今年最後の映画の日(入場料が1000円になる)、いくつかの興味のある作品から やむなく3本を選んで、鑑賞して参りました。
朝一番に、長崎駅ビルのシネコンへ到着すると、何やら長蛇の列。「ややっ!まずっ」と思いつつ列に並んでいましたが、大半はこの日公開の『武士の一分』狙いだったので一安心。(そういいながら、2本目に見たのですが...)
ということで、太平洋戦争末期に 軍神とあがめられた栗林中将の家族宛に残した手紙に触発されたという、C.イーストウッド監督の『父親たちの星条旗』を無事みることができました。
映画は かつて”英雄”と奉られた米兵士の回想シーンと、硫黄島上陸の状況が相互に出入りします。硫黄島の戦闘シーンは、この作品の制作者にもなっている スピルバーグの『プライベートライアン』を思い起こさせるほど、壮絶でリアル。しかも見えない敵は、日本兵なのですから興味の度合いが違います。
心ならずも”英雄”として生き残った3人が、その後 アメリカ本土で戦時国債PRへ利用され、「使い捨て」にされることに疑問を持ち、あの戦争の意味を考え続けます。「確かに国のために戦場へ行ったが、戦ったのは戦友のためだった・・・」という言葉に、国が起こす戦争と、実際の戦闘行為のギャップを感じ、悲惨さを痛感する作品です。
また、いうまでもなくこの映画は、”硫黄島2部作”の1作目で アメリカの視点で描かれていますが、同監督の「ミリオンダラー・ベイビー」と同じく、行為の善悪を一方的に決めつけるのではなく、観客に考えさせるというコンセプトが貫かれていました。
作品はテンポ良く展開し、また戦闘シーンの繰り返しもなく、監督の意図が ストレートに伝わる割に、丁寧に場面を選んで 説明していく展開がすばらしいと思いました。間違いなく、今年のベスト3に入る映画です。
さて、敵方の 栗林中将のことは今年初めに読んだ『散るぞ悲しき』で初めて知りましたが、彼が骨を埋めた硫黄島のことは 正直言って位置さえもよく知りませんでした。しかし『父親たち・・・』に加え、それ以上に評判を呼ぶと思われる『硫黄島からの手紙(12/9公開)』をみることで、少なくとも60年前、両国合わせて3万人弱が命を落として争奪する意味は何だったを、僕自身が 改めて考えることになるいい機会だと思いました。
今年は「天皇」「硫黄島」を、映画と本を通じて 戦前戦中のことをいろいろ学びましたが、年末にも「蟻の兵隊」が上映されるので、まだまだ”降りられない”テーマになりそうです。