ついに、というかやっとですが何とかこの謎を解明して記事にすることが出来るまでになりました。長い間悩み続けた疑問とその答え、私なりの考えがどのような話であるのか早速、書いておきたいと思います。
『死党』についての私の結論は、映画のタイトルではないということです。
(参考)中国語で死党とは?(こちらをクリック)
要するにジャッキー・チェンが”死党”と思う人物(=チャールズ・チン)を指しているということになります。
そもそも『死党』というのは80年代初頭、日本の書籍に72年の大地公司作品として載っていた情報でした。 どんな映画なんだろうと思うようになってからというもの、この不確定な情報を掲載した“一冊の本”に悩まされることになって、長い間、この記述は一体何を書いているのだろうという不安と混乱が避けられなかった・・・という話なんです。
こちらは前回書きました記事です。
その後、『山東老大』を見てみたのですが、率直なところどうも腑に落ちなかったんですね。簡単に言いますと、ここに来て直感的に『死党』=『山東老大』説が崩れ出し、私の中では有り得ないという実感が急に高まったのです。
そして「もう一度、他のを見てみよう」と思い、昆仲公司の『大密探』(1973)をチェックすることに・・・。
再度『大密探』を見てみると、ふと気付いたのです。この『大密探』はオープニングにもあるように銀色鼠隊の映画だったのです。
ここで流れるのはウィークエンダーでおなじみのアレ。「鬼警部アイアンサイド」より
銀色鼠隊メンバー
前列左がチャールズ・チン
以前、検証した『小偸鬥大賊』(こちら)ではこの銀色鼠隊の関係から出演できたとの結論だったのですが、この映画には肝心のチャールズ・チンがいなかったのです。
では、その『小偸鬥大賊』の前にもう1本あったとしたらどうでしょう。
つまり『女警察』の後、チャールズ主演の『大密探』に出演し、その流れでアラン・タンの『小偸鬥大賊』出演につながった・・・。いかがでしょうか。これならすんなり話が通って一気に真実味を帯びてくるではありませんか。
このつながりには説得力があり、ジャッキーの言う通りになるので、やはり『山東老大』ではなくこっちではないかとその時思ったのです。
前回書きましたように主役とはいえ、俳優のチャールズとしてはプロデューサー(陳浩)に紹介してスタントを少々のお手伝い程度だったと思われます。
実際の『大密探』では武術指導こそ劉家榮と陳全という当時ジャッキーとはライバルグループに相当しますが、多人数でのバトルは非常に少ない展開で進行します。
ここにジャッキーが入り込む隙があったのでしょうか!?
えっへん!(笑)。では、実際の本編では、どんな場面になっていたのでしょうか。
チャールズがバーで酒を飲み、酔って帰るところに車に乗ってやってきた四人組に駐車場でからまれるというシーンがあります。
車の前の座席には高遠と任世官、うしろに赤い服の男とGジャンに白いシャツのジャッキーらしき人物が乗っています。
左:Gジャンの男 右:チャールズ
横顔の一部が一瞬見えますが、誰であるかハッキリ確認はできません。
しかし、可能性は十分あると思います。
そのGジャンの人物はチャールズに膝蹴りを入れた後、パンチで殴り倒します。(このパンチは別のカットに編集されており、白いシャツの袖ではない人物(たぶん高遠)に変わっています。)
このGジャンに白いシャツというのが『女警察』のときの服装と似通っているんですね。(偶然にしては出来すぎではないかと思うのですが。)
『女警察』より
ジャッキーがチャールズに呼ばれたことを公言しているのは、『女警察』の出演後、少々のお手伝い程度で、そのタイトルも、どこの会社かも覚えてなくても、チャールズ・チン御大に呼ばれた事がうれしかったからだと思うのです。
だから、ジャッキーは嘘など言っていないですし、(呼ばれたことは真実なのですから。)実際にもう1本あったのです。
但し、あくまでジャッキー1人が呼ばれた形であり(いつものユン・ケイらは不在)、結果はどうであれ共に同じ映画に出演したことになるのだと思います。それが『大密探』という探偵映画なのですから『死党』なんてタイトルの映画、いくら探したってある訳はなかったという事になるのです。
余談ですが、そのほか気になった点を挙げておきます。
その1:共演者に『女警察』との共通点が多い。
チャールズ・チンをはじめ、チャン・ナン、ウォン・サムなどのベテラン勢(これが結構あやしい・・・)。
武術指導はクレジットによれば劉家榮と陳全であることが確定(陳全はバイクに乗ってチラっと登場してます) ですが、気になるのはしっかり出演していた黄培基の方。彼は72~74年頃の作品(例えば『満洲人』や『黒人物』、『逃獄犯』『五大漢』など)で武術指導と、邵氏出身ですがジャッキーとも限りなく近いポジションにいた様なので何らかのつながりがあった可能性も少なからずあったのかも知れません。
ちなみに『女警察』こと「ヤングタイガー」ですが、米を除いたヨーロッパなど海外のプリントならジャッキーブレイク後のリバイバル版ではないオリジナル73年版のクレジットを見ることが出来ます。
林秀と陳元龍。国内版だとそうはいきません(苦笑。
『女警察』いま見るとジャッキーが若い頃の飛んだり跳ねたりするアクションも見れるし、割と新鮮かも知れませんね。(ファンには忘れられない1本です。)
ほーら、「ヤングタイガー」見たくなって来たでしょう(笑)。
その2:ロゴのデザインが似すぎてます。(爆)
ただそれだけー。
内容もそうですが、『大密探』という映画は明らかに『女警察』からの流れでしょうね。
ということで、『死党』の最終考察、昆仲公司の創業作『大密探』について書いてみました。(配給はあの協利だったようです。)そういえば大地公司は『頂天立地』『女警察』の2本だけしか作られなかったのですから、単純に大地の3本目なんてあり得なかった・・で良かったんですね。
『女警察』の後、意気投合してチャールズに呼ばれ、チャールズ主演『大密探』に出演。そもそも陳浩の会社、昆仲公司も小さな会社でしょうからほぼ大地公司とほとんど扱いは変わらない物だったのではないでしょうか。
最後に、ここまで導き出すのには長い時間がかかりました。今回、解明できたのもずっと協力していただいたAceさんのおかげと思っています。(とても感謝しております。この場を借りてお礼を申し上げます。)