僕の順番(1)

2018-04-09 07:06:31 | 童話
僕は今、海の中の水になっています。
小さな波や大きな波となって、ゆ~らゆら、ゆ~らゆら、と上下しています。
そして、すぐ近くを船が進んで行くと、大きな波がザブ~ンと来て、僕は大きく飛び上がり、ドスンと落ちます。

海の中にはたくさんのお魚がいて、みんなで楽しそうに泳いでいます。
だけれど、ヒトデは泳げないので、海底をゆっくり、ゆっくりと歩いています。
僕は海岸に来て、砂浜に向って、ザブーン、ザブーン、と進みました。
小さな子供の右足をザブーン、今度は左足をザブーン、そして、お尻をザブーン。

ずっと暖かい場所に居たので、僕は蒸発して、小さな、小さな水の粒の水蒸気になったのです。
空気と一緒に、どんどんと高い空に上がって行きました。
そして、みんなで手をつないで大きな雲になりました。

高い空を、ゆっくり、ゆっくりと、風に押されて流れて行きます。
『ここからは、家や森や山がよく見えるなあ。あそこの道路は自動車がいっぱい走っている。さっきまで居た海もよく見えるなあ。』

そして、僕はどんどんと空の高い所に上がって行きました。
『あっ、寒くなってきた。高い空は寒いんだね。』
僕達は寒いので、みんなでくっ付きました。
『あっ、下へ下り始めた。』
僕は空から降ってくる雨になったのです。
たくさんの友達と一緒に降っています。いつもは小さい粒で下に下りて行きますが、台風の時や夕立の時は、たくさんの友達と手をつないで大きな粒となって一緒に降ってくるので、ザーザーと大きな音がします。
大きな木の葉っぱにザーザーザー、大きな木の下の小さな木の葉っぱにポツポツポツ。