【衆議院総務委員会 2012年8月7日(火)】
衆議院総務委員会は、ここ数年の日本郵政の問題、地上波デジタル移行に伴う放送法・電波法などの改正作業にメドが付き、地方分権・地域主権に関する議論が昨年の通常国会以降活発化しています。改正郵政民営化法(郵政見直し法)、社会保障の安定財源を確保するための地方消費税・地方交付税法改正法案もそれぞれ特別委員会で審議されており、総務委員会は民主党・自民党とも首長・地方議員・地方公務員(自治労)経験者を中心に活発な議論が交わされています。
ただし、ここに来て「民主主義の前提であるプロセスの透明性」に関して、一部苦言を呈したい場面が増えています。
地方自治法の一部を改正する法律案(180国会閣法60号)は3月9日に衆議院に提出され、7月23日に総務委員会に付託されています。これは日本国憲法施行に伴う地方自治法制定から通算でおよそ300回目の改正になります。この法案は、現行法でも可能な通年議会をやりやすくし、首長の専決処分(副首長の任命)を制限する一方で、首長の再議権は拡充する法案です。7月31日の法案審査では元兵庫県庁財政課員の谷公一さん(自民党)が「あまり重要な改正に思えない」と発言しています。ところが、8月7日の午前9時に開会した直後に、元高岡市長で自民党の橘慶一郎さん、元自治労鹿児島委員長の民主党の皆吉稲生さんらが修正案を共同提出し、地方議会会派に支給される「政務調査費」を「政務活動費」に改めるよう提案し、その3時間後には可決してしまいました。このような長年、地方議会をめぐる様々なスキャンダルと改革の争点となってきた「政務調査費」を「政務活動費」にかえる修正案が、あたかもだまし討ちのように午前9時に提出され、正午の可決するような議会運営はまったく納得できません。現時点でも衆議院のホームページには載っていません。まさか、総務省自治行政局が地方行政族議員と仕組んでいたのでなければいいのですが。
今国会では成立後に気付いた不可思議な法案があります。「東日本大震災による被害を受けた合併市町村に係る地方債の特例に関する法律の一部を改正する法律案」です。これは昨年の第179臨時国会で提出されており、議案番号は「179国会9号」ですが、6月20日に参議院で可決・成立しており、「改正東日本大震災による被害を受けた合併市町村に係る地方債の特例に関する法律」として法律番号「平成24年36号」として、6月27日に天皇陛下が公布されています。公布の日に施行(せこう)しました。
この法律は平成の大合併(市町村合併)の「アメとムチ」の一つ、市町村合併特例債(合併特例債)の発行期限を5年延長する法律です。
そして、この市町村は全国の市町村です。
昨年の第177通常国会(震災国会)で成立した「東日本大震災による被害を受けた合併市町村に係る地方債の特例に関する法律(平成二十三年法律第百二号)」では被災地域の合併自治体に限られていました。しかし、今国会で成立した法案は「東日本大震災による「被害を受けた自治体」から「被害に伴う自治体」に対象を改めて、タイトルからして変更しています。
私は平成の大合併に賛成ですし、市町村合併特例法はすでに失効し、「駆け込み需要」は十分に発生しています。そしてアメとムチも効果があったでしょうが、やはり合併特例債の地方交付税交付金の7割償還というアメがあまりに甘すぎたのではないかと感じます。5年間の延長は、自治体にとっても、地方交付税の原資である国庫にとってもよくないことになる気がします。
とはいえ、この法律タイトル、被災地限定だと思いますよね。ちょっと総務省や衆議院総務委員会もどうなのかなと不信感を持たざるを得ません。私はこのことは、公布後に気付きました。
実際に国会での法案審査を聞いていると、警察庁、旧自治省、財務省は法案を書くのがうまいと感じます。その一方で、厚労省というのは法案をシンプルにまとめることがなかなかできない省庁だと感じます。国土交通省や経済産業省は官僚たちの熱意を感じる法案も多いですが、少し守備範囲が広すぎる気がすることもあります。
そういった中で、国会議員がもっと法案を読む努力をしないといけないし、まずは衆議院が議案をすぐにホームページに載せないといけません。民主主義はプロセスの透明性がスタート。そういう意味では、地方自治法の通算300回目ぐらいの改正法案で政府参考人が「通年議会にすることで、日程が明確化し、住民が傍聴しやすくなる」という答弁。私は国会の通年制には断固反対の考えですが、日程の明確化により傍聴しやすくなるというのは、国会、とくに存在意義を問われている参議院が率先垂範すればいいと考えます。
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