シネブログ

このブログは映画に関する記事を書いています☆

『ホステル』

2007年05月31日 01時11分29秒 | 映画レビュー
原題:HOSTEL
製作年度:2005年
上映時間:93分
監督:イーライ・ロス
出演:ジェイ・ヘルナンデス 、デレク・リチャードソン 、エイゾール・グジョンソン 、バルバラ・ネデルヤコーヴァ 、ヤナ・カデラブコーヴァ 、ヤン・ヴラサーク
オススメ度:★★★☆☆

ストーリー:
バックパッカーをしながらヨーロッパ各地を旅行しているアメリカ人大学生パクストンとジョッシュ。道中出会ったアイスランド人オリーも加わり、刺激を求める3人の旅は次第に過激さを増していく。そんな彼らはオランダのアムステルダムに滞在中、アレックスという若者から、スロバキアのブラティスラヴァに男たちの求める快楽をすべて提供する“ホステル”があるという情報を入手。さっそくそこへ向かった3人は、やがてそのホステルにたどり着くと、相部屋のナタリーアらに期待以上のおもてなしで迎えられ、夢心地のひとときを過ごすのだが…。



コメント:
タランティーノを製作総指揮に挙げ、またそれを宣伝文句として掲げている割には中途半端な作品であった。とはいえタランティーノ節は随所に反映されていたのは確かだ。『キル・ビル』に続く片言の日本人の登場や、スロバキア語(?)に吹き替えられた『パルプ・フィクション』のワンシーンを挿入するなどの細かいこだわり。いかにもタランティーノらしい演出がぽつぽつと見られる(笑)

だが肝心の映画としての内容はやはり若干の物足りなさが残る。観客が本作に求めるものといえば、今までに見たことのないようなスプラッター描写だろうが、はっきり言って目を覆いたくなるほどの演出はなかったと言える。直接見せるというよりは想像力を掻きたてられるような見せ方がほとんどであった。

近年は狂ったようにスプラッターものが世に出されている。例えば『ソウ』シリーズ、『ハイテンション』、『悪魔のいけにえ』のリメイク版などが代表的なものだろう。これらの作品では、特殊メイクの技術がアップしたおかげで惜しげもなく残虐描写を見せるものが多くなってきている。本作でも見せているといえば見せているのだが、じらすシーンが多すぎていまいちインパクトに欠けているのだ。もしかしたらこの手の映画を観すぎたせいで、僕の目がスプラッター描写に慣れてしまったというオチなのかもしれない。そんなこと認めたくはないが… たぶんそうなのだろう…。

前半は無駄に長いエロシーンで、後半は中途半端な残虐シーン。そしてこの半端な内容に追い討ちをかけたのが時折出演する片言の日本人女性だ。出演するのはいいが、どうせならちゃんと日本語をしゃべれる人を使って欲しかった。この微妙な言葉遣いが僕の集中力を妨げ一気にクールダウンさせてしまっている。この日本人女性の起用は日本での公開に当たって致命的なミスだと言えよう。

おまけに舞台が東欧だというのも何だか微妙である。拷問場というのはある意味リアルで本当に存在しそうではあるが、スロバキアに存在するという設定は単なるアメリカ視線による当て付けのような気がしてならない。スロバキアに何か歴史的因縁でもあるのだろうか?本作には東欧の国々がいくつか登場するが、それらの国のイメージを悪くするような設定がいくつか目についたので若干気になる点ではある。やはりこれも完全なアメリカ映画?なのかもしれない。

『素晴らしき哉、人生!』

2007年05月29日 02時02分55秒 | 映画レビュー
原題:IT'S A WONDERFUL LIFE
別題:素晴しき哉、人生!
製作年度:1946年
上映時間:130分
監督:フランク・キャプラ
出演:ジェームズ・スチュワート 、ドナ・リード 、ライオネル・バリモア 、ヘンリー・トラヴァース 、トーマス・ミッチェル 、ボーラ・ボンディ
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
主人公のジョージという男は、いつも何処かでツキに見放され、逆境にばかり立ち向かう運命にあった。自分のミスではなく大金を失った彼は、全てに絶望して自殺を図る。ところが、12月の冷たい河に飛び降りようとしたとき、彼より先に一人の男が身を投げて救けてくれと叫んだ。あわてて救けたジョージに、男は、自分は見習い天使だと告げるが……。



コメント:
あぁ、なんてすばらしい映画なんだ。

主人公ジョージはいつも何処かでツキに見放され、逆境にばかり立ち向かう運命にあった。前半はとにかくパッとしないジョージの人生をひたすら見せ付けられ、映画としては退屈なシーンが多く流れも暗い。この映画のどこが素晴らしいんだ?と徐々に疑問を感じていく。だがそんな不満はラスト30分ですっきり解決してくれるのが本作だ。人生の理不尽さに追い詰められたジョージが自殺を図ったそのとき、彼の前に突然天使の見習いが現れ、そしてこう話す…

「8000ドルのために自殺などバカなことだ」
「君は善行をした、君がいなかったら…」

だが人生の破滅を目前にしたジョージにとってはそんな言葉は慰めにもならない。

「いっそ生まれて来なければよかった」

と言い放ってしまう。そして、天使の案内する“もし彼が生きていなかったら”という仮定の世界で、彼は自分の存在理由をかいま見る事になる。まさにこの部分が本作の要で、観るもの全てを感動の渦へと巻き込んでいくのだ。

おそらく誰もが人生の辛さ、理不尽さを体感したことがあるはずだ。そりゃもちろん人生というのは辛いものなのだからしょうがない(僕みたいな若者が言っても説得力がないが…)。だが辛い思いをしながら行ってきた自分の行動が、周囲の人間にどれほどの影響力を与えているのか考えたことがあるだろうか?これを考えると人生のすばらしさは無限大に広がるのではないだろうか?自分の中では些細なことにしか思っていなかった出来事が、当事者にとってはとても重大な出来事であったことを知ったときの喜びはなんとも計り知れないものである。全ての人間は知らぬうちにいろんな人へ影響を与え続けているということを本作では強く訴えているのだ。

本作は完全モノクロなのだが、僕には鮮やかな色がこの映画に見て取れた。観たまんまだと色もなく冴えない映画に思えてしまうのだが、視点を変えて観るととてもすばらしい映画に変わってしまう。人生もこの映画と同じように最初はモノクロだが、視点を変え世界を広げていくことにより”自分色”の人生を見出すことができるのではなかろうか?

”命”を捨てようなんて考えてはいけない。その”命”にどれだけ多くの人生が重なっているのか計り知れないのだから。その重さを考えたとき、きっと自分なりのすばらしき人生が見出せるに違いない。

あぁ、本当にすばらしい映画に出会えてよかった。

『トンマッコルへようこそ』

2007年05月25日 00時02分50秒 | 映画レビュー
原題:WELCOME TO DONGMAKGOL
製作年度:2005年
上映時間:132分
監督:パク・クァンヒョン[監督]
出演:シン・ハギュン 、チョン・ジェヨン 、カン・ヘジョン 、イム・ハリョン 、ソ・ジェギョン 、スティーヴ・テシュラー
オススメ度:★★☆☆☆

ストーリー:
朝鮮戦争が続く1950年代。山の奥深くに、他の土地から隔絶し自給自足の生活を送る不思議な村“トンマッコル”があった。笑顔が絶えず、争いごともない平和なその村に、ある日アメリカ人パイロットのスミスが操縦する飛行機が不時着する。その後、道に迷った韓国軍兵士2人と北朝鮮人民軍の兵士3人もそれぞれ村に姿を現す。村で顔を合わせた両軍兵士たちはすぐさま武器を手に一触即発の状態に。しかし、戦争を知らない村人たちは、そんな彼らを気にする様子もなく、のんびりした日常も変わらない。いつしか兵士たちも打ち解けていき、笑顔を取り戻していくのだったが…。



コメント:
ちょっと待ったぁぁ~~!!
本作が戦争映画だとは知らなかったぞ。。
予告編を観た感じだとファンタジックな感じがしてただけに残念で仕方がない。

トンマッコルという村に連合軍、韓国軍、人民軍の3組の兵士がやって来る。敵意をむきだしで睨み合う彼らだが、戦争を知らない純粋な村人たちに影響されて次第に争うことを忘れていく…。

と、ここまでの展開はすご~~っくよかった。全くの敵同士だった兵士たちが一緒に畑仕事をしたり、イノシシ退治をしたり、ラグビーで遊んだりして絆を深めていく。久石譲のまさにジブリのような穏やかな音楽と共に進んでいくストーリーは人間の忘れかけた心を取り戻してくれるかのようだった。

だが、最後の展開はマズイ…。
村のみんなが打ち解けて楽しんでいる頃、トンマッコルの村にある兵隊が米兵スミスを探しにやってくる。僕はまさかこのシーンで争いが始まるとは思ってもいなかった。きっと不思議な娘ヨイルや純粋な村人たちが何か特別な力でこの場を解決してくれるだろうと…そんな期待を持ったのもつかの間、あっさりと殺し合いを始めてしまう兵士たち。
「なんで~~~っ!!」
と、叫ばずにはいられなかった。これまでの人間関係は一体なんだったのか!?
おまけにその勢いで、爆撃にやってくる部隊と一戦交えようとしているではないか。こうなってはどう転んでも戦争映画への道まっしぐらである。しかも必要以上に流血シーンが多くて『ブラザーフッド』を思い出してしまったくらいのリアルさ。この映画に流血は必要ないだろ!とツッコミをいれたくなるほどのものだ。

この映画は一体何を伝えたいのだろうか?
一時は戦争を忘れた兵士たちが、例え村を守りたいからといって別の敵へ戦争を吹っかけてもいいのだろうか?
他に村を救う手段を思いつかなかったのだろうか?

力に対して力で対抗したら、戦争の繰り返しなのになぜそれがわからないのだろう…。
せっかくタイトルに”トンマッコル”=”子供のように純粋な村”というすばらしいものがついているのに……残念な終わり方だ。。

『もしも昨日が選べたら』

2007年05月24日 00時08分36秒 | 映画レビュー
原題:CLICK
製作年度:2006年
上映時間:107分
監督:フランク・コラチ
出演:アダム・サンドラー 、ケイト・ベッキンセイル 、クリストファー・ウォーケン 、デヴィッド・ハッセルホフ 、ヘンリー・ウィンクラー 、ジュリー・カヴナー
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
建築士のマイケル・ニューマンは、美しい妻ドナと2人のかわいい子どもたちのためにと懸命に働く日々。いつしかそれは、仕事優先で大切な家族を顧みない生活となっていった。そんな時間に追われてばかりのマイケルは、煩わしいリモコン操作に嫌気がさし、どんな電化製品も一台で操れる“万能リモコン”を求めて街に出る。そして、怪しげな従業員モーティから、人生さえも早送りや巻き戻しできる不思議なリモコンを手に入れる。妻との口論を早送りしたり、犬の吠え声を小さくしたりと、人生を思い通りに操作し始めるマイケルだったが…。



コメント:
予想を反してかなりおもしろい映画だった。まもなく結婚する僕にとっては”警告”のようなメッセージの詰まった映画である。仕事をとるか、家族をとるか…世のお父さんが悩まされるのがまさにここなんだなぁと思う今日この頃。

チャチャチャチャン!!
「人生リモコン」
っていいながらいかにもドラえもんが出してくれそうなアイテム。本作はなんといってもこの人生を自由自在に操れるリモコンを使ったところがよかったといえる。だが全て自分の好きなように操作が出来るのではない。余計な機能として過去に早送りした人生は勝手に学習して自動で早送りされてしまうのだ。そんな無駄な機能のおかげで主人公マイケルの人生はボロボロになってしまう。
『一度人生を早送りしてしまったら二度とやり直しは効かない』
このシビアな設定が本作のテーマ”家族愛”をより際立たせている。

あなたがこんなリモコンを手にしたらどうする?
僕だったらマイケルと同じで、嫌なことは全てすっ飛ばして自分の望んでる人生だけを楽しむだろうって、映画を観ながらそんなことを考えていた。だけどストーリーが進んでいくうちに、心のない人生がどんなにつまらないものなのか、そして家族と接しない人生がどんなに寂しいものなのか、次第に人生の重いテーマがずしずしと圧し掛かってきて、とてつもない孤独感に襲われてしまった。

僕が今年結婚を決めたのも自分の家族が欲しいというのが一番の理由で、正直仕事は生活が出来る範囲の給料をもらえればいいと思っている。だが人間はチャンスが訪れるとつい欲が出てしまう動物。人生いつ何が起こるかわからないが、もし誤って人生を早送りしそうになったとき、この映画を思い出して家族の大切さを考えなおせればいいなと思うのだ。僕にとってはいつまでも心に刻み付けておきたい作品のひとつになったといえる。

『鳥』

2007年05月22日 23時40分19秒 | 映画レビュー
原題 THE BIRDS
製作年度:1963年
上映時間:120分
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ティッピー・ヘドレン 、ロッド・テイラー 、スザンヌ・プレシェット 、ジェシカ・タンディ 、ヴェロニカ・カートライト 、ドリーン・ラング
オススメ度:★★★☆☆

ストーリー:
ある日、何の理由もなしに、鳥たちが人間を襲い始めた……。たった一つのシチュエーションをもとにあらゆる恐怖を引き出した、ヒッチコックのサスペンス・ドラマの傑作。一羽のカモメに額を傷つけられる予兆から、群れをなして襲い来るラストまで、恐怖映画のお手本のような演出が素晴らしい。



コメント:
普段何気に目にする”鳥”をここまで恐怖の対象に仕立てたヒッチコックはさすがだ。本作を観て鳥恐怖症になってしまったという話をよく聞くが、まさにそうなっても仕方がないほど鳥を恐怖に感じる作品である。子供が観ると大変なことになるだろう。

まあそれは言い過ぎにしろ、それにしても1967年に製作した映画にしてはよくできている。当時はCGなどあるはずもなく、やっと合成という技術が盛んになり始めたころ。そういう時代ということもあって、鳥の襲撃を撮影するにはかなり苦労したそうだ。だがCGを使ったからといってこれを越えるほどの作品ができるかといわれると、それは無理だと思う。

ヒッチコックの手腕は”鳥”の見せ方に注力されている。例えば、メラニーが学校の前でタバコを吸いながら待っているシーン。彼女の後ろではジャングルジムに鳥が一羽、三羽、十羽、百羽と徐々に増えていく。観客は「まだかまだか」と見ているが次第にジャングルジムは真っ黒に染まる。やっとのことでその状態に気付いたメラニーは恐怖に怯えながら学校に避難。その後一気に襲い掛かる鳥の大群!!このシーンは本当に長いのだが、その時間の取り方とカメラワークがとても巧い。観客をじらせるだけじらしといて、一気に恐怖を爆発させる演出には脱帽した。実際このシーンで使った鳥はほとんどが作り物なのだが、その数が多く見えてしまうのは人間の錯覚のせいだとか。その辺のアイディアもさすがだなぁと思った。

最後の家の中で繰り広げられる”人間”と”鳥”の攻防は恐怖の連続。外から聞こえる鳥の鳴き声がなんともいえない恐怖を醸し出し、目に見えない演出で観客をどん底に。家の外に出れば世界を埋め尽くさんばかりの鳥の大群。襲ってはこないがその待ち伏せるような態度に恐怖を感じる。そして最大の恐怖といえば、襲ってくる理由が何もないということ。理由なしの攻撃こそ最大の恐怖ということを証明している。

普段身近に存在する動物を題材にした作品だけに、なかなかリアルな恐怖を感じる映画であった。
あなたはこの恐怖に耐えられるだろうか?

『大統領の陰謀』

2007年05月21日 01時03分30秒 | 映画レビュー
原題 ALL THE PRESIDENT'S MEN
製作年度:1976年
上映時間:138分
監督:アラン・J・パクラ
出演:ダスティン・ホフマン 、ロバート・レッドフォード 、ジェイソン・ロバーズ 、ジャック・ウォーデン 、ハル・ホルブルック 、ジェーン・アレクサンダー
オススメ度:★★★☆☆

ストーリー:
ウォーターゲート事件の真相を突き止め、ニクソン大統領を失脚にまで到らしめた二人の新聞記者カール・バーンスタインとボブ・ウッドワードの活躍を描いた実話の映画化。



コメント:
” ウォーターゲート事件”といえば1970年代に起きたアメリカの政治スキャンダルで、リチャード・ニクソン大統領の辞任に結びついたということで有名だ事件だ。だが、有名な事件といえど詳細まではなかなか認知してない人の方が多いのが現状だろう。本作はウォーターゲート事件の真相を突き止め、ニクソン大統領を失脚にまで到らしめた二人の新聞記者カール・バーンスタインとボブ・ウッドワードの活躍を描いた実話の映画化である。

ウォーターゲート事件について無知な方には少々難易度の高い作品であろう。僕もその一人だ。

では本作を楽しむための下準備として何が必要か?
それはもちろん”ウォーターゲート事件”に関するキーワードについて知っておくことだ。

”不法侵入”や”ディープ・スロート”などのキーワードを聞いてピンとくる人は今から観ても十分楽しめるといえる。聞いたことがない人はまず本やインターネットで調べることからはじめよう。

また本作では登場人物が多くそれらの人物を下調べしとくこともオススメする。
バーナード・バーカー、バージリオ・ゴンザレス、ユージニオ・マルチネス、ジェームズ・W・マッコード・ジュニア、フランク・スタージス、ハルデマン、アーリックマン、ミッチェル、コルソン、ゴードン・C・ストローン、ロバート・C・マーディアン、ケネス・W・パーキンソンなどなど……以上の人物を調べておくと完璧だろうね(笑)

映画は二人の記者の取材を通じて進んでいくので、実際裏で動いていた人物などは全く描かれていない。あくまで取材していくうちに、会話の中で出てくる名前がほとんどなので事件の真相をあらかじめ知っておく必要がありそうだ。

映画としての見所といえばダスティン・ホフマンとロバート・レッドフォードの記者のなりきり度だ。電話しながらメモを書き留める様子、タイプライターを打つ姿どれをとっても様になっていてかっこいい。とてもリアリティを追求した作品なので、実話の映画化作品としては見所満載といえる。あとどうでもいいが、この頃のロバート・レッドフォードはよく見るとブラッド・ピットに見えるのは僕だけだろうか?

とりあえず”ウォーターゲート事件”を知るためには打ってつけの作品といえる。勉強がてら鑑賞してみるのもいいのではなかろうか。全体を通して地味な映画なので興味がない人には全くオススメできない作品である。

『フラガール』

2007年05月16日 22時08分29秒 | 映画レビュー
製作年度:2006年
上映時間:120分
監督:李相日
出演:松雪泰子 、豊川悦司 、蒼井優 、山崎静代 、池津祥子 、徳永えり
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
昭和40年、福島県いわき市の炭鉱町。時代は石炭から石油へと変わり、閉山が相次ぎ、町は先細りの一途をたどっていた。そこで、起死回生のプロジェクトとして豊富な温泉を利用したレジャー施設“常磐ハワイアンセンター”が計画された。そして、目玉となるフラダンスショーのダンサー募集が地元の少女たちに対して行われた。この町から抜け出すチャンスだと考えた早苗は紀美子を誘って説明会へと向かう。説明会では、セクシーな衣装で踊る姿に、大半の応募者が逃げ出し、残ったのは紀美子と早苗の他には初子と小百合のわずか4人だけだった。そんな中、元SKD(松竹歌劇団)のダンサー平山まどかがフラダンスの教師として東京から招かれる。しかし、とある事情で渋々やって来たまどかは、教える相手がズブの素人と分かり、完全にやる気を失ってしまう…。



コメント:
炭坑の閉山で活気を失った町の再生を期して計画されたレジャー施設“常磐ハワイアンセンター”(現・スパリゾートハワイアンズ)誕生にまつわる感動秘話を映画化したハートフル・ストーリー。

ここのレビューでもかなり評価が高く、また日本アカデミー賞やブルーリボン賞で作品賞、助演女優賞などを獲得している作品であるだけに、まさにその評価に相応しい内容で最後まで観客をフラダンスで魅了してくれる作品だ。

まず一番声を大にして言いたいのが、俳優の演技のすばらしさである。
ダンサーの平山まどかを演じた松雪泰子、フラガールズのリーダー役の蒼井優、そして炭坑で働く人々を演じた豊川悦司や富司純子。それぞれの人物の立場が明確に描かれており、時代に伴う価値観の相違や葛藤が鮮明に見て取ることができる。

福島県いわき市という炭坑の町に突如として呼ばれたのが平山まどかという元SKD(松竹歌劇団)のダンサーだ。彼女は時に、先生として、女として、そして人間としていわきの人々に怒りをぶつける。だがそれは単なる怒りではなく、それぞれの人物に対しての最大の愛情表現なのである。その違いをうまく演技に盛り込んだ松雪泰子は流石だ。

そして本作の”花”ともいえる蒼井優。彼女のダンスにはなぜこんなにも情熱を感じることができるのだろうか?あの笑顔、視線、動き、素人の目からすれば全て完璧と言っても過言ではないだろう。プロダンサーとしてのオーラを身につけ演技の枠を越えたそのダンスは数多くの観客を魅了したといえる。

また忘れてはならないのが炭坑で働いている人々の姿だ。蒼井優の兄役を演じた豊川悦司、母役の富司純子は代々引き継がれた炭坑の仕事を裏切ることができず娘のフラガールズの夢に賛成することができない。だが、その均衡を破ったのがたまたま稽古場で居合わせた母と娘のシーンだ。一言も会話を交わすことなくただ踊り続ける娘とそれを見つめる母。とても重苦しく見えるシーンだが、これをきっかけに母は娘の夢に手助けをしてやることに決める。

娘のダンスを見て大きな力を受け取った母は、少しでも娘の力になるために村中からストーブを集め始める。
「ストーブ貸してくんちぇ、ストーブ貸してくんちぇ」
僕にとってこのシーンが一番心に残っている。それまでは炭坑一筋で頑張ってきた人たちがみんな力を合わせて時代を作ろうとする。そんな心温まるシーンがここに凝縮されていた。
あとフラダンスの振りには全て意味があって手話の要素を含んでいることも初めて知った。

"TO YOU SWEETHEART ALOHA"
  あなた愛しい人よ
  愛を込めて
  アロハ
  愛しています
  体中で心の底から
  笑顔は絶やさないで
  あなたのその唇に
  涙は拭って
  もう一度愛してます

これ、何かいいなと思った。

本作は”フラガール”だけでなく”炭坑”という時代背景にも重点を置いているからこそ輝きを増す作品である。この時代に生きる人々を丁寧に描いたことによりフラガールというテーマがより一層すばらしいものに感じることができるのだ。ただのサクセスストーリーに終わっていないところが本作の一番評価すべき点であるのだろう。

この映画の集大成ともいえるラストのフラダンスには素直に感動してしまった。
とても爽やかな気分になれる120分であった。

『いま、会いにゆきます』

2007年05月12日 01時16分12秒 | 映画レビュー
原題 NULL
製作年度:2004年
上映時間:119分
監督:土井裕泰
出演:竹内結子 、中村獅童 、武井証 、美山加恋 、浅利陽介 、平岡祐太
オススメ度:★★★★☆

ストーリー:
秋穂巧は一年前、妻の澪に先立たれ、以来ひとり息子の佑司と2人でつましくも幸せに暮らしていた。そんな梅雨のある日、逝ったはずの澪が森の中に姿を現わす。だが、彼女は生前の記憶を一切失ってしまっていた。それでも巧と佑司は澪を温かく迎え、3人での生活を再び始めることに。そして、巧は彼女に自分たちの恋の歴史を語るうち、互いの間に“二度目”の恋が芽生え、佑司は“二度目”となる母と息子の交流に心から喜んでいた。こうして、彼らの幸せな暮らしは以前と変わらず永遠に続くと思われたが…。



コメント:
前半…というよりほとんどのシーンが淡々と進行し、かなりテンポの悪い内容に思えるのだが、ラスト20分でその悪い印象を全て吹っ飛ばす展開が待っている。とにかくこのラストに全てを注力したと思える映画であった。

ストーリーは、一年前に亡くなった妻(澪)が突然姿を現わし、残された夫(巧)と息子(佑司)と束の間の奇妙な共同生活を送る切なくも心暖まるラブ・ファンタジーである。

梅雨の季節に起こるお話ということもあり、全編を通してほとんどが雨のシーンでどんより感が募りあまり気持ちのいい映画ではない。また妻が姿を現すのも唐突過ぎるし、その理由や謎は全く明かされないまま淡々と話が進む。主演の竹内結子と中村獅童の演技もその雰囲気に合わしたトーンなので、ちょっと間違えば途中で寝てしまうのがオチかもしれない(実際僕の彼女は横で寝ていたし…zzz)。

だが最後まで観ていてよかったと思わせるのがラストの 20分である。実はそのラストまでの内容は巧と佑司から見た視点で、残りの20分が澪の見ていた視点で描かれているのだ。うまく言葉で言えないのだが、それまでの何気ないシーンの全てが繋がったときなんだかとてつもなくうれしいというか心温まる気持ちになってしまった。とにかくそのラストへの話の持っていきかたがとても巧いと思わせる瞬間なのである。家族というものは見えない絆で繋がっており、たとえそれが現実で終わったように思えても、絆さえ残っていればまた別の形で出会うことができる。その一見違った軌跡が本作の一番の見所なのである。

まさかラストにこんな奇跡が用意されているとは思ってもみなかったのでより感動も大きくなったのだろう。ホント途中までは何も残らない作品だと思っていただけにラストで得たものは大きかった。今となっては心からみんなにオススメできる作品だといえる。ぜひ自分の目でその感動を確かめてほしい。

『死霊のはらわた』

2007年05月10日 01時06分27秒 | 映画レビュー
原題:THE EVIL DEAD
別題:20周年アニバーサリー 死霊のはらわた
製作年度:1983年
上映時間:86分
監督:サム・ライミ
出演:ブルース・キャンベル 、エレン・サンドワイズ 、ベッツィ・ベイカー 、ハル・デルリッチ 、サラ・ヨーク
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
休暇を郊外で過ごそうと別荘を訪れた数人の男女が、そこで見つけた“死者の書”という奇妙な本とテープレコーダーに録音されていた呪文を紐解いたために邪悪な死霊が復活。次々と若者たちを血祭に上げていく。



コメント:
またかなりの秀作に出会ってしまった。
今となっては300億円も掛けて映画を製作するサム・ライミだが、21歳の若さで手掛けたこの『死霊のはらわた』は、かなりの低予算ながらも完璧なB級作品として世に送り出している。スプラッター・ブームを起こしたホラー映画としても知られているだけに、血は飛び散るわ、肉は引きちぎられるわでかなり悲惨な状態。だがこれが観ていてホントおもしろい。とにかくアイディアをふんだんに使っており映画ファンとしては興味のそそるものばかりなのだ。

死霊に取り憑かれた人間の特殊メイクや呻き声、また全編を通して冴え渡ったカメラワークなどホラーに欠かせない技術は全て兼ね備えている。特にラストで死霊が死んでいく(?)シーンは、くどいまでの残酷描写だがついつい画面に見入ってしまう自分がいた。技術的なものが全くわからない僕にとって、まさに圧巻の映像であった。こういったところにサム・ライミの才能が垣間見れるのでぜひ注目して観て欲しい。
序盤にはこれまたサム・ライミ特有のロマンチストな演出も盛り込まれており、ファンにはうれしいコメディセンスも観ることができる。とにかくストーリーには全く無駄がないので最後まで飽きることなく楽しめる作品だといえよう。

また、主演は『スパイダーマン』シリーズでもお馴染みのブルース・キャンベル。サム・ライミとの名コンビはこのときから健在なのだなと思わせてくれるので要チェックだ。

『ブレイブ ストーリー』

2007年05月07日 23時05分02秒 | 映画レビュー
原題 BRAVE STORY
製作年度:2006年
上映時間:111分
監督:千明孝一
出演:松たか子 、大泉洋 、常盤貴子 、ウエンツ瑛士 、今井美樹 、田中好子
オススメ度:★★☆☆☆

ストーリー:
ごく普通の小学5年生ワタル。平凡だった日常はある日突然崩れ去る。家族がバラバラとなってしまった現実を信じられないワタル。そんなとき、転校生ミツルの言葉を思い出す。それは、“幽霊ビルの階段の上に、運命を変える扉がある”というもの。ワタルは家族を取り戻したい一心でその扉の中に飛び込んだ。そこは剣と魔法の不思議世界“幻界(ヴィジョン)”。やがて“おためしの洞窟”に辿り着いたワタルは、体力平均、勇気最低、総合評価35点の判定を下され、“見習い勇者”としてこの冒険の旅を開始するのだったが…。



コメント:
原作は宮部みゆきでとても評価されている作品であることは知っていた。それに予告編などを観た感じ登場人物も底々好みであったし内容も全く嫌いなものではなかった。しかしそれらの期待がそもそも間違いであったことに気付く。

地上波で鑑賞したためどれ程編集でカットされてしまったのか知らないが、とにかくストーリーが雑で展開が早すぎる。まるでRPGのいいトコ撮りを見せられているような感覚だ。特に印象に残るシーンもなければ、最後まで何を言いたいのかメッセージ性も欠けていたように思える。結局、冒険ものを描きたかったのか?それとも家族愛を描きたかったのか?そこがはっきりしないというのが結論である。まったく不完全燃焼な作品であった。

一番の原因は宣伝の仕方にあるのかもしれない。本業で活躍する声優を起用せず、メインキャラには人気のある芸能人を起用して話題性を高めているのには不満が募ってしまう。これではアニメとして成り立っていないように感じてしまうのだ。映画の出来が悪いから声優でカバーしようという魂胆が見え見えな気がしてならない。とても残念な結果だ。

本作は、よく出来た原作を映画化するに当たって、一番やってはいけない悪いお手本のような作品になってしまっているのではないだろうか?いい原作であるならば『ロード・オブ・ザ・リング』や『ハリー・ポッター』シリーズのように何部かに分けて映画化するのが一番効果的だ。そこまで気が回らなかった製作側にも問題があるだろう。

映画化するのであれば、原作ファンのみならず全ての人が理解できる内容に仕上げることが映画人としての最低限の勤めだと思う。普段あまり批判的なレビューを書かない僕だが、久々にオススメできない作品に出会ったため参考までに投稿させてもらうことにした。とにかく今は、いつか本作が全てを満たした作品で復活することだけを願うことにしよう。

『バベル』

2007年05月02日 00時52分43秒 | 映画レビュー
原題:BABEL
製作年度:2006年
上映時間:143分
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演:ブラッド・ピット 、ケイト・ブランシェット 、ガエル・ガルシア・ベルナル 、役所広司 、菊地凛子 、二階堂智
オススメ度:★★★★☆

ストーリー:
モロッコ。険しい山間部を走る一台のバス。そこに乗り合わせた一組のアメリカ人夫妻、リチャードとスーザン。壊れかけた絆を取り戻すため二人だけで旅行にやってきた。ところが、遠くから山羊飼いの少年が放った銃弾が運悪くスーザンの肩を直撃する。血まみれの妻を抱え、医者のいる村へと急ぐリチャード。一方、夫妻がアメリカに残してきた幼い子供たちの面倒をみていたメキシコ人の乳母アメリア。息子の結婚式に出るため帰郷する予定が、夫妻が戻らず途方に暮れる。仕方なく、幼い子供たちも一緒に連れてメキシコへと向かう決断をする。やがて事件を起こしたライフルの所有者として、最近妻が自殺したばかりの東京の会社員、ヤスジローの名前が浮かび上がる。そんな彼の女子高生になる聾唖の娘チエコは、満たされない日々に孤独と絶望を募らせていた…。



コメント:
いろんな方のレビューを読んでいるとなぜか酷評が目立つ。理由は”日本”の描き方に疑問があるというものが多い。確かにその気持ちもわからなくはない。だがタイトルにもなっている『バベル』という言葉の意味をよく考えてみると実に見事に作られた映画であるといえるのではないだろうか?

「旧約聖書 創世記11章」にはこう書かれている。

  遠い昔、言葉は一つだった。
  神に近づこうと
  人間たちは天まで届く塔を建てようとした。
  神は怒り、言われた。
  ”言葉を乱し、世界をバラバラにしよう”
  やがてその街は、バベルと呼ばれた。

まさに本作はこの『バベル』という街を、現代社会に置き換え4つのエピソードにわけて語っているだけなのである。はっきり言って僕もこの『バベル』という意味を知るまでは作品の伝えたいことが全く理解できていなかった。モロッコ、アメリカ、メキシコ、日本で起こるそれぞれの物語は単なるこじ付けであって、監督が観客に見せたいものではない。観客がそれを観て何か感じ取ることでこの映画が成立するのだ。

この映画が伝えたいもの、それは”言葉” の大切さであろう。銃社会が悪いとか、文化の違いが問題だというのは本作では考えなくてもいい。同じ国で身近にいる人間同士が”言葉”を交わさなくなることで、コミュニケーションの欠如、感情のすれ違いなどの問題が発生するということを一番いいたいのだろう。そう考えれば全てのエピソードがうまく繋がるのだ。

モロッコで暮らすアブドゥラの息子アフメッドとユセフ。兄のアフメッドは弟のユセフが姉の裸を覗く行為が許せずにいる。さらにアフメッドを苛立たせるのが、ユセフの射撃の腕前だった。これらの価値観や嫉妬が原因で感情が”言葉”に表れてしまい、理性を忘れた二人は観光バスを射撃するという過ちを犯してしまう。

一方、そのバスに乗っていたアメリカ人のリチャードとスーザン。二人は夫婦としての絆を取り戻すために、関係がぎくしゃくしたまま旅行をしていた。そのときスーザンの体を一発の銃弾が貫き血だらけになって倒れる。近くに病院はなく命の危機にさらされるスーザン。リチャードはどうにかしてスーザンを助けようとするが、現地人やバスの同乗者、大使館の人間に対して自分の”言葉”が通じず怒りと苛立ちで憤慨する。そんな状況下で二人に希望の光を与えたのは、3人目の子供が死んだときのことを”言葉”にした瞬間であった。

自分の息子の結婚式のため、リチャードとスーザンの子供マイクとデビーを引き連れて、甥のサンチャゴと共にメキシコへ向かう乳母のアメリア。結婚式は無事に終わり、アメリカへ帰国する途中、国境での”言葉”のやりとりにより警備隊に不信感を抱かれ、それに逆ギレしたサンチャゴが怒りに任せて強制突破してしまう。

モロッコで使用されたライフルは日本人のヤスジローの物だと判明する。娘には聾唖のチエコがいたが、母親の自殺によるショックから立ち直れずいつも喧嘩する毎日であった。チエコは人と会話をしたいが自分の気持ちを”言葉”に出来ないため、人の温もりを感じることができないでいた。彼女はただ服を脱ぎ捨て裸になった自分を抱きしめて欲しいという欲望しか持つことができないのだ。しかし、その行為には”言葉”で語ることの出来ない思いがしっかり詰まっているのである。

他にもここでは語りつくせないほどの”言葉”は存在する。この”言葉”というキーワードを忘れずに鑑賞すればきっと自分なりの答えを見出せると僕は思う。”言葉”というものはとても不思議なもので、人間の感情全てがその”言葉”に含まれて相手に届いてしまう。言い回しや、声の大きさ、シチュエーションなどにより感じ方は全て異なり、その一瞬で人間の行動を決めてしまうものなのだ。同じ国民、家族だからこそ”言葉”を大切にしていく必要があるということを本作では伝えているのだろう。

『スパイダーマン3』

2007年05月01日 17時56分53秒 | 映画レビュー
原題:SPIDER-MAN 3
製作年度:2007年
上映時間:139分
監督:サム・ライミ
出演:トビー・マグワイア 、キルステン・ダンスト 、ジェームズ・フランコ 、トーマス・ヘイデン・チャーチ 、トファー・グレイス 、ブライス・ダラス・ハワード
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
スパイダーマンはいまやニューヨークの市民から絶大な信頼と賞賛を集めるヒーローとなり、恋人MJへのプロポーズも決意し、順風満帆のピーター・パーカー。ところがMJのほうは出演した舞台が酷評され気分はどん底。そんなある日、謎の黒い液状生命体がスパイダーマンに取り憑き、そのスーツを黒く染め上げる。黒いスパイダーマンの戦闘能力は、なぜかこれまでよりも格段に高まっていた。しかし同時に、ピーターの心にもある変化が生じていた。そんなスパイダーマンの前に現れる3人の敵。ピーターの伯父ベンを殺害した犯人“サンドマン”、死んだ父の復讐に燃え“ニュー・ゴブリン” と化したハリー、そしてピーターへの激しいライバル心から黒い生命体に支配されついには最凶の敵“ヴェノム”となってしまった同僚カメラマンのエディ。三者三様のスーパーパワーを備えた彼らは、自らの内なる悪に苦悩するスパイダーマンに容赦なく襲いかかるのだった。



コメント:
ここ最近のアメコミ映画化作品としては群を抜いて楽しめる最高傑作である。前評判を裏切らない作品なので、前作を受け入れることができた人にとっては最高に楽しめる映画であるはずだ。

僕は本作を観る前まで、敵が多すぎるということでストーリーにまとまりがなくなるのではないかと少し不安を持っていた。だがそんな心配をする必要はなかったようだ。ピーターの伯ベンを殺害した真犯人フリント・マルコが変異した因縁の敵サンドマン。スパイダーマンを父の仇と信じ、ピーターが何よりも闘うことを恐れていた親友ハリーがニュー・ゴブリンとして。そして、ピーターへのライバル心とスパイダーマンへの憎悪を抱くカメラマン、エディ・ブロックが、謎の生命体と合体してヴェノムとなって襲いかかる。この3人の敵がどのようにして絡んでくるのかワクワクさせられるだろう。しかし、これが見事なアクションシーンを生み出し、未だかつてないほどアドレナリンを分泌させてくれるのだ。

その中でも本作の最大の見ものはピーターとハリーの戦いだ。今回は二人の思い違いが原因で、ともにダークサイドに落ちてしまい命を懸けた戦いを強いられることに。序盤からお互い手加減なしの激しいアクションシーンの連続でかなり手に汗握る映像の連続である。彼らの友情に修復の余地はないと思われたが、最後は二人が愛したMJのピンチをきっかけに協力してサンドマンとヴェノムに立ち向かうことになるのだ。このラストの2vs2の戦いが思いのほかよく出来ていて、そのまま感動のラストへと繋がっている。

1、2を観てて一度も気付かなかったのだが、スパイダーマンのスーツ色はアメリカ国旗と同じ色なのである。本作で一瞬国旗の前にスパイダーマンが登場するシーンがあるのだが、そのとき初めてそいうことに気付いた。よく考えてみるとスパイダーマンはアメリカを象徴したようなヒーローである。ここで細かいことは言わないが「大いなる力には、大いなる責任が伴う」という言葉は自国に対しての言葉なのだな思った。

なんだかこの先4も製作されるという話が持ち上がっているが、個人的には本作を最後にした方がいいと思う。これ以上のストーリーとアクションを僕は期待しない。それくらい完璧な仕上がりであったといえるのだ。でもいつかまたこの”クモ”のヒーローを観たいと思うときが自然とくるのであろう。みんなの心の中にはいつも”スパイディ”が存在し続けるはずだから。そのときをまた楽しみにしたいと思う。


余談だが、全作にカメオ出演しているスパイダーマンの生みの親スタン・リーがセリフ付で出演していたので嬉しかった(間違いでなければ街でピーターと会話するおじいちゃん役)。またこちらも全作カメオ出演のブルース・キャンベルもフランス料理店の受付役で登場していた(こちらも毎回いい味出してる)。あとなぜか中盤でピーターがダンディ坂野のネタでもある”Get's!!”のポーズをしているけど、これはダークサイドに落ちたせいだろうか?ま、そんなことはどうでもいいな(笑)