歌の好きなオジさん(1)

2018-04-04 07:01:42 | 童話
歌の好きなオジさんは、いつもきれいな声の女性歌手の歌を聴いています。何時間も何時間も聴いています。オジさんはそのきれいな声の女性歌手の歌が大好きです。

ある日、その歌手の歌が、
『毎日聴いてもらって、ありがとうございます。』
に聞こえました。
オジさんは、近くに誰かいるのだろうかと思い、周りを見ましたが誰もいません。
一緒に歌を聴いていた犬に聞きました。
『お前が言ったの?』
犬は
『僕じゃないよ。』
と言いました。
今度は一緒に歌を聴いていた猫に聞きました。
『お前が言ったの?』
猫は
『私じゃないわよ。』
と言いました。
『だれが「ありがとう。」と言ったのかなぁ?』
『わたしよ。』
とCDから声が聞こえてきました。
それは大好き女性歌手の声でした。
『毎日、わたしの歌を聴いてくれて、ありがとうございます。』
『いえいえ、私こそ楽しませてくれてありがとう。』
『今度コンサートを行なうので来てくれますか?』
『はい、行きます。』

それから、オジさんはコンサートの日がくるのを楽しみして待っていました。
しかし、オジさんは困っていました。オジさんが大事に飼っている犬と猫もコンサートに行きたいと言っているのです。
そこで、犬と猫にお土産を買ってくるので留守番をしてもらうことにしました。
そして、コンサートの日に、オジさんは大きな花束を持ってコンサート会場に行きました。大きな花束を持っているのがオジさん一人だけだったので、恥ずかしそうに座って歌を聴いていました。

歌が全部終ったので、オジさんは恥ずかしそうに女性歌手に花束を渡しました。
オジさんの大好きな歌手なので、オジさんの心臓はドキンドキンしていました。
そして、コンサートが終り、オジさんは楽しそうに家に帰りました。

すると、犬と猫が手を出しましたが、オジさんはお土産を買ってくるのをすっかり忘れていました。
『なんだ、その手は?』
『お土産は?』
『あっ、いけない、忘れていた。歌声がステキだったのですっかり忘れていたよ。』
『ん、もう、約束したのに。』
『ゴメンゴメン、明日お散歩する時におやつを買ってあげるからね。』
『約束は守らないとダメだよ。』
『わかった、わかった、ゴメン、ゴメン。』