シネブログ

このブログは映画に関する記事を書いています☆

『ザ・フライ』

2007年07月29日 12時30分01秒 | 映画レビュー
原題:THE FLY
製作年度:1986年
上映時間:97分
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:ジェフ・ゴールドブラム 、ジーナ・デイヴィス 、ジョン・ゲッツ 、ジョイ・ブーシェル 、レス・カールソン 、ジョージ・チュヴァロ
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
テレポーテーション(物質転送)の研究をしている科学者セス・ブランドルは、無機物による転送実験に成功した。有機物の転送には問題があったが、実験に使った肉を食べた恋人ヴェロニカの感想をヒントに研究を進めて成功する。ある晩、セスはヴェロニカと喧嘩をし、酔った勢いで自らの体を実験台に転送を行ってしまう。とりあえずは成功を収めたものの、その後徐々にセスの身体や行動に異変が出てくる。何と人体実験を行った際、転送ポッドの中に1匹のハエがまぎれ込んでおり、転送を制御しているコンピュータが遺伝子レベルでセスとハエとを融合させてしまっていたのだ。



コメント:
本作が20年以上前に製作された映画だということに驚きだ。僕がまだ幼いときに初めて鑑賞したのだが、あまりに完成度が高いせいで、とてつもない衝撃を受けたことを未だ覚えている。今観てもその衝撃は健在だった。

なんといってもすごいのがストーリーだ。科学者(ブランドル)自ら行った物質転送実験の際、一匹の蝿が紛れ込んだため、主人公と蝿が遺伝子レベルで融合してしまうという、恐怖と悲劇を描いた物語である。この融合が『スパイダーマン』のようにただ超人化するだけであれば、全く持っておめでたい話だと言えるだろう。だがこの映画はそんな甘っちょろい終わり方はしない。遺伝子レベルで融合したという結論から、人間でも蝿でもない、全く新しい生物へと進化する流れがとてもリアルに表現されているのだ。

この進化の過程は、現代でも十分通用するほど完成度の高いVFXで、本作の一番の注目するべき点であるといえる。次第に変化していくブランドル博士の身体…爪が剥げ、髪が抜け、皮膚が荒れ汁が出る……最初のうちはまだ序の口。変化が進むに連れ、耳が取れるは、歯が全て抜けて蝿の特性でもある胃液を放出するなど、見ていて無残なシーンの連続である。とっておきは天井を歩き回るという特質まで…。これらの映像は見ていてとてもおぞましく次第に恐怖へと変化していくのだ。

この変化を見守るのが、本作のヒロインでブランドルを愛してしまった女性記者ベロニカである。例え彼が異質へ変化しようと、最後まで愛し続ける一途な姿に心を打たれてしまう。彼女には何も成す術がない…ただ変化を見守るだけ…。更に追い討ちをかけるように、自分の体内にブランドルの子供を妊娠したことも発覚。不安と悲しみの絶望に立たされた心情がとても切なくリアルに描かれているのだ。

本作で主演を演じたジェフ・ゴールドブラム。近年では『ジュラシック・パーク』や『インデペンデンス・デイ』など、どちらかと言うと研究者タイプの役がダントツに多い。やはりこの流れも本作があってのことだろう。得意げに話すあの口調と仕草が研究者の役にピッタリである。意外と筋肉質であることにも驚いた(あの鉄棒で回転するシーンは自分で演じたのか気になるところ)。

SF/ホラーとして未だ引けをとらない本作。かなりグロテスクではあるが、脚本、映像は秀逸された一本である。まだ未見の人にはぜひ鑑賞して頂きたい作品だ。

『ナチョ・リブレ 覆面の神様』

2007年07月28日 03時23分14秒 | 映画レビュー
原題:NACHO LIBRE
製作年度:2006年
上映時間:92分
監督:ジャレッド・ヘス
出演:ジャック・ブラック 、エクトル・ヒメネス 、アナ・デ・ラ・レゲラ 、リチャード・モントーヤ 、ピーター・ストーメア 、セサール・ゴンサレス
オススメ度:★★★★☆

ストーリー:
幼くして両親を亡くし、修道院で孤児として育てられたナチョ。大人となった今はその修道院で料理番として孤児たちの面倒を見る日々。しかし、お金のない修道院では子どもたちに満足な食事を与えることもできない。そんなある日、街でルチャ・リブレのスター、ラムセスの豪華な暮らしぶりを目にしたナチョは、自分もレスラーになってお金を稼ぎ、子どもたちにおいしい食事をあげようと決意する。ところが、ルチャ・リブレは修道院の老僧やナチョが憧れるシスター・エンカルナシオンから忌み嫌われていた。そこで彼は、修道院には内緒で試合への出場を決め、ひょんなことから知り合った謎のヤセ男を相棒に、奇妙なトレーニングを開始するのだが…。



コメント:
アフロに丸いお腹、そしてダサいマントを羽織った我らがヒーロー”ナチョ・リブレ”。このキャラクターはまさにジャック・ブラック打ってつけの役だと言えよう。はっきり言って本作は映画というよりもコントに近い。かなりジャック・ブラックの自己満が入ってると思うのだが、このなんとも憎めないナチョを目の前にしては楽しまずにはいられない。爆笑とまではいかないが、最後までじみ~に笑えて過ごせる映画でなので気楽に挑みましょう。

プロレスのシーンなんかは若干スベッてる感はあるものの、とりあえず独特なキャラ設定のおかげで助かっている感じだ。”ナチョ”はもちろんのこと、彼とタッグを組む”ヤセ”の存在も大きい。アンガールズの山根の顔をもっと汚くした感じの” ヤセ”を演じたエクトル・ヒメネス。映画初出演ということもあってか、素人感たっぷりだが、彼の演技なかなかおもしろいかもしれない。ナチョを惹き立てる役としては最高のタッグだったといえる。また本作で一人だけ天使のような輝きを放つアナ・デ・ラ・レゲラ。彼女の美しさと言ったらタメ息ものだ。個人的に好きなタイプの女優さんが出演していたので、正直それだけで満足(笑)

鑑賞中、あらすじなんか結構どうでもいいと思っていたのだが、実話を基に作られているということにちょっぴり感動。孤児のために宗派を破ってまでお金を稼ごうとする行動は素敵ではないか。確かにちょっと道は外れているのかもしれないが、何より救いたいという気持ちが大事。見た目よりハートが大事だということ、そういう感動もじみ~に伝わってくる映画であった。

あと全体的に音楽もいい。エスニック・サウンドで彩られた心地よい音楽が作品の質を高めてくれている。ほんわか~とした本作、気が向いたらぜひお気楽にご覧あれ。

『時をかける少女』

2007年07月22日 00時22分05秒 | 映画レビュー
製作年度:2006年
上映時間:100分
監督:細田守
出演:仲里依紗 、石田卓也 、板倉光隆 、原沙知絵 、谷村美月 、垣内彩未
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
明るく元気な高校2年生、紺野真琴は、優等生の功介とちょっと不良な千昭と3人でいつもつるんで野球ばかりして楽しい毎日を送っていた。そんなある日の放課後、真琴は理科準備室で、突然現れた人影に驚いて転倒してしまう。その後、修復士をしている叔母・芳山和子のもとへ自転車で向かった真琴は、ブレーキの故障で踏切事故に遭ってしまう。死んだと思った瞬間、真琴はその数秒手前で意識を取り戻す。その話を和子にすると、和子は意味ありげに、それは“タイムリープ”といって年頃の女の子にはよくあることだと、冗談とも本気ともつかない説明をするのだった。最初は半信半疑だったが、いつしか使い方を覚えて些細な問題でも簡単にタイムリープで解決してしまい、すっかり調子に乗る真琴。そんなある日、真琴は千昭から突然の告白を受ける。3人の友だち関係がいつまでも続くと思い込んでいた彼女は、動揺のあまり、タイムリープで告白そのものをなかったことにしてしまうのだが…。



コメント:
『ゲド戦記』の直後に観たせいなのか?
このおもしろさ…たまらく爽快だ!!

とりわけ”タイムなんちゃら”をテーマにした作品は大好きな僕だ。本作の流れは、あの名作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』にどことなく似ている。自分の未来と過去を行き来し、全ての流れを理想の形に戻そうとする主人公という共通点。過去を自分の理想に変えることが他人にどれほど大きな影響を及ぼすかを、主人公真琴の青春時代を通じて爽やか且つ切なさを交えて描いている。

自転車事故をきっかけにタイムリープの力に気付く真琴。いつでもその力を使えると知った真琴は、日常の些細な不満やストレス解消などのため、むやみやたらに能力を乱用する。

序盤はとにかく真琴のタイムリープの使い方に笑わされる。たかがプリンのために使ったり、ときには恋から逃げるために使う。17歳の少女の心理がわかりやすく描かれており、素直に笑える展開になっている。

だが、その短絡的な時間操作がやがて自分の親友たちにも及び、取り返しのつかない展開へ発展していく様子はとてもリアルである。真琴が罪悪感や絶望の淵に立たされたその瞬間からラストに掛けて、張り巡らされた伏線が徐々に解れていく流れはとにかく爽快だ。

本作の魅力と言えば、最小限に留められたキャラクタ設定と無駄のない会話や場面ひとつひとつである。それら全てが重要な役割を果たしていることが、ストーリーを惹き立てる一番の要因になっていると言える。上映時間100分という一見短く感じる時間の中、内容がしっかり詰めこまれた本作は、観客をすばらしい時間軸の旅を体験させてくれるに違いないだろう。

”タイムリープ”という在り来たりなテーマを使っている割にはとても新鮮さを感じる作品である。それは、アニメ化したことによるテンポの良さもあるし、主人公が17歳という青春時代真っ只中を生きていることが一番心に響くポイントだったように思う。

観た人がどんな青春時代を送ってきたかにより、感じ方はそれぞれ変わってくる作品であろう。だが、あの時代にしか感じられない甘酸っぱさの残る心情は、全ての人にきっと伝わる気がする。

人生という時をかけた今だからこそ、観て価値のある作品だと思う。

『ゲド戦記』

2007年07月16日 21時31分56秒 | 映画レビュー
原題:TALES FROM EARTHSEA
製作年度:2006年
上映時間:115分
監督:宮崎吾朗
声の出演:岡田准一 、手嶌葵 、菅原文太 、田中裕子 、香川照之 、風吹ジュン
オススメ度:★☆☆☆☆

ストーリー:
多島海世界“アースシー”では、西海域の果てに棲む竜が、突如、人間の住む東海域に現われ共食いを始めた。それに呼応して、世界ではさまざまな異変が起こり始める。世界の均衡が崩れつつあるのだった。偉大な魔法使い、大賢人ゲドは、災いの源を探る旅に出る。やがて彼は、心に闇を持つ少年、エンラッドの王子アレンと出会う。影におびえるアレンを伴い、旅を続けるゲドは、ホート・タウンの街はずれにある幼なじみテナーの家に身を寄せる。そこには親に捨てられた少女テルーも住んでいた。彼女は、自暴自棄になっているアレンを激しく嫌悪する…。



コメント:
2006年夏の2大アニメと言えば、本作『ゲド戦記』と『時をかける少女』だろう。前評判ではジブリ作品の新作ということで『ゲド戦記』に多くの期待が寄せられていたのだが、蓋を開けてみると興行的にも作品の完成度としても大失敗。逆に上映館数も圧倒的に少なかった『時をかける少女』が大成功を収めたため、皮肉にもジブリの継承者として期待された宮崎吾朗の評判はガタ落ちに終わったと言わざるを得ない。実際ここのレビューでも多くの人が酷評を書き綴っている。

結果的に天と地の差が出たこの2大アニメを、たまたま観る機会があったので一気に鑑賞してみた。

僕はジブリ作品はほぼ全作観ていてどれも大好きだ。個人的なジブリの良いところといえば、独特の世界観、不思議なキャラクター、そして心に響く強いメッセージである。それらの基盤があるからこそ、老若男女問わず楽しめる作品として多くの人から愛されているのだと思う。ジブリがこれまでに築いてきた物は計り知れず大きいため、今回携わったスタッフはさぞかし大きなプレッシャーの下で製作したことだろう。

そういった背景もあってか、本作は力の入りすぎて空回りしてしまった作品になり、ジブリ作品としての完成度には達していなかったと言える。

本作の感想を一言でいうと「普通過ぎる」である。アニメとしての質は決して悪くはないし全く楽しめないわけではない。だが、ジブリという大きな看板を背負っている割にはあまりに普通なのである。父に認められたいという気持ちのあまり、返ってジブリっぽさだけが残る中途半端な作品になってしまい、オリジナリティの感じられない作品に仕上がっていた。結果、宮崎駿の息子としてデビューしたことが裏目に出てしまい世のジブリファンをがっかりさせてしまったのだ。

鑑賞したあとに知ったのだが、『ゲド戦記』には原作があるらしい。しかしそれを読んでから鑑賞した人からすれば、全く原作を無視した作品になっており完全に自己マンの世界になっているということだ。いや、それは原作を読んでいなくても同じことが言える。

ゲドが旅をする本当の目的や、世界の均衡について、また真の名前の意味など、本作の重要なキーワードについての説明が全くと言っていいほど省かれている。結局最終的にはアレンとテルーの恋物語のような感じで終わってしまっているのだ。な~んかひねりが無さ過ぎというか詰めが甘いというか…とにかく感動の欠片すらないストーリーにガッカリせずにはいられない。

この前観た『ブレイブ ストーリー』と何ら変わらない本作。ジブリファンが観ればそりゃ怒るのも当然な気がする。今後のジブリがどうなるのかとても不安にさせられる内容であった。

『デート・ウィズ・ドリュー』

2007年07月14日 07時47分19秒 | 映画レビュー
原題:MY DATE WITH DREW
製作年度:2004年
上映時間:90分
監督:ブライアン・ハーズリンガー 、ジョン・ガン 、ブレット・ウィン
出演:ブライアン・ハーズリンガー 、ドリュー・バリモア 、エリック・ロバーツ 、コリー・フェルドマン 、ケリー・デヴィッド 、ジョン・オーガスト
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
6歳の時に「E.T.」を観て以来ドリュー・バリモアに心奪われてしまった27歳の青年ブライアン。仕事もなく恋人もおらず、人生に行き詰まりを感じていた彼は、ある日、クイズ番組で賞金1100ドルを獲得する。クイズの最後の答えが“ドリュー・バリモア”だったことから、勝手に運命を感じてしまうブライアン。彼は賞金の1100ドルを元手に、長年の夢だったドリューとのデートを実現させるため、30日後には返却しなければならない高級カメラを手に、壮大な冒険の旅に出るのだった。



コメント:
本作を観るに当たって懸念していたことがある。素人が手がけた作品だけに、”やらせ”的な演出はないか?単なる勢いで終わっていないか?この2点だ。金儲けだけを意識した作品だったら観る価値のない作品だと思っていた。だがそんな心配は全く必要なかったようだ。単なるドキュメンタリーで片付けられない本作、とにかくおもしろい作品に仕上がっている。

ドリュー・バリモアにあこがれる普通の男ブライアン・ハーズリンガが、ゲーム番組で獲得した賞金1100ドルを手にドリュー・バリモアとのデートを実現させるまでの軌跡をフィルムに収める。

まずこの企画を思いついたきっかけが何ともお茶目。ゲーム番組での最後の答えがたまたま“ドリュー・バリモア”だったことから勝手に運命を感じて、この無謀な挑戦が始まったのだ。”無職”で”全身多毛”でパッと見、何の魅力も感じないこの男が、あのスーパースターのドリューにデートを交渉しようとするくらいだから、余程ドリューのことが好きだったに違いない。いくら昔からのファンだったと言えども、彼のように後先考えず行動できるチャレンジャーはなかなかいないと思う。この行動力だけでもすばらしい。

また彼の良い所は、感情表現が豊かなところだ。ドリューに一歩近づくと素直に笑い、遠くなると自然と落ち込む。そんな純粋な彼の人間性を見ていると、次第に応援したくなる自分がいるのだ。30日間という期限の中で自分を追い込み夢に向かって頑張る姿にはきっと感動させられるはず。

で、最後は結局どうなったかというと……それは敢えてナイショにしとく(笑)
でもきっと観る人の期待を裏切らない結末になっているに違いない。そしてこのブライアン・ハーズリンガとドリュー・バリモアという二人の人間を好きになるだろう。


 叶えられない夢はない…
  どんなに無謀な夢でも
   叶うと信じることが一番大切である

  努力すれば必ず叶うもの…それが夢なのだ


本作を観終わったあと、自然に微笑むことができる。
そして自分の”夢”に向かって「がんばろ~~!!」って気にさせられる。
冴えない男が叶えたひとつの夢物語。
今日もまた人生の教訓を教わった気がする。

『モンスター・ハウス』

2007年07月12日 00時47分12秒 | 映画レビュー
原題:MONSTER HOUSE
製作年度:2006年
上映時間:90分
監督:ギル・キーナン
出演:ミッチェル・ムッソ 、サム・ラーナー 、スペンサー・ロック 、スティーヴ・ブシェミ 、マギー・ギレンホール 、ジェイソン・リー
オススメ度:★★☆☆☆

ストーリー:
12 歳の少年DJの家の向かいには、怪しげな古い家が建っていた。そこに一人で住むネバークラッカーは、近づく子どもたちをいつも大変な剣幕で怒り追い払う。ところがハロウィン前日、ネバークラッカーは心臓発作で倒れ、その家は無人に。その家の不気味な気配に怯えるDJは、親友のチャウダーに助けを求める。やがて、チャウダーがその家のチャイムを鳴らすと、なんと家が口を開けて彼らに襲いかかってきた。辛うじて逃げた2人だったが、翌日、今度は知らずに近づいた少女ジェニーが襲われそうになり、2人に助けられる。3人は警察に通報するが、大人たちはまるで相手にしてくれない。そこで彼らは、町を守るため、自分たちだけでその家を退治しようと作戦を立てるのだが…。



コメント:
最近のアニメーション作品といえば、子供も大人も無邪気に楽しめるようなものが多い。本作にもそんなことを期待して深く考えずに鑑賞したのだが、意外にもシリアスな内容が描かれていることに驚いた。

少年たちが力を合わせ、何でも飲み込んでしまう“モンスター・ハウス”に立ち向かうアドベンチャーアニメ…といういかにも子供が観て喜びそうな名目ではあるが、その“モンスター・ハウス”の過去には、サーカス団に動物として飼われていた女性の話や、その女性の死が原因で“モンスター・ハウス”の誕生に繋がったなど、笑って流せる内容ではなくなる展開に、途中から顔が引きつっていく自分がいた。まあ内容はそれぞれの捉え方次第で変わってくるのだろうが、個人的には本当に笑えなかった…。

また登場人物も、癖のあるキャラが多く、道徳的にあまりよろしくない行動(万引き・夜遊び・ゲームetc)を取るシーンが多く目に付いたのであまりいい気はしなかった。増してや感情移入なんてもってのほかだ。まあそれらも意図的に設定されたものだろうが、人によっては全く受け付けない内容であると言える。アニメーション映画としてはどこかバランスの崩れた作品である。

この映画の製作総指揮にスティーヴン・スピルバーグとロバート・ゼメキスの名前があるのもちょっぴりショックだ。もしこれを子供向けとして作ったとしたなら考え物である。ある程度物事の判断ができる子供に見せるのならいいのだが、これから小さなお子様と一緒に観ようと言う大人の方がいるならちょっと考え直した方がいいかもしれない。

まあ本作の唯一の楽しみ方と言えば、シュールに展開するストーリーを大人が笑い飛ばし「ありえねぇ~」と言いながら適当に鑑賞することに限る。やっぱアニメーションは気楽に楽しめる映画がいいなということに改めて気付かされた作品である。

『裏窓』

2007年07月08日 00時07分39秒 | 映画レビュー
原題:REAR WINDOW
製作年度:1954年
上映時間:113分
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ジェームズ・スチュワート 、グレイス・ケリー 、レイモンド・バー 、セルマ・リッター 、ウェンデル・コーリイ
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
カメラマンのジェフ(J・スチュワート)は足を骨折し、ニューヨークはグリニッチ・ヴィレッジのアパートで療養中。身動きの取れない彼にとって退屈しのぎの楽しみは、窓から見える中庭と向いのアパートの住人たちを眺める事だけ。だが、その中で、セールスマンの夫(R・バー)と激しい口論をしていた病床の妻の姿が見えなくなった事に気づいた。セールスマンの様子を窺う内に、ジェフはその男が女房を殺したのではないかと推測、恋人のリザ(G・ケリー)と看護人ステラ(T・リッター)の協力を得て調査を始めるのだが……。



コメント:
本作はのぞき団長のジェフを始め恋人のリザと看護人ステラによる「裏窓のぞき探偵団」の活躍を描いた作品である(笑)人間の”のぞきたい”という欲望をコミカルに、そしてスリリングに描いた傑作だ。

それにしてもこの大胆な設定には驚いた。裏窓から見える隣人の全てがひとつのセットで、その隣人の部屋を覗き見のようになめ回すカメラワークがすばらしい。まさに観客をジェフと同じ覗き魔に仕立て上げたまま、ストーリーが進行していくのである。人間は皆”のぞきたい”という欲望を持っているもの。ヒッチコックはその人間の心理を巧く利用して、見事な名作を世に残したと言えるだろう。

また人物設定も本作の見ものだ。仕事で足を骨折し、ニューヨークはグリニッチ・ヴィレッジのアパートで療養中のジェフ。そしてその脇には最初はのぞきを反対しつつも、殺人だと聞くと”野次馬根性”丸出しになるリザとステラ。
また隣人には、いつも作曲に苦悩しているポピュラー音楽の作曲家、なぜかいつもテラスで寝ている犬好きの中年夫婦、いつも違う男を家に連れてくるバレリーナの卵、耳の遠い女性彫刻家、病床の妻とそれを看病している大男、いつもブラインドを閉めている新婚らしきカップル、オールド・ミスの女性・・・。それぞれの生活パターンをのぞく映像は、なんだか見てはいけないものを見てしまった感覚に陥り、ドキドキ感を超えた罪の意識をも感じさせられるほどのリアルなシーンになっているのだ。

中盤からは、ジェフが殺人らしき現場を目撃したことで素人探偵団による証拠の調査が展開される。リズやステラの勢いのある調査には感心させられるものの、あまりに勝手な行動が目立ち、ついには殺人犯に調査がばれてしまう。この犯人にばれたときの視線、そしてアパートまで忍び寄る足音。ラストで一気に恐怖の展開を見せ付けるところがいかにもヒッチコックらしい演出である。ジェフによるカメラのフラッシュ攻撃はあまりに無駄な抵抗に過ぎず、一歩ずつ襲ってくる犯人の様子は、本作の一番の見せ場になっている。

近年、現実でもおぞましい事件が多発しているだけに本作で描かれる犯罪はリアルに感じる部分も多々あった。やはり人間には知らない方がいい事実もあるし、知ることによって誰かの役に立てることもあるのだということを思い知った。

内容としてはあまりいいものではないが、”のぞき”というなんだか妙に欲望を満たしてくれる作品であった。ヒッチコックのアイディアと才能を堪能することのできるので一度は観て損はない作品だと言えるだろう。

『レザボア・ドッグス/仁義なき男たち』

2007年07月07日 00時49分17秒 | 映画レビュー
原題:RESERVOIR DOGS
別題:レザボア・ドッグス/仁義なき男たち
製作年度:1991年
上映時間:100分
監督:クエンティン・タランティーノ
出演:ハーヴェイ・カイテル 、ティム・ロス 、マイケル・マドセン 、クリストファー・ペン 、スティーヴ・ブシェミ 、ローレンス・ティアニー
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
強盗のために集められた、お互いに顔を知らない人間6人がコードネームとして「色」を使ってお互いに名前を呼び合い、完璧に計画を実行に移し宝石強盗を行う。が、警察にこの宝石強盗が露見されてしまい、Mr.ホワイトと重傷を負ったMr.オレンジがアジトに逃げ帰る。そこにMr.ピンクがアジトに到着し、「この中に裏切り者がいる」と言い始めるが…



コメント:
やけに濁点の多いこのタイトル"Reservoir Dogs"の意味。直訳すると「掃き溜めの犬たち」。つまり本タイトルの意味するものは、登場するMr.ホワイト、Mr.オレンジ、Mr.ブロンド、Mr.ピンク、Mr.ブルー、Mr.ブラウンら6匹の”イケテル”犬たちによる、あの倉庫(掃き溜め)で起こる壮絶な争いを意味しているのだ…。

やはり本作もタランティーノらしさが強く表れている作品であった。今年に入ってからというもの、『キル・ビル』『キル・ビル Vol.2』『パルプ・フィクション』『ホステル』と、タランティーノ関連作品を続々と観てきたが、この『レザボアドッグス』が僕にとっては一番おもしろかった作品といえる。どうやらタランティーノ作品は過去に製作された映画ほど、勢いがありシンプルかつカッコいい作品だということが言えそうだ。

とはいえタランティーノ作品はかなり癖が強いので、性的に受け付けない人が多いのもよくわかる(手加減なしのグロいシーンもあるし…)。だが僕のようにこの癖にはまってしまうと、なんだかよくわからない病み付きのようなおもしろさを体感できるジャンル、それがタランティーノ作品なのだ。

本作の一番の魅力と言えば、キャラクター設定にあるだろう。見た目はスーツでビシッと決めてカッコいい奴等…と思いきや、やってること喋ってることは意外にもオトボケなことばかり。しかもコードネームに「色」を使ってるのも笑える。特にMr.ピンク…そりゃブシェミも気に入らないって怒るのも無理ないわ(笑)オープニングのレストランでの会話は特に印象的。それぞれのキャラの特徴をうまく引き出しているシーンである。それにしてもキャストが豪華。どの俳優も大好きなので、彼らの個性派バトルを見れるだけでも本作の価値はあるといえるだろう。

そしてタランティーノの監督としての巧さ(俳優としては…)は、セリフ回しと時間軸を利用したカット割にある。何気ない会話やシーンを使って徐々に物語りに引き込むセンスが半端じゃない。全ての要素がラストへ繋がる快感は、彼の映画で体験するのが一番いいだろう。もうとにかくあのラストのシーンは”気持ちいい”の一言!単純に楽しませてくれるに違いない。

個人的にタランティーノ作品の中では本作が一番おもしろかったといえる。まだタランティーノの作品に手を出せないでいる人は本作から観た方がいいだろう。彼の監督としての才能がビンビン伝わってくる作品だから。観終わったあとに、悪党だけど嫌いになれない6匹の犬たちに魅了されている自分がいるはずだ。