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『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』

2007年04月23日 00時14分48秒 | 映画レビュー
製作年度:2007年
上映時間:142分
監督:松岡錠司
出演:オダギリジョー 、樹木希林 、内田也哉子 、松たか子 、小林薫 、冨浦智嗣
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
1960 年代、オトンに愛想を尽かしたオカンは幼いボクを連れ、小倉から筑豊の実家に戻ると、妹の小料理屋を手伝いながら女手一つでボクを育てた。1970年代、 15歳となったボクは大分の美術高校に入学、オカンを小さな町に残し下宿生活を始めた。1980年代、ボクは美大生となり憧れの東京にやって来るが、仕送りしてくれるオカンに申し訳ないと思いながらも学校へもろくに行かず自堕落な日々を送ってしまう。留年の末どうにか卒業したものの、その後も相変わらずフラフラした生活を送るボクだったが…。



コメント:
ボクは現在25歳。年齢的にも立場的にも登場人物の誰にも当てはまるわけではない。しかしボクはこの映画にとても感情移入することができたのだ。というのも、実はボクはちょうど1ヶ月前におばあちゃんを癌で亡くしたばかりなのである。そのおばあちゃんが妙に樹木希林が演じるオカンとかぶる部分があり、生前だった頃とつい重ね合わせて観ることができた。常に家族のことを心配してくれているところ、周囲を明るくしてくれるキャラ、決して弱音を吐かないところ全てが当てはまっていたのだ。

ボクは原作もドラマも全く未見のまま鑑賞した。映画版も全く観る気はなかったが、相方の誘いに応じて渋々観に行ったというのが正直なところだ。観る前はどうせよくあるお涙頂戴映画だと思っていたし、結末は予告編などですでにわかっていたので、一体どこでどう泣かせる気なんだ?と、全く期待しないままでの鑑賞だった。だがこの映画はそこらへんのお涙頂戴映画とは違うことに気付かされる。物語は至ってシンプルで最後まで淡々と進行する普通の映画。しかしそこには普通ながらも誰もが心温まる物語が存在していたのだ。おそらくほとんどの人が鑑賞中に自然と涙を流してしまう映画であるといえる。

この映画では、どんな家庭に生まれようとも家族というかけがえのないものは決して失うことはなく、一生心のどこかで輝き続けるものだということを教えてくれる。それは不安や苦しみ、怒りや感謝など様々な形で人々の心の中に存在しているものなのだ。
たとえ親が死んでしまっても親子という関係は崩れない。子供の心の中には永遠に消えることのない記憶として残り続けるから。その記憶が生きていくうえでとても大きな力となって支え続けてくれる。

また親子だからといって特別なことはしなくてもいい。
ただ親として子としてお互いに愛することが出来れば、死というのもそんなに悲しいことではない。ラストでオカンが遺した箱を開けた瞬間、この瞬間がこの物語の全てを語ってくれている。別に特別な物語ではない。誰にでも経験したことのある普通の物語、それがこの『東京タワー』なのだ。


それにしてもキャストがすばらしかった!みんな自然な演技で物語りにぐいぐい引き込まれた。だが俳優たちも別に演じているわけではないのではなかろうか?なぜならこの姿こそが人間として親子としての自然の姿なのだから。とはいえやはりそれを体現できるキャストで本当によかったと思う。

この場を借りて自分の親、そしてこの映画に携わった方々に心からこう言いたい。
”本当にありがとう”


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