「再婚を勧められているんだけれど…」
と照れ臭そうに頬をあからめて伯母が言う…
ふと、
従弟の寂しそうな顔が浮かんだが、
これは伯母にとっても佳い話ではないだろうか…
相手は米国で煙草会社を経営しているらしい。
( 今どきのタバコ製造会社って、どうなんだろう…)
一抹の不安はあるが、
伯母や相手の年齢を考えれば、まぁ、それも問題ないだろう。
「いいんじゃない?伯母ちゃん、私も遊びきに行くから…」
…なんだか嬉しい、
伯母の再婚相手が米国に住んでいると言うことは
米国に親戚ができると言うことだ…
きっと庭には大きなプールがあって、
敷地内にはたくさんの花が咲いている…
この時期はバラやクレマチスが咲き誇っているに違いない
広くて明るいリビングの大きな窓にかけられたレースのドレープカーテンが風に揺れて
ピカピカに磨き上げられた大理石の床に柔らかい陽の光が射し込んでいる…
明るく清潔な家の空気が、
きっと病気がちな伯母の体調をよくしてくれるに違いない。
米国で暮らす伯母の家に滞在している自分を想像していると、
なんだかウキウキしてきた。
そこから、
急に場面が変わった。
私は日本にいるらしい…
合唱の練習会場で来週がコンクール本番なのに、
本番直前の練習に間に合わないかもしれない事を
パートリーダーに言い出せずにモジモジしている自分がいた。
時計の針が午後6時を指している。
(あぁ、もう間に合わない!)
次に行かないといけない…
(…アレ、次はどこに行くんだったっけ?)
と思ったところで目が醒めた。
明け方の夢はいつもこんな風だ。
伯母の十三回忌は一昨年だったか…
そういえば、
伯母の命日が、今月だったんだ。