聖なるものと崇められているものを、勝手に動かしたり手を加えたりすると、祟られるという話は昔からよくある。
山梨県にまさにそうした場所がある。
それは、甲州市大和町初鹿野(はじかの)の山間にある諏訪神社だ。
神社そのものは何の変哲もないが、問題はすぐ脇を走るJRの線路に覆い被さる様にして立つ、見事なホオの木である。
これはこの神社のご神木なのだが、これこそが「祟りの木」だと言うからただ事ではない。
事の始まりは、1953(昭和28)年にこの木の枝を切った作業員6人が相次いで不審死した事だった。
この一件でご神木の祟りを恐れた関係者は、線路の拡張工事ではお祓いをして臨んだ。
ところが、その祈りも虚しく、ほどなくしてご神木の近くでバス事故が起こり、乗車していた学生が死亡したのだ。
この時、奇しくも前回と同じ6人の命が奪われたのだ。
神社にある案内板では、このホオの木は日本武尊(やまとたけるのみこと)が杖代わりにした枝が、発芽したものだと伝えている。
樹齢は二千数百年を超えており、幹が何度か枯れては根本から新しい芽が出て、現在に至るという。
この木をおろそかにすると、不慮の事故が起こると、古くから信じられているそうだ。
これに頭を痛めているのが、ご神木を切るに切れないJRである。
JRは信号の位置を変えたり、木が架線に触れない様にフェンスを立てたり、ネットを張ったりと、ご神木に最大限の配慮をしている。
まさに触らぬ神に祟りなしの心境だろうか。