「年金運用損5兆円超」発表なし 強まる不信...参院選後に先送り、不利な情報を削除
与党が選挙の争点にしたくないのは見え見えだ。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016070290070605.htmlより転載
15年度 年金運用損5兆円超 株比率倍増直後に赤字 投資是非争点に
国民が支払う国民年金などの積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、二〇一五年度決算で五兆円超の損失を出すことが、厚生労働省への財務諸表の提出で正式に明らかになった。GPIFが資産運用の際の基準として株式の比率を増やした結果、損失がふくらみ、五年ぶりの赤字となった。株式比率を上げたことの是非が、参院選で争点に浮上している。
GPIFは国民が納めた保険料で年金給付に回さなかった分を積み立て、国債や株式で運用している。現在の総資産は約百四十兆円。より高い利回りを得るため一四年十月に運用基準を変更、国内外の株式は保有目安を24%から50%に倍増させ、逆に国債は60%から35%に引き下げている。
一五年度の損失は海外市場の動揺により、株価が下落したことが主因。一六年度に入ってからも英国の欧州連合(EU)離脱決定を受け、六月二十四日の日経平均株価(225種)は終値が前日比一二八六円安となり、下落幅は約十六年ぶりの大きさを記録。一六年度もさらに損失が出る可能性が高まる。
GPIFの運用損失は与野党幹部が参加した二十六日のテレビ番組でも討論に。「株への投資を減らし安全な運用に切り替える」と主張する民進党の山尾志桜里政調会長が「安倍政権が株式投資を倍増し、損失が五兆円となった。英国の離脱で、損失が二兆円を超えるという試算がある」と指摘すると、自民党の稲田朋美政調会長は「一時的な損失よりも、安倍政権になって四十兆円の利益が出たことをみて」と反論した。
GPIFは三カ月ごとに運用実績を公表しており、最新は一五年十~十二月。安倍政権の誕生は一二年十二月二十六日なので、一三年一~三月分からの合計実績をみると収益は約三十三兆円。稲田氏は一二年十~十二月の分も加えた約三十八兆円の収益を念頭にして発言したとみられる。
一方、基準変更後の初めての年間実績になる一五年度は、株式の保有が増えたために損益の振れ幅が大きくなったことを多くの専門家が指摘している。一五年七~九月は三カ月で七兆九千億円のマイナス、同十~十二月は四兆七千億円のプラスとなった。公表前の一六年一~三月も大きなマイナスの見通しだ。
野党側は例年七月上旬までに公表していた年間の運用実績が、今年は参院選後の七月二十九日にずれ込んだことを指摘し、「損失隠しだ」と情報公開に消極的な姿勢も追及している。
<年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)>
国民年金や厚生年金の保険料収入の余剰分を積み立てた「年金積立金」を、国内外の株式や債券に投資して管理・運用する。厚生労働省の所管で、2006年に設立。14年10月に国内外の株式比率を計50%まで引き上げることを決めた。政府は理事長に権限が集中する組織体制を見直し、重要事項は外部有識者らでつくる経営委員会による合議制で決めることなどを盛り込んだ年金関連法案を先の通常国会に提出したが、継続審議となった。GPIFはGovernment Pension Investment Fundの略。
(東京新聞)
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