京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

婆さまは

2008年09月15日 | 日々の暮らしの中で
婆さまの好きな言葉は、「もったいない」。
寺に生まれて寺に育ち質素な生活の中で備わったものだ。

自分の服は自分で縫い、和裁もこなす。なかなかのお洒落さんだったと聞く。
なのに、いつまでも同じ服を着ながら新品はタンスの肥し。残った食品は何でもかんでも冷蔵庫。ラップもせずにカチンカチン。野良行き靴が破れたら同種の片方を再利用。もったいない!もったいない!
ケチではない。故郷の香りをいっぱい詰めて小包発送大好き。特に他人には気前がいい。

婆さまの実母は幼少時に死亡。継母は後年耳が遠かったらしい。
屋内にも外での話声が聞こえてくる。大抵どこにいるかがわかる。静かであればお昼寝か。
演技派の婆さまは、紙芝居が得意だった。孫を背負っての子守歌は軍歌。本堂の縁を行ったり来たり。
日々、大声の訓練に抜かりはなかった模様だ。
それでも若かった頃は○○小町と言われ美人で人気者だったらしい。想像は、ムズカシイ?が。

ぽんぽこ小狸になって、眠くてたまらぬ授業を繰り返したらしい爺さま。亡くなってすでに40年近く。
爺さまの分も背負って「もったいない、もったいない」「仏さんが見てはる」。

たまの外出に、長年ためこんだ“勝負服”。
まだあったの?! それって××の時の?! おいおい、流行りってものがあるでしょう!
見栄っ張りで、“老人車”を押し歩くのを嫌った。「年寄りくさいやろ」って婆さま、いったいいくつに。齢ではないか。

婆さまは和歌をたしなみ、書に親しみ、俳画も好み、黙々と教室にも通った。筆跡は奔放、のびのびと!?

婆さまは年を取った。すっかり足腰が弱った。しかし、大きな声で笑ってしゃべって、よく食べる。よく動く口のおかげで、脳の活性化は図られボケることを知らない。これぞ長生きの秘訣となるのか。

ちょっと耳が遠くなったかなあ。大声出すのはいやよ。
   (赤染晶子さんの9.15付けエッセイをパロディの参考にさせていただいて)

     ≪虫の声 原田泰治≫  
コメント (6)
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