シネブログ

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『あかね空』

2007年10月06日 18時47分59秒 | 映画レビュー
製作年度:2006年
上映時間:120分
監督:浜本正機
出演:内野聖陽 、中谷美紀 、中村梅雀[2代目] 、勝村政信 、泉谷しげる 、角替和枝
オススメ度:★★★★☆

ストーリー:
深川蛤町。京の由緒ある豆腐屋で修行を積み、自分の店を持つため江戸へとやって来た青年・永吉。やがて、深川生まれの元気な娘おふみと出会う。2人はお互いに惹かれ合うものを感じる。そして、おふみの父・源治の計らいで同じ長屋に落ち着いた永吉は、念願だった自分の店“京や”を開く。しかし、江戸の豆腐とは大きさも固さもまるで違う京やの豆腐。案の定、江戸の人々にはなかなか受け入れてもらえなかった。落ち込む永吉を、おふみは持ち前の明るさで励まし続けるのだった。



コメント:
海外旅行の際、たまたま機内で上映されていたのをきっかけに鑑賞した作品である。全く予備知識なしだったため観ようか観るまいか迷っていたが、冒頭で映し出される永代橋があまりに美しく、そのまま惹きつけられるように最後まで鑑賞した。

豆腐職人永吉は豆腐を作るために必要な水を求めて京から江戸に下った。そこで彼は最高の水が湧き出る井戸を発見し、そこの長屋に住む江戸っ子のおふみの協力を得て豆腐店「京や」を開業する。だが、しゃきっと腰のある江戸前木綿豆腐と、柔らかい京風豆腐という違いからなかなか売り上げを伸ばすことができないが…。

本作の題材となるのは、日本の伝統的食材でもある”豆腐”だ。普段からよく口にする食材だがそんなにじっくり眺めるような食材ではないだろう。だがそんなたかが豆腐を、これまでになく美しくそして最高の食材として映し出した本作。これを観れば間違いなく「豆腐が食いてぇ~!」と思わずにはいられないだろう。

最大限の愛情とこだわりが詰め込まれ、冷たい水に沈められた豆腐。
それをすくい上げたときに滴る水の音がとても涼しい。
フワっとした質感を保ったまま手の上で切り分けられ、
お客の桶に添えられたときの美しさと言ったらこの上ないだろう。
まさにこれが日本の伝統的な食材なのだと思わせる情景である。

かなり大袈裟に聞こえるかもしれないが、それくらい豆腐を美しく、そして美味そうに魅せてくれているのが本作だ。波乱万丈に展開する「京や」の運命だが、どんな困難があろうとも豆腐の味と値段は全く変わることなく町の人から愛され続けている。伝統が自分の代から子供の代に受け継がれていく様子をみていると、これからもずっと後世まで守っていかなくてはならないものだということを実感させてくれる。

威勢のいい演技で魅せてくれる内野聖陽と、常に明るく振舞い気丈な女性を演じた中谷美紀のコンビがとてもよく、時代を強く生きた「京や」の重厚なストーリーも楽しむことが出来た。VFX映像によって再現された大江戸全景と伝統の食材”豆腐”を見ながら、日本の美しさを再認識する作品としてはオススメの一本である。