シネブログ

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『ブラインドネス』

2008年11月24日 00時17分15秒 | 映画レビュー
原題: BLINDNESS
製作年度: 2008年
別題:-
製作国・地域: 日本/ブラジル/カナダ 上映時間: 121分
監督:フェルナンド・メイレレス
製作:
ニヴ・フィッチマン
アルドレア・バラタ・ヒベイロ
酒井園子
製作総指揮:
ゲイル・イーガン
サイモン・チャニング・ウィリアムズ
原作:
ジョゼ・サラマーゴ
『白の闇』(日本放送出版協会刊)
脚本:ドン・マッケラー
撮影:セザール・シャローン
プロダクションデザイン:トゥレ・ペヤク
衣装デザイン:レネー・エイプリル
編集:ダニエル・レゼンデ
音楽:マルコ・アントニオ・ギマランイス
出演:
ジュリアン・ムーア 医者の妻
マーク・ラファロ 医者
アリシー・ブラガ サングラスの娘
伊勢谷友介 最初に失明した男
木村佳乃 最初に失明した男の妻
ドン・マッケラー 泥棒
モーリー・チェイキン 会計士
ミッチェル・ナイ 少年
ダニー・グローヴァー 黒い眼帯の老人
ガエル・ガルシア・ベルナル バーテンダー/第三病棟の王
オススメ度:★★★★☆

ストーリー:
ある日、車を運転していた日本人の男が突然視力を失い、目の前が真っ白になる事態に見舞われる。しかし、彼を診た医者によれば、眼球に異常はなく原因は不明だった。その後、同様の患者が各地で続出、混乱が広がっていく。感染症の疑いが濃厚となり、政府は緊急隔離政策を発動し、発症者を片っ端からかつて精神病院だった隔離病棟へと強制収容していく。最初の患者を診た医者もやはり失明し、隔離病棟送りとなるが、その際、医者の妻は自分も失明したフリをして夫に付き添うのだった。彼女だけは、なぜか失明を免れていたのだ。こうしてただ一人、目が見えていながら隔離病棟内に入り込んだ医者の妻は、やがて想像を絶する惨状を目の当たりにするのだが…。

コメント:
思ったよりもなかなかストレートに描かれた作品だった。

もちろんこれはフィクションだし、突然目が見えなくなるという設定はあまりに唐突で感情移入は難しいかもしれない。だが、これは現実に起こってもそうおかしくない話であり、こんなとき人類はどうするのか!?という、ひとつのシミュレーション的な作品として見れば、なかなか重く圧し掛かる題材であると思うのだ。

この映画を観て一番心に残るシーンといえば、人間の欲望といった部分だろう。突然失明してしまうという現象が起こったとき、最初は何とかして見えるように頑張ろうと考えるが、見えるようになりたいという欲望が消えたとき、人間は食料を何とか確保したいという欲望が強くなる。そしてその食料さえもままならなくなったとき、人間(男)は性欲という欲望に走ってしまうのだ。

この事例は、本作で隔離病棟に監禁された数十人の生活の中で生まれたほんの一例に過ぎない。だが、これが本当に起こったとしたら今の人間であれば同じ過ちを犯してしまう動物であるのではなかろうか。人種、貧困、格差などの世界的な問題が現実的に起こっているが、人間は目が見えようが見えまいが、たとえどんな状況に陥ってもそれらの問題を抱え続け、常に争い続ける存在なのだということを掲示している。

だがその反面、人間は過ちをすぐに見直し争いを避け、お互いに力を合わせて問題に立ち向かえる存在であるということも示唆している。何が正しくて何が間違っているのか?それは冷静に考えれば必ずわかることなのだ。

だが本作では突然目が見えなくなるという”咄嗟(とっさ)”の出来事を描いている。人間は考える時間があれば解決に勤しめる動物であるが、”咄嗟(とっさ)”の出来事には正しい道を切り開けない動物であるということを本作では赤裸々に忠告しているのかもしれない。

この映画をリアルに受け止めることなんて到底不可能に近いことだろう。もし現実に同じことが起こったら、おそらく人間は同じ過ちを犯してしまう気がするのだ。それはあまりに恐怖で救いようがない事態だと思う。
自分ならどうするか?どうやって生き延びるか?

そんなことを考えても仕方がない問題で、増してや神様とか宗教とか考えるだけ無駄な気がする。こういう絶望的なときだからこそ、人間は希望をもって協力して生きていくべき存在なのだということを本作では伝えようとしているのではなかろうか。

それすら考えるだけ無駄かもしれないが、
少なくとも僕はそう信じていたい。

『1408号室』

2008年11月23日 03時17分19秒 | 映画レビュー
原題: 1408
製作年度: 2007年
別題:-
製作国・地域: アメリカ 上映時間: 104分
監督:ミカエル・ハフストローム
製作:ロレンツォ・ディボナヴェンチュラ
製作総指揮:
ボブ・ワインスタイン
ハーヴェイ・ワインスタイン
リチャード・サパースタイン
ジェイク・マイヤーズ
原作:
スティーヴン・キング
『一四〇八号室』(新潮社刊『幸運の25セント硬貨』所収)
脚本:
マット・グリーンバーグ
スコット・アレクサンダー
ラリー・カラゼウスキー
撮影:ブノワ・ドゥローム
プロダクションデザイン:アンドリュー・ロウズ
衣装デザイン:ナタリー・ウォード
編集:ピーター・ボイル
音楽:ガブリエル・ヤーレ
出演:
ジョン・キューザック マイク・エンズリン
サミュエル・L・ジャクソン オリン支配人
メアリー・マコーマック
トニー・シャルーブ
ジャスミン・ジェシカ・アンソニー
オススメ度:★★☆☆☆

ストーリー:
超常現象を一切信じないマイク・エンズリンは、幽霊や怪奇現象が噂されるスポットを訪ね歩いては、その体験を文章にまとめるオカルト作家。ある日、そんな彼のもとに“1408号室には入るな”と書かれた謎めいたポストカードが届く。絵柄はニューヨークにあるドルフィン・ホテルのものだった。興味をそそられたエンズリンだったが、ホテル側は1408号室の宿泊に異常な拒絶反応を示す。支配人はエンズリンに、1408号室の宿泊客で1時間以上もった者がいないこと、その犠牲者は56人にものぼるという驚愕の事実を明かして、宿泊を思い留まるよう説得する。しかしそれを聞きますます興味をかき立てられたエンズリンは、支配人の再三の忠告を無視して、ついに1408号室へと足を踏み入れるのだったが…。

コメント:
「謎が何も呼ばない」とはこういうことを言うのだろう。

1408という数字にどんな意味が含まれていたのか?
1408号室で死んだ人物の共通点とは?そして理由は?
1408号室で起こる超常現象の意味とは?

超常現象だけが勝手に一人歩きしただけで、何も解決しないまま終わってしまうSK小説の駄作映画である。まあ普段から好き嫌いのはっきり別れるSK原作作品としては予想通りの結果であったと言える。正直、僕のように幽霊や怪奇現象を全く信じないものからすれば、何の恐怖も残らず、そして秘密も謎もないまま、ただ単にアホな小説家が忠告を聞かぬまま興味本位でホテルの一室に身を投げてしまう話なのだ。

タイトルにもなっている”1408”とはいったいなんだったのだろうか?

おそらくこれを考えるのは時間の無駄なのだろう。
だけどやっぱりはっきりさせて欲しい。

足して”13”ってことで、死んだ人はみんな13日生まれの人?
『13日の金曜日』が大好きな人?それとも大嫌いな人?
単なる恐いもの知らずのバカ?

数字だけで考えだすとあの『ナンバー23』と同じ感覚に陥ってしまう。
でも本作はこじつけでも何でもない。ただタイトルに付いているだけ。
ただ生きて帰れない部屋が1408号室ってだけ。
その数字の意味も謎も現象も何も解決してくれない。

こうやって考えさせることが怪奇現象の始まり?
鏡に写ったものを信じる?それとも自分の目?夢?
向かいのビルには何が見える?自分?他人?
絵は何のために飾るの?見るため?そもそも本当に絵?
サミュエル・L・ジャクソンの存在って?

あ~~これは悪夢だ!怪奇現象だ~!!

こんな時間までくだらんこと考えさせやがって~~!!!
もう寝る!!

悪夢を見ませんように…

『バンテージ・ポイント』

2008年11月18日 22時11分09秒 | 映画レビュー
原題: VANTAGE POINT
製作年度: 2008年
別題:-
製作国・地域: アメリカ 上映時間: 90分
監督:ピート・トラヴィス
製作:ニール・H・モリッツ
製作総指揮:
カラム・グリーン
タニア・ランドー
リンウッド・スピンクス
脚本:バリー・L・レヴィ
撮影:アミール・モクリ
プロダクションデザイン:ブリジット・ブロシュ
衣装デザイン:ルカ・モスカ
編集:スチュアート・ベアード
音楽:アトリ・オーヴァーソン
出演:
デニス・クエイド トーマス・バーンズ
マシュー・フォックス ケント・テイラー
フォレスト・ウィッテカー ハワード
サイード・タグマウイ スワレス
エドゥアルド・ノリエガ エンリケ
エドガー・ラミレス ハビエル
アイェレット・ゾラー ベロニカ
シガーニー・ウィーヴァー レックス
ウィリアム・ハート アシュトン大統領
ゾーイ・サルダナ
ブルース・マッギル
ジェームズ・レグロス
リチャード・T・ジョーンズ
ホルト・マッキャラニー
レオナルド・ナム
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
テロ撲滅の国際サミットが開催されるスペインのサラマンカ。大観衆を集めた広場では、アシュトン米大統領によるスピーチが行なわれようとしていた。だが、演説が始まろうとした矢先、一発の銃声が轟き、大統領が狙撃されてしまう。続いて爆発も発生し、一瞬にして広場が混乱状態に陥る中、シークレット・サービスのトーマスとケントは狙撃犯の捜索に奔走する。そして、市長を護衛していた地元刑事エンリケの証言や、観光客のハワードが収めていたビデオカメラの映像などから、複数の容疑者が浮上するのだが…。

コメント:
冒頭からシガーニー・ウィーヴァーの油の乗った見事な名演技。
本作はここで決まった!!

あの「24」を彷彿させるドンデンドンデンドンデン返しの展開に、90分間という短い時間を無駄なく使い切って最高のリアル映画を作り出している。かなりアイディア勝負の作品だが、これが見事に的中したといった感じだろう。登場人物としては何人くらいいたのだろうか?10人?15人?この登場人物全てにスポットを当て、事件のポイントとなる時点へと巻き戻される。そしてまた別の人物視点から見せられ巻き戻される…そして……。

最初はじれったく進行して行くが、事件の真相が深まるに連れ次第にスピード感が増してくる。ついにラストではハイスピードな車での追走劇が始まる。特にあのスペインの狭い町を猛スピードで走行させるシーンは度肝を抜かれる。車道のすぐ横をたくさんの人がマジで走ってるのに、そんな中をドリフト走行で突っ切る姿は見ていてハラハラもの。撮影中にちょっとでも失敗したらホントたくさんの怪我人が出てしまう状況だったのではないかと心配させるくらいリアルだ。ここ近年の映画の中で一番見応えのある追走シーンだと言っていいだろう。

あとはベテラン俳優の演技に酔いしれよう。
主演のデニス・クエイドは何だか最近ハリソン・フォードにも似てきていい味を出している。オスカー俳優のフォレスト・ウィッテカー&ウィリアム・ハートについてはもはや言うまでもない、さすがだ。そしてシガーニー・ウィーヴァーの冒頭のシーンには完全に引き込まれてしまった。ちょい役だろうがなんだろうが、彼女の存在感は主演級に匹敵する。いや~それにしても何て贅沢なキャストなんだろう。これで失敗させるほうが難しい。

アイディアを見てもキャストを見ても必ず成功するために生まれてきた映画といえるのだ。

『舞妓 Haaaan!!!』

2008年11月13日 23時54分42秒 | 映画レビュー
原題:-
製作年度: 2007年
別題:-
製作国・地域: 日本 上映時間: 120分
監督:水田伸生
製作:
島谷能成
細野義朗
西垣慎一郎
平井文宏
大月昇
長坂まき子
若杉正明
プロデューサー:
飯沼伸之
久保理茎
エグゼクティブプロデューサー:奥田誠治
製作総指揮:三浦姫
協力プロデューサー:赤羽根敏男
脚本:宮藤官九郎
撮影:藤石修
美術:清水剛
衣装デザイン:伊藤佐智子
編集:平澤政吾
音楽:岩代太郎
主題歌:
グループ魂
『お・ま・え ローテンションガール』
柴咲コウ
VFXスーパーバイザー:小田一生
照明:長田達也
装飾:秋田谷宣博
録音:鶴巻仁
助監督:蔵方政俊
監督補:相沢淳
出演:
阿部サダヲ 鬼塚公彦
堤真一 内藤貴一郎
柴咲コウ 大沢富士子(駒富士)
小出早織 駒子
京野ことみ 小梅
酒井若菜 豆福
キムラ緑子 良江
大倉孝二 大下
生瀬勝久 先崎部長
山田孝之 修学旅行生
須賀健太 カメラ小僧
Mr.オクレ 老社員
日村勇紀 カメラ小僧
(バナナマン)
北村一輝 医師
植木等 斉藤老人
(特別出演)
木場勝己 玄太
真矢みき こまつ
吉行和子 さつき
伊東四朗 鈴木大海
オススメ度:★★★☆☆

ストーリー:
鈴屋食品の東京本社に勤務する平凡なサラリーマン、鬼塚公彦。彼は高校時代に修学旅行先の京都で舞妓に出会って以来、熱狂的な舞妓ファンとなり、いつかは “舞妓はんとの野球拳”という究極の夢を抱いていた。まだ“お茶屋”で舞妓と遊んだことがない公彦だったが、念願の京都支社への転勤が決まり、同僚OLの彼女、大沢富士子をあっさりと捨てて京都入り。はじめは“一見さんお断り”の壁に跳ね返されるものの、お茶屋の常連だった社長から“仕事で結果を出せば連れて行ってやる”と言われ、しゃかりきに働き、ついにお茶屋デビューを果たす。そして公彦は、いよいよ念願だった舞妓との野球拳を実現しようとするのだが…。

コメント:
あぶねぇ~あぶねぇ~~(;^_^A アセアセ・・・
あまりのハイテンションさについて行けなくなるなるところだったぜぇ!!
ブリーフ姿で喋り捲る阿倍サダヲが今でも忘れられねぇ(笑)
そしてそれを目の前に真面目に演技する柴咲コウの女優魂…最高だ!

それにしてもストーリーの展開がコロコロ変わるのにはビックリだ。途中から舞妓Hanのことなんか完全に忘れられてしまってるし、野球やったり、ボクシングやったり、ラジバンダリ…もうわけわからん!!

結局本作で何がしたかったのかよくわからんが、とにかく舞妓の世界に飛び込むのはかなり困難であることがよくわかった。本作を観たことによって、自分もいつかはあの世界を堪能してみたいと思ってしまったことは否めない。自己満の世界、欲望の世界、遊びの世界…この“お茶屋”という小さな世界にも様々な人間のドラマがあるのだろう。京都の情緒ある町並みの中で、舞妓を追いかけてみるのもいいかもしれない。

と、まあストーリーはさておき、この真面目な世界をこれだけ崩した形で見せてくれた宮藤官九郎の発想はさすが。そして主演に阿倍サダヲを起用したことで完璧なオリジナリティの世界観を作り上げている。こんなハイテンションな映画は観たことがない。とりあえず阿倍サダヲを見て適当に笑っておけばいい作品なのだ。

それにしてもあれだけブリーフを全快で曝け出す俳優…
初めて見た(笑)

『スウィングガールズ』

2008年11月09日 01時13分50秒 | 映画レビュー
原題: SWING GIRLS
製作年度: 2004年
別題:-
製作国・地域: 日本 上映時間: 105分
監督:矢口史靖
製作:
亀山千広
島谷能成
森隆一
プロデューサー:
関口大輔
堀川慎太郎
エグゼクティブプロデューサー: 桝井省志
企画:
関一由
藤原正道
千野毅彦
脚本:矢口史靖
脚本協力:矢口純子
撮影:柴主高秀
美術:磯田典宏
編集:宮島竜治
音楽:
ミッキー吉野
岸本ひろし
照明:長田達也
録音:郡弘道
助監督:片島章三
出演:
上野樹里 鈴木友子・テナーサックス
貫地谷しほり 斉藤良江・トランペット
本仮屋ユイカ 関口香織・トロンボーン
豊島由佳梨 田中直美・ドラム
平岡祐太 中村拓雄・ピアノ
あすか 久保千佳・アルトサックス
中村知世 岡村恵子・アルトサックス
根本直枝 大津明美・テナーサックス
松田まどか 清水弓子・バリトンサックス
水田芙美子 山本由香・ベース
関根香菜 渡辺弘美・ギター
辰巳奈都子 小林陽子・トロンボーン
中沢なつき 木下美保・トロンボーン
前原絵理 吉田加世・トロンボーン
長嶋美紗 宮崎美郷・トランペット
あべなぎさ 下田玲子・トランペット
金崎睦美 石川理絵・トランペット
竹中直人 小澤忠彦(数学教師)
白石美帆 伊丹弥生(音楽教師)
小日向文世 鈴木泰三(友子の父)
渡辺えり子 鈴木早苗(友子の母)
谷啓 森下(音楽の先生)
金子莉奈 鈴木亜紀(友子の妹)
桜むつ子 鈴木みえ(友子の祖母)
眞島秀和 高志(自動車工場の工員)
三上真史 雄介(自動車工場の工員)
福士誠治 井上(野球部3年)
高橋一生 部長(吹奏楽部の男子生徒)
田中要次 パチンコ店の店長
徳井優 カラオケボックスの店員
木野花 スーパーフロアの主任
大倉孝二 スーパーフロアのチーフ
西田尚美 真澄(音楽教室の生徒)
菅原大吉 音楽ホールの司会者
谷本和優 聡(音楽教室の生徒)
小形雄二 列車の車掌
江口のりこ 楽器店の店員
佐藤二朗 バス運転手
森下能幸 弁当屋
宝井誠明 久保田先生
坂田聡 パチンコ客
岩佐真悠子 千恵(女生徒)
森康子 老婆
林田麻里 公園前の奥さん
武田祐子 テレビのアナウンサー
オススメ度:★★★★☆

ストーリー:
東北地方のとある片田舎の高校。夏休みのある日、13人の落ちこぼれ女子生徒たちは教室で数学の補習を受けていた。その時、補習組の一人、鈴木友子が高校野球予選の応援に行ったブラスバンド部の仕出し弁当が遅れて届いたことに気づき、弁当運びを口実に13人はまんまと補習を抜け出すことに成功する。だが道中、弁当は長い時間炎天下に晒されてしまい、それを口にしたブラスバンドの生徒たちは、次々と腹痛を起こして入院する事態となった。唯一難を逃れた拓雄は、次の試合までに即席のブラスバンドをつくることにするが、集まったのは補習をサボるのが目的の友子たち13人と、ちょっと変わった女子3人だけだった。そこで拓雄は、17人でも演奏可能なビッグバンドジャズをやろうと思いつくのだが…。

コメント:
ずぅ~ずぅ~べぇ~べぇ~喋る女子高生たちがひょんなことからビッグバンドジャズを始める姿がなんとも魅力的。そして特に誰に焦点を当てるわけでもなく、女子高生がひとつになって目標に向かって頑張っていく姿が本作のみどころだ。

それにしてもブラスバンドを始めるきっかけがあまりにもひょんなこと過ぎておもしろい。たまたま夏休みの補習期間中でそれをサボるために、そして自分たちが起こしてしまった食中毒事件をきっかけに、しょうがなく始めてしまうというのだからなんだか新しい展開だ。高校生時代は何でも興味を持ってやりたいと思う最盛期だが、あえてダメダメ女子高生がたまたま見つけた夢に向かって走っていくという展開がうけたように思う。

正直、演奏が上手いとか下手とかいう次元ではなく、何事も楽しんで協力して猛特訓を行なえば、どんなことでもやり遂げることができるのだということを素直に受け止められる青春映画だ。実際、主演の上野樹里をはじめとするメインキャスト5名は担当楽器の経験が全くないという状況でオーディションに受かったらしく、撮影が始まる3ヶ月前から猛特訓を行いそのまま撮影を終え、その後もイベントの生放送ライブなどで人気を集め、ついにはニューヨークで行われた映画「スウィングガールズ」海外初試写会へバンドも同行し、初の海外演奏をやり遂げるまでに至っている。

映画の企画は元々ひょんなことから始まったのかどうかは知らないが、誰もここまで大きなバンドになるとは思っていなかっただろう。それだけこの映画は、人に夢を与え頑張ることの素晴らしさを教えてくれる作品なのだ。作品を観ている間はそこまでインパクトもなく普通のサクセスストーリーとして楽しんだだけだが、次第にひしひしと伝わる元気の源が気持ちのいい後味を残してくれる。

東北の片田舎でズーズー弁を喋り捲る女子高生の姿も新鮮で清々しくなる光景だ。
西の方に住んでる僕からすれば、これだけでも十分観る価値の一本だ。

『レッドクリフ Part I』

2008年11月01日 18時41分42秒 | 映画レビュー
原題: RED CLIFF/赤壁
製作年度: 2008年
別題:-
製作国・地域: アメリカ/中国/日本/台湾/韓国 上映時間: 145分
監督:ジョン・ウー
アクション監督:コリー・ユン
製作:
テレンス・チャン
ジョン・ウー
製作総指揮:
ハン・サンピン
松浦勝人
ウー・ケボ
千葉龍平
チン・ウェン・ハン
キム・ウデク
ユ・ジョンフン
ジョン・ウー
脚本:
ジョン・ウー
カン・チャン
コー・ジェン
シン・ハーユ
撮影:
リュイ・ユエ
チャン・リー
美術:ティム・イップ
衣装デザイン:ティム・イップ
音楽:岩代太郎
主題歌:アラン
出演:
トニー・レオン 周瑜
金城武 孔明
チャン・フォンイー 曹操
チャン・チェン 孫権
ヴィッキー・チャオ 尚香
フー・ジュン 趙雲
中村獅童 甘興
(特別出演)
リン・チーリン 小喬
ユウ・ヨン 劉備
ホウ・ヨン 魯粛
バーサンジャプ 関羽
ザン・ジンシェン 張飛
トン・ダーウェイ 孫叔材
ソン・ジア 驪姫
チャン・サン 黄蓋
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
西暦208年。帝国を支配する曹操は、いよいよ劉備軍、孫権軍の征討に向け80万の大軍を率いて南下を開始した。最初の標的となった劉備軍はわずか2万。撤退が遅れ、曹操軍に追いつかれてしまい全滅の危機に。しかし、関羽と張飛の活躍でどうにか逃げ延びることに成功する。軍師の孔明は、劉備に敵軍である孫権との同盟を進言、自ら孫権のもとへと向かう。しかし、孫権軍では降伏論が大勢を占めており、孔明は若き皇帝孫権の説得に苦心する。そんな時、孔明は孫権軍の重臣・魯粛の導きで、孫権が兄と慕う司令官・周瑜と面会することに。最初は互いに警戒心を抱いていたものの、次第に2人は相手への尊敬と信頼を深めていく。

コメント:
三国志の中で最大の見せ場となる“赤壁の戦い”を全2部作で描く歴史スペクタクル巨編の前編。今回はPart Iということもあって本当に序章の序章に過ぎない状態で締め括られている。

過去に何らかの形で三国志に興味を持った人であれば、とても話に入りやすい構成になっているだろう。ちなみに僕が三国志を知ったのは、ゲームソフトとして発売された「三国無双」をやり始めたときだった。そのため一通り有名なエピソードと登場人物の知識は持っている上での鑑賞だった。

個人的ではあるが、本作に興味を持ったきっかけは三国志が描かれているということよりも、これを映画化する監督があのジョン・ウーであったからだ。ジョン・ウー監督といえば、かつて香港ノワールを作り出した張本人で、代表作といえば間違いなく『男たちの挽歌』といえるだろう。『男たちの挽歌』といえば、義理と人情を題材にして裏切りや復讐、そして終わりなき闘いを悲壮感溢れる演出で手掛けられた作品として有名だ。そんな義理と人情を描くことに長けたジョン・ウー監督がなぜ本作を手掛けることになったのか?

その理由こそ、三国志に登場する数多くの人物に秘められた義理と人情を描きたかったところにあると思うのだ。”知の孔明”、”情の周瑜”、”愛の小喬”など戦を交えて繰り広げられる人間関係を彼ならではの演出で描ききることが目的なのだろう。少なくとも僕は全2部作を、その人間関係に重点をおいて鑑賞してみようと思う。

とはいえ、感情移入するにはいくつかの見所は必要になってくる。それについては全くもって心配することはない。ジョン・ウー監督ならではのアクションセンスが光っており、リアルにそして迫力のある映像で見せてくれている。中でも一番の見所は、曹操軍を陸地で迎え撃つ際の”九官八卦の陣”。本当にこんな作戦があったのだと思うと、もうスゴイの一言しかない。緻密に練られた孔明の策を映像化する大変さが見ていて伝わってくるようだった。またその中で趙雲、関羽、張飛らが”1 対 多”で繰り広げる戦闘の数々も鳥肌ものである。そういえば『男たちの挽歌』シリーズでも、一人で敵を一層してしまうシーンが多々あったなと思い出せられる。まさにジョン・ウー監督のこだわりの詰まった作品だといえるのだ。

そして最後に忘れてはならないのが”白い鳩”。ジョン・ウー監督のシンボルとして毎回使われるものだけあって、これが登場したときにはニヤリとせずにはいられなかった。

と、思った矢先Part Iはここで終了となる。
早い!早すぎる!!本当の戦いはこれからなのに!!!
そのままエンドロール後にはPart Ⅱの予告編が始まり200%の期待感を持ったところで席を立つしかないのであった。さすがにこのやり方はずるいと思ったが、Part Ⅱも十分期待できそうなので許すとしよう。と、いいつつも2009年4月公開までは長いと思わずにはいられない今日この頃である。