訪れると恋がかなう、良縁に恵まれるというスポットは世界中にある。
京都市東山区にある安井金比羅宮もその一つだが、ここは名高い縁結びの神と同時に悪縁切りのご利益があるからだ。
安井金比羅宮に祀られている主神は崇徳天皇だ。
崇徳天皇は平安時代末期、複雑な人間関係と権力争いに巻き込まれた末にクーデターに失敗し、讃岐国(現・香川県)に島流しにされた幸薄い人物として知られている。
凄まじい怨念を背負い、讃岐の金比羅宮にこもった崇徳天皇は、罪が許される様にと一切の欲を断ち切った。
この事から、みずからの力では断ち切れない物を断ちたい時には、崇徳天皇の霊にすがろうと信仰を集める様になったのだ。
そんな安井金比羅宮の境内で、異様な雰囲気をかもし出しているのが、「縁切り縁結び碑」である。
もともとは絵馬の形をした大きな岩だというが、その表面には「形代」というお札が何千、何万と貼り付けられているのだ。
形代は願掛けする人の身代わりなのだ。
形代に願いを書いたら、それを念じながら神の力が注がれているという碑の中央の穴をくぐるのだ。
碑の表から裏にくぐると悪縁が断たれ、裏から表にくぐると良縁に恵まれるとされている。
ここは花街である祇園に近い事も有ってか、願い事には男女の縁切りも目立つのだ。
「縁は異なもの味なもの」とは言うものの、悪縁でがんじがらめになると身を滅ぼしかねない。
自分の力が及ばなくなった時、人はここに足を運ぶのだろう。