京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

雨だから追悼文など

2022年05月12日 | 日々の暮らしの中で
連休明けから構成など練ってきたが、筆執れば物書かれ…とやらで原稿用紙に向かった。来月初めの寺子屋エッセイサロンに間に合わせたい。

昼から雨だから、『週刊読書人追悼文選 50人の知の巨人に捧ぐ』(「週刊読書人」編集部編)を拾い読み。開けば一人か二人ぐらいずつをよんでいる。

第1章 文豪たちとの別れ 1960年代、 は荷風から広津和郎まで13人。第2章は己の美学を貫く、とした三島由紀夫から中野重治まで1970年代の10人。第3章は戦後社会を穿つ 1980年代。そして第4章 新しい時代に向けて 1990年代、は松本清張から本多秋五まで、…と言った具合での50人。

今日は「吉田健一氏が亡くなった」と書き始まる巖谷大四による追悼文を読んだ。
(1912-1977 評論家、英文学者、小説家 父は元首相の吉田茂)

【酒がまわると、舶来の鬼瓦のような顔をして、隅田川の向こう岸にまで聞こえるような声で笑った。七頭身位の大きな頭の大きな顔の大きな口をクワッと開けて、小鳥が水浴びするときほどのツバをとばし、ワンセンテンスしゃべるたびに「ハハハハハハ…」と笑った。片仮名の「ハ」の字が二、三十連続して、それをくりかえす、「岸打つ波」の如きリズミカルな笑いで、ケンランたる笑いであった】。
「見事な酒飲みであった」

笑いをこのように表現された文章がまたいい。「バッカスの笑いが今も聞こえる」と結ばれる。
さまざまに故人への敬意が滲み、その人らしさを浮かび上がらせる文章に触れ、人物の捉え方、人生の生き方を味わう。

コメント (2)
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