(このエントリーの初投稿日時は2012年8月24日午前1時)
[写真]インターネット官報平成24年8月22日付(号外第181号)第148ページの一部、茶色の枠付けは筆者から。
天皇陛下は2012年(平成24年)8月22日付官報で、消費税増税法を公布されました。パチパチ。
[写真]御名をしたためられる陛下、宮内庁ホームページから。
[写真]御璽を押される陛下、宮内庁ホームページから。
上の写真は、一般的な陛下のご執務を紹介した写真で、この法律の公布の場面ではありません。
陛下が公布された社会保障と税の一体改革関連8法の正式な法律名と法律番号は以下の通り。()内には、当ブログでの呼称と衆議院が付けた議案番号です。
公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律 平成24年法律62号
(公的年金の最低保障機能強化法案、第180国会閣法74号衆議院修正)
被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律 平成24年法律63号
(共済年金を厚生年金に合併する被用者年金一元化法案、第180閣法78号衆議院修正)
社会保障制度改革推進法 平成24年法律64号
(社会保障制度改革を推進する国民会議設置法案、第180国会衆法24号)
子ども・子育て支援法 平成24年法律65号
(子ども・子育て新システム法案、第180国会閣法75号衆議院修正)
就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律 平成24年法律66号
(認定子ども園法改正案、第180国会衆法25号)
子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律 平成24年法律67号
(子ども・子育て新システムのための周辺法律56本を整備する法案、第180国会閣法76号衆議院修正)
社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律 平成24年法律68号
(社会保障の安定財源を確保するための消費税法改正法案、第180回閣法72号衆議院修正)
社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律 平成24年法律69号
(社会保障の安定財源を確保するための地方税法・地方交付税法改正法案、第180国会閣法73号衆議院修正)
以上の8本です。
ありがとうございました。
8月10日に成立したものの、22日付公布ということで、すこし間が空きました。おそらくお盆期間中は、皇居外でのご執務が多かったことと、皇居の宮殿に勤務する職員を休ませてあげるというご配慮のために、お盆明けのご執務で公布されたのでしょう。これに先立ち、21日(火)の閣議後会見で、小宮山洋子厚労相が22日付の公布を発表していたようです。皇居と内閣をつなぐ内閣総務官は現在厚労省から出向の官僚ですし、もともと宮内庁には同省からの出向者が多いので、事前に情報が入っていたのだと思います。
毎年GDPの3%にあたる10兆円以上のお金を動かし続ける恒久法としての巨大歳入法の成立に、私自身も多少なりともお役に立てて、大きな自信になりました。
3月30日(金)の閣議決定、国会提出以降、多くの仲間を失いながらも、ようやくここまで来ました。私も多くの知遇のある国会議員およびその秘書を含めて、多くの私から見ての裏切りや、党から離れるという犠牲を負いました。しかし、そのことにはまったく憂いを持たず、この公布の日を迎えて万感の思いです。
もちろん、消費税増税は2014年4月1日ですから、その前に国民の選択により凍結法が成立したり、閣議決定で凍結される可能性もあるわけですが、形になりました。
もちろん、これで終わりではありません。6月15日の衆議院特別委員会での修正合意、3党合意を踏まえて、低年金者対策として、「年金生活者支援給付金の支給に関する法律案」(第180国会閣法83号)がすでに追加で提出されています。国民会議の設置や、消費税法附則第18条にもとづく、軽減税率や簡素な給付措置の設計。転嫁対策のための独占禁止法改正案の起草はまだこれからです。給付つき税額控除をするための「マイナンバー法案」(180閣法32・33号)は審議入りすらしていません。ダルマの目を入れる作業はまだこれからです。参議院は8月10日、社会保障制度推進法、子ども・子育て新システム3法、消費税増税法に附帯決議をつけており、尊重しなければいけません。むしろ、3党合意以上に、参議院での3つの附帯決議を尊重すべきでしょう。
当ブログも2007年8月から2009年8月まで、自民党に対して、2009年9月から2010年6月までは小沢一郎幹事長グループに対して、「王様は裸だ」「それにもかかわらず!」と言い続けていたら、知らぬ間に与党主流派にイチバン近いブログになってはや2年2ヶ月。
国家の未来に大きな責任を果たすことができました。
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[お知らせおわり]
[画像]山本順三・参議院決算委員長、自民党、参議院インターネット審議中継からキャプチャしました。
【参議院決算委員会 2012年8月20日(月)】
お盆明け国会初日は、参議院決算委員会が、平成22年度決算(案)の省別審査4回目をやりました。国会では珍しく、決算審査に関しては、衆参の先議はなく、どちらも自由に審査できます。政権交代後の第45期衆議院では、平成21年度決算(麻生内閣が編成し、鳩山内閣が補正)が衆議院で継続審査になっているというていたらく。しかし、参議院では、平成22年度の省別審査も4回目ということで、会期末までに平成22年度決算(鳩山内閣が組み、菅内閣が補正、最後の3週間で震災への予備費使用急増)の審査を仕上げることができそうです。
決算は衆参とも審査できるのですが、予備費の使用調書を衆議院先議になっています。衆議院決算行政監視委員会は参院からのプレッシャーを受けて、平成22年度予備費使用調書を7月31日に衆議院本会議で承諾し、参議院に送りました。平成21年度決算が審査しきれていないのに、なぜ22年度予備費使用調書だけ審議して、参院に送付できるのか。そこに理はありません。
そして、参議院決算委員会は、きょうの午後1時のスタートの段階で、安住淳財務大臣から趣旨説明を受け、決算の省別審査と並行して、財務大臣から答弁を得て、午後6時半、承諾を議決しました。次の参院本会議で承諾が決まる見通し。参院決算行政監視委員長の新藤義孝さんは自民党ですが、参院決算委員長も自民党の山本順三さんです。やはり自民党内でも衆参ねじれが大きくなってきました。
決算審査というと、当該年度の編成や執行にあたった人が現在の大臣ではなく、答弁は官僚ペーパーの読み上げということがよくあります。それより以前に、質問者が当該年度と関係ない質問を繰り返すのもしばしばです。しかし、農水省の省別審査では、平成22年度の民主党政権による編成、執行、補正をていねいに質問していた議員がいました。これは自民党の青木一彦さんで、ご存じ参議院のドン、青木幹雄さんの息子で前秘書です。どうしても、世襲議員は、与野党対立の怨念も含めて強いです。
きょうは、自民党の藤川政人さんが良い質問をしました。あれ、だれかなと思ったのですが、2010年7月11日の第22回参院選で愛知選挙区でトップ当選した1期生52歳、元県議、元町職員です。青木さんとは違い、やはり平成22年度の途中から国会に来たわけですから、年度のずれがありました。経産省に関連して、枝野幸男大臣に対して、先日の日本製工作機械の中国人社員による産業スパイ事件に関して、「私は、ヤマザキマザックは地元中の地元なので、実際に行ってきました」と自らの取材の成果を披露しました。この中で、「愛知県警が捜査に入った頃には、すでにパスポートを用意していた」と悔しがりながらも、「これまでは企業イメージにかかわるので、警察に通報しないことがあったので、ヤマザキマザックへの感謝の声が聞かれた」としました。日本製ハイテク工作機械の武器製造目的での輸出に目を光らせる経済産業省の枝野大臣は、「愛知県警さんをはじめ、迅速な対応をとっていただきありがたい」としました。そのうえで、藤川さんは「これはマスコミにも出ていない話で、こういうところで言うべき話ではないかも知れませんが、捜査したときには、パソコンの通信記録はほとんど消えていましたが、中国の情報機関との通信履歴があったそうです」と語り、やや静まりかえった雰囲気がありました。
藤川さんは「枝野大臣は、大飯原発の再稼働は苦渋の決断だったと思う」とし、国の電力会社に対する指導について、「中部電力の地元なもんですから、ちょっとうかがってきました」とまた取材の成果を披露。具体的に経産省原子力安全・保安院からの通知に関して、政府参考人にただしました。
元町職員で元県議の藤川さんは地方交付税に関して、「実は私の地元も不交付団体(富裕自治体)で、公立小中学校はすべて温水プール、トイレはウォシュレット、冷暖房完備です」と話すと、どよめき。藤川さんの町は昭和27年(1952年)8月1日に町制施行してから、半世紀以上、まったく合併がありません。富裕自治体出身の地方議員なので、広い愛知県全域の参院選に出るうえで、物心両面の支援を得やすい環境だったのかもしれません。
この後、自民党の世襲議員である若林健太さんが登場しました。若林さんの決算質問は昨年も現地で傍聴したことがありますが、今回も地盤がある二世らしく政治業界とは違った、企業相手の公認会計士として経験をいかした質疑でした。
平成22年度第1次補正予算で菅内閣がつくった「円高・デフレ対策の追加の予備費」について、巨額だと指摘。日本国憲法第83条~89条近辺の財政民主主義に反するとしました。若林さんが初登院した第175臨時国会が8月6日に閉幕し、第176臨時国会が10月1日召集・12月3日閉幕。その後、第177通常国会は翌年1月24日とかなり国会休会期間が長かったのですが、予備費使用ではなく、臨時国会召集による補正予算で景気対策をすべきだっと指摘。
若林さんは安住さんに対して、「法治国家をないがしろにし、便宜主義に走る民主党政権が、1兆円近い予備費を増額補正しました。それでいて、多額の不用額がでています。(当初予算に計上された事業と)予備費(での歳出)に重複があったのではないか。麻生政権がリーマンショックに補正予算でしっかりと対応したように、臨時国会を開くべきだった」と抗議しました。志の強さと、政治業界以外での経験の長さ、それでいて当選前の政治(麻生政権)に関心がある。自民党二世議員らしさを感じました。
さらに、若林さんは政府に対して予備費の提出が遅れているとし、憲法87条違反だと激しく攻撃すると、自民党の同僚の山本順三委員長が「若林君、ちょっとお座り下さい」とし大臣に対して「予備費の提出が遅いということは、政府の提出が遅いだけでなく、衆議院の審査が遅い面があります。その点については、現在理事会で対応を考えています」と語りました。衆議院の審査の遅れについては、自民党の新藤さんが尖閣諸島の購入問題について石原慎太郎・東京都知事の参考人質疑をしたり、国会版事業仕分けのフォローアップ小委員会をしたりして、本業である決算審査をおろそかにしている面が否めません。、若手を座らせベテランが引き取り、反対党の安住大臣に対して説明する格好で、衆議院側の同僚を守るという、なんとも古き良き自民党らしい。衆参、老壮青、世襲と党人のバランスがみられました。
決算審査は後日に譲り、平成22年度予備費使用調書の討論、採決が行われました。みんなの党の柴田巧さんは「過大な予備費は財政民主主義に反する」として6件中3件に反対し、共産党、社民党も一部反対しました。3件は全会一致で承諾されました。
これで、参議院では、平成22年度の予備費使用調書が次の本会議で承諾され、両院とも承諾。平成22年度の決算審査もあと数回の省別審査としめくくり総括質疑ということになりました。今国会は定例日の月曜日にも特別委員会が衆参とも開かれ、各大臣が拘束されたので、月曜日の省別審査はこれで2回しかありませんが、定例日外にもやるなど頑張っています。
一方、衆議院では、先議の平成22年度の予備費使用調書は承諾し参議院に送りましたが、平成21年度決算が継続審査、平成22年度決算は趣旨説明すらされていない状態。そして、平成23年度予備費使用調書7件もすでに提出され、積み上がった状態です。
地方議会はおおむね9月から平成23年度決算審査を始めます。国会に限れば、日本国憲法で会計検査院が設置されているので、その作業分遅くなります。最近、会計検査院は頑張っていて、財政法のシメキリを4ヶ月も前倒しして9月に提出しています。ですから、来月には、平成23年度決算書も衆議院議員と参議院議員に配布されることでしょう。
衆議院決算・行政監視委員会は、次の政権がどの党になろうとも、重い宿題が積み上がったまま。党派を問わず衆議院には夏休みの宿題が積み上がったまま。散るぞかなしき、与野党ともオトナになってください。
改革案として、地方議会のように、毎年、特別委員会を設けて、夏の集中合宿のように決算審査をする手法もあります。
きょうひしひしと感じたのは、野党で参議院であるという時間的余裕のなかで、自民党若手はしっかりと取材し、法律を読み、予算書を精査し、質問原稿を練り上げているということ。衆議院であり与党であることしか知らない2009年8月30日初当選の政権交代チルドレンは不幸です。ただ、それを大局的に見て、良い勉強だったと思えるためには、地元で信頼を得るしかないんだと思います。参議院では、民主党も自民党も新人を優先的に決算委員にするのがならわしとなっています。山中貞則さんが、初当選後、みんなが花形の予算委員を希望する中、自分は決算委員を審査し、大蔵政務次官時代は、決算書を読み、分からないところがあると自分で内線電話で担当者を呼び勉強していたという、水野清さんから聞いた話をまた思い出しました。毎年、お盆前後に、その話を思い起こすのも、決算を重視するかしないかということと、何か関係があるのかもしれません。
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[お知らせおわり]
お盆明け国会が2012年8月20日(月)午後1時定刻スタートの参議院決算委員会の平成22年度決算(案)の省別審査から再開します。第180通常国会は、はやいもので、残り会期わずか3週間、15営業日となりました。第45期衆議院も大詰めの感があり、昨日も会員制ブログに新規のご購読をいただきました。もともと、きょうは我々与党民主党主流派を引き締めるエントリーを書く予定でしたが、その先を見すえた日本政治について書きたいことがあるので、そちらを書きます。
自民党の谷垣禎一総裁らが「解散に追い込む」というフレーズをたびたび使っていることが気がかりです。野党議員の発言の報道に限らず、新聞記事の地の文でも、「自民党ら野党は今国会中の解散に追い込むために」としています。
しかし、野党経験の長い私に言わせれば、野党は解散に追い込むことはできません。
自民党は「早期解散に追い込む」のではなく、与党の支持率低迷で「解散できずに任期満了まで追い込む」。あるいは、「内閣を総辞職に追い込み、任期中4人目の首相で次期衆院選を迎える」。そのいずれか。
過去4回の内閣不信任案可決による解散(憲法69条解散)を改めてながめてみました。
・初めから少数与党の第2次吉田内閣のなれあい解散
・鳩山グループと広川グループに裏切られた第4次吉田内閣のバカヤロウ解散
・清和会(福田派)と番町研(三木派)に裏切られた第2次大平内閣のハプニング解散
・改革フォーラム21(羽田派)が政治改革関連法案廃案の責任を問うた宮澤内閣の「宮澤嘘つき解散」。
うち、第2次吉田内閣はもともと少数与党。そして、その後の3回はすべて与党議員が内閣不信任案に賛成(宮澤嘘つき解散の羽田派35人中34人)したか、欠席(バカヤロウ解散の鳩山グループ・広川グループ、ハプニング解散の福田派・三木派)したかのいずれかです。衆議院の過半数により内閣総理大臣が指名されている以上、衆議院だけに提出できる内閣不信任案が可決されるというのは与党内の混乱がなければありえない話です。
そこで、野党経験豊富な当ブログ内から次のエントリーを紹介します。第44期衆議院(第20・21期参議院)で、麻生内閣時代の2008年11月14日、野党第1党の民主党内で非主流だった馬淵澄夫さん、岡田克也さんの話をまとめたエントリーです。
[当ブログ内エントリー「解散風を吹かすな」「本部を頼るな」党内“野党”が積極発言から抜粋引用はじめ]
(前略)
馬淵さんは「不易塾」日記11月10日付エントリーで、首相の解散引き延ばしに対する執行部の対応について、「麻生総理のハラひとつなんだからもはや、モードを切り替えましょうよ」と注文を付けました。
「解散しないならしないで、とことん国会審議をやろうじゃないか。任期満了まで、国会で論戦を繰り広げようではないか」と提案。
「民主党奈良県連では選挙体制解除は指示していない」と強調しました。前回総選挙で、近畿地方の「1区」で唯一小選挙区を勝ち上がった馬淵さんは「逆に来年9月の任期満了まで常在戦場で戦い続けろと指示した。選挙だからといって特別のことをやる必要はない」として、「現職は、国会活動を必死にやって週末地元に戻ればとにかく歩いて回って、集会やって、街頭で訴えて、発信し続ける。新人は、国会ないんだからとにかく回り続ける」。
厳しいようにも、優しいようにも。「解散風」に惑わされず、日常活動をしっかりやるというのは、馬淵さんのいう通りだと思います。
(中略)
「岡田かつやTALK-ABOUT」。(略)
岡田さんは、「香川と愛媛を回ってきました。それぞれいい戦いをしているということを実感してきました」と手応えを紹介。後援者との懇談では、やはり選挙事務所と資金問題について相談を受けたとのこと。「選挙が近いということは、これは党としては小沢代表も、もちろん私も言いました。その可能性がかなりある以上、そう言わざるを得ないわけです」として、“解散風を煽った”ことを認めました。
「限られた資金の中で、実際の資金繰りをどうやっていくかということは、やはり候補者本人あるいはその周辺の皆さんが、それぞれの置かれた状況を踏まえて判断していくこと」と強調し、「党本部が解散が近いと言ったから、事務所を作ったからその責任を取ってくれというのは、私は違うんじゃないかなという感じがします」としました。
[抜粋引用おわり]
上のエントリーからも分かるとおり、選挙に強い人は、解散に追い込むのではなく、任期満了でもたたかえるように準備をしています。
解散権は首相ただひとりにあります。与党・民主党の支持率がこれだけ低い状況で、早期に衆議院を解散するのは自殺行為です。野党・自民党は、この低い支持率のまま、来年7~9月まで解散できないように追い込んで、確実に与党・民主党を負けさせ、自民党が議席を獲るようにしなければなりません。
もともと「time」(タイム)という概念は、明治維新後に日本に入った概念で、漱石(夏目金之助)による貢献が大きいです。『草枕』での「その時間間(じかんかん)での」というtimeを日本語にするうえでの苦心に限らず、『それから』の中で、長井代助が父と兄が馬車で急ぐ姿を認めるのに、父と兄は代助に気付かないという感覚面での「時間」の紹介があります。要するに難しいということです。
で、英国議会の前回の任期では、ブラウン首相(労働党党首)が支持率が上がってきたので、解散しようとしたところ、支持率が5%と突然落ちるという出来事がありました。これによりブラウン首相は解散を封じ任期満了直前の2010年5月6日まで粘りました。任期満了まで追い込んだ野党・保守党は勝利し、第1党に躍り出ました。しかし、下馬評では保守党が単独過半数をとると予想されていたのに、比較第1党にとどまり、選挙で数議席減らした第3党の自由民主党との連立政権となり、キャメロン保守党党首が首相、クレッグ自民党党首が副総理に就きました。
つまり、首相が解散しようとしたところ、なぜそうなったかは分かりませんが、支持率をがくんと下げるという現象が起きました。そこで、解散できずに任期満了直前にまで追い込まれて、労働党は負けるべくして負けました。
ですから、自民党員は確実に、民主党を負けさせるためには、今の通り支持率が低い状態を続けさせる方がいいでしょう。民主党員は見苦しいまでに政権に執着すべきです。だから、「近いうちに信を問う」という3党首会談での野田佳彦総理(民主党代表)の言葉については、自民党の谷垣グループの人からは一方的に感謝されていい話です。「近いうち」の時期を問うのは野暮だし、中には谷垣総裁を支える立場の人まで言及するのは本質的に野党慣れしていないと感じます。自民党員は、せっかくのチャンスですから野党慣れしていてください。
なによりも、自民党支部長には来年10月上旬選挙になっても闘えるような資金計画を立てないといけないし、それができないようなら、「仕分け」の時代の国会議員になる素質はゼロです。
終盤国会の3週間の攻防で焦点は、「新・財政運営に必要な特例公債法案(第180国会閣法2号内閣修正)」の扱い。自民党としては、今国会の会期中に新・特例公債法を成立させない方が、秋の第181臨時国会を比較的早く召集させることへの圧力になります。国会閉会中は、与党の支持率が上がり、野党の支持率が下がる傾向があります。民主党員としては、会期末ギリギリに成立させてしまった方が、臨時国会は11月以降でよい、ということになるかもしれません。もちろん、民主党代表選で万が一代表が交代すれば、首班指名と組閣、所信表明演説と代表質問、衆参予算委員会などで9月下旬に召集し、1ヶ月前後の臨時国会が必要になり、年内はそれで終わります。どんなにフレッシュな総理・代表でも、第46回衆院選で民主党はさらに大きく負けることは自明の理です。だから、代表選の複数候補立候補はあり得ません。今のうちから投票権を行使できないかわりに党員・サポーターのみ参加して意見交換する「党員・サポーター集会」を県連や総支部で準備するというのが当然身につけておくべき与党議員の政治センスです。
さらに、民主党は第23回参院選(2012年7月予定)の後の8月29日に解散し、10月上旬選挙に持ち込むという見苦しいまでの執着を検討すべきです。参議院で第1会派の場合は、1月ぐらいに解散して、7月の参院選に二段構えでのぞむのもいいかと思っていましたが、なにしろ、参院民主党・国民新党と、参院自民党・たちあがれ日本は、1~4議席差になりましたので、参議院の優位性を活用した衆議院早期解散戦術をとる必要はなくなりつつあります。武士道に反しかねないような、見苦しさで政権に執着する。それが政権交代可能な二大政党政治を日本に根付かせる上での、民主党第1次与党期に属する議員、党員、サポーターの歴史的使命です。
民主党は任期満了までに少しでも支持率を回復するためには、主流派も非主流派も政府の内外を問わず、死ぬ気でやらないといけません。普通は任期中に60歳未満でも1人か2人亡くなるのが与党です。ストレスに起因したと思われる理性を欠いた犯罪をして、現行犯逮捕される議員が民主党第1次与党期に1人もいないというのも、「組織としておかしい」とすら言えるでしょう。それは奨励しませんが、政治は命懸けです。予算をしっかり組み、法案を1本でも多く通し、平成22年度決算を今国会中にあげないといけません。個別にやりたい政策は第46期衆議院に先送りして、あいさつ回りに徹する時期です。再選できないかもしれないから、東京での宮中行事には欠かさず参加しているような議員は、どんな仕事に転職しても、長期的視野を書いた、その日暮らしの仕事しか残っていません。
いつまでもあると思うな、親と金。いつまでもあると思うな政権と党内基盤。
残り3週間の終盤国会。菅直人さんの口癖を私も言いたい。
「死ぬ気でやれ」。
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[写真]安住淳財務大臣と阿知波吉信・民主党岐阜5区衆議院議員、「あちは吉信」ホームページから。
第45期衆議院最後の当初予算となる平成25年度予算編成に向けて、野田内閣は2012年8月17日(金)、「平成25年度予算の概算要求組み替え基準について」を閣議決定しました。事業仕分け(行政事業レビュー)による歳出のむだづかい削減と埋蔵金発掘(税外収入)の総仕上げになるとともに、デフレと震災からの脱却の経済対策のスタートになります。
野田内閣は同日の閣議で、勝栄二郎・財務事務次官が退き、真砂靖(まなご・やすし)財務事務次官、木下康司・財務省主計局長の新体制に切り替えました。参院選惨敗による衆参ねじれと震災・原発事故を乗り越えて、第46回衆院選に向けて最終テストに臨みます。財務省理財局長には古沢満宏・IMF理事が就きました。さらに週明け20日月曜日に史上最多メダルとなったロンドン五輪選手団に野田総理が感謝状を贈ることを決めるなど素晴らしい閣議になりました。パチパチ。
財務省の平成25年度予算編成・審議に関するホームページもスタートしました。
「平成25年度概算要求組み替え基準」はまず、高齢化にともない全府省で8400億円自然増する、と認めました。が、生活保護の見直し(削減)をはじめとする合理化・効率化に最大限取り組み、極力圧縮に努めることとする、と書きました。
そして、歳出の大枠として、(一般会計で)71兆円をがっちりはめました。
なお、平成24・25年度の基礎年金の国庫負担分に年金特例公債(消費税増税による増収分での返済を約束する赤字国債)を発行することにし、第180通常国会に法案を提出していますが、その法案の成立を見越して、この年金特例公債も「71兆円」に入れ、財政健全化に抜け道無し。
歳出では、各府省に対して、新規事業をみつもり(概算要求)うえで、既存歳出を削る「ペイ・アズ・ユー・ゴー原則」を引き続き求めます。今回の予算編成では、ペイ・アズ・ユー・ゴーに魔法のてこ(レバレッジ)を渡すという工夫をしました。グリーンは4倍、ライフ・農林漁業は2倍、その他は1・5倍・・・と言っても競馬じゃないよ。既存事業を削って、グリーンの予算を概算要求する場合は、削りしろの4倍の見積りを認めることにします。
もちろん、概算要求は71兆円を大きく上回り、12月の政府原案決定までには財務省主計局による予算の査定、刈り込みがあります。ここで、横串をさします。「根っこからの府省間横断的な横串的見直し」のために、「縦割り」という批判用語を逆手にとって、「横割り的な重複排除」を目指します。マスコミでは「省庁版事業仕分け」とも報じられた「行政事業レビュー」による概算要求前の段階からの既存事業に対する官僚の意識変革を積み重ねて、「行政事業レビューの結果の反映も活用した見直しで、財源を捻出し、グリーン、ライフ、農林漁業に思い切ったシフトを図る」という思い切ったメリハリをつけます。横串を刺すことで、デフレ・震災を脱した成長戦略の幕をあけたい方針。
大臣には、「各府省の類似施策の重複排除を徹底するため、概算要求前に府省の垣根を越えた連絡調整の場を設けて、要求内容について調整し、当該政策分野の概算要求方針を取りまとめた上で、概算要求する」ことを求めました。事業仕分けと行政事業レビューの成果については「廃止や抜本的改善を求められた事業そのものを概算要求しないことはもちろん、類似の事業についても、名称を変えて新規に要求することがないようにしなければならない」としました。これは行政刷新会議事務局が目を光らせることになります。
民主党マニフェストの「4k」については、児童手当(旧・子ども手当)、高校の実質無償化、農業者戸別所得補償(農業直接支払い)の3kについては「所要の額を要求する」。昨年8月9日の3党合意で撤回した「高速道路の無料化」は「平成25年度予算概算要求においても計上しない」としました。
当ブログとしても、ご存じのように、2010年6月4日から与党主流派ブログとなって、2年2ヶ月余り。行きがかりとはいえ、与党主流派のブログというのは自分でもどうかなと思いつつも、今でも1000人前後、5000ページ前後のアクセスを連日いただいております。しかし、いつまでもあると思うな親と金、いつまでもあると思うな与党(民主党)と主流派(野田・岡田系)。この予算で必ず第46回衆院選を迎えることになります。今まで「8月といえば概算要求の月だな」という政局感はなかったのですが、今のうちにしっかりとそういうことを学んで、次に備えたいと考えています。
ところで、一つ指摘したいのは平成24年度特別会計の「地方交付税および譲与税特別会計」の中だけでも、33兆円を銀行から借りています。借り入れですから、おそらく長期金利(10年物長期国債)より高い金利で調達しているのではないでしょうか。そうなると、銀行は国に運転資金を貸して、年間1兆円前後の利息を受け取っている計算になるでしょう。国に貸して利息をもらうなど実に楽な仕事です。そして、その原資は民間の預金です。概算要求組み替え基準では「中小企業の活力を最大限活用する」と書いてありますが、銀行が政府に貸したり公債を買えば、その分中小・零細企業に融資が回りません。日本銀行が金融緩和をしても、毛細血管まで届きません。政府は銀行からの直接借り入れをもっと透明化した上で削減する中長期的なインセンティブ作りが必要です。平成25年度概算要求組み替え基準にその記述がないことを指摘しておきます。
平成25年度予算編成にあたるのは、野田佳彦首相、安住淳財務相、岡田克也副総理・行政刷新相(兼)公務員制度改革相、古川元久経済財政政策担当相、藤村修官房長官、五十嵐文彦、藤田幸久両財務副大臣、三谷光男、吉田泉、若泉征三各財務大臣政務官。石田勝之、中塚一宏両内閣府副大臣ら。民主党では前原誠司政調会長(9月改選)、藤井裕久税調会長らが担当します。また、概算要求分が前倒しして、平成24年度第1次補正予算案として、第181回臨時国会に提出される可能性があります。
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お盆明け国会は残り3週間となります。
会員制ブログ「今後の政治日程by下町の太陽」(レジまぐ社のシステムで提供)を更新しましたので、ご活用下さい。
http://regimag.jp/b/sample/list/?blog=65&entry=25342
衆議院のホームページがあいかわらずのんびり更新されて、8月7日(火)の午前9時過ぎに発議された「地方自治法の一部改正法案」(180国会閣法60号)の衆議院議員修正案がようやく15日朝掲載されました。
この修正案はすでにその日の正午頃採決され、可決。10日(金)の衆議院本会議で委員長報告通り修正可決され、参議院に送付されています。
地方議会の会派に交付されている「政務調査費」を「政務活動費」にかえる修正案だったわけですが、修正案を反映すると、次のように地方自治法が改正されることになります。
〈現行法〉
地方自治法第百条
○14 普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務調査費を交付することができる。この場合において、当該政務調査費の交付の対象、額及び交付の方法は、条例で定めなければならない。
○15 前項の政務調査費の交付を受けた会派又は議員は、条例の定めるところにより、当該政務調査費に係る収入及び支出の報告書を議長に提出するものとする。
これが、
〈法案が成立した場合の新法〉
地方自治法第百条
○14 普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務活動費を交付することができる。この場合において、当該政務活動費の交付の対象、額及び交付の方法は、条例で定めなければならない。
○15 前項の政務活動費の交付を受けた会派又は議員は、条例の定めるところにより、当該政務活動費に係る収入及び支出の報告書を議長に提出するものとする。
○15の1 議長は、第十四項の政務活動費については、その使途の透明性の確保に努めるものとする。
ということになります。
一目瞭然。政務調査費はその議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部でしたが、政務活動費はその議会の議員の調査研究【その他の活動】に資するため必要な経費の一部ということになっています。
このブログは、国政政党による会派が議論する国会について論じるブログ。そして、そのうえで、各会派の意見というものをいちいち取材して「裏取り」をしているといつまでも書けないので、基本的に筆者の推測をそのまま垂れ流しているブログです。しかし、筆者なりに直接当事者から周辺情報を取材しているので、若干、先行きを見通せている部分もあり、私が元日経新聞政治部記者ということもあり、一部既存マスコミと同一視されることもあります。8月8日付エントリー(「合併特例債償還5年延長」「政務調査費を政務活動費に」衆議院総務委員会には透明性の確保を求めたい)はすでに反響を呼んでいて、一部団体による参議院総務委員への働きかけが始まっているようです。まず、なぜ既存マスコミがこの件を書いていないかといえば、単純に気付いていないのだと考えます。そのうえで、各党(各会派)の理事に直接取材しても、どの党が主導してどういう経緯で修正案が提出されたのか、各党(各会派)が一致した内容の記事を書けないのだろうと考えます。
ですから、このエントリーはいつも以上に憶測です。
このように政務活動費が会派に支給されることになると、特定の組織の強いネットワーク政党の議員が国政選挙の応援のために、交通費や宿泊費などに充当できるのではないでしょうか。例えば、タクシーを借り切って、近所の人を期日前投票所までお連れする。この行為は公職選挙法上問題ありません。そのうえで地方自治法100条やそれによる条例上も合法になるかも。あるいは、全国の一部地域にだけ小選挙区候補者を立てる政党ならば、年に4回ほど会派に支給される政務活動費を会派責任者が区分経理しておいて、例えば「北海道会派視察旅行」ということで、交通費、宿泊費を一括して支出しても、問題ないことになるでしょう。
手元で計算してみました。あるネットワーク政党ならば、自治体の規模や財政力によって政務活動費の金額は大きく変わってきますが、自治体の規模によって、1議員あたり、1ヶ月平均で、5万円~8万円~11万円ぐらいの政務活動費を国政選挙のための交通費などに振り向けるとすると、その政党が総務省から交付されている1年間の政党交付金と同じ金額が出てくることになります。
東京のある区では、ある政党の区議会議員が沖縄県のタクシー代の領収書を政務調査費に添付したことなどがから、その会派の区議会議員と、同様の問題があった他会派の議長が全員辞職したケースがあります。しかし、政務活動費ならば沖縄県のタクシー代も法律上の問題はないのではないでしょうか。なによりも、鉄道会社のキップには名前が書いてありません。そのキップの領収書に名前が書いてあっても、キップに名前が書いていない以上は、その支出先の捕捉には限界があるのが当然です。
総務省のホームページによると、2012年10月1日時点で基礎自治体の数は1719。これに東京23区と47都道府県を加えると、1789自治体に議会があることになります。政務活動費の交付の対象、額、および交付の方法は条例で定めなければならないということになると、政務調査費の頃よりも多い額の政務活動費を計上する条例・予算となる自治体がでかねません。現在の日本の地方自治では、平成の大合併を避けた富裕団体(不交付団体)の村議会もあります。そこで例えば1議員あたり月額80万円だとか、そのくらいのけっこうな額の政務活動費が条例制定、予算計上されても、村民でない国民がチェックしたり、口を出したりするのはなかなか難しいでしょう。
やはり、突然朝9時に発議され、正午に可決した国会運営に不信感をぬぐい切れません。政権政党・民主党としては、この第180通常国会の3月30日に、総務副大臣と総務大臣政務官が改正消費税法の法案の閣議決定に抗議して辞職。さらに、6月26日、消費税法案の衆院採決をめぐって、別の総務大臣政務官が辞任し、院においても総務委員長が党議に造反し辞任しました。この会期中に、2段階にわたり、政府の政務三役、院の総務委員長・筆頭理事がメンバーチェンジするなかで、自民党や公明党の理事が頃合いをはかっていたのではないかという邪推もしたくなります。
なお、社民党は法案に反対していますが、社民党幹事長を兼ねる重野安正・総務委員は、討論の中で「政務活動費の修正案には賛成するが・・・」と演説していました。
地方議員が多い日本共産党が反対した背景には、伝統的に地方議会での対立関係にある公明党が賛成していることも大きいのだろうと感じます。そして、なにより、地方選挙では無所属を名乗っている自民党員の町村会議員というのが自民党の最大の強みですから、こういうのが選挙や日常活動に回るのではないかと勘ぐっています。
自民党の谷公一さんが7月31日(火)の法案審査で「そもそも、この法改正は阿久根市の問題が大きな要因となっているでしょう。そういう実例が出たから法改正という話が出たんじゃないですか。もともと、戦後数十年、この後で質問します専決処分対象で、副知事とか副市長、前の助役などは専決処分してよかった。数十年、何も問題なかったんですよ」と発言しています。まさか、この時点で、谷さんが自民党の部会などで修正案の協議がされていると知っていたとは思いたくないですが、そういう不信感を持たざるを得ないということを言いたいのです。
英国議会のように、金曜日に翌週の会議日程を発表したり、米国議会のように、インターネット中継画面には常に今後の会議日程を公表しておくようでなければ日本の議会もいけません。衆議院インターネット審議中継にも、参議院インターネット審議中継にも、今かかっている法案のクレジットがありません。しかも、修正案はきょうホームページに出ましたが、すでに5日前に衆議院本会議を通過済みです。
ところで、このエントリーを書くにあたり、政務調査費が地方自治法100条だということを初めて知りました。いわゆる百条委員会の根拠ですが、議会図書館の来てもあります。議会としての議員の他自治体への派遣の規定もあります。過去の最高裁判例では次のようなものがあります。「国民体育大会に付随して行われた議員交流野球大会に議会が議員を派遣したことは違法ではないが、現実に意見交換や相互交流などが行われた事実がなかったことを総合して旅行命令が違法だった」との判例があります(平成17年1月17日最高裁判例民集57・1・1)。逆に言えば、例えば、「我がまちの少年野球の現状」について話し合えば、議員交流野球大会への税金による旅行命令も合法ということになります。旅行命令に限らず、会派に支給された政務活動費を通じて、そのような支出をしても、合法という判断がされる可能性が高いでしょう。それを各自治体ごとに条例で決めるとなると、我々有権者はとてもじゃないけど、チェックしきれません。歴史ある組織政党ならば、会派責任者に通知して、自治体から会派に支給されたときに区分経理してしまえば、やりやすい。民主党は県連によっては、そういう組織だった行動はなかなかできませんが、大阪維新の会よりは現職地方議員が多いのですから、既成政党同士で利害が一致するかもしれません。第45期衆議院では、政治家のサラリーマン化をみることが多いですが、地方議会も含めて、政治がより一層、会社化・サラリーマン化していく改正法案のように思えます。先週、浜田幸一元衆議院議員が亡くなりましたが、国・地方問わず、自民系の声のでかさで存在をアピールするオッサン議員が懐かしい昨今です。
参議院総務委員会(草川昭三委員長)でのしっかりとした議論をのぞみます。
やるなら堂々とね。
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[写真]参議院委員会での一体改革法審査終了で握手する高橋千秋委員長と野田佳彦首相、小宮山洋子内閣府少子化担当相(兼)厚労相、首相官邸ホームページから。
ありがとうございます。
社会保障と税の一体改革関連法が2012年5月8日(火)の衆議院本会議での審議入りから3ヶ月余り経ったきょう、8月10日(金)成立しました!バンザーイ!
参議院で成立したのは次の8法。
改正消費税法。
改正地方税法および地方交付税法。
公的年金の最低保障機能強化法。
共済年金を厚生年金に合併させる被用者年金一元化法。
社会保障制度改革を推進する国民会議設置法。
子ども・子育て新システム法。
改正認定こども園法(改正就学前の子どもに関する、教育、保育などの総合的な提供の推進に関する法律)。
子ども・子育て新システムにともなう関連法律整備法。
の8法です。
消費税は、2014年4月1日から8%、2015年10月1日から10%になります。
本会議では、改正消費税法が賛成188、反対49の圧倒的多数で可決・成立しました。
過去の消費税創設、増税はすべて、減税とセットになっていましたが、今回の法律は増税のみ。国庫から見て、歳入増(増税)と歳出増(社会保障4分野の年金、医療、介護、子ども・子育て)の一体の改革ということになります。しかし、現在、消費税5%のうち4%は国債償還の利払いで消えている計算で、これが社会の閉塞感になっています。公的年金の最低保障機能強化に加えて、低所得者・低年金者対策も整っています。政府はこれからも「明日の安心対話集会」の精神を引き継いで、国民に説明、説得することが必要です。
このうち、参議院では附帯決議が3つつきました。参議院らしさを示しました。社会保障制度改革を推進する国民会議設置法について「社会保障の給付について、受益と負担の明確化を図る」としました。これについて、公的年金の最低保障機能強化法で、年金受給資格を25年から10年への短縮が2015年10月施行となっていますが、例えば24年間厚生年金保険料を納めたという人などの「受益と負担」を考えれば、施行を前倒しする法改正も必要でしょう。公的年金の最低保障機能強化法に関しては、さる7月31日(火)の閣議決定で、提出済みの「年金交付国債を年金特例公債につけかえる国民年金法改正案」の内閣修正により、法改正が衆議院に提案されています。被用者年金の一元化については、もともと自公政権時代に提出し、野党・民主党が審議しなかったことへの恨み節が続きましたが、衆参での合計200時間の審議の中で、徐々にわだかまりが解けていくのが感じられました。
子ども・子育て新システム3法案では、自民党議員が合計19項目の附帯決議をつけました。これについて、委員会可決後、本会議前に定例記者会見した岡田克也一体改革担当大臣は「やや驚きました」と語りました。私は、これだけたくさんの要望を各種団体から受けながら、一致団結して幼保一体化(幼保一元化)法を成立させた自民党を尊敬します。なお、衆議院一体改革関連特別委員会に唯一残っている議案「総合こども園法案」に関しては、「これに替わるものが今の法案ですので、認定こども園の改正案ですので、当然廃案ということになるということでお考えいただいていいと思います」(岡田副総理)として、9月8日の会期末で審議未了廃案にすることを容認しました。これにより、すべての保育園を総合こども園に移行させるのではなく、認定こども園への移行は任意になります。人口過密都市では、施設が整った「幼稚園」で、0~2歳児保育や、延長保育、預かり保育などをしてもらうことで、就学前教育を受けながら保育のサービスを受けられることになり、待機児童解消が期待できます。過疎地では、定員割れの幼稚園が保育に参入することで、より質の良い就学前教育、保育が受けられます。いずれにしろ、子育てがしやすくなると同時に、フレーベル以降の就学前教育がなるべく多くの子どもに提供されることになりました。3党合意にともなう「改正認定こども園法」により、株式会社の保育参入は拒絶されました。また3党は幼稚園教諭と保育士を一本化することで、現在は相対的に給料・勤務時間とも環境が悪い保育士の待遇を改善できるとしていますが、具体策は今後に持ち越しました。保育の量と質の改善に1兆円が必要ですが、0・3兆円は消費税10%でも足りない状態が続きます。
大型連休(ゴールデンウィーク)明けからお盆休み前までという長い長い旅路でした。
この間、衆議院特別委員会では民主党、自民党、公明党による法案の修正協議が行われ、6月15日(金)に3党合意。新規提出衆法や閣法の衆議院修正は6月22日(金)に審議入りしました。しかし、6月26日(火)には、3党のうち、民主党からおびただしい造反者が出るという不正常採決で、暗雲がたれ込めました。参議院での審議入りは7月11日(水)にずれ込みましたが、順調に審議が進む、いよいよ採決かと思った今週、野田内閣不信任決議案とセットで参議院に野田首相問責決議案が出され、採決できずに会期末を迎えかねない重大局面となりましたが、8月8日(水)夜に3党首合意ができ、8月9日(木)に不信任を大差で否決。ようやくきょう、採決に持ち込めました。
参議院での80時間審議では、民主党、自民党、公明党の衆議院議員が答弁。年金は長妻昭さんら、税制は野田毅さんら、子ども・子育ては池坊保子さんらが味のある答弁を繰り広げました。締めくくり質疑のラストの質問者への答弁では、民主党の1期生衆院議員で愛媛3区の白石洋一さんが答弁。副大臣席から立ち上がり答弁した白石さんでしたが、答弁後は先輩に促されて大臣席に。テレビ入りの審議では、総理の後ろの官房長官が座り席に促されて着席し、可決を見届けました。
もちろん、これで終わりではありません。国民会議では、最低保障年金をめぐって長期的な社会保障の全体像をわずか1年間で決めなければ行けません。公明党の提案などによる「年金生活者支援給付金の支給に関する法律案」(180閣法83号)やマイナンバー法案(180閣法31~33号)、年金交付国債を削除する一連の法案(新・特例公債法案、 国民年金法改正案の内閣修正案)、時期は不明ですが年金交付国債を年金特例公債にとりかえる補正予算案。そして、転嫁を確実にする独占禁止法の改正に関する審議、低所得者対策の現金給付の設計、輸出関連会社の益税、日本医師会会員医療機関の損税対策などが必要です。そして、何より大事なのは、景気弾力条項に伴う、来年秋ごろまでのデフレ脱却と経済成長の足取りの確認です。これには、政府だけでなく、日本銀行も協力してほしいですね。
私自身、まったくバテることなく3ヶ月余りの審議をウォッチし続けました。
子ども・子育て新システム。子どもの0歳、1歳、2歳・・・はそれぞれの人生で一度きりしかありません。そのためには、これはたとえ交戦状態にあるときでも、国家が最優先に税金を振り向けないといけない分野だと感じました。その思いが3党合意につながったのであり、3党談合ではありません。衆院段階で野党筆頭理事を務めたイブキング(伊吹文明さん)、参院で答弁した野田毅さんを見ていても、信念のある人は強いな。というよりも、およそ政治家はそれがすべてだと感じました。
その一方、きょうの特別委員会では、冒頭に国民の生活が第一と日本共産党が委員長不信任動議を提出。さらに本会議では平田健二議長不信任決議案が提出し、抵抗したため、採決時刻が遅れました。まして、議長不信任決議案の賛成討論では、あろうことか、国民の生活が第一のはたともこさんが数分間にわたって前日の衆議院本会議での渡辺喜美みんなの党代表の演説を引用する残念が事態がありました。昔は「参議院は衆議院のカーボンコピー」と言われましたが、これでは、「参議院は衆議院のコピペ(コピー&ペースト)」です。せっかく衆参ねじれで参議院らしさを発揮するチャンスなのに、附帯決議をつけた自民党や公明党と違い、抵抗野党は大きく存在感を損ねました。委員会の討論では国民の生活が第一の姫井由美子さんが「私たち、自公を除く、純粋野党は~~」と繰り返し、失笑を浴びました。自民党、公明党、たちあがれ日本は責任野党、それ以外は抵抗野党ということになるでしょう。こういう仕分けができたのは良かったと感じます。
実務者が集まれば飛びっきりの夏が来る。
一体改革が実現すれば飛びっきりの夏が来る。
メダル最多記録まであと4個になったロンドン・オリンピック、節電の夏の順調さ、日本が再び甦ろうとしています。それが法案成立であり、この3ヶ月間の一体改革審議だったと感じます。日本は大きく前進しました。議論から説得へ。説得という面ではなかなか難しいな。そう思いつつも、自分なりに経験を積めたと感じます。
参議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会は、委員長が高橋千秋さん(民主党、三重、来夏改選)、野党側筆頭理事が桜井充さん(民主党、愛知、2016年改選)、次席理事が大久保勉さん(民主党、福岡、2016年改選)、三席理事が吉川沙織さん(民主党、比例、来夏改選)。与党側筆頭理事が衛藤せい一さん(自民党、比例、来夏改選)、次席理事が中村博彦さん(自民党、比例、2016年改選)、三席理事が石井準一さん(自民党、千葉、来夏改選)、公明党理事が荒木清寛さん(比例、2016年改選)らでした。
決められない政治から決められる政治へ。
当ブログは大型連休(ゴールデンウィーク)を前に国立国会図書館で祖父のたった一つの自慢だったという一級建築士資格の番号(14423号)が田中角栄さん(16989号)より早いことを発見。国家資格を運営し、この名簿を保管している明治維新以来の「日本国」を守るためには、消費税増税(5%引き上げでおよそ10兆円の国庫増収)が必要だとの強い信念を持ち、そのためには、5月8日(火)の衆議院で審議入りした一体改革法の成立が絶対に必要だと考え、この3ヶ月間一意専心してきました。お盆前に成立して万感の思い。おじいちゃんも同様だと感じます。
ヤッター!!!
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[画像]野田内閣不信任決議案の趣旨弁明に立つピエロ渡辺(渡辺喜美みんなの党代表)、2012年8月9日、衆議院本会議、衆議院インターネット審議中継から。
【2012年8月9日(木) 衆議院本会議】
野田内閣不信任決議案(180国会決議4号、小沢一郎氏ら提出)が否決されました。筆頭発議者であり趣旨弁明に立った、みんなの党の渡辺喜美さんは、小沢氏に利用されたうえ、使い捨てにされた可能性があります。小沢一郎さんは出席のうえ、白票(賛成票)を投じました。
政権交代可能な二大政党的勢力への収斂が進む中で、中小野党が仕分けされました。
国民の生活が第一、新党きづな、日本共産党、社民党、みんなの党が提出した野田内閣不信任決議案が否決されました。この議案には、自民党、公明党、たちあがれ日本、新党大地・真民主の4野党は加わりませんでした。
記名投票表決(堂々巡り)の結果は、
投票総数332
賛成86
反対246
で野田内閣不信任決議案は否決され、野田内閣は信任されました。
午後6時2分開議。全員で、長崎原爆忌およびそれに先立つ広島原爆忌への黙祷。その後、自民党、公明党が退席しました。
この後、議事進行係の鷲尾英一郎さん(民主党)が「渡辺喜美君ほか5名提出の野田内閣不信任決議案は提出者の希望通り、すみやかに議題にすることを臨みます」と発議し、異議無しで認められました。
趣旨弁明に立った渡辺喜美さんは「私はみんなの党、日本共産党、社民党、新党日本、国民の生活が第一、新党きづな、有志の無所属議員の諸君を代表して野田内閣不信任決議案の趣旨を説明します」と演説しました。この議案の提出者は、渡辺喜美さん、穀田恵二さん、照屋寛徳さん、田中康夫さん、小沢一郎さん、内山晃さん。賛同者は各党所属全議員と無所属5人の67人。無所属は小沢系3人に加えて、中島政希さん、横粂勝仁さんが入っており、会派結成届の関係から名を連ねたと思われます。それでも、わずか合計73人です。
会派人数順ならば、小沢一郎さんが趣旨弁明すべきところですが、弁の立つ渡辺喜美さんが登壇しました。あたかも、細川内閣退陣後に、渡辺美智雄さんが担がれたのに、はしごを外され、自民党内での立場を悪くしたのを彷彿とさせました。渡辺さんは「平成21年の民主党政権公約から大きく外れている」としたうえで、財務省批判を繰り広げながら、3党合意について「自民党の公共事業長老派を利するものだ」としました。そして、早稲田大学政治経済学部の先輩に当たる斎藤隆夫・衆議院議員の同じ演壇での反軍演説・粛軍演説を持ち出し、「斎藤隆夫なら公共事業よりも社会保障が大事だと言っただろう」と我田引水演説。その上で、「増税の前にやるべきことがあるだろう」と述べ、元々はみんなの党のスローガンなのに、小沢一郎さんに利用された言葉を絶叫しました。
「3人しか4人しか残っていないようですが・・・自民党のみなさん、公明党のみなさん」と呼びかけ、「みなさんは増税よりも解散を優先しようとしていたのではないですか」と力なく呼びかけました。親子揃って、小沢一郎に騙されてはしごを外された渡辺親子。「今からでも遅くはない、国会議員は全国民の代表です。自らの政治理念に基づいて行動すべきだ。民主、自民、公明のみなさん、党議拘束を除いて自らの信念を全うしてください」と原理原則を語りました。そのうえで「国民のみなさん、けっして政治をあきらめないでください。3党談合政治を少数政党がちゃぶ台返しをしましょう。次の選挙で、増税派を間接直接に支援した議員に鉄槌を下しましょう」と語りました。
新進党を解党した小沢一郎さんに近づくと、使い捨てにされ、不幸になります。渡辺親子はそろって不幸になりました。
反対討論には、民主党から笠浩史さんが立ちました。笠さんは議院運営委員会理事で議場内交渉係を務めています。前職のテレビ朝日記者時代に、小沢一郎自由党党首が連立離脱を一方的に突きつけた小渕恵三首相(自民党総裁)の生涯最後のインタビューの担当者だったことで有名です。小渕さんの子の小渕優子さんは自民党幹事長代理を務めて、あず可決・成立する見通しの「認定こども園法改正案」は2009年3月に小渕内閣府少子化担当大臣がまとめた「小渕報告(小渕リポート)」が出発点となって、6月15日に3党合意した法案です。小渕さんはイキイキとしているようです。
野党各党共同提出の場合は、賛成討論には他の党首・幹事長が立つものですが、国民の生活が第一は、小沢一郎代表、東祥三幹事長でもなく、鈴木克昌・国会対策委員長を登壇させました。明らかに役不足であり、「増税は国民を裏切るものである」と演説しましたが、鈴木さんが登壇していること自体が、みんなの党を裏切る演説でしょう。そのうえで、「野田総理はあなたはきょうの両院議員総会で解散時期は明示しない」と民主党の内部会議の報道に言及し、古巣への複雑な感情を垣間見せました。「今、私たちがなすべきことは革命的ともいえる行財政改革だ」という浮ついた発言をしました。
次に反対討論には、与党・国民新党の中島正純さんが立ちました。中島さんは民主党大阪3区公認候補として当選しましたが、政治資金収支報告書の作成に誤りが発覚したことから離党し、国民新党に身を寄せています。
続いて賛成討論には、日本共産党から、ちゃんと、志位和夫委員長が立ちました。内閣の存否にかかわる議案に党首が演説するのは当然のことです。志位さんは「日本共産党は富裕層と大企業に応分な負担(増税)を求める」ことで、社会保障が充実できるという持論を展開しました。
今回の決議案に加わらなかった健全野党は、自民党、公明党、たちあがれ日本、新党大地・真民主の4党。残念ながら、党首や代表者の話をきょうは聞けませんでしたが、総選挙に向けて演説を聴いてみたいところです。
これに与党の民主党、国民新党の合計6党が「政局よりも政策を」との立場で一貫しました。まさに政党仕分けが行われ、政権交代可能な二大政党勢力への収斂の歴史的必然のなかで、小沢一郎氏がまとめた中小野党が自ら消えていきました。あすからの残り1ヶ月の国会は巡航速度になりそうです。
そして、何よりも、有権者を含めて小沢一郎に近づいた人間は必ず不幸になります。
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[お知らせおわり]
[写真]被爆校、長崎市立城山小学校を訪れた首相(民主党代表)の野田佳彦さん、2012年8月9日、首相官邸ホームページから。
2012年8月9日、長崎原爆忌を迎えました。野田佳彦首相(民主党代表)は長崎平和祈念式典に先立ち、被爆校「長崎市立城山小学校」を訪問しました。コウゾウさんのアドバイスによるものです。コウゾウさんと言っても渡部恒三さんではありません。元厚生労働省医官で公明党参議院議員の秋野公造さんのアドバイスです。
[写真]公明党参議院議員の秋野公造さん、公明党ホームページから。
先々週、7月24日(水)の参院予算委員会の予算執行に関する集中審議。
秋野さんは「総理は八月九日、長崎原爆忌にお越しになりますでしょうか。もしもお越しになれるのであれば、お忙しい日程は重々承知の上で、この被爆平和公園から僅か一、二キロのところでありますこの城山小学校に足を運んでみませんか。そして、長崎の思い、そして被爆者の思いというものに思いを致してみてはいかがでしょうか」と質問しています。
野田総理は「私としては、これ、国会のお許しをいただかなければなりませんけれども、八月九日の長崎、そしてその前の八月六日の広島、それぞれの地域における平和記念式典には是非出席をさせていただきたいというふうに思っております。もし、八月九日、日程的にお許しをいただいて式典に参加できるならば、ちょっと厳しい日程とは聞いているんですけれども、今委員から城山小学校の原爆の悲惨さを後世に伝えるための歴史的な価値についてのお話をいただきましたので、是非可能ならば立ち寄ることができるようにちょっと事務的に調整をさせていただきたいというふうに思います」と答弁しました。
野田さんは約束を守る人です。内閣不信任決議案(小沢一郎新進党解党者らが発議者)提出中ということで、早めに出張し、長崎平和祈念式典の前の時間帯に訪れるという日程を組んだようです。首相官邸は現在新進党3羽ガラス(野田、藤村修官房長官、岡田克也副総理)が抑えていますので、公明党に配慮した日程を組めるのです。
なお、一つ付け加えたいのですが、総理はきょうの平和祈念式典の中で「唯一の戦争被爆国」という表現をしました。広島・長崎平和記念(祈念)式典での首相のあいさつはいつも「唯一の戦闘被爆国」「唯一の戦争被爆国」と表現しています。しかし、国会では「唯一の被爆国」という表現がされます。しかし、長崎型のプルトニウム爆弾を最初に実験したのは米国のニューメキシコ州です。あるいは、マーシャル諸島は被爆国ではないのでしょうか。ぜひ、「唯一の戦争被爆国」という表現を使ってほしいと考えます。
支え合う日本、心をつなぐ公明党(新進党)。
【追記 2012年8月10日(金) 午前8時半】
○秋野公造さん「忘れられない日に」
秋野公造さんは、きょうのツイッターで、「昨日8月9日には長崎原爆忌平和祈念式典参加の前に野田総理を城山小学校にお迎えしました。その後の長崎県本部議員研修会に山口代表をお迎えしました。忘れられない日となりました。上京します。行って参ります」とつぶやきました。
長崎大学を目指して勉強している最中に被爆死したおじさんも喜んでおられるでしょう。生命(いのち)を守る政治が継承されていることをうれしく思います。
【追記おわり】
[国会会議録データベースから引用はじめ]
参議院予算委員会
第23号 平成24年7月24日
○秋野公造君 公明党の秋野公造です。お役に立てますよう、質疑に入りたいと思います。(略)
八月九日、長崎原爆忌を迎えます。
被爆をした瓦やガラスを御覧になったことがありましょうか。被爆瓦は沸騰をしております。そして、ガラスは、元々何だったのかが分からなかったような形の、熱で変形をしております。そんな熱線に焼かれて長崎のそして広島の被爆者の方々の多くが命を失い、生き残った方も長期間にわたり後遺症に苦しみ、今でも被爆者の多くが後遺症に苦しんでいるというような状況であります。
私のおじも、長崎大学を目指して勉強している最中に被爆死をいたしました。連れていってくれ連れていってくれと膝にしがみついたそうでありますが、誰も連れていくことができず、そのことを悔いておられる御友人のお話を伺いました。また、別のおじが亡くなるときには、友人たちが枕元に集まって、原爆を思い出せ、原爆を思い出せと言って励ましていました。子供心に、被爆の苦しみとは死ぬ苦しみよりもそんなに深いものなのかということを思ったことがあります。そういう被爆者の思い、長崎の思いというものに共有することなしに幾ら核廃絶だと叫んでも、それは観念的なものになるのではないかということを私は強く思います。
広島では、原爆ドームの前で人々は被爆者の苦しみに思いを致します。長崎には城山小学校があります。この城山小学校、コンクリートの建物で、被爆地から約一、二キロのところにあるものですが、円い洋風のガラスがあります。中には、木れんがといって、木の枠にコンクリートがはめ込んであるような独特の構造が造ってあるものでありますが、爆風が窓ガラスを割って中に入って、そしてその裏側が焼けたのではなくて、ぐるっと熱が回ってその逆側が焼けているような、熱風が中に滞留をしたのではないか、そんなことも想像をさせるような、そんな遺構があります。
コンクリートの寿命は五十年であります。もうそろそろしっかり補修をして、残すという意思を示さないと、長崎だけの遺産ではなく、全国民が、二度と核兵器を使わせない、そういったようなことを思わせるためには、何らか被爆の思いを伝える、そういったシンボルというものが私は必要だと思っています。
城山小学校の国の文化財指定を求めます。文部科学大臣の見解を求めます。
○国務大臣(平野博文君) 今議員から御指摘いただきました城山小学校についてでございますが、昭和二十年八月の九日の原爆投下によって被害を受け、学校関係者にも多くの犠牲者が出たと承知をいたしております。また、被爆の実態を示す建物でもあると考えてございます。
今、そういう中で長崎市では、平成九年度からこの遺構の現状調査を、十年度からは保存をどういうふうに整備をするか、こういうお考えの下に今実施をされておりまして、一部が残されておりまして、展示施設を含めて改修をして公開中であると、こういうことで、今議員御指摘がありますように、この建物をどのように保存をし、後世にこの問題を伝えていくか、このことは非常に大事な視点だと私は思っております。
したがいまして、地元長崎市におきましても、この学校をどういうふうにしていくかという調査報告書もでき上がっていると、こういうふうに承知をいたしておりますので、近く、どういう保存形態がいいのか、こういうことで文化庁の方から専門家を現地の方に派遣をしたいと思っております。その上で地元の方々と十分に調整をして今後対応していきたいと、かように思っております。
○秋野公造君 ありがとうございます。
ここには被爆した防空ごうがあります。そして、亡くなった女学生のことをしのぶ嘉代子桜という、そういうような桜、これも実は害虫にちょっと食われているような状況であります。どうかこういうことも含めまして、保存の検討をお願いをしたいと思います。
総理は八月九日、長崎原爆忌にお越しになりますでしょうか。もしもお越しになれるのであれば、お忙しい日程は重々承知の上で、この被爆平和公園から僅か一、二キロのところでありますこの城山小学校に足を運んでみませんか。そして、長崎の思い、そして被爆者の思いというものに思いを致してみてはいかがでしょうか。
この城山小学校は、当時の子供たちが残そうと運動をして残ったものであります。その心の中に、私たちが二度と核兵器を使わせない、平和を守っていく、そういったことを継いでいく鍵があると信じます。
総理の見解を求めたいと思います。
○内閣総理大臣(野田佳彦君) 私としては、これ、国会のお許しをいただかなければなりませんけれども、八月九日の長崎、そしてその前の八月六日の広島、それぞれの地域における平和記念式典には是非出席をさせていただきたいというふうに思っております。
もし、八月九日、日程的にお許しをいただいて式典に参加できるならば、ちょっと厳しい日程とは聞いているんですけれども、今委員から城山小学校の原爆の悲惨さを後世に伝えるための歴史的な価値についてのお話をいただきましたので、是非可能ならば立ち寄ることができるようにちょっと事務的に調整をさせていただきたいというふうに思います。
○秋野公造君 ありがとうございます。
この城山小学校を舞台とした絵本の中に、「世界でいちばん悲しいクラス」という絵本があります。被爆して後、生き残った子供たちは別室に入れられて授業を受けたという悲しい歴史であります。
もしも福島でいわれなき差別が起きようとしているのであれば、あの被爆後の長崎で起きた差別、広島で起きた差別というものを我が国はまだ乗り越えられていなかったということになるかと思います。
そうはいっても、また、福島で受けた健康被害というもの、お母さんたちの心配、そして子供たちの心配というものはやはり言い表されないものがあり、福島の県民の皆様の健康は国が責任を持ってしっかりと守るべきであるということを強く訴えたいと思いますし、それは原発事故調査会の報告でもしっかり国の負担でと、そして、与野党で成立させた子ども・被災者支援法においても、少なくとも子供については、一生涯にわたって、そして県内外同じ検査を求めるように議員立法で成立をしたところであります。
この福島県民健康調査をしっかり成功させるために、それを実施するための最低限の施設については、例えば教官室、事務官室、甲状腺超音波を行う診察室、カウンセリングルーム、会議室、そしてコールセンター、そういった最低限のことを行う施設の整備については再三求めてまいりましたが、この予算についてどのようになっておりますか。総理に伺いたいと思います。
○委員長(柳田稔君) 時間ですので、お願いします。
○内閣総理大臣(野田佳彦君) はい。県民健康管理調査を長期にわたって実施するために必要な予算については、福島県からの御要望も踏まえまして、福島県が設置した県民健康管理基金に対して平成二十三年度の第二次補正予算で約七百八十二億円を既に交付をしています。その中で必要な施設として、本基金を活用して、例えば、甲状腺超音波検査の診察室や、全県民を対象とした外部被曝を推計する基本調査のデータベースの管理運営のための施設整備等を進めていると承知をしております。
引き続き、福島県によって県民健康管理基金が適切に活用され、健康管理調査が円滑に実施されていくものと考えております。(後略)
[引用おわり]
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[お知らせおわり]
民主党の野田佳彦、自民党の谷垣禎一、公明党の山口那津男の3党首は2012年8月8日午後7時半から会談し、3党合意にもとづく社会保障と税の一体改革法案を成立させ、「近いうちに信を問う」ことで一致しました。これにより、小沢一郎氏らが前日夕に提出した野田内閣不信任決議案は、公明党も反対することから、否決は絶対的となりました。9日ないし10日の衆院本会議で否決し、その後、10日中にも参議院特別委員会で、一体改革法案のしめくくり質疑、討論、採決が行われ民主党・自民党・公明党などの賛成多数で可決。本会議の委員長報告のうえ、衆院採決時と同じ文面で可決・成立する運び。消費税率は、2年後の2014年(平成26年)の4月1日に「8%」、その1年半後に「10%」になります。参院に提出された野田首相問責決議案は、参議院議院運営委員会で採決のうえ上程を否決する可能性が高いと思われます。
これにより、小沢一郎氏が覆面をして提出した不信任・問責政局は、小沢氏の完全な負けが確定し、求心力のさらなる低下は確実。小沢氏は、1993年に自民党党紀委員会から除名処分を受けており、公明党・創価学会内では、新進党解党、小渕首相退陣の先輩として「裏切り者」との声が大勢。ただし、政治に詳しくない創価学会員のなかには「小沢さんは馴染みがある」という意識の人もいます。例の週刊文春の福田和子さんの手紙が載ったときも、その日のうちに学会員の方が「読みたい」というだったので、渡しました。ある意味、興味があるということにはなるでしょう。しかし、昨年6月1日提出2日採決の「感内閣不信任決議案」であれだけ小沢さんに騙されたのに、彼と違って震災復旧・復興で活躍してきた自民党や公明党はこれ以上同じ人に騙され続けてはいけないですよ。谷垣さんは加藤紘一さんとの仲といい、ちょっと人を信用しすぎるのかなあ。
この政局に負けたのは、選挙の対立軸がメチャクチャな状態で選挙を迎えても小選挙区で有力な小泉進次郎・自民党青年局長らの突き上げを見た、小沢氏が埋没感にさいなまれていたみんなの党の渡辺喜美代表・江田憲司幹事長らを利用してしかけましたが、逆に責任3党から「小沢不信任」を決議される結果となりました。
お盆休みと、それ以降の国会日程については、「今後の政治日程by下町の太陽2012年8月8日版」で最新情報を更新しておりますので、ご確認下さい。
責任3党は、第46回衆院選後も、参議院で過半数がない少数与党になるのが確実。第180通常国会は、お盆明けの8月20日週からもまる3週間あり、事実上の一体改革法案であるマイナンバー法案、新・特例公債法案と年金交付国債発行を年金特例債に組み替える国民年金法の一部を改正する法案の内閣修正2法案と、それを技術的に盛り込む補正予算案の処理が待ちかまえています。そしてなにより定数是正をやらないといけません。これをやらないと、野田佳彦さん、菅直人さん、石原伸晃さん、太田昭宏さん(落選中、公明党議長)らが当選しても、無効になる可能性があります。
まだまだ、やらなければいけないことは残っています。
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【衆議院総務委員会 2012年8月7日(火)】
衆議院総務委員会は、ここ数年の日本郵政の問題、地上波デジタル移行に伴う放送法・電波法などの改正作業にメドが付き、地方分権・地域主権に関する議論が昨年の通常国会以降活発化しています。改正郵政民営化法(郵政見直し法)、社会保障の安定財源を確保するための地方消費税・地方交付税法改正法案もそれぞれ特別委員会で審議されており、総務委員会は民主党・自民党とも首長・地方議員・地方公務員(自治労)経験者を中心に活発な議論が交わされています。
ただし、ここに来て「民主主義の前提であるプロセスの透明性」に関して、一部苦言を呈したい場面が増えています。
地方自治法の一部を改正する法律案(180国会閣法60号)は3月9日に衆議院に提出され、7月23日に総務委員会に付託されています。これは日本国憲法施行に伴う地方自治法制定から通算でおよそ300回目の改正になります。この法案は、現行法でも可能な通年議会をやりやすくし、首長の専決処分(副首長の任命)を制限する一方で、首長の再議権は拡充する法案です。7月31日の法案審査では元兵庫県庁財政課員の谷公一さん(自民党)が「あまり重要な改正に思えない」と発言しています。ところが、8月7日の午前9時に開会した直後に、元高岡市長で自民党の橘慶一郎さん、元自治労鹿児島委員長の民主党の皆吉稲生さんらが修正案を共同提出し、地方議会会派に支給される「政務調査費」を「政務活動費」に改めるよう提案し、その3時間後には可決してしまいました。このような長年、地方議会をめぐる様々なスキャンダルと改革の争点となってきた「政務調査費」を「政務活動費」にかえる修正案が、あたかもだまし討ちのように午前9時に提出され、正午の可決するような議会運営はまったく納得できません。現時点でも衆議院のホームページには載っていません。まさか、総務省自治行政局が地方行政族議員と仕組んでいたのでなければいいのですが。
今国会では成立後に気付いた不可思議な法案があります。「東日本大震災による被害を受けた合併市町村に係る地方債の特例に関する法律の一部を改正する法律案」です。これは昨年の第179臨時国会で提出されており、議案番号は「179国会9号」ですが、6月20日に参議院で可決・成立しており、「改正東日本大震災による被害を受けた合併市町村に係る地方債の特例に関する法律」として法律番号「平成24年36号」として、6月27日に天皇陛下が公布されています。公布の日に施行(せこう)しました。
この法律は平成の大合併(市町村合併)の「アメとムチ」の一つ、市町村合併特例債(合併特例債)の発行期限を5年延長する法律です。
そして、この市町村は全国の市町村です。
昨年の第177通常国会(震災国会)で成立した「東日本大震災による被害を受けた合併市町村に係る地方債の特例に関する法律(平成二十三年法律第百二号)」では被災地域の合併自治体に限られていました。しかし、今国会で成立した法案は「東日本大震災による「被害を受けた自治体」から「被害に伴う自治体」に対象を改めて、タイトルからして変更しています。
私は平成の大合併に賛成ですし、市町村合併特例法はすでに失効し、「駆け込み需要」は十分に発生しています。そしてアメとムチも効果があったでしょうが、やはり合併特例債の地方交付税交付金の7割償還というアメがあまりに甘すぎたのではないかと感じます。5年間の延長は、自治体にとっても、地方交付税の原資である国庫にとってもよくないことになる気がします。
とはいえ、この法律タイトル、被災地限定だと思いますよね。ちょっと総務省や衆議院総務委員会もどうなのかなと不信感を持たざるを得ません。私はこのことは、公布後に気付きました。
実際に国会での法案審査を聞いていると、警察庁、旧自治省、財務省は法案を書くのがうまいと感じます。その一方で、厚労省というのは法案をシンプルにまとめることがなかなかできない省庁だと感じます。国土交通省や経済産業省は官僚たちの熱意を感じる法案も多いですが、少し守備範囲が広すぎる気がすることもあります。
そういった中で、国会議員がもっと法案を読む努力をしないといけないし、まずは衆議院が議案をすぐにホームページに載せないといけません。民主主義はプロセスの透明性がスタート。そういう意味では、地方自治法の通算300回目ぐらいの改正法案で政府参考人が「通年議会にすることで、日程が明確化し、住民が傍聴しやすくなる」という答弁。私は国会の通年制には断固反対の考えですが、日程の明確化により傍聴しやすくなるというのは、国会、とくに存在意義を問われている参議院が率先垂範すればいいと考えます。
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[写真]内閣不信任案の発議者となった小沢一郎衆議院議員、国民の生活が第一結党大会後の記者会見、憲政記念館(東京・千代田)、2012年7月11日、筆者撮影。
みなさんは小沢一郎衆議院議員(岩手県第4区、国民の生活が第一)の本名をご存じでしょうか。「小澤一郎」ではありません。「悪魔一郎」です。彼は自分に近づいた者を最後には必ず不幸にする「悪魔一郎」です。例えば、渡辺美智雄さん。細川連立内閣総辞職に伴い、次の首相に、野党・自民党の渡辺美智雄元蔵相を擁立しようとしました。しかし、このときは、お母さんの顔は写真でしか見たことがないけれども立派な親戚を持つミッチーは「ついに俺も総理になれる」と興奮して寝付けず、翌朝寝過ごしまい、小沢議員が指定した「午前11時まで」に電話ができず、総理の座を逃したとされています。その後、ミッチーの電話に小沢さんが出ることはなく、その2年後に72歳で亡くなりました。
2012年8月7日(火)午後5時半、衆議院議長室で野田内閣不信任決議案が提出されました。手元に現物がありますが、極めて奇妙なことがあります。提出者の順番です。
提出者は6衆議院議員で、次の順になっています。
渡辺喜美、穀田恵二、照屋寛徳、田中康夫、小沢一郎、内山晃。
これは、会派の議席順ならば、国民の生活が第一の小沢一郎さんが筆頭発議者になるはずです。五十音順ならば、新党きづな代表(統一会派「国民の生活が第一・きづな」)の内山晃さんが筆頭発議者になるはずです。しかし、渡辺喜美・みんなの党代表が筆頭発議者になっています。これは、細川内閣後継で小沢一郎氏に利用されたミッチーを彷彿とさせます。それから、日本共産党が穀田衆議院議員団長(国対委員長)となっています、志位和夫党首(幹部会委員長)の名前は賛成者に入っています。同様に社民党も照屋国対委員長が発議者になっていますが、重野安正幹事長も賛成者に入っています。
賛成者は67人。みんなの党、日本共産党、社民党、国民の生活が第一・きづな、改革無所属の会(木内孝胤さん、中島政希さん、中津川博郷さん、横粂勝仁さん)、無所属1人(佐藤ゆうこさん=減税日本)が名を連ねています。
ですから、民主党、自民党、公明党、国民新党、たちあがれ日本、新党大地・真民主、無所属のうち8人(衛藤征士郎さん、亀井静香さん、平智之さん、土肥隆一さん、鳩山邦夫さん、与謝野馨さん、横路孝弘さん)は加わっていないことになります。
この後、参議院議長宛にも野田首相問責決議案が出たと報じられています。こちらには新党大地・真民主が加わったようです。
この理由について、新党大地・真民主衆議院議員の石川知裕さん(北海道11区)は、「(党内で)衆参がねじれちゃった」と説明しました。新党大地・真民主の2人の参院議員(平山誠さん、横峯良郎さん)のうち平山・参院環境委員は閣法で3党合意による衆院修正が入った「原子力規制委員会設置法」の審議で激しく批判したうえ、採決で反対しており、今回の衆参ねじれをうかがわせるものがありました。
なお、提出者7人、賛成者67人の合計74議員のうち、衆議院議院運営委員会理事は太田和美さん一人。オブザーバーは発言できません。このため、太田理事だけでは、器量不足と考えられます。
決議文は「野田内閣不信任決議 本院は、野田内閣を信任せず。右決議する。」
理由は「野田内閣が強行しようとしている消費税増税は、平成21年総選挙の民主党政権公約に違反するものである。国民の多くは消費税増税法案に反対しており、今国会で成立させるべきではないとの声は圧倒的多数となっている。国民への約束、国民の声に背く政治姿勢をとり続ける野田内閣は信任に値しない。これが、本決議案を提出する理由である」となっています。
「政権公約に違反」「国民への約束」「国民の声」など、小沢グループがよく使うキーワードが散見されます。仮に本会議に上程された場合は、渡辺喜美さんが趣旨弁明に立つということになっているのでしょうが、どうも小沢氏に利用されている気がします。渡辺喜美さん見た目は若いですが、すでに還暦、60歳です。早く小沢から離れないと、お父さんと同じ運命が待ちかまえています。
[写真]在りし日のミッチー。渡辺美智雄副総理・外相(自民党)、外務省ホームページ1992年版外交青書から。
[写真]ミッチーの長男の渡辺喜美さん。
一方、4回ある69条解散の一つ、「バカヤロウ解散」の主謀者である鳩山一郎さんの孫である鳩山由紀夫さんの「政権公約を実現する会」関係者は、同会の中でも賛否が割れており、この決議案が上程された場合は、否決されるとの見通しを示しています。
このほか、参議院にも総理問責決議案が出たようですから、あす採決予定だった「社会保障と税の一体改革8法案」(衆法2本、閣法衆院修正が6本)の審議が遅れる可能性が出てきました。
[写真]記者会見する中塚一宏・内閣府副大臣、岡田克也副総理、稲盛和夫・京セラ創業者、2012年8月7日午後6時半、内閣府、筆者撮影。
野田内閣不信任案提出から1時間後、内閣府で記者会見した稲盛和夫・京セラ創業者は、「国家の財政状況はすでに破綻状態に陥っていると私は思っています。公務員も(公的サービスの)受益者である国民もみんなが痛みを感じることが大事です。入るを量って出るを制す(いるをはかって、いずるをせいす)ーー入ってくるものを増やそうとすれば(消費税などの増税で)国民の負担は増えます。しかし、公的分野にかかわる公務員・受益者(国民)の意識改革の徹底で、みんなが辛い目を(共有)するんだ、みんなが耐えていかないといけない。そういう国民的世論を増やしていかないといけない」と語りました。そのうええで、記者の質問に答えて稲盛さんは「(会長として改革にあたった)JALの再建とはまったく違う。(日本の財政再建のためには)税収を増やすことと出費(歳出)を減らすことが必要だ」と語り、むだづかいの削減で収支を改善して再上場を果たす日本航空とはまったく違い、歳入増が必要だとの考えを示しました。この記者会見は、行政改革に関する懇談会の取りまとめ文書「大転換期の行政改革の理念と方向性について」の発表のために、小沢氏の動きと関係なく当初から設定されていたもの。岡田副総理は「今後3年間の集中改革期間を設定し、我が国が直面する財政の危機的状況の下、真に効率的で機能する政府を実現する」としました。
[写真]マイクを直す岡田副総理、稲盛和夫さん、吉川廣和DOWAホールディングス相談役、加藤秀樹・行政刷新会議事務局長、各々行政改革に関する懇談会委員、2012年8月7日、内閣府、筆者撮影。
衆議院、参議院とも若干審議が止まるかもしれませんが、それはやむを得ない民主主義の手間です。内閣不信任案は否決される見通しですので、上程し、否決すれば後の1ヶ月の会期が楽です。問題は参議院での問責決議ですが、可決されたにしても、一体改革法案は日本国憲法59条の規定にもとづき、8月25日(土)以降に衆議院の3分の2(民主党、自民党、公明党、国民新党、たちあがれ日本)の賛成で可決・成立します。
わずか5人の新党大地・真民主ですら、衆参がねじれてしまっている現状。これをどう考えるか。小沢一郎氏がいまだにはびこる現状。これをどう考えるか。会期を1ヶ月も残した段階での不信任・問責政局による国会混乱を招いたのは6月26日(火)の一体改革法案の不正常採決を招いた民主党内の恥知らず、恩知らずの火遊びです。しかし、失火責任は日本国憲法で「主権者たる国民」とされた、国民です。
きょうの時点で抑えておきたいポイントは、この不信任案には、自民党、公明党、たちあがれ日本、新党大地・真民主の4野党が加わっていないという事実。歴史の審判はそんなに遠くない未来に出ます。
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報道などによると、きょうにも自民党が問責決議案、ないしは、国民の生活が第一など野党6党が内閣不信任案を提出する構えのようです。野党第1党でない会派が内閣不信任案を提出することになると、30年ぶりのようです。ちなみに、国会法・衆議院規則・衆議院先例集などには内閣不信任案が複数出た場合の採決順などの定めはなく、まさに大混乱政局となりました。
いずれにしろ、通常国会会期末に不信任案が出てくることは当たり前です。また情勢が悪い中で早期解散に応じるようでは、議院内閣制における権力・求心力は生まれません。どの党が官邸をやっていようともです。そもそも、昨年9月に第45期衆議院の過半数で内閣総理大臣を選んでおきながら、11ヶ月後に同じ期の衆議院が不信任ということはあり得ない話です。決められない政治の元凶は衆議院ということになります。うんざりするでしょうが、今こそ、正念場、向こう数十年間にわたる、政党仕分け、議員仕分けのチャンスです。不信任・問責政局前半戦では、公明党、たちあがれ日本は信頼できるという気がします。そして、表に出てこないですが、小沢一郎さんが動いています。注意が必要です。
さて、なぜ、会期末まで1ヶ月も残して、6月15日の3党合意に基づく、「社会保障制度改革推進法案」「認定こども園法改正法案」を含む一体改革8法案が成立する前に不信任・問責政局になったのでしょうか。この蜂の巣突いた大騒ぎは何でしょう。しかも、オリンピック中であること、お盆前であることなど不思議なことばかり。
しかし、ここには、アニキこと、安住淳蔵相があざやかに人質解放に成功したことがあります。よど号ハイジャック事件の山村新治郎さん、ダッカ事件の石井一さんの両運輸政務次官さながらのあざやかな人質解放劇がありました。
ご存じの通り、昨年の第177通常国会では、衆参ねじれの下、「平成23年度の特例公債法案(177閣法1号)」を菅直人首相の名誉ある退陣とひきかえに成立させました。
まず、玄葉光一郎政調会長(国務大臣兼務)が「(平成)23年度特例公債法案が成立しない場合の影響について」というペーパーを広く与野党に流しました。
[写真]「(平成)23年度特例公債法案が成立しない場合の影響について」、クリックすると大きくなります。
玄葉ペーパーには、「国民生活、経済活動、市場に測り知れない悪影響を及ぼす」などと具体的に書いてあります。震災後の混乱の中で、民主党の岡田克也幹事長、安住淳国対委員長、玄葉光一郎政調会長(「岡田3兄弟」)は、自民党、公明党との3党協議体制を構築し、震災後の4月29日には、玄葉光一郎、石破茂、石井啓一の民自公政調会長は、第1次復旧補正予算案の成立に関する3党政調会長合意に成功。本会議では、発声による「異議無し」の全会一致で補正予算が可決するという異例の展開となりました。
[写真]玄葉光一郎国務大臣。第177通常国会では民主党政調会長兼務、第180通常国会では外相として防人(さきもり)を務めています。
そして、平成23年度特例公債法(177閣法2号、平成23年法律106号)をめぐる3党協議が続きました。そして、岡田克也、石原伸晃、井上義久の民自公幹事長は(昨年)8月9日の3党合意に成功。直近の民意である衆参ねじれと震災などによる財政難からマニフェスト修正(4Kのうち高速道路無償化を撤回し、子ども手当は減額、高校無償化と戸別所得補償は3党での政策効果検証)を受け止めました。そのうで、3党合意にもとづき、辞任3条件(内閣総辞職、第2次復旧テコ入れ補正予算案成立、再生可能エネルギー法成立)を成立させ、菅総理は栄誉ある撤退をしました。
自民党は、第180通常国会でも、「平成24年の特例公債法案(180閣法2号)」を自民党は人質にとることにしました。来年は、8月29日に第45期衆議院の満了になります。ことし、人質にすれば、総辞職だと、第44期衆議院同様に4人目の首相となってしまいますので、衆議院解散を選択するのは自明の理です。ところが、自民党による誘拐事件は安住淳さんによって鮮やかに解決されました。そして、そのことに気付いた野党が蜂の巣突いた大騒ぎになっています。
7月26日(木)の衆院決算行政監視委員会で、自民党・河野太郎さんの「特例公債法なしで政府のキャッシュフローというのはいつまでもつんでしょうか、明確にお答えをいただきたいと思います」との質問に対して、アニキは次のように答弁しました。
「現在、歳出許容額というのは、税収、税外収入込みで四十六・一兆円でございます。今、計算をしていますが、九月末時点の累積支出見込み額は三十九・三兆円です。そして、二十一年度から二十三年度までの十月の支出額は、二十一年度が五・八兆、二十二年度が五・三兆、二十三年度が五・一兆ですから、推計ですが、十月は大体五兆円台前半になります。ですから、三十九・三兆に五兆円ちょっとを加えるのが十月末時点、その時点では四十六・一兆ですから、十一月を迎えた時点で、これは何もないことを前提に、このままいけば、おおむね一兆円ちょっとのお金になってしまうというふうに私どもとしては推計しております」
11月上旬で(税収・税外収入見積額に対応する歳出額の残額が)1兆円あるのですから、9月8日間での今国会中に、内閣総辞職ないし衆議院解散を野党と握らなくても、秋の臨時国会でも間に合うという意味です。新聞ではあまり書いていませんが、これは、「アニキの人質解放事件」「平成の山村新治郎」と言っていい歴史的イベントだと考えます。
政府は7月31日(火)の定例閣議で、「平成24年度の特例公債法案」を「財政運営に必要な財源を確保する特例公債法案」に改名して、年金交付国債を年金特例公債として平成24・25年度にわたり基礎年金を安定させることなどの修正を衆議院に求めました。今後は、「新・特例公債法案」(180閣法2号)という表記をしたいと考えます。新・特例公債法案は8月1日(水)の衆院財務金融委員会で趣旨説明と質疑がありました。ここで、現場監督である、自民党の山口俊一理事は「報道によると、10月に枯渇するそうですね」、丹羽文樹さんは「必ずいつかは通さないといけないので、環境整備をしないといけませんよ」と発言し、安住財務相は「私は政治家として勘が悪い方ではない」と答弁。丹羽さんは「私も政治センスは悪くないが、国民が分かりにくい」と指摘。山口さん、丹羽さんとも年金交付国債発行を可能とする国民年金法改正法案(180閣法26号内閣修正)とあわせて、財金委・厚労委の連合審査会を開くよう要望しました。和気藹々と国の行く末を話し合いました。翌日には新特例公債法案に関する有識者の参考人質疑がありました。
しかし、この翌週から様相は一変。同じ自民党でも、財金委の現場とそれ以外では違います。3党合意の破棄による総選挙という争点が見えない選挙になっても、小選挙区は有利と考えられる小泉進次郎・青年局長らが谷垣禎一総裁らを突き上げました。そして、オリンピックで埋没する5野党があろうことか、小沢一郎氏率いる衆院統一会派「国民の生活が第一・きづな」とともに、野党第1党を無視して、内閣不信任案を出すことにしました。一方、焦った自民党は、参議院で問責決議案を出して、可決させ、法案審査をストップさせる作戦に出るもようになっています。
6月26日の一体改革法案の衆院採決でも感じましたが、委員会の理事らと、それ以外の本会議場のメンバーとの温度差を感じることがよくあります。
ただ、この特例公債法案に関して、少し変なことに気付きました。小沢一郎さんや福田衣里子さんらの造反による国会空転から正常化するための7月12日(木)のNHK入り衆院予算委で自民党の茂木敏充政調会長が次のように発言しています。「一票の格差の問題、ゼロ増五減、これは総理も優先して取り組みをしなければいけないと。我々はそれでやっていきたいと思います。合意をすればこれはすぐにできると思います。それから、特例公債の問題でありますけれども、これは恐らく、九月末の予算の執行が三十九・三兆になると思います。そして十月が五兆強ということですから、十月いっぱいまではもつんです、特例公債につきましては。それを考えると、税と社会保障の一体改革、これを成立させて、すぐに解散・総選挙をして、臨時国会をやっても十分にできる課題なんじゃないかな、私はこんなふうに思っております」。
つまり、特例公債法案が今国会中どころか、10月まで未成立でも、国の資金繰りが持つ、という認識を最初に示したのは、どうやら茂木敏充・自民党政調会長のようです。答弁席でそれを聞いていた「政治家として感が悪い方ではない」安住さんが、茂木質問に自信を持って、踏み込んで答弁するようになったのではないでしょうか。ここはかなり推測ですが、これでは自民党執行部は突き上げられるでしょう。なぜ、こういうことが起きるかということですが、実は自民党内でも、現職衆議院議員はできれば解散を迎えたくないんでしょう。茂木さんも政調会長(シャドウ官房長官)として実績を挙げて、第46回衆院選で確実に政権を取って、2度目の入閣をより良いポストで入りたいというのが本音ではないでしょうか。
このような衆院財金委の現場組と本会議場組、自民党執行部とそれ以外の議員の温度差が、バタバタの不信任・問責政局になったのでしょう。しかし、民主党は解散を確約する恩義はまったくなく、話し合い解散は絶対にすべきでありません。やるなら、内閣不信任可決にともなう69条解散だけです。そして、この政局に見え隠れする小沢一郎さんの存在。政権交代ある政治に収斂していく中で、生存意義を見つけようとする中小政党。きょうは立秋ですが、朝からよく蝉が鳴いています。いわば、小沢一郎さんは蝉なんだと思います。ぜひ地上に出て、記者会見をして、激しい蝉の鳴き声を小沢先生にしていただきたく存じます。
私はとてもさわやかな風を感じています。
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[写真]野田佳彦首相(民主党代表)
野党7党は2012年8月3日(金)、国会内で党首会談を開き、野田内閣不信任決議案を衆議院に提出する方針で合意しました。通常国会会期末では毎回、内閣不信任案が出されています。衆議院の過半数以上の支持があった衆議院議員が内閣総理大臣になって組閣しているのですから、内閣不信任案が衆議院で可決することは本来的には変なことです。
今回も極めて珍しい事象が繰り広げられました。
野党第1党の自民党、召集時は野党第2党だった公明党、野党のたちあがれ日本の第177通常国会で菅内閣不信任案を共同提出した3党が外れていることです。
そして内閣不信任案には51人以上の署名が必要です。単独で出されるのは自民党だけ。公明党は必要署名の半分以下の21議席しかありません。
今回の7党首会談を開いたのは、
座長として、みんなの党(渡辺喜美代表)。
次に国民の生活が第一(小沢一郎代表)。
新党きづな(内山晃代表)。
日本共産党(志位和夫委員長)。
社会民主党(党首・福島瑞穂参議院議員)。
新党日本(田中康夫代表)。
そして、現時点では衆議院議席がない、新党改革(代表・舛添要一参議院議員)。
の7党です。
衆議院で3議席を持つ、新党大地・真民主(代表・鈴木宗男さん=非議員)と自民党(谷垣禎一総裁)、公明党(代表・山口那津男参議院議員)、たちあがれ日本(平沼赳夫代表)が参加していません。また、政党法人格がない政治団体では衆院議席がない参院会派「みどりの風」(共同代表・女性4議員)、幸福実現党、大阪維新の会も参加していません。
言うまでもなく、与党である、民主党(野田佳彦代表)、国民新党(代表・自見庄三郎参議院議員)も参加していません。
ですから、51議席の乗ったのは、すべては国民の生活が第一の小沢代表の策略ということになります。そのうえで、小沢氏が細川内閣退陣時に、自民党を離党させ首班に担ごうとした渡辺美智雄元蔵相の息子である渡辺喜美さんを担いだ格好になります。しかし、渡辺ミッチーは、小沢さんのせいで自民党内での立場も悪くなり、その2年後に亡くなりました。小沢一郎と仲良くすると不幸になるという法則発動です。このため、第45回衆院選で、渡辺さんの栃木3区に民主党公認候補も推薦候補も立てないで恩義を果たすといういつもながらの公私混同をしています。
さて、衆議院が首班指名をしている以上あり得ない、内閣不信案ですが、過去に4回可決されています。吉田内閣で2回、大平内閣で1回、宮澤内閣で1回で、すべて当日に解散しています。しかし日本国憲法69条では、「10日間以内に解散しない場合は総辞職しなければならない」とあります。危機管理の鉄則として、仮に今週、不信任案が可決してしまった場合は、党首会談のうえ、10日間に定数是正と特例公債の成立をさせたうえで、衆議院を解散するということになるでしょう。
野党を仕分けるチャンスです。責任野党である公明党はこの不信任案の共同提出者にならない、と斉藤鉄夫幹事長代行がNHK日曜討論で明言しました。これに先立つ、時事放談では、藤井裕久・民主党税調会長は「消費税増税にともなう公共事業とはすべて防災のことだ」と公明党に秋波を送りました。また、新党大地・真民主も、北海道の小選挙区2議員が連合の支援を受けるためにも、共同提出者にならない可能性が高いと考えます。
こうなると、小選挙区比例代表並立制のなかで、二大政党的な勢力に収斂されていく中で、中小政党の存在意義としての「オギャー」という泣き声が今回の不信任案といえるでしょう。オリンピック中になぜ目立とうとするのか、狙いが分からないのですが、オリンピック中だからこそ、存在自体に不安を感じているのでしょう。
野党を仕分けるチャンスです。この中でどういう行動を取るか。例えば自民党出身の3党首と日本共産党の連携を有権者はどう見るか。長年のライバルである共産党の不信任案に公明党はどう振る舞うか。これは、日本の衆議院から共産主義・社会主義者政党をなくすチャンスかも知れません。たちあがれ日本はどうなるか。
過去4回の不信任案は、吉田首相の「バカヤロウ」発言を懲罰委員会にかけようとした混乱に基づき、鳩山グループが野党提出の不信任案に賛成票を投じ(ただし、鳩山一郎衆院議員は欠席し)た「バカヤロウ解散」。宏池会の大平正芳首相と田中派(後の経世会)との感情的しこりによる清和会の裏切りによる「ハプニング解散」。そして、小沢グループによる「宮澤嘘つき解散」。当然のことながら、内閣不信任案可決はすべて与党内が割れたことで成立しています。
そういう意味では、二大政党収斂のなかでの野党の仕分けのように見えて、本当に仕分けされるのは民主党衆議院議員ということになります。
総理には、お母さんの言葉を思い出してほしい。バカヤロウ解散の第15回特別国会の1953年(昭和28年)3月14日(土曜日)の衆議院本会議。「私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になりました改進党並びに両社会党の共同提案による吉田内閣不信任案に対し賛成の意を表明せんとするものであります。(拍手)」。賛成討論に立ったのは、浅沼稲次郎・右派社会党書記長でした。その7年後、統一された日本社会党の党首だった沼さん(浅沼稲次郎さん)は日比谷公会堂で17歳の右翼青年の凶刃で即死します。そのとき、野田さんのお母さんは「政治家は命懸けなのよ」と言ったそうです。野田さんはその後、沼さんと同じ、早稲田大学政治経済学部で学び、衆議院議員になりました。
総理はあれこれやらないで、まずはお母さんの言葉を思い返して、今週の不信任政局に臨んでほしい。いずれにしろ、通常国会の最後には出てくるんです。ここで与党が団結し、野党の足並みが乱れて断固否決すれば、残り4週間の会期はかなり楽に進めることができるでしょう。
最高のリーダーは1ミリたりともブレてはいけません。最高の有権者は、うんざりするときはうんざりしても、見るべき時はしっかりと次の投票行動への取材をしなければいけません。
内閣不信任案、野党7党提出へ 生活や共産など(朝日新聞) - goo ニュース
国民の生活が第一、共産、きづな、社民、みんな、日本、改革の野党7党は3日、国会内で党首会談を開き、消費増税関連法案の参院採決前に内閣不信任決議案を衆院に提出する方針で一致した。提出日は参院採決の日程をみながら各党幹事長間で調整する。
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さて、水曜日(8月1日)の友愛会創立100周年ということで、今週は「民社協会ウィーク」ということで、これを含めて6本の民社協会に関するエントリーをお届けしましたが、お楽しみいただけましたでしょうか。最後に、直嶋正行さん、政権交代前のマニフェスト策定責任者(民主党政調会長)、政権交代後の経済産業大臣、現在は、民主党両院議員総会長と民主党綱領検討委員長を務める、直さんこと直嶋正行さんの初の著書の書評で、しめくくりたいと思います。直嶋さんは、全トヨタ労連の出身で、民社協会の国会議員団長をつとめています。
著書のタイトルは『次の、日本。ーー次代の成長戦略へ。流れは、変わる』で時事通信社から定価(本体価格1700円+消費税)で今週発売されました。
帯では「民主党屈指の政策通」が「次代の成長戦略」を語るという風になっていますが、直嶋さん初の著作ということで、生い立ちや労働運動との出会い、初当選時の思い出、マニフェストの取りまとめ、政権交代、大臣としての日々が赤裸々に書いてあります。
はじめにでは「2012年7月26日、この日は私が初めて参議院議員に当選した日から、ちょうど20年になります」とのこと。そして、8月2日(木)には出版記念会が開かれ、岡田克也副総理ら閣僚10人、他の国会議員100人、合計650人が参加して盛大に開かれました。ちなみに、民社党から初当選した直嶋議員が勤続20年ということは、私の選挙デビューである自民党公認(経世会)で初当選した北澤俊美・参議院議員も同じく勤続20年になるわけですが、ちょっと気付いておりませんでした。「黙っていればいいのに」と思う読者もいるでしょうが、俊美さんや俊美さんの公設秘書3人はこのブログを読んでいないので、引き続き、直嶋さんの著作について書評を続けます。
まず、直嶋さんは第21回参院選「逆転の夏」の後、小沢一郎代表(ネクスト総理)から政調会長に指名されて、第45回衆院選「政権交代の夏」まで務めています。なので、09マニフェストとりまとめの責任者です。ところが、不思議にマニフェスト批判では直嶋さんが名指しされることがありません。その辺は人徳なんでしょうか。46ページで直嶋さんは「政権を取ったらどのような政策を実行するか、ということであるから、その党から立候補者全員が同じマニフェストを掲げて選挙を闘う」「マニフェストは政策を実現するために政権選択の選挙をするという、民主主義の理想に近づいたものとなった」と自負しています。
ところで、私の持っている情報では、実は第45回衆院選の公示から投票までの間に、民主党のマニフェスト(鳩山由紀夫代表が表紙)を手にとって読んだ人は、有権者の2%前後の筈です。直嶋さんは、政権交代後に経済産業大臣を務めた経験もふまえて、「マニフェストや政策インデックスを特に熱心に読んでくれたのが、霞が関の官僚諸君だった」「経産省の会議でも、『あ、その点はここに書いてあります』と担当者がマニフェストを開いて示してくれるほど、熟読されていた」ということなので、鳩山政権が政治主導に失敗し、官僚主導になったのも当然と思える経験談が書いてあります。
またこれはご存じの方も多いでしょうが、官邸にスーツ姿で呼び込まれ、皇居でモーニング姿で陛下から認証式を受けてから、官邸に戻り総理から補職辞令と初閣議の後、記者会見を前に秘書官から、記者会見原稿を示され、それを読んでしまうことで、大臣が官僚に取り込まれてしまう光景も、実名入りで詳しく書いてあります。今後、閣僚を目指している、民主党、自民党、公明党の若手議員は必読でしょう。
そして、直さんは自らを「おにぎり大臣」と任命。「大臣になってからの日々は、想像以上に忙しかった。かねてより忙しいと聞いていたが、まさしく多忙を極めた。早朝から夜遅くまで、息つく間もないくらいだった」「昼食をとる時間がなく、在任中の大半が大臣室でのおにぎりランチとなった。永田町界隈のコンビニのおにぎりは、すべて食べた。秘書に頼んで、役所の売店、国会内のコンビニなどに買いに行ってもらった。イチバンおいしい店も発見した」と振り返っています。初入閣の時点で、直さんは勤続17年で、与党経験(細川内閣、羽田内閣)もありました。それでも、実際に与党はやってみて驚くことの連続だった。このような日常なのですから、政権交代してもすぐにうまく行かないのは、私はひとえに、自民党に54年間政権を与え続けた有権者の責任だと改めて感じました。「主権者は国民」と日本国憲法前文にあるのですから、現在の政治のすべての責任は有権者に帰するし、沖縄問題で最初につまずいたのはそのためでしょう。なぜなら、野党議員は、国費などで沖縄視察をする機会がほとんどないからです。与党の自民党清和会の政府外議員は沖縄は利権の巣窟ですから、自分で集めた政治資金で視察に行くこともあります。
それを裏付けるように、口絵の4ページのうち、政権交代前の17年間は1ページで、政権交代後の3年間は3ページになっています。
[画像]直嶋正行著「次の、日本。」の口絵とはしがきから。
ご覧のように、有名な「ハードロック工業」で、制服姿でSLに乗る直嶋経産相の姿も乗っています。ぜひ、これを機会に自動車・道路ばかりでなく、鉄道にも関心を持っていただきたいところです。
このほか、中学卒業後に入った会社で労働組合に入り、その2年後に大阪府立北野高校の定時制に入学するまでの間、労働運動の経験があること。神戸大学では公認会計士をめざしていたけれども、トヨタ自動車販売(工販統合による現在のトヨタ自動車)に入った経緯。「公認会計士だと資格をとってもすぐに飯は食えん」と言われてそれでは困るという赤裸々な事情。神戸大学というと、岡田副総理のお父さんである岡田卓也イオン創業者が希望しながら事情があって早大商学部に進学し、その後地元商工会議所で講師に呼んだところ、「戦災後だから土地を買い占めろ」と言われて反発し、現在のイオンを創業したというエピソードがあるので、岡田さんと直嶋さんは縁があるなあと感じます。政権交代直後には、官邸で、旧知の河村建夫・内閣官房長官から岡田幹事長・直嶋政調会長のコンビが「すべての引き継ぎをしっかりやりたい」と言われたという歴史的に極めて重要なことも書いてあります。このニュース映像を見た、小沢一郎代表代行が松木けんこう、鈴木克昌両衆院議員を使って鳩山由紀夫代表を締め上げ、幹事長の座を奪い取ったのはご存じの通り。
本の帯にあるとおり、東京電力と関西電力、日立、東芝、三菱重工による、「国際原子力開発」をつくり、ベトナムへの原子力発電所受注というプラント輸出を受注したトップセールスの経験談など成長戦略も満載です。政府が閣議決定した日本再生戦略よりも、日本経済の将来像、グランドデザインがよりハッキリ分かります。原発輸出については、「どこかの大国のように、潜水艦を売ってやるから、発電所を受注させろ」というようなことは、日本はしない、という経験に裏打ちされたエピソードも載っています。「自動車産業はまだ伸びる」の項では、「近い将来、シンプルな電気自動車であれば、自動車メーカーでなくても自動車を造れる」として、家電メーカー、電気量販店、携帯電話会社、ファッション・ブランド、グーグルが電気自動車メーカーに参入するという大胆な予想もあります。日本再生戦略より面白いですね。
上の方で、北澤俊美参院議員と勤続年数が同じだったり、岡田克也衆議院議員と縁がある、ということを書きましたが、新人の民社党・スポーツ・国民連合の直嶋参院議員が大いに名を上げたのは、佐川事件での経世会会長の金丸信先生の追及だったそうです。
[画像]金丸信先生。
結果として、経世会会長だった金丸先生が逮捕されたことで、政治改革の歯車は大きく前に進み、新生党主導の細川内閣への歴史的な政権交代を果たすことができました。こうやって直嶋さんが金丸先生を追及する先鋒だったということを初めて知って、今の民主党が幅広い国民政党への道を歩んでいることを実感しました。寄り合い所帯ですが、もうちょっと包容力が生まれてくれば、国民政党として、政権担当能力を強化していくことが可能でしょう。
さて、参議院です。
「二院制をどうするか、という議論はなかなか難しい」とした上で、「現行の二院制を残しながら、予算は衆議院で決める、という明らかな権能の分担も必要ではないか。参議院の予算委員会を廃止して、参議院では予算は本会議で3日間ほど審議して採決する」との提案をしています。
直嶋さんの参議院議員としての任期は2016年7月10日まで。任期満了時点で70歳ということになります、けっこう若いですね。民主党・新緑風会は9月上旬に会長選挙をします。2006年から会長を続ける、輿石東会長の5選(任期は2014年の通常国会末まで)が焦点になります。前回、2010年の第174通常国会会期末の会長選では、前田武志参議院議員を会長にかつぐ動きがありましたが、推薦人10人に足りず、輿石会長の無投票4選となりました。このとき、直嶋さんは経産相、俊美さんは防衛相なので、立候補する状況ではありませんでした。輿石会長はその後の参院選惨敗、党本部幹事長就任の際にも、自発的な辞任論が出ましたが、なおも会長にとどまっています。自民党の統一会派と1議席差にまで追い込まれた民主党・新緑風会会長の次の2年、日本の歴史にとってものすごく重要な2年間の参院の扇の要は、だれが良いかなあと思うところがある著作です。みなさんはだれが良いと思いますか?
直嶋さんは、あとがきを次のように締めくくっています。「そして、私をここまで支えていただいた自動車総連はじめ、自動車産業に関わる多くの関係の皆様、ならびに身近に活動を支えてくれた友人、知人、歴代の秘書、我が家族にも改めて感謝申し上げたい。 2012年6月 直嶋正行(自署)」
すべての国民に感謝・・・などとは書かない。自動車総連をはじめ自動車産業に関わる多くの関係の皆様の代表としての直嶋参議院議員。それは貴族院が参議院に移行したときの、「衆議院は地域代表、参議院は職能代表」というフィクションを現実にしている。だから直嶋さんは勇気があるんですね。
衆議院落選組の再就職先としての、国会議事堂周りで働く者のための参議院から、額に汗して働くすべての働く者のための参議院へ。
直嶋さんと民社協会の仲間がいれば、今国会が直面する最大の問題も必ず解決することができます。任せて安心、民社協会。地味だけど、目立たないけど、かっこいいとはこういうことです。
2012年7月29日(月)~8月4日(土)までの「民社協会ウィーク」のエントリーは次の通りです。