている。

この映画で僕が好きな点はなんといっても脚本だ。映画の舞台となっているシチリアの小さな村にポツリと建つ小さなパラダイス座。村人の唯一の娯楽がそこで上映される映画で、トトもその観客のひとり。母親にはいつも反対されているが、そんなことで子供の好奇心がなくなるわけがない。映画をいつも楽しんでいるトトを観るとこっちまでうれしくなってしまう。本作では場面場面で16本もの映画が挿入されており、映画ファンなら必ずうれしくシーンの連続だろう。この映画を観た一人ひとりがこのパラダイス座の観客になってしまうに違いない。

この映画で賛否がわかれる部分は”アルフレードとの親友としての愛”もしくわ”エレナとの真実の愛”そのどちらに重点を置いて観るかにより、思いやりや憎しみが天秤のように揺れ動くことになる。アルフレードがトトとエレナに下した決断は見方によっては決して許せることではない。愛し合う二人を二度と会えないように仕向け、トトには自分の夢を追いかけるように強制しているからだ。しかしそれも一概には言えない。アルフレードは生涯この村で生きてきたがトトにはこんな小さな村だけに留まって欲しくないと願っている。世界は広くそして人生は長い。トトには映画を愛する者であると共に、自分の夢を叶えて欲しいと願ったのだろう。

結果的にトトは愛を諦め自分の夢を叶えることになる。それが正しい選択であったかどうかは誰にもわからない。実際トトは最後の最後までエレナとの過去を捨てられずにいるし納得のいかない部分があったのは確か。しかしこの映画にはそんな後悔の念を吹っ飛ばすくらいのラストが待っている。アルフレードが形見として残した、昔検閲でカットされたキスシーンのフィルムを繋ぎ合わせて作った最高のプレゼント。このシーンを見た瞬間僕の全身には鳥肌が立った。そしてそれまでのシーンが僕の頭の中でフラッシュバックのように駆け巡る。この映像を見ながらだんだん笑みが溢れてくるトトの顔を見ると感動せずにはいられない。最高のラストだ。

もうこの映画の感動は話して伝わるものではない。とにかくたくさんの人に観て欲しい。そして映画を好きになって欲しい。きっとかけがいのないものを感じるはずだ。

僕は初公開版を観る前にこちらの作品を観てしまったが、どうやらいろんな人のレビューを見る限りでは全く別物の作品に仕上がっているらしい。初公開版のほうが良かったという人の割合のほうが多いがそういう比較はまた別物。どちらの編集もきっといい作品であることには違いないと思う。また忘れかけた頃に別ヴァージョンの作品を観ようと思う。きっとそのときはまた感動をくれる作品であると信じている。というよりこの映画に感動できるような人生を送りたい。