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民主党のアメリカ 共和党のアメリカ

2008-09-22 04:59:32 | 
民主党のアメリカ共和党のアメリカ (日経プレミアシリーズ 15)
冷泉 彰彦
日本経済新聞出版社

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このところの金融不安で注目度が大いに下がってしまった日米の選挙。

自民党総裁選はもはや終結してしまった、という雰囲気が大いにただよっています。民主党にいたっては総裁選すらない始末。あとは解散総選挙ですが、イマイチ各政党ごとのちがいがわからず、争点が見えません。どこもかしこもばら撒き政策が大手をふるいそうで、よほどでなければしらけムードが漂うのでないかしら。

まだ二大政党のカラーがはっきりしている大統領選のほうがおもしろいかもしれません。野次馬で見ることができますしね。

この大統領選にあわせてだされたのが本書。筆者の冷泉 彰彦さんはJMMに寄稿しているニュージャージー在住の作家です。

JMMにも大統領選や二大政党とのちがいをテーマにした記事が多く、この本もその記事がもとになっているようです。NBOnlineの寄稿も、この本の下書きといってよいかもしれません。

とはいえ、あらためて一冊になったこの本は読み応えがありました。断片的に情報をしいれてわかっていたつもりでいたのが、かなりの誤解や思い込みがあったことが判明しました。共和党、民主党の特徴をやっときちんと理解できた気がします。

第一章は大統領選の前に読まないと、あまり意味がなくなってしまうぐらい、今年の大統領選を意識して書かれた章です。また、最終章の第7章「民主・共和両党と日米関係」も、これまでの日米関係を振り返りながら、共和党候補のほうが日米関係には有利、という論調を意識して書いてあります。ですから、できれば本書は大統領選前に読むべき本といえます。

とはいえ、第二章以降にとりあげてある内容は、この本が今回の大統領選以降にもアメリカ二大政党についての入門書として価値を持ち続けることができるかもしれません。

大統領選を見ていてこれまで疑問に思えたことはいくつもあります。その一つが、なぜ、個人的な問題であるはずの中絶が、常に大きな政治的な争点になっているのかという点でした。また、宗教の自由を歌っている国のはずなのに大統領の信仰が問題になるのも、正直、理解できませんでした。さらには、第一次、第二次大戦に踏み切ったのがなぜいつも民主党なのか、という理由も。また、熱心な共和党支持者のイーストウッドが、プロ・ライフとは逆の争点を扱った「ミリオンダラー・ベイビー」を作った理由というのも。

そう、民主党=リベラル、共和党=保守、と枠組みでは説明できないことが多すぎます。

この本は二大政党のちがいを明らかにすることによって、一見不可思議に思えるアメリカ人の心理と政治行動を説明しようとしています。たいへんわかりやすい説明です。

民主党=過剰なまでの自己肯定→和解と純愛のカルチャー
共和党=懐疑心と独立心の突然変異→孤軍奮闘とほろ苦い人生

この両党の対立軸がアメリカの社会を作っている、とされています。

たしかにこのように分けると、上にあげた問題だけでなく、アメリカという国の多くの事象が理解できます。銃規制が進まないわけも、なるほど、と思えるものでした。単に既得権の維持だけではないわけです。また、対立軸が激しいからこそ、自分の信念とは異なる候補者が大統領になり、最高裁の任命などをやってくれると、大きな不利益を被りかねない、というおそれを抱かざる得なくなるわけです。

これを単に政治面だけでなく、映画、ドラマ、スポーツ、ビジネス界と範囲を広げて議論が展開していきます。JMMでも同じネタであげられていまして、はじめてみたときはきわめて新鮮にうつったもでした。本ではさらにほりさげられた形で提示されていました。プリティ・ウーマンが民主党的、ダイ・ハードが共和党的、といわれれば、たしかにそうではありませんか。たしかにハリウッドでは共和支持か民主支持かがはっきりしているのでなかなか説得力があるように思いました。

第4章はふたつの対立軸が成り立っている国、という視点で、独立戦争以来のアメリカの歴史がコンパクトに説明されています。非常に役にたちます。

アメリカという国の理解を深めるのにお勧めの本です。


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