シネブログ

このブログは映画に関する記事を書いています☆

『マリー・アントワネット』

2007年08月28日 00時26分24秒 | 映画レビュー
原題:MARIE ANTOINETTE
製作年度:2006年
上映時間:123分
監督:ソフィア・コッポラ
出演:キルステン・ダンスト 、ジェイソン・シュワルツマン 、リップ・トーン 、ジュディ・デイヴィス 、アーシア・アルジェント 、マリアンヌ・フェイスフル
オススメ度:★★★★☆

ストーリー:
14 歳のオーストリア皇女アントワーヌは、母マリア・テレジアの意向によりフランス王太子のもとへと嫁ぐことに。フランスへ渡り、王太子妃マリー・アントワネットとして、ヴェルサイユ宮殿での結婚生活に胸をふくらませるマリーだったが、その実態は朝から晩まで大勢のとりまきに監視され、悪意に満ちた陰口に傷つく日々だった。さらに、15歳の夫ルイはまるで彼女に興味を示さず、世継ぎを求める声がプレッシャーとなってマリーにのしかかる。そんな孤独や不安を紛らわそうと、おしゃれや遊びに夢中になり贅沢三昧を繰り返すマリーだったが…。



コメント:
正直、別にマリー・アントワネットを題材しなくてもよかったというのが率直な感想だ。

だが現代版にアレンジされ、ソフィア・コッポラ監督ならではのガーリーテイスト全開のおしゃれでポップなタッチで描かれる本作はとにかくタメ息ものである。特筆すべきは全ての登場人物が着こなす美しい衣装と、とにかく豪華なセットの数々だ。実際のヴェルサイユ宮殿で撮影されたというのだからそれも頷ける。

その中でも個人的に一番大好きなのが、眩いほどの衣装を見事に着こなし演じるキルステン・ダンストだ。なぜかレビューの中で彼女に対する批判が目立つが僕は全くの逆。あのハニカんだ笑顔、セクシーかつキュートな仕草、あくまでも女性らしさを失わずマリー・アントワネットの心の変化をまさに”ガーリー”な演技で見事に演じきったと言える。

本作については特にストーリーのことは考えなくていいだろう。というか考えるだけ無駄だ。今まで何度も聞いたことのある”マリー・アントワネット”のお話なのだから。とりあえず有名なエピソードは全て押さえられ、それに沿った形で進んでいく。だがそんなお決まりのお話に一味違ったテイストをくれたのが音楽である。ふんだんに使われたポップ・ミュージックの数々は違和感を与えることなく映画を盛り上げている。音楽が映画全体の雰囲気を決めていると言っても過言ではない。一見アンマッチのように思える音楽が意外にも合うことを気付かせてくれたソフィア・コッポラ監督の才能が垣間見れるところだろう。

総合的に見て何を楽しめばいいのか迷ってしまう内容だが、あの華やかな暮らしは女性にとってはうれしいものなのかもしれない。美しい衣装に身をまとい、色とりどりのお菓子を食べ、気楽に朝までパーティーに明け暮れる…と、良い部分だけ見れば幸せだが、悪い部分を見ればそれは生き地獄とも言えるのだろう。

そんなマリー・アントワネットの人生を鑑賞し直すということでも本作は楽しめそうだ。

『世界最速のインディアン』

2007年08月25日 23時09分54秒 | 映画レビュー
原題:THE WORLD'S FASTEST INDIAN
製作年度:2005年
上映時間:127分
監督:ロジャー・ドナルドソン
出演:アンソニー・ホプキンス 、クリス・ローフォード 、アーロン・マーフィ 、クリス・ウィリアムズ 、ダイアン・ラッド 、パトリック・フリューガー
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
ニュージーランド南端の町、インバカーギル。小さな家に独りで暮らしている初老の男バート・マンローは、40年以上も前のバイク“1920年型インディアン・スカウト”を自ら改造し、ひたすら速く走ることに人生を捧げてきた。そんな彼の夢は、ライダーの聖地、アメリカのボンヌヴィル塩平原(ソルトフラッツ)で世界記録に挑戦すること。いよいよ肉体的な衰えを痛感し、もはや挑戦を先延ばしにはできないと悟るバート。そして、周囲の人々の協力もあってどうにか渡航費を捻出すると、貨物船にコックとして乗り込み、海路アメリカを目指すのだったが…。



コメント:
愛車“インディアン・スカウト”で世界最速を夢見るバート・マンロー。
彼はニュージーランドからはるばる渡米しライダーの聖地”ソルトフラッツ”を目指す。

40年以上もバイクを改造し続け、ひたすら早く走ることだけに人生を捧げてきたというだけでもスゴイことだ。だが彼はその夢を実現してしまうタフさ、行動力、そして勇気を持っていた。60歳を超えた初老の男が成し遂げた偉業はきっと全ての人の心に響くことだろう。

本作の物語自体はとても淡々と進んでいく。ニュージーランドからアメリカへの一人旅で、度重なる困難もなんなくこなして行くバート・マンロー。文化の違いや人間の交友などは単なる出来事に過ぎない。彼の頭は”世界最速”という言葉しか残っていないからだ。とにかく自分の夢を叶えたい!!そんな感情が彼の表情・行動からひしひしと感じ取ることが出来るのだ。

正直バイク初心者の僕からすれば、彼が話すバイクの豆知識についてはなんのことを言っているのかよくわからない。それも当然だろう。40年以上も研究を続け、ただ早く走ることを考えてきた男のロマンなんて全て理解することは不可能。だが客観的に見ればそんな技術的なことはどうでもいいのかもしれない。問題は彼がどれほどバイクを愛してどれほど夢を見続けてきたか…。

そんな思いを抱きながら、ラストで”ソルトフラッツ”を颯爽と駆け抜ける“インディアン・スカウト”の輝きを見たら涙を流さずにはいられない。1マイルごとに速度メーターを通過し、徐々に速度を増していく“インディアン・スカウト”。彼の一生が掛かったそのレースが全てをものがたり、そして見る者全ての記憶に刻み込む。審査員が速度を読み上げるごとに僕の心も躍進していき涙が溢れ出す。

「行け!!行け!!まだ行ける!!!」

まさに観客と一体となって彼を応援してしまった。手に汗握る映像とあの緊張感。自分がレースを体感しているような映像美も本作の見所のひとつである。

彼の交友が単なる出来事に過ぎないと言ったがそれは間違いだ。彼を支えてきた人間がいたからこそ達成できた偉業だろう。本作を観ればひとりで叶えれる夢なんてこの世に存在しないという気にさせられる。例えどんな些細な出来事だろうと、たくさんの人々の手助けがあるからこそ夢は叶えられる。

だがそこに大切なのは”必ずやり遂げたいという意思”を持っているかどうかだろう。
それにしてもこういう映画はいい!!どことなく力とやる気が漲って来る。

よし!!
俺も夢に向かって頑張ろう!!

『甘い人生』

2007年08月21日 00時23分52秒 | 映画レビュー
原題:A BITTERSWEET LIFE
製作年度:2005年
上映時間:120分
監督:キム・ジウン
出演:イ・ビョンホン 、シン・ミナ 、キム・ヨンチョル 、キム・レハ 、ファン・ジョンミン 、エリック
オススメ度:★★★☆☆

ストーリー:
ソウルにある高級ホテルの総マネージャー、ソヌ。クールで頭の切れる彼は、裏社会にも絶大な力を持つボスのカンからも厚い信頼を得ていた。非情な男カンは、若い愛人ヒスに別の男がいると疑い始めていた。カンは、ソヌに彼女を監視させ、もし裏切りを見つけた場合は、彼女を殺すか、カンに連絡するよう命じる。人を愛したこともなく氷のように冷たい感情を持つソヌだったが、ヒスの監視を続けるうち、彼女の不思議な魅力に知らず知らず惹かれていく。やがて、ヒスと男との情事の現場を押さえたソヌは、男を追い出し事実を隠蔽しようとしている自分に気づく。彼女を見逃し、思いがけずボスを裏切ることになってしまったソヌは、次第に窮地へと追い込まれていくのだった…。



コメント:
本作の見所を★の数で表せばこんな感じだ。

スーツ着こなし度 ★★★★★
まずは最初から最後までビシッとスーツを着こなしたイ・ビョンホンに酔いしれること間違いなし。得意の「キラースマイル」は観れないものの、あの姿で睨み付けるような仕草はファンでなくとも魅了されるはずである。とにかくかっこいいの一言。

血の飛び散り度  ★★★★★★★
そして韓国映画ではお決まりの、暴力シーンで見せる手加減のないグロテスク映像。本作でもかなり健在である。『ブラザーフッド』を彷彿させるほどリアルに飛び散る肉片や血の多さには、かなり衝撃を受けるだろう。グロ系の苦手な人は注意されたし。

ハードボイル度  ★★★★★★★★★★
個人的には、あの名作『男たちの挽歌』を彷彿させるほどハードボイルド感のある作品だったと言える。冷酷非情な世界を過激なまでの銃撃戦を基に見事に描き切った作品だ。”香港ノワール”ならぬ”韓国ノワール”誕生のきっかけとなる作品になってもおかしくないだろう。


だが悪い部分もそれなりに目立つ作品であった。

まず全体を通して女性が絡んだストーリーは不要だったように思う。主人公ソヌがボスの愛人ヒスを愛したことで展開する話だが、争いのきっかけにしてはあまりインパクトがない。命を懸けて戦うならそれなりの理由がないと説得力に欠けるなぁという感じだった。

また音楽もかなり微妙だ。緊張感を保ちたい場面で、それとは全く当てはまらない音楽が使用されているため一気に興醒めしかねない。個人的にはもっとジ~ンとくるような悲壮感のある音楽を使用してもらいたかったというのが正直なところだ。

あと一番マズイと思ったのがテンポの悪さだ。ところどころ意味不明なシーンが多数挿入されていた気がする。特に後半の、銃を裏ルートで手に入れるシーンなんかはホント全くの無駄である。これから復讐を賭けて戦いを挑もうとしているのにこのシーンが入ったことで一気に勢いが失われている。勢いよく華麗な戦闘を期待していただけにこれは残念で仕方がなかった。そして最後の最後でソヌがガラスに向かってシャドウボクシングをするシーン。これはホントに何をしたかったのか全く意味がわからなかった。何か意味があるのなら誰か教えて欲しいものだ…。

ということで、総合的な評価は★3つといったところだろう。かなりもったいないと思わせるシーンが多く観られた。全体的な暗い雰囲気やアクションシーンは個人的に大好きなのだが、この手の映画に必要なテンポの良さが失われてしまっていたのでとても残念である。しかし、イ・ビョンホンの俳優としての魅力などそれなりに拾い物もあったので出会えてよかった作品だと言えるだろう。

だがこの手の映画を本気で楽しみたいなら間違いなく『男たちの挽歌』シリーズや『インファナル・アフェア』などの香港ノワール作品をオススメする!!

『デジャヴ』

2007年08月19日 23時20分27秒 | 映画レビュー
原題:DEJA VU
製作年度:2006年
上映時間:127分
監督:トニー・スコット
出演:デンゼル・ワシントン 、ポーラ・パットン 、ヴァル・キルマー 、ジム・カヴィーゼル 、アダム・ゴールドバーグ 、エルデン・ヘンソン
オススメ度:★★★★☆

ストーリー:
500 人以上もの犠牲者を出した凄惨なフェリー爆破事件が発生する。捜査を開始したATF捜査官ダグ・カーリンは、その的確な捜査能力を買われ、FBIの特別捜査班への協力を要請される。彼は政府が極秘に開発した“タイム・ウィンドウ”と呼ばれる映像装置を見せられる。それは、過去の特定のエリアを自由に見ることが出来る驚くべき監視システムだった。ただし、この装置には現在から“4日と6時間前”の映像をリアルタイムで再生することしかできなかった。事件に関係ある場所を確実にスキャンするためにダグの判断力が求められたのだ。そして、事件直後に遺体が発見された女性クレアが鍵を握っていると確信したダグは、この装置で彼女の自宅を映し出し、4日と6時間前の生きていた彼女を目にするのだが…。



コメント:
全く予備知識なくして鑑賞したため、正直僕が思っていた”デジャヴ”とは内容が少し違っていた。

デジャヴ(=既視感)
実際は一度も体験したことがないのに、すでにどこかで体験したことのように感じること

なので、過去の体験が偶然事件の重要キーワードになって……という内容を想像していた。ところが本作は、FBIが開発した不思議な映像装置を使って事件発生以前の時間を追体験しながら事件を解明していくという予想外の展開。とはいえ、それは僕にとっていい意味で裏切ってくれたものだったので、先の読めない展開に十分楽しませてもらったと言える。

おそらくほとんどの人が僕と同じことを想像していたのではなかろうか?前情報があるとないとでは大きく印象の変わる作品だろう。まずあの装置の登場で裏切られ、その装置が実際に過去と繋がっているということで裏切られ、さらに過去にモノを転送できることで裏切られる。どんでん返しとまではいかないが、過去の作品にはないなかなかおもしろい脚本ではある。

だが、その中で「おいおい!」とツッコミを入れたくなったのが、人間を過去に送り込んでしまうという無謀な展開だ。これをやっちゃ~マズイでしょ。どこかのタイムトラベルものと何ら変わらなくなってしまう。もう少し驚愕のラストであればパーフェクトな作品だったかもしれない。

まあそれさえ気にしなければ、最後までサスペンス的な緊張感とアクションを楽しむことが出来る作品である。特にあの装置で過去の映像をグルグルと見渡すところなんかは、CG技術を生かしたもので見所でもある。またフェリーの爆破事件とは別に、クレアの殺人事件を絡め、そしてダグ(デンゼル・ワシントン)とクレア(ポーラ・パットン)のラブストーリーへと発展させるという流れ。演出的に観ても映画としては楽しめる展開だと言えるだろう。

最終的にはアメリカ映画によくあるテロ対抗作品だったので、過去にどこかで見たことのあるような、まさに”デジャヴ”的な体験をさせられる映画であった。

『E.T. 20周年アニバーサリー特別版』

2007年08月13日 10時24分41秒 | 映画レビュー
原題:E.T. THE EXTRA- TERRESTRIAL: THE 20th ANNIVERSARY
製作年度:2002年
上映時間:120分
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:ディー・ウォーレス 、ヘンリー・トーマス 、ピーター・コヨーテ 、ロバート・マクノートン[役者] 、ドリュー・バリモア 、K・C・マーテル
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
森の中に静かに降り立つ異星の船から現れる宇宙人たち。だが彼らの地球植物の調査は人間たちの追跡によって中断される。宇宙船は急いで空に舞い上がるが一人の異星人が取り残されていた。森林にほど近い郊外に住む少年エリオットは裏庭でその異星人と遭遇、彼をかくまう事にする。兄と妹を巻き込んで、ETと名付けられたその異星人との交流が始まったが、ETの存在を知っているのはエリオットたちだけではなかった……。



コメント:
誰もが知るあの有名なテーマ曲をバックに、満月の夜空を自転車で颯爽と飛び回る姿。
この名シーンにどれだけたくさんの人々が心を攫われてしまっただろうか?


20周年アニバーサリー特別版を観たのは今回が初めてだった。が、オリジナル版と比べてどこがどう変わってるのか細かいところはほとんどわからなかった。まあ違いは再度オリジナル版を観たときにわかることなので、そこまで気にする問題ではないだろう。本作のオリジナル版が公開されたのが1982年…ちょうど僕が生まれた年である。別にどうでもいいことだが、このような名作と同じ年にこの世に生まれてこれたというのはちょっとうれしい(笑)

僕は幼いとき以来、ちゃんと本作を観る機会がなかったので記憶は曖昧だった。あの名シーンと音楽、そしてE.T.というキャラクターを知っているというだけで、本作を全て知り尽くしていると思い込んでいた。だが、大人になって改めて鑑賞してみると、やはり名作と言われることだけあって映画としての完成度も高いことに気付かされた。

本作の見所と言えば、エリオットとE.T.の心の交流だろう。はっきり言って最初はE.T.を可愛いともなんとも思えない。”変な声を出す醜い宇宙人”だというのが率直な感想である。だが、そのE.T.に対してエリオットが心を開き、次第に心を通わせるようになる過程はとても感動的でおもしろい。E.T. のあのヨチヨチ歩き、片言の英語、仮装(?)させられる姿ときたら愛着を持たずにはいられなくなってしまうのだ。

だがこのままハッピーエンドといかないのが映画の性というものだろう。

宇宙船との交信がうまくいかず次第に体が弱っていくE.T.を横目に、心が繋がったエリオットにも命の危険が迫ってくる。だがその直後、エリオットの希望も虚しくE.T.だけが絶命してしまうのだ………と、ここから一気に感動のクライマックスへと物語は進んでいく。

もうとにかくこのラストには感動せずにはいられない。
ハンカチの用意を忘れずに鑑賞しよう!!

夢と希望と感動が詰まった本作、一度家族みんなで鑑賞してみてはどうだろうか?子供がいる人は子供と一緒に、いない人は自分が子供に戻ったときの気持ちで、とにかく何も考えず純粋な気持ちで鑑賞すればきっと思い出に残る作品になってくれるに違いない。



最後にどうでもいい余談をひとつ。

”E.T. phone home "

僕はこのセリフを勝手な思い込みで以下のように記憶していた。

”E.T. go home "

別に致命的な間違いではないが、このように覚えていたことで、E.T.が通信機を組み立てて仲間に救出を求める過程が、記憶から完全に抜けてしまっていた。やっぱ子供のときと現在とでは英語の聞き取りなどに差があり意味を取り違えてることを再確認。また間違ったままを嫁さんに真剣に説明してしまった自分が恥ずかしい^^;
時を経て観る映画にはいろいろ発見があるなと感じさせられる瞬間であった。

『17歳のカルテ』

2007年08月05日 15時55分11秒 | 映画レビュー
原題:GIRL, INTERRUPTED
製作年度:1999年
上映時間:127分
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ウィノナ・ライダー 、アンジェリーナ・ジョリー 、クレア・デュヴァル 、ウーピー・ゴールドバーグ 、ジャレッド・レトー 、ブリタニー・マーフィ
オススメ度:★★★★★

ストーリー:
精神療養施設・クレイモアへと送られる事になったスザンナは、自分より更に深い心の闇を抱えた患者達とかけがえのない時間を過ごす事になる。



コメント:
本作でアンジェリーナ・ジョリーがアカデミー賞助演女優賞を獲得したということで興味があった作品。ストーリーなどの予備知識は全くないままの鑑賞だった。

他の方のレビューでも書かれているが、ジャック・ニコルソン主演の『カッコーの巣の上で』と酷似しているということは否めない。どちらの作品も、精神療養施設に周りの患者とは様子の違う人物が送り込まれて、そこで起こる人間ドラマを描いた作品である。様々な人間の感情が交錯することで”生きる”という意味がどういうことか、いろんな角度から見つめなおすことができる作品だ。

酷似とは言ったが、それは設定上に過ぎない。最終的に打ち出される結論は全く違ったものだと言えるだろう。それぞれの作品で描かれる内容を一言で言うと以下のようなものだ。

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『カッコーの巣の上で』
精神療養施設の体制問題による、命の扱い方に対する批判

『17歳のカルテ』
精神療養施設に収容されたひとりひとりが存在意義を発見するまでの過程

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途中の流れは似ているが結果が全く違うものである。人それぞれ結果に対する捉え方は全く違うだろうが、命の大切さを感じることはできるはずだ。

ある時、リサ(アンジェリーナ・ジョリー)が施設を退院したデイジー(ブリタニー・マーフィー)に罵声を浴びせて自殺に追いやってしまう。その一部始終を目撃したスザンナ(ウィノナ・ライダー)は、ただ見ているだけで何も出来なかったことに苛立ちを感じ、そこから彼女は自分の存在意義を問いかけて自分なりの生き方を探そうとする。

ここまでの過程はもちろんのこと、この事件をきっかけに変化する彼女たちの姿が一番の見所である。

本作はとても重いテーマを題材にした作品だが、『カッコーの巣の上で』と並べて鑑賞するとより一層奥深い結論を見出せるような気がする。”女版カッコー~” という見方ではなく、それぞれのテーマをちゃんと認識して全く違った見方をする必要があるだろう。どちらも良作なので一見の価値はアリだ。

それにしても後からキャストを見てみると、余りの豪華な顔ぶれに驚いてしまう。彼女たちのフレッシュかつシリアスな演技にも注目して見るとおもしろいだろう。


余談だが、「夢と現実が混乱したことはある?お金があるのに万引きしたり、落ち込んだり…」というセリフを発しているウィノナ・ライダーは、近年自ら万引き事件を起こした張本人である。しかも本作で当時新人だったアンジェリーナ・ジョリーのみが演技力を高く評価されたことに対して「この役を演じれば誰だってオスカーを獲れる」と露骨に僻みを言い放ったそうだ。

なぜこんなにすばらしい映画の製作・主演に携わった女優がこのような行為に走ってしまったのか?
もしかして本作にのめり込み過ぎて現実でも同じような役を演じてしまったのだろうか?
まあそんな疑問が残ってしまう作品でもある。

『トランスフォーマー』

2007年08月04日 16時37分58秒 | 映画レビュー
原題:TRANSFORMERS
製作年度:2007年
上映時間:144分
監督:マイケル・ベイ
出演:シャイア・ラブーフ 、タイリース・ギブソン 、ジョシュ・デュアメル 、アンソニー・アンダーソン 、ミーガン・フォックス 、レイチェル・テイラー
オススメ度:★★★★☆

ストーリー:
2003 年、火星探査機ビークル2号に事故が発生。最後の交信映像には事故の元凶と考えられる“何か”が映っていたが、 NASAはその事実を封印してしまうのだった。やがて現代。その“何か”は既に地球へ侵入していた。それは、ジェット機や車のみならずデジカメや携帯電話など様々なテクノロジー機器に姿を変えられ、さらにロボット状の形へとトランスフォームする謎の金属生命体。こうして、世界中の至る所でトランスフォーム現象が始まり、攻撃型のロボットに変身した金属生命体たちは、ある目的のために人類へ攻撃を開始する…。



コメント:
『トランスフォーマー』って子供騙しの映画?
いやいや全くそんなことはない!!

マイケル・ベイとスティーヴン・スピルバーグが映画製作者としての見事な”トランスフォーム”を遂げた本作。ストーリーはかなりツッコミどころ満載だが、「考えるよりとにかく見ろ!!」と声を大にして叫びたいほど、まさに”映像革命”を果たした娯楽大作と言える。思えば公開まで長かった。本作の予告編を初めて観たのはいつだっただろうか?おそらく一年以上は待たされた気がする。だがその期待は決して裏切ってはいないだろう。とにかく本作の見所はクオリティの高い映像の数々。ストーリーは適当にすっ飛ばして観た方が良い。なぜなら描かれているのは、アメリカ映画によくある”戦争美化”な内容でしかないのだから。

マイケル・ベイの得意分野と言えばアクションシーンだろう。『アルマゲドン』や『パール・ハーバー』でもそのセンスは実証済みである。彼のスゴイところは、見て楽しい映像がどういうものか完璧に把握しているところだ。ロボットの変身ひとつひとつにしても、細部までとても丁寧に作られており文句の付けようがない。まただんだん激しさとスピードを増すアクションシーンでは、たまにスローモーションを入れることで観客をぐいぐいと戦闘シーンへ引っ張りこんでくれる。もうこれは見事な演出としか言いようがないのだ。

本作には登場人物が意外と多いのだが、はっきり言って彼らは単なる脇役に過ぎない。それも無理はないだろう。あんなかっこいいロボットの変身シーンを見せられたら目立つ隙なんかあるはずがない。戦闘機や車が変形するシーンがある度に鳥肌が立ってしまう。まさにこれこそ”男の浪漫”なのかもしれない。正直今まで『トランスフォーマー』なんて全く存在を知らなかったし、知ってからも単なるロボットとしか思っていなかった。だが本作を観てからは興奮せずにはいられない。ぜひ今年の夏、映画館で観て欲しい一本である。


だがアメリカ映画がどうしてもやってしまうのが、ストーリーを軽率に扱ってしまうところ。例え地球外生命体の襲撃だからと言って、軍事機器、施設、武器の使いすぎではなかろうか?展開を盛り上げたいのはわかるのだが、あまりに自国の戦闘能力を自慢しすぎな気がしてしまった。最後はその行動をロボットのセリフで無理矢理正当化しているような気がして…。まあこういった傾向はよく見られるので今更言うまでもないんですがね。

これから鑑賞される方は、その辺くれぐれも気にしないように鑑賞することをオススメする。

『unknown アンノウン』

2007年08月02日 01時16分35秒 | 映画レビュー
原題:UNKNOWN
製作年度:2006年
上映時間:85分
監督:サイモン・ブランド
出演:ジェームズ・カヴィーゼル 、グレッグ・キニア 、ブリジット・モイナハン 、ジョー・パントリアーノ 、バリー・ペッパー 、ジェレミー・シスト
オススメ度:★★★☆☆

ストーリー:
閉ざされた廃棄工場の中で意識を取り戻した5人の男たち。彼らは全員記憶を失っていた。やがて、わずかな手がかりから彼らのうちの2人が誘拐された人質で、残る3人が誘拐犯であることが明らかとなる。しかし依然として誰が人質で誰が誘拐犯かはわからないまま。誰もが混乱する中、突如鳴り響く電話のベル。それは誘拐犯のボスからで、日没までにはここへやって来るというものだった。5人は互いに疑心暗鬼を抱えたまま、協力して脱出を試みる。そんな中、徐々に甦る曖昧で断片的な記憶が、彼らの混乱に拍車を掛けていく…。



コメント:
閉ざされた廃棄工場の中で意識を取り戻した5人の男たち。彼らは全員記憶を失っていた…。
やがて彼らのうちの2人が誘拐された人質で、残る3人が誘拐犯であるということがわかる。

本作はまさに脚本勝負。閉ざされた場所というところから一瞬『SAW』シリーズを思い出すかもしれないが、まさにそれに似た心理戦が展開される。ぶっちゃけネタバレしたら、即終了~な一本。だが本作に出演している俳優の全てがバランスよく怪しさを醸し出しているので、最後まで読めない展開を楽しむことができるだろう。

ジェームズ・カヴィーゼル
グレッグ・キニア
ジョー・パントリアーノ
バリー・ペッパー
ジェレミー・シスト

この本作のメインともいうべき5人の俳優は、飛び抜けて目立つタイプの者はいない。だからこそ全員が怪しく見えるのだ。記憶を失くした上で見知らぬ土地にいたら誰もが混乱するに違いないだろう。そんな中、次第に記憶が戻りつつあるものの、完全に一致しない曖昧な情報が全ての人間へ対しての疑惑へと変化していく。そういった展開を描くという点でこのキャストのバランスはとても良かったと思う。この5人は必ず犯人と人質のどちらかなのでそれをあらかじめ予想しながら観るとおもしろいだろう。

だがちょっと必要ないと思ったのが、ところどころに挿入される警察の追跡劇だ。まあオチを考えればこの追跡劇は必要不可欠だったのかもしれないが、もう少しコンパクトに纏めて欲しかった。時折捜査のシーンが挿入されるので、その度に緊張感が薄れていくのだ。できれば最後まで工場内での5人の心理戦を盛り上げて「あっ!!」と驚かせてくれるような展開を期待していた。若干、編集の荒さまたは脚本の締めの甘さが目立つ仕上がりであったように思う。

最終的なオチが好きかどうかは人それぞれだろう。個人的には『SAW』のような驚きはなかった。やはりどこか期待し過ぎて神経をピリピリさせたのが逆効果だったようだ。こういった作品はあまり深読みせず気楽に鑑賞した方がより一層楽しめるのだろうな。決してデキの悪い作品ではないので、鑑賞前の自分の心構えにちょっと反省ということで^^;