両手を広げて(1)

2020-04-04 07:49:42 | 童話
『お母さん、僕ね、夢の中で空を飛んでいたんだよ。』
『あらっ、すごいわね。』
『両手を広げて、ビューンと飛んでいたんだよ。』
お父さんは『夢は何でもできるけれど、本当は飛べないよ。』
だけど、僕は飛べると思う、夢の中で飛んでいたから飛べるんだ。

『お母さん、僕ね、また夢の中で空を飛んでいたよ。今度はね、パラグライダーを付け飛んでいたんだよ。』
『あらっ、すごいわね。』
お父さんは『少し現実味のある夢になったな。』と言ったが、すごいねとは言わなかった。
僕はできそうな気がする。
そして、今晩はどのようにして空を飛ぶのか楽しみだ。

『お母さん、僕ね、また夢の中で空を飛んでいたよ。今度はね、ヘリコプターを操縦していたんだよ』
『あらっ、今度はすごいわね。』
お父さんは『そうだなぁ、努力すれば可能性のある夢だな。』と言ったが、すごいねとは言わなかった。
僕は大きくなったらヘリコプターに乗ろうと思った。

『お母さん、僕ね、また夢の中で空を飛んでいたよ。今度はね、ジェット旅客機を操縦していたんだよ。』
『あらっ、すごいわね。』
お父さんが『いっぱい努力しないとなれないよ。』と言って、ガンバレと言った。
僕は努力してジェット旅客機を操縦しようと思った。