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グリーンスパン

2006-01-26 02:15:47 | 
グリーンスパン

日本経済新聞社

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来週、2月1日で退任が決まっているグリーンスパンFRB議長の業績を振り返ろうと、読み直してみました。1987年7月の就任のエピソード(共和党員のFRB議長を求めていたジェイムズ・ベイカー大統領首席補佐官(当時)による選出、大統領への推薦で選ばれた)から、就任数ヶ月の株価暴騰、1990年代の大手銀行の経営不振や市場の低迷、クリントン政権下での財政赤字削減、ニューエコノミーの台頭などを経て、2000年の再指名までが描かれています。

改めて読んでみると、本当によくかけてるのに感心。基本的には時系列で進んでいくのですが、相次ぐ金融危機をたくにさばいていく手綱や政権、FMOCを初めとするFRB内、大手金融機関などとの駆け引きにはわくわくしながら読みましたし、経済指標と数学の鬼といってよいような鋭い分析、抜群の指導力、政治的な手腕、両極端な解釈ができるような曖昧模糊とした発言の意図と効果、ここぞというときにでてくる危機に対する勘、といった議長の特徴や手腕の分析が鮮やかに書かれている本です。現在のmaestroというのはよくつけたもの。ここで描かれているのは、金利というタクト一つで経済をたくみにあやつっている議長像です。再読でも十分に楽しめました。ボブ・ウッドワードの本は4冊読みましたが、どれもこれも面白いです。翻訳もとてもよく、つかえたり、疑問に思ってページをめくる手がとまるということはまったくありません。

2000年以降のグリーンスパン議長とその時代の負の遺産(巨額の財政赤字、住宅バブル、膨れ上がる経常赤字。ほとんどがブッシュ政権が作り出したもの・・・) ができあがっていく過程を描いた本は近いうちに出るでしょうが、完成度の高いこの本に並ぶのは難しいかもしれません。いっそボブ・ウッドワードがまた書いてくれるとよいのだけど。できれば翻訳者も同じで。

次の議長に決まっているバーナンキ大統領経済諮問委員会(CEA)委員長はブッシュ大統領が指名した人物では、めずらしく評判がいいようですが、タイプは大いに異なる模様。2002年にFRBの理事になるまでは、金融論を専門とし、大恐慌の研究で知られる経済学者。新聞記事を見ても、一流とされていました。インフレ・ターゲットを提唱していることで有名だそうです。学者だからあたりまえですが、理論派、ですね。

「グリーンスパンの政策を継承していく」と委員長は言っているそうですが、グリーンスパン議長とはかなりちがうタイプの議長になるのは、まずまちがいありません。まず、グリーンスパン議長はインフレ・ターゲットには反対でした。上にあげた本でも、とりわけ興味深かったのは、理論よりも指標などが示す現実/矛盾の分析、そこから仮説を導き出してさらなるリサーチで実証するというスタンスと、透明性を保ちながらも、曖昧模糊とした言葉や突然の利上げでマスコミ、政権、市場を煙にまき、マジックを行使してきた姿でした。簡単にいうと現実主義的直感派vs理論派という根本的なちがいが新旧議長にはあるようです。

歴代2位という18年もの在職期間を伝説で彩った名物議長が退場は間近にせまっています。一部でささやかれている米市場の混乱が生じなければいいんですけど。




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