爺さんが伝えたいこと

寡黙に生きて来た爺さんが、一つの言葉ででも若い人達の役に立つならば、幸いです。

熊野古道は恐ろしい

2021-06-17 12:58:04 | 日記
日本屈指の霊場である熊野は、古くからあの世に通じる特別な場所として、人々から深く信仰されてきた。

この聖なる地で発展した熊野本宮大社と熊野那智大社、熊野速玉大社への参詣道が熊野古道だ。

昔は皇族や貴族をはじめ武士、庶民までが熊野古道を歩いて詣でたが、山深い熊野古道では盗賊に襲われて殺された人も数多くいた。

だが、昼でもほの暗い熊野の山奥では夜はさらに漆黒の闇になる。

盗賊ですら身動きがとなれない。

熊野の伝承によると、盗賊らは一計を案じ、鶏に細工をして夜が完全に明けきらない内に、朝を告げて鳴くようにしたという。

そして、朝がきたと勘違いした旅人をまだ薄暗いなかで出発させ、そこを狙っては殺して、金目のものを奪ったと伝えられる。

また、熊野古道では山中で食料が底をついて餓死する人も数えきれず、餓死者が出た場所にも恐ろしい言い伝えが残っている。

妖怪「ダル」という餓鬼が現れ、空腹の旅人に取り憑くというのだ。

ダルに取り憑かれると、その場から歩けなくなって行き倒れてしまう。

これを防ぐには何でもいいから食べ物を口にするか、手に「米」という字を書いて食べる真似をしなければならないという。

博物・菌類・民族学者である南方熊楠(みなみかたくまぐす)も熊野の山中で、ダルに取り憑かれたと書き記している。

あの世の入り口とされる熊野だが、皮肉なことに盗賊の被害者や餓死者には、熊野古道が実際に死への道程になってしまったのだ。

熊野古道の道端には、今も彼らの供養をしたお地蔵さまが、いくつも祀られているのだ。