伊勢崎市議会議員 多田稔(ただ みのる)の明日へのブログ

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自治体財政をめぐる冒険

2016-10-30 19:04:14 | 政治・政策・経済
昨日の、今村寛さんの財政講義と
SIM2030体験の総合的な感想です。

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金がないということ

よく「自治体に金がない」といわれます。
でも自治体の毎年の予算は数十億円から数千億円あります。
具体的に、何のお金が無いのでしょうか?

自治体の財源は、自治体の判断で使途を自由に決められる「一般財源」と、
国からの補助金のように使途が限定されている「特定財源」に分かれます。
一般財源が多いほど予算が自由に組めます。

自治体の予算は、経常経費と政策的経費に分類されます。
ざっくり言うと、人件費、物件費、維持補修費、扶助費及び公債費などのように
毎年度、固定的に必要な経費が経常経費。
新規事業や一時的に投入する経費が政策的経費。

自治体の一般財源に対する経常経費の割合を「経常経費比率」といいい、
これが高いと、自治体が自由に使えるお金が少ないことになります。
現在では、多くの自治体でこの経常収支比率が95%以上となり、
自治体の判断で自由に使えるお金はほとんどありませんので、
新規事業などを始めるのは難しいのです。

「自治体に金がない」の正体は、
「政策的経費に使える一般財源が無い」なのです。


2つのルール

自治体財政のルールは2つだけ。
(1)「歳入の範囲で予算を組む」
(2)「議会の議決を得る」

歳入の確保は財政課が行っているので、
他の職員はあまり財源のことを気にかけていないとおもいますが、
借金することも含めて財源が確保されていなければ支出はできません。

自治体の首長が予算案を作成しても、
議会で承認されなければ「予算」として成立しません。
事業を廃止するにも、新規に始めるにも議会の承認を得られるように
説明、説得する必要があるのです。
そのためのデータやロジックが必要です。


マネジメントに必要なもの

昔は財政課が、役所全体から出される予算要求を1件づつ査定していました。
現在では「枠予算」というやり方があります。
財政課が各部局に、財源や重点政策などを加味した上で「大枠の予算」を配分します。
各部局長は、その予算枠の中で事業を取捨選択し予算案を作るのです。

福祉や農業など、各分野ごとに部局長が所管する事業の必要性、重要性等を判断し、
事業の優先順位を決定し、新規事業を始めたり、既存の事業を廃止したりします。
これが部局長による予算のマネジメントです。

各分野の現状や事業の必要性を一番よく分かっているのは、その分野の職員です。
年々財源が厳しくなっていきますので、なんでもかんでも予算はつけられません。
実施すべき事業はあれかこれかを判断するのは財政課でなく、各分野の部局長。

予算作成には、権限と財源(枠予算)を自分で持っていることが必要です。
そして各部局長の役割は、自分の事業や予算を最優先で守ることではなく、
市長の視点に立ち、自治体全体が最適となるように部局を超えて対話し、
予算編成することが大事です。
そのためにはお互いが持っている事業について、
情報を共有していることが基礎となります。


やめることの難しさ

将来日本の人口は激減すると予測されていますので、自治体の税収も減っていくでしょう。
一方で、高齢化は進みますので社会保障費は年々増大すると予測されています。
増税せずに社会保障費の増大や新規事業の財源を確保するには、
現在行っている事業を廃止していかなければなりません。
事業に優先順位をつけ、順位の低いものから廃止するのです。

しかし、どんな事業にも恩恵を受けている住民がいますので、
廃止するには議会や住民が納得・同意できる説明が必要です。
SIM2030を体験する中で、行政事業を廃止することの難しさを実感しました。

でも廃止するための良いヒントも見つかりました。
一つは、事業目的を達成した場合です。
この場合廃止しても文句はつけられません。

二つ目は、サンセット方式の場合。
これは事業を行う場合、あらかじめ終期を設定するやり方です。
例えば、「この事業を5年間実施します」と言って始めた事業であれば、
5年後に廃止することに特別の理由はいりません。
逆に継続する場合には特別の理由が必要です。


総合計画と財政

これから先の自治体予算は、どんどん既存の事業を削減することが予想されます。
そのためには、すべての事業について優先順位をつけなければなりません。
私たちの自治体は何を大事と考えるのか、その価値観を持っていなければ
順位の判断はできません。

将来、私たちの地域は、どんな社会でありたいのか、
それを示すのが各自治体が作成する「総合計画」です。
そのあるべき未来の姿を目指して、
未来からの逆算で毎年の予算編成を行っていくのです。

そのように理解すると、総合計画の重要性が今まで以上に増してきます。
なんでもかんでも実現します的な総合計画は単なる夢物語であり、
予算編成の指針として役に立ちません。
将来確保できる財源の限界を意識し、
全体の予算枠を考慮した総合計画でなければなりません。

多くの自治体でもそうだと思いますが、
福岡市役所では総合計画作成時には、
財政課が財政的観点から記述内容について調整しているそうです。


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