シネブログ

このブログは映画に関する記事を書いています☆

『ノーカントリー』

2009年01月31日 13時04分40秒 | 映画レビュー
原題: NO COUNTRY FOR OLD MEN
製作年度: 2007年
別題:-
製作国・地域: アメリカ 上映時間: 122分
監督:
ジョエル・コーエン
イーサン・コーエン
製作:
ジョエル・コーエン
イーサン・コーエン
スコット・ルーディン
製作総指揮:
ロバート・グラフ
マーク・ロイバル
原作:コーマック・マッカーシー 『血と暴力の国』(扶桑社刊)
脚本:
ジョエル・コーエン
イーサン・コーエン
撮影:ロジャー・ディーキンス
プロダクションデザイン:ジェス・ゴンコール
衣装デザイン:メアリー・ゾフレス
編集:
ジョエル・コーエン
(ロデリック・ジェインズ名義)
イーサン・コーエン
(ロデリック・ジェインズ名義)
音楽:カーター・バーウェル
出演:
トミー・リー・ジョーンズ エド・トム・ベル保安官
ハビエル・バルデム アントン・シガー
ジョシュ・ブローリン ルウェリン・モス
ウディ・ハレルソン カーソン・ウェルズ
ケリー・マクドナルド カーラ・ジーン
ギャレット・ディラハント ウェンデル
テス・ハーパー ロレッタ・ベル
バリー・コービン エリス
スティーヴン・ルート ウェルズを雇う男
ロジャー・ボイス エル・パソの保安官
ベス・グラント カーラ・ジーンの母
アナ・リーダー プールサイドの女
オススメ度:★★★☆☆

ストーリー:
人里離れたテキサスの荒野でハンティング中に、銃撃戦が行われたと思しき麻薬取引現場に出くわしたベトナム帰還兵モス。複数の死体が横たわる現場の近くで、200万ドルの大金を発見した彼は、危険と知りつつ持ち帰ってしまう。その後、魔が差したのか不用意な行動を取ってしまったばかりに、冷血非情な殺人者シガーに追われる身となるが、愛する若い妻カーラ・ジーンを守るため、死力を尽くしてシガーの追跡を躱していく。一方、老保安官エド・トム・ベルもまた、モスが最悪の事件に巻き込まれたことを知り彼の行方を追い始めるが、モスを保護できないまま、死体ばかりが増えていく事態に直面し、苦悩と悲嘆を深めていく…。

コメント:
恐るべきハビエル・バルデム。
圧倒的な存在感、不適な笑みに異様なおかっぱ、
神経を逆撫でされるような図太い声、
そして武器はかつて見たこともない家畜銃ピストル。
何を取っても恐怖の塊に過ぎない。

そんな彼が拘っていることがある。
それはコイントスで人の運命を決めること。
これだけで彼がどれほど非常な人間であるかが伺える。
人の命なんてこれっぽちも考えてなんかいないのだから。

一方、偶然麻薬取引現場に出くわしたモス。
現場に残された一人の生き残りが発した一言によって
人生の全てを狂わされることに。

「アグア」(スペイン語で水の意)

普通の人間であれば傷ついた人間を前にして、
そのまま放っておくことは難儀である。
だが、モスは200万ドルもの大金を手にしてしまった身。
そんな彼が水を持って現場へ戻る。
いくら同情心ともいえど、正直この行動は理解できない。
自分が汚い金を手に入れたことへの懺悔のつもりだったのだろうか?
簡単に大金を手に入れてしまったことへのつぐないか。

一見、水を持っていった彼がいい人間のように思えるかもしれないが、
そんな彼も金に目が眩んだ落ちこぼれ。

そして彼に与えられた罰は、殺し屋シガーとの生死を賭けた戦いとなる。

はっきり言って、本作がなぜアカデミー作品賞に輝いたのかわからない。
僕にとっては単なる逃走劇に終わってしまっているからだ。
確かに今までにない恐怖感と緊張感が味わえるサスペンス映画としてなら、最高の評価を与えられそうだが、肝心のトミー・リー・ジョーンズ演じるベルがどういう心境なのかが最後まで読めない。

この惨劇を最初から最後まで目撃したうちの一人だが、
彼がこの事件を通して何を感じ、どんな答えを見つけたのか?

ラストで気になる二つの夢を見たと語るベル。
ここで映画はエンディングを迎える。

いったいこの最後の語りで何を感じればいいのかわからない。
思わずDVDを巻き戻して見直してみたが、やっぱりわからない。
何も伝わらない映像を作った監督が悪いのか?
それとも僕の頭が悪いのか?

この映画を見て一番印象に残っているのは、
「殺し屋シガー」の人間としての捻じ曲がった感情と、
彼を中心に映し出す歪んだ世界の恐怖。

それ以外の何ものでもないし、
それ以上のことを考えるだけ無駄なのかもしれない。
とにかく久々に深い映画を見た気がする…
と言っても、
それはアカデミー賞が作り出した幻想の産物のように思う。
もし作品賞に輝いていなかったらそのままスルーしていた作品だ。

こういう作品が選出されることが
今の世の中を象徴しているのかもしれない。

『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』

2009年01月25日 01時50分09秒 | 映画レビュー
原題: REVOLUTIONARY ROAD
製作年度: 2008年
別題:-
製作国・地域: アメリカ/イギリス 上映時間: 119分
監督:サム・メンデス
製作:
ボビー・コーエン
ジョン・N・ハート
サム・メンデス
スコット・ルーディン
製作総指揮:
ヘンリー・ファーネイン
マリオン・ローゼンバーグ
デヴィッド・M・トンプソン
原作:リチャード・イェーツ 『家族の終わりに』(ヴィレッジブックス刊)
脚本:ジャスティン・ヘイス
撮影:ロジャー・ディーキンス
プロダクションデザイン:クリスティ・ズィー
衣装デザイン:アルバート・ウォルスキー
編集:タリク・アンウォー
音楽:トーマス・ニューマン
音楽監修:ランドール・ポスター
出演:
レオナルド・ディカプリオ フランク・ウィーラー
ケイト・ウィンスレット エイプリル・ウィーラー
キャシー・ベイツ ヘレン・ギヴィングス夫人
マイケル・シャノン ジョン・ギヴィングス
キャスリン・ハーン ミリー・キャンベル
デヴィッド・ハーバー シェップ・キャンベル
ゾーイ・カザン モーリーン・グラブ
ディラン・ベイカー ジャック・オードウェイ
ジェイ・O・サンダース バート・ポラック
リチャード・イーストン ギヴィングス氏
マックス・ベイカー ヴィンス・ラスロップ
マックス・カセラ エド・スモール
ライアン・シンプキンス ジェニファー・ウィーラー
タイ・シンプキンス マイケル・ウィーラー
キース・レディン テッド・バンディ
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
1950年代のコネチカット州。“レボリューショナリー・ロード”と名づけられた閑静な新興住宅街に暮らすフランクとエイプリルのウィーラー夫妻は、二人のかわいい子供にも恵まれた理想のカップル。しかし、その見た目とは裏腹に、彼らはそれぞれ描いていた輝かしい未来と現状のギャップに不満を募らせていた。元陸軍兵のフランクは事務機会社に勤めるもセールスマン人生の我が身を嘆き、かつて女優志願だったエイプリルも大成せずに至っている。するとフランクが30才の誕生日を迎えた夜、エイプリルが、家族一緒にパリで暮らしましょう、と持ちかけ、パリでは自分が秘書として働くからフランクは気ままに暮らせばいい、と言い出すのだった。はじめは妻の突然の提案に戸惑うも希望を膨らませ、ついには移住を決意するフランク。それは間もなく、周囲にも知るところとなるのだが…。

コメント:
テレビの紹介などで独身女性の評論家たちが口を揃えてこう言っていた。

「これを観てから結婚しようとは思わない」

そんな映画を僕らのような新婚夫婦が揃って観てもいいものだろうか?
映画が始まるその時まで悩んでいた。実の嫁さんを隣にしながら。

このレビューでは、僕たち新婚夫婦が目撃した、結婚生活のありのままを描いた『レボリューショナリー・ロード』という衝撃作について、実生活を踏まえながら赤裸々に感想を述べたいと思う。

まず初めにこれだけは言っておきたい。
もし結婚を目前に控えたカップルで本作を鑑賞しようか迷っている人、この映画は観ないほうがいい。今は順調に交際しているから大丈夫とか、自分たちは結婚してもきっと幸せになれるという浅はかな願望なんて、どこまで通用するか誰も想像できるはずがないのだから。

これを観ることできっと結婚に対する何らかの迷いが発生するはずだ。それでも映画ごときで関係に終止符をうたない自信がある人、またこの映画を見て将来の構想を練ってから結婚したいと考えている人たちにとっては、どこか心の支えになる答えを発見することができる映画かもしれない。

既婚者にとってもこの映画はとても重く圧し掛かる課題だ。
もちろん人それぞれ感じ方は違うだろうが、鑑賞後のうちの嫁さんにおいては、

「自分の考えを代弁してくれる、とてもスッキリする映画だった」

というのが、第一声である。

んっ!?
ということは、嫁はすでに体験済み?
それは問題だ!!

ということで、そのまま帰りに焼肉屋で対談をすることで同意を得た。
(話してどうにかなるという考えに達する時点で男の単純さが浮き彫りになっているのかもしれない…)

嫁曰く昨年の夏はウィンスレット演じるエイプリルと同じ感情だったらしい。自分の今の生活を変えて新たなチャンスを手にしたいと。実は昨年、僕の仕事の都合上、半強制的に嫁を僕の地元に連れてきて生活を送ることに決めた。それは二人で話し合った結果だったが、嫁はどこか我慢してついて来ていたのだろう。男からすればやはり第一に仕事を考えなくてはならないし、いずれ子供ができることも考えなくてはならない。お金には全く不自由なく生活を送っていたが、毎日家で家事だけをする生活や、自分の知り合いがいないという孤独感などから、不満が日々溜まっていたのだろう。

だが男からすればそういう話はちゃんと話してくれなければ理解できない。

ディカプリオ演じるフランクは何度も話をしようと持ちかけるが、どことなく誤魔化されている感じが募り自分の在り方に疑問を持ち始める。そしてそのストレスが原因で浮気をしてしまう。

ここまでの内容がうちで起きた構図とよく似ていると嫁は言うのだ。
確かに間違いない(浮気は神に誓ってやってませんけどね!!)。

その後、うちの場合はちゃんと話し合い、子供を作るのは先延ばしにし、嫁も外で働く、そして家事は分担にするということで家庭を持ち直すことができた。

結婚って難しい。

だが今日改めて話し合ったことで、どうやら今は子供が欲しいということがわかった。僕は未だに女の考えることがわからない。実は最近まで子供が欲しくないということで避妊までさせられていた。これは男にとっては屈辱的。だがそれも気持ちの持ちようだと思うのだ。

人生はいつどんなことが起こるなんかわからない。

映画の話で言うと、二人はパリ行きを決定して、舞い上がった勢いで激しい夜を過ごしてしまったことが全ての過ちだったように思う。後先を考えればそれは想像がついていたことだから。

結局、結婚生活なんて二人がどうやって生きていきたいかを考えることなんだと思う。それは子供を含め周りの環境全てが関係してくること。問題が発生したときにどうやって解決することができるか。

僕が最終的に答えとして見出したものは、キャシー・ベイツ演じるヘレンの夫が、愚痴を漏らすヘレンの姿を前に、補聴器の音量を最小にする姿。

女は愚痴を言うもの。
それをどう受け流せるかで男のストレスの溜まり方は違う。
男はその溜まったストレスをどこに対して捌け口とするか。
それを決めることがうまく家庭を回すコツのひとつだと、僕は思うのだ。

こんな大切で簡単なことを教えてくれた映画。
レオとケイトの素晴らしい演技と、この二人の熱演を監督として見守ることができたサム・メンデスに拍手と賞賛を送りたい。

そして出来ることなら、熟年夫婦が一緒に観た感想なども聞いてみたいものだ。

『L change the WorLd』

2009年01月23日 23時00分46秒 | 映画レビュー
原題:-
製作年度: 2008年
別題:-
製作国・地域: 日本 上映時間: 128分
監督:中田秀夫
プロデューサー:
田中正
飯塚信弘
小橋孝裕
エグゼクティブプロデューサー:奥田誠治
COエグゼクティブプロデューサー:
神蔵克
椋樹弘尚
鳥嶋和彦
鈴木基之
企画プロデュース:佐藤貴博
原作:
大場つぐみ
小畑健
脚本:小林弘利
共同脚本:藤井清美
撮影:喜久村徳章
特撮監督:神谷誠
美術:矢内京子
編集:高橋信之
音楽:川井憲次
主題歌:レニー・クラヴィッツ 『アイル・ビー・ウェイティング』
音響効果:柴崎憲治
照明:中村裕樹
製作担当:
毛利達也
大内裕
装飾:坂本朗
録音:小松将人
助監督:佐伯竜一
出演:
松山ケンイチ L
工藤夕貴 久條希美子
福田麻由子 二階堂真希
南原清隆 駿河秀明
平泉成 松戸浩一
福田響志 BOY
正名僕蔵
金井勇太
佐藤めぐみ 三沢初音
石橋蓮司
藤村俊二
鶴見辰吾 二階堂公彦
高嶋政伸 的場大介
オススメ度:★★☆☆☆

ストーリー:
デスノートを使い新世界の神になろうと目論む夜神月との最終決戦に臨んだL。やがて、彼の究極の選択によってその壮絶なキラ事件に終止符を打ったが、一方でLが最も信頼できるパートナー、ワタリを失ってしまう。同じ頃、タイでひとつの村が焼き尽くされ消滅。それは世界の崩壊にも繋がる大事件の予兆だった。ある日、Lのもとに、ワタリ宛ての贈り物として一人の幼い少年“BOY”がやって来る。そして彼がタイで消滅した村の唯一の生存者で、その裏では、人間の手で作り出された“死神”を巡って不穏な動きがあることを知らされる。またさらに、真希という少女がある物を携えワタリを訪ねてくるのだが…。

コメント:
いくらスピンオフと云えどあまりに不完全燃焼な出来に残念と言わざるを得ない。Lは元々『DEATH NOTE デスノート』シリーズに登場する主要キャラの一人。だからLが主演するということは、デスノートとの何らかの絡みを含めつつ、キレる頭で難事件を解決することを、デスノートファンのみならずLファン、松ケンファンは間違いなく期待していたに違いない。

にも関わらず、初っ端から迷いもなくデスノートを燃やしてしまう。
確かに”史上最悪の殺人兵器”と豪語していた彼だからその行動も理解できるのだが、それにしても本来のキーアイテムでもあるべきデスノートをあっさりとこの世から葬ってしまうとは…。

でももしかしたら最初に燃やしたと思わせといて、最期の最期で自らのポリシーと葛藤しながら、隠し持っていたノートの切り端で悪党を葬るという予想外の結末なんかも勝手に想像していたのだが、その気配する全く見せず。

な~んか普通のウィルスをテーマにしたパニック映画を見ているようで一気に気分が萎えてしまったのだ。

確かにLを演じる松山ケンイチはスゴイ。原作を読んでいる人ならわかると思うが、ここまで異色のキャラをリアルに演じてしまうスゴさ。彼以上のLを演じられる人はいないと思う。だからこそファンの僕からすれば、本来のLの姿をそのまま演じて欲しかった。

人間らしさよりも人間を欺いて見せるLの姿。

誰もが予想だにしない行動を起こすのがLなのに、ただひたすら子供をかばって逃げ回り、ワクチンが完成するのを待つだけだったりして、無駄に最期の23日を過ごしているように感じてしまうストーリーが、残念で仕方がなかった。死を目前にした一人の人間を題材にした映画とは到底思えないほどの緊張感のなさ。

これが世界を変えたLの最期だと言っていいのだろうか?
僕はこんなLの最期を見たくはなかったというのが正直なところだ。

ラストはちゃっかり”ニア”という名前を出して、原作との関連性をにおわせるシーンがあったが、どうでもいい演出に止めの一発を食らわさせれてしまったことは言うまでもない。

『ジャンパー』

2009年01月22日 01時12分08秒 | 映画レビュー
原題: JUMPER
製作年度: 2008年
別題:-
製作国・地域: アメリカ 上映時間: 88分
監督:ダグ・リーマン
製作:
サイモン・キンバーグ
アーノン・ミルチャン
ルーカス・フォスター
ジェイ・サンダース
製作総指揮:
ステイシー・マエズ
キム・ウィンザー
ヴィンス・ジェラルディス
ラルフ・M・ヴィチナンザ
原作:スティーヴン・グールド 『ジャンパー 跳ぶ少年』(早川書房刊)
脚本:
デヴィッド・S・ゴイヤー
サイモン・キンバーグ
ジム・ウールス
撮影:バリー・ピーターソン
プロダクションデザイン:オリヴァー・スコール
衣装デザイン:マガリー・ギダッシ
編集:
ドン・ジマーマン
ディーン・ジマーマン
サー・クライン
音楽:ジョン・パウエル
出演:
ヘイデン・クリステンセン デヴィッド・ライス
ジェイミー・ベル グリフィン・オコナー
レイチェル・ビルソン ミリー・ハリス
サミュエル・L・ジャクソン ローランド・コックス
ダイアン・レイン メアリー・ライス
マイケル・ルーカー
アンナソフィア・ロブ
マックス・シエリオット
トム・ハルス
ジェシー・ジェームズ
クリステン・スチュワート
テディ・ダン
オススメ度:★★☆☆☆

ストーリー:
ミシガン州に住むデヴィッドは同級生のミリーに想いを寄せるごく普通の高校生。そんな彼は冬のある日、川に転落してしまう。だが、溺れそうになったデヴィッドは次の瞬間、図書館へ移動していた。自分にテレポート能力があると知った彼は、母が家を出て以来、人が変わってしまった父のもとを離れニューヨークへ。そして、その力を使って銀行の金庫から大金をせしめ、自由を満喫するのだった。しかし一方で、デヴィッドと同じ能力を持つ“ジャンパー”たちの抹殺を使命とする組織“パラディン”のリーダー、ローランドにその存在を気付かれ、つけ狙われ始める。10年後、瞬間移動で世界中を旅していたデヴィッドは偶然ミリーと再会、またやがてジャンパーのひとり、グリフィンに出会うのだが…。

コメント:
『スター・ウォーズエピソード3/シスの復讐』でアナキン・スカイウォーカーを演じたヘイデン・クリステンセン。この映画でかの有名なダース・ベイダーを演じてしまったことで、彼の演技には常にダークサイド的なオーラが感じられるようになった。本作がその第一犠牲作品となってしまったか。『ジャンパー』は至って普通のSFアクションであるはずなのに、なぜかダークな映画に見えてしまう。

というよりは彼の役どころが悪いと言うべきか。
それとも敢えてそのダークさを狙ったのか。

それにしてはあまりに彼を善人として扱いすぎである。

テレポートという夢のある能力を持った少年が何を仕出かすかと思えばいきなり”銀行強盗”。「お金は返します」と書いておけば許される問題ではない。その金を使って何をするかと思えば”好きな国で女と豪遊”。おまけにあのダークな微笑が何だか妙に苛立ってしまって、間違っても彼に感情移入なんてできないのだ。

やってることは明らかに悪党並みの、モラルを欠いた行動の数々。

そんな彼を追って現れたのが“ジャンパー”たちの抹殺を使命とする組織“パラディン”のリーダー、ローランド。そりゃこれだけ”ジャンパー”に勝手邦題されては、このような組織ができても仕方がない。少し手荒な組織ではあるが間違いなくこちらの方がヒーローに近いのだ。

ということで、実は本作は何食わぬ顔で悪事を繰り返す”ジャンパー”を、この世から排除しようとするヒーロー”パラディン”のお話である。

って、こんなこと言ったら怒られるかもしれないが、それくらい主人公には味方することができない。結局ラストは幼馴染と呑気にやり過ごす姿が映され、バッドエンディングのような感覚を覚えてしまうので要注意だ。

そんなストーリーはさておき、SFアクションということで映像はかなりの迫力とスピード感が表現されていておもしろい。特にイタリアのコロッセオの戦闘シーンは内部の構造を生かしたもので迫力満点だ。ジャンパーがあっちこっちに移動するので目が追いつかないが、なんだかいろんなところを旅した気分にさらされる。

こんなすばらしい能力があったら、もっと賢い使い方ができるだろうに。
夢のないSF映画に終わってしまったことが何だか悲しい。

『モーテル』

2009年01月18日 22時55分15秒 | 映画レビュー
原題: VACANCY
製作年度: 2007年
別題:-
製作国・地域: アメリカ 上映時間: 85分
監督:ニムロッド・アーントル
製作:ハル・リーバーマン
製作総指揮:
グレン・S・ゲイナー
ステイシー・コルカー・クレイマー
ブライアン・パスカル
脚本:マーク・L・スミス
撮影:アンジェイ・セクラ
プロダクションデザイン:ジョン・ゲイリー・スティール
衣装デザイン:マヤ・リーバーマン
編集:アルメン・ミナジャン
音楽:ポール・ハスリンジャー
出演:
ケイト・ベッキンセイル エイミー・フォックス
ルーク・ウィルソン デビッド・フォックス
フランク・ホエーリー メイソン
イーサン・エンブリー 自動車修理工の男
オススメ度:★★★★☆

ストーリー:
車で帰宅途中のデビッドとエイミーのフォックス夫妻。夫婦仲は冷え、離婚が決定的な2人は、車の中でも険悪な雰囲気。そんな矢先、車が故障してしまい、真夜中の田舎道で立ち往生してしまう。歩いてどうにか近くのモーテルに辿り着いた2人は、やむなくそこに1泊することに。薄汚れた部屋に通され、ますます不機嫌になっていくデビッドとエイミー。そんな中、ふとデビッドが再生したビデオには、趣味の悪いホラー映画らしき映像が映っていた。ところが、よく観てみると残忍な殺人シーンが行われている現場は、紛れもなく今彼らが泊まっているその部屋だった…。

コメント:
僕はいつも恐いもの見たさでホラーを見てしまうのだが、
実はどうしようもない”へたれ”だ。
ホラーを鑑賞中は、ちょっと携帯の着信音が鳴っただけで、
”ビクッ”としてしまう。
だから自分よりホラーが得意な人とは鑑賞しない。
だって自分だけビビッてたら恥ずかしいでしょ。
そんな訳で本作も一人で鑑賞。

ま、こんな僕だからこそ主人公の行動心理が理解できたというわけである。

”何度も部屋に戻ってしまう”という描写。

自分の足に自信がある人や、敵と何とか対峙しようとする人は、
何度も部屋に戻ったりしない。
だが本作に登場する夫婦は恐怖のあまり、
逃げようにも逃げ出せない死のパターンへと追いやられていく。

自分が宿泊しようとした部屋で、
過去に起こった惨劇がビデオで映しだされているという事実。
自分たちはその惨劇の被害者となってしまった事実。

しかも相手は実体化している生身の人間。
得たいの知れないものが襲ってくるより遥かに恐い。

突然激しく鳴り響く扉を叩く音。
点滅が繰り返される部屋の電気。

最初は強気で攻めていた夫のデビッドだが、
じわじわと攻撃してくる敵により次第に守りの攻撃へと転進していく。
視覚と聴覚による恐怖の脅迫により、思うように攻撃ができなくなるという心理だ。

つまり”へたれ”の心理。

扉をソーっと開けて外を確認しようとする行動、
追われたら逃げる行動がまさにそれだ。

追い詰められて死ぬか、潔く突撃して死ぬか。
”へたれ”か”猪突猛進”か。
本作でいうと、前者が夫、後者が妻で描かれている。

つまり僕にとってはあまりにリアルで恐い内容なのだ。
だから僕は今後これだけは守ることにする。

1.高速道路は降りない
2.車の点検は定期的にする
3.山奥のホテルには泊まらない

なぜなら”へたれ”は治せるものではないのだから…
行動パターンを修正するしかない。

『恋空』

2009年01月16日 00時16分10秒 | 映画レビュー
原題:-
製作年度: 2007年
別題:-
製作国・地域: 日本 上映時間: 129分
監督:今井夏木
プロデューサー:
森川真行
那須田淳
エグゼクティブプロデューサー:濱名一哉
企画:三野正己
原作:
美嘉
『恋空~切ナイ恋物語』
脚本:渡邉睦月
撮影:山本英夫
美術:中澤克巳
編集:穂垣順之助
音楽:河野伸
主題歌:Mr.Children 『旅立ちの唄』
照明:小野晃
録音:湯脇房雄
助監督:舟橋哲男
出演:
新垣結衣 田原美嘉
三浦春馬 桜井弘樹(ヒロ)
小出恵介 福原優
香里奈 ミナコ
臼田あさ美 咲
中村蒼 ノゾム
波瑠 亜矢
大平奈津美
浅利陽介
深田あき 田原さおり
山本龍二 桜井博一
麻生祐未 桜井明美
高橋ジョージ 田原勝治
浅野ゆう子 田原安江
オススメ度:★☆☆☆☆

ストーリー:
ごく普通の高校1年生、美嘉は、ふとしたきっかけから同級生のヒロと交際を始める。それは、美嘉にとての人生で初めての恋愛だった。ヒロの元カノの嫌がらせや予期せぬ妊娠など、様々な悲劇や試練を乗り越え絆を深めていく美嘉とヒロだったが…。

コメント:
インターネットの威力はすごい。
本来真面目に語られるべき内容を
金儲け目的の作品へと仕立ててあげてしまうのだから。

口コミで広がったこの”純愛”と呼ばれる安い恋愛話は、
レイプや妊娠、不治の病について本気で考えるべき
若い世代を中心に広く伝わり、感染とも呼べる惨劇を生んでしまった。

いったいこれをどうもって”恋愛”と見ればいいのだろうか?

インターネットで人気を博した作品として、過去に「電車男」があった。
これも同じ実話を元にしたラブストーリーだ。
同じラブストーリーだが、こちらは最初がどちらかというと取っ付き難い。

なぜなら、
2ちゃんねらーがひょんなことから美女と接点を持つ
という特殊な設定だからだ。
2ちゃんねらーと聞いた時点でなんとなくオタクのにおいがし、
警戒心のあるネットサーファーなら少し距離を置きがちになる。

しかし、こんな話でも徐々に世間に広まり
瞬く間に漫画・映画・テレビドラマ・舞台にもなっている。
同じラブストーリーなのになぜこんなに評価が違うのだろうか?

それは間違いなく道徳的な観点の描き方が違うからだ。

「恋空」はこの部分からして明らかに欠如が見られるのだ。
恋愛を通して一体何を伝えたかったのか?
レイプ、妊娠、流産、不治の病は単なる過程にすぎず、
高校生の無頓着な行動が淡々と描かれている。
男も女も感情はちゃんと持っているが、
その感情が全て無秩序な方向へと動かす。
二人の行動があまりに不道徳すぎて
全く感情移入ができないまま終わってしまうのだ。

こんな恋愛話、絶対映画なんかにしちゃ駄目だ。

少なくともこんな話を若い人たちに広めてしまったことを
製作者は反省して欲しい。
そして金儲けしようとしたことを恥じるべきである。

ネット社会が生んでしまったこの恋愛ウィルス。
これ以上感染しないよう、若い人は自分なりのセキュリティを
考えていくべき時代なのである。

『ゴーストバスターズ』

2009年01月10日 00時34分20秒 | 映画レビュー
原題: GHOSTBUSTERS
製作年度: 1984年
別題:-
製作国・地域: アメリカ 上映時間: 105分
監督:アイヴァン・ライトマン
製作:アイヴァン・ライトマン
脚本:
ダン・エイクロイド
ハロルド・ライミス
撮影:ラズロ・コヴァックス
特撮:リチャード・エドランド
音楽:エルマー・バーンスタイン
主題歌:レイ・パーカー・Jr
出演:
ビル・マーレイ ピーター・ヴェンクマン博士
ダン・エイクロイド レイモンド・スタンツ博士
ハロルド・ライミス エゴン・スペングラー博士
シガーニー・ウィーヴァー ダナ・バレット
リック・モラニス ルイス・テュリー
アニー・ポッツ ジャニーン・メルニッツ
アーニー・ハドソン ウィンストン・ゼドモア
ウィリアム・アザートン ウォルター・ペック
オススメ度:★★★★☆

ストーリー:
大学で超常現象の研究を行う三人の科学者が、援助を打ち切られたために幽霊退治の商売に乗り出す。彼らの活躍が次第に広がる中、マンハッタンの高級マンションに住む女性の周りに奇怪な現象が起き始めていた……。

コメント:
クライマックスの破壊神ゴーザとの決戦シーン。
ダークな力が世界を覆いそうなとき、突如現れたのは我らがウルトラマン!?
ではなく…

マ、マ、マ、マ、マ、マ、マ、マ、マ、マ、マシュマロマン!!!?

どうみてもメタボな水兵さんじゃん(油汗)
さっきまでのダークな世界と、このキャラのギャップ
どう受けとめたらいいのだろうか。
子供にもわからんぞ。このギャグセンス!

でも小さい頃この映画を観て、一番記憶に残っているのはマシュマロマンの姿だ。
正直最初はホントに正義の味方が助けにきたと勘違いしてしまうくらい愛嬌のある姿。

この映画はホントすごいよ。
こんな適当なキャラを最後に登場させちゃうんだから。
最後にマシュマロ破裂して終わりだよ。
ゴーザどこいっちゃったの!?
ボス弱すぎ。。

ってかゴーストバスターズの誕生もよく考えたらかなり適当。
あんな装備いつ作ったの?
ゴーストの貯蔵装置ってどんな仕組み?
そもそもなんでゴーストが発生したんだっけ?

途中のストーリーを完全消去してしまうくらい、
マシュマロマンのインパクトが強いってことで。
この映画見て残ったのはマシュマロマンだけ。
ゴメン、ちゃんとしたレビュー書けなくて。

夢に出るなよマシュマロマン☆

『ローグ アサシン』

2009年01月07日 15時18分41秒 | 映画レビュー
原題: WAR
製作年度: 2007年
別題:-
製作国・地域: アメリカ 上映時間: 103分
監督:フィリップ・G・アトウェル
製作:
スティーヴ・チャスマン
クリストファー・ペツェル
ジム・トンプソン
脚本:
リー・アンソニー・スミス
グレゴリー・J・ブラッドリー
撮影:ピエール・モレル
プロダクションデザイン:クリス・オーガスト
衣装デザイン:シンシア・アン・サマーズ
編集:スコット・リクター
音楽:ブライアン・タイラー
アクション演出:コリー・ユン
出演:
ジェット・リー ローグ
ジェイソン・ステイサム ジョン・クロフォード
ジョン・ローン リー・チャン
デヴォン青木 キラ
ルイス・ガスマン ベニー
石橋凌 シロー・ヤナガワ
マシュー・セント・パトリック ウィック
ナディーン・ヴェラスケス マリア
アンドレア・ロス ジェニファー・クロフォード
マーク・チェン ウー・チー
ケイン・コスギ ヤクザ
ケネディ・ローレン・モンタノ アンナ
テリー・チェン トム・ローン
ポール・ジャレット
オススメ度:★★★☆☆

ストーリー:
サンフランシスコ。FBI捜査官クロフォードは、悪名高い伝説の殺し屋ローグを追い詰めていたが、その後、相棒トムとその家族を惨殺されてしまう。3年後、街ではチャイニーズ・マフィアと日系ヤクザの抗争が激化していた。そんな中、それまで姿をくらましていたローグが現われ、またしてもクロフォードを翻弄していく。やがて、再び対峙するクロフォードとローグ。こうしてついに、ローグの正体と真の目的、そして2人の運命が引き起こす驚愕の真実が明かされる…。

コメント:
原題が「WAR」って…

アメリカ人にとってヤクザの抗争=戦争ということなのか。
こればかりは日本の配給会社が正しかっただろう。

なぜなら本作は暗殺者ローグと彼を追いかけるFBIの物語なのだから。

それにしてもアメリカ映画に出てくる日本人役の日本語はどうにかならないものだろうか。日本語がちゃんと話せない俳優には無理に日本語を使わせなくてもいい気がする。正直、日本語なのに聞き取れないシーンが多々ある。お願いだから英語喋らせて字幕付けて!無駄に発せられる日本語のせいで、どうも緊張感が保てないのがもどかしい。

ストーリーはよくある復讐劇。
確かに驚愕のラストだったかもしれないけど、「実際そこまでやるかねぇ?」って感じでなんとも言えない後味の悪さ。

まあ単なるアクション映画として観ればそれなりに楽しめる内容である。

それにしてもアメリカ人は日本とヤクザをなんだと思っているのだろうか?
知らない世界を想像だけで描くのはやめてもらいたい。
石橋凌のヤクザっぷりはよかったけどね。