伊勢崎市議会議員 多田稔(ただ みのる)の明日へのブログ

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「訂正する力」 東 浩紀

2024-06-19 15:40:23 | Weblog

東博紀著「訂正する力」朝日新書。

要点と感想をお伝えします。

興味を持たれた方は、ぜひ読んでみてください。

 

 

 

(日本では脱構築しか有効でない)

 

空気は、空気批判もすぐに空気に変えてしまう。

日本の閉塞感の原因はそこにある。

日本においては、よかれ悪しかれ、ものごとは

「いつのまにか変わる」ことしかありえない。

明示的に「変えましょう」と言っても、

その水自体が新たな空気を生み出してしまうからです。

だとすれば、その「いつのまにか」を

どう演出するかが課題になる。

その課題に答えるのがこの本の主題である

訂正する力なのです。

 

正面から既存のルールを批判しても力をもたない。

ルールを訂正しながらも、

その新しさを前面に押し出さず、

「いや、むしろこっちこそ本当のルールだったんですよ」

と主張し、現在の状況に対応しながら過去との

一貫性も守る。そういった両面作戦が

不可欠なのです。

 

<多田コメント>

・政治改革、行政改革、組織改革等、たくさんの改革を

 行おうとして「変えましょう」と呼び掛けても

 スパっとかわれません。

・有効な手段が「いつのまにか」であるなら、

 それについて学んでみましょう。

 

 

 

(理解できないまま放置する)

 

ジャニーズ騒動はかつては沈黙することがルールでした。

しかし今は糾弾することが新しいルールになり

皆それに従い糾弾し始めている。

これではどちらも空気の支配に変わりありません。

本当に大事なのは自分と異なる意見を持つ人間を、

すぐに理解し包摂しようとするのではなく、

理解できないまま「放置」するある種の距離感なのです。

その点でいまの日本社会は、まるで小学校の教室のように

幼稚な空間になっています。

<多田コメント>

意見や考え方の異なる人々が共存するのが民主主義。

全ての考えをすぐに分かったつもりになる、

あるいは無理に分かろうとするのでもなく、

今の自分には理解できないものは理解できないものとして

排斥するのではなく距離を置く。

 

 

 

(リセットできない)

 

特定の土地で営々と続いてきた文化や習慣は

なかなかリセットできるものではありません。

だから訂正の発想が必要なのです。

ぼくたちにできるのはリセットではなく改良。

逆説的な表現になりますが、前進のためには復古しかない。

「じつは、、、だった」というクッションがないと、

改良は社会の中に根づかない。

 

社会はリセットできない。

人間は合理的には動かない。

だから過去の記憶を改定しながら、

だましだまし改良していくしかない。

それが本書の基本的立場。

<多田コメント>

政治は「保守」対「革新」の闘いがメイン。

ただし「保守」と言っても、なにがなんでも昔のやりかたを

まったく変えないという主張ではありません。

江戸時代や明治時代の政治や社会の仕組みを

現代で行うことは不可能。

「保守」とは、時代の変化に合わせて

これまでの社会を『ゆっくり』変えていこう、

という主義だと私は考えています。

一方「革新」は、これまでの社会を『急激に』変えていこう

という主張なのだと思います。

どちらも「変えていく」部分は共通で、ちがうのは

変化の「スピード」と私は理解してます。

 

 

 

(サンクコスト)

 

経済学には「サンクコスト」という概念があります。

すでに投資したものの回収ができない費用のこと。

理系の世界には現在の理論しかありません。

過去の理論は必要ありません。

けれども人文学の世界ではそう考えません。

未来の可能性は過去の訂正によってこそ

切り開かれると考えます。だからできるだけ多くの

過去の可能性を蓄積しておくことが、

未来を豊かにすることだと考えるのです。

図書館はそういう発想でつくられてます。

 

 

 

(日本は民主主義の怖さに直面していない)

 

民主主義の本質は、人民が欲するとおりに国を動かす

ということであって、その意味ではじつに怖い思想です。

ポピュリズムに直結しているし、

人民の意思を代表するのが

特定の党や独裁者ということになれば

全体主義ファシズムを生み出すことにもなる。

民主主義はすばらしい。

けれども同時に怖いものでもある。

なぜなら民意はまちがうし暴走するからです。

この両義性を理解することが重要です。

<多田コメント>

2013年、麻生元総理は次のような発言をしました

 『ドイツでは、民主主義によって、きちんとした議会で多数を握って、

  ヒトラーが出てきたんですよ。ヒトラーはいかにも軍事力で(政権を)

  とったように思われる。全然違いますよ。

  ヒトラーは、選挙で選ばれたんだから。

  ドイツ国民はヒトラーを選んだんですよ。間違わないでください。

  そして、ヒトラーは、ワイマール憲法という、

  当時ヨーロッパでもっとも進んだ憲法下にあって出てきた。

  どんなに憲法がよくても、そういうことはありうるということですよ。

  (中略)

  憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、

  ナチス憲法に変わっていたんですよ。誰も気づかないで変わった。

  あの手口学んだらどうかね。もうちょっとさ。

 

 

 

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