飛べない妖精(1)

2017-12-22 21:31:28 | 童話
私は小学生のときに、いつも音楽の勉強で先生にほめられていました。
音楽以外の勉強は普通かな。
だから大きくなったら歌手になりたいと思っていたけれど、急に妖精になりたいと思いだしたの。
いや、妖精になると決めたの。
お母さんに
『どうして妖精になろうと決めたの?』
と聞かれても自分でも分かりません。
そして、図書館で妖精になる方法を調べましたが、妖精になる方法を書いた本は有りませんでした。
だけど、北極に近いフィンランドという国に妖精がいると書いている童話を見つけたの。
だから、私はお母さんに
『わたし大きくなったらフィンランドへ行くの。』
と言いました。
するとお母さんは、
『外国へ勉強に行くのは素晴らしい事だけれど、日本でいっぱい勉強しないと外国へは行けないわよ。』
と言ったので、わたしは一生懸命に勉強することにしたの。

そして、私は中学、高校、大学そして大学院で勉強をして、あこがれのフィンランドで歌の勉強と妖精になる勉強をすることができるようになったのです。
歌の勉強は努力して、もっともっとうまくなりましたが、妖精の勉強は日本人には難しかったです。
私は5年かかって、やっと妖精になれることができましたけれど、大きくなって妖精になったので羽根は有りません。だから空は飛べないのです。

『あなたはだぁれ?』
『私はフィンランドから来た妖精よ。』
『本当に妖精なの?』
『ええ本当よ。』
『あなたには羽根が無いし、大人でしょ。』
『ええ、そうね、妖精も大人になるのよ。そして大きくなると羽根が無くなるのよ。』
『ふぅ~ん。それでは今すぐ、ここで虹を出してちょうだい。』
『ええ、いいわよ。』

妖精の私が手を左から右へ大きく振ると、女の子の目の前に虹が現われた。
『わぁすごい、本当に虹だわ。』
『きれいでしょ。』
『うん、すごくきれいね。』
『お母さん、さっきの映画の妖精は本当にいるの? 絵本の中にも出ているでしょ。』
『そうねぇ、どうかしら。』
『わたし妖精に会いたい。』
『そうねぇ、会えるといいわね。』

妖精の私の前を歩いている親子が話しているが、私が妖精だとは気が付きません。
私は羽根も無く、空を飛べないが、人を幸せにすることができるのです。
『ええ、妖精は本当にいるのよ、私が妖精よ。』
と言いたかったが、妖精の国では、自分から妖精だと言うことができないのです。