【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

「野党は憲法違反的欠席だ」定数是正・削減・連用制法案が衆院倫理・選挙特別委員会で可決

2012年08月27日 17時59分51秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

【衆議院政治倫理の確立および公職選挙法改正に関する特別委員会 2012年8月27日(月)】

 先週木曜日と金曜日の強行採決は見送り、きょう月曜日の午前10時半から委員会を設定しました。

 議題は「内閣府衆議院選挙区画定審議会設置法改正および公職選挙法の改正法案」(180衆法22号)で発議者は民主党幹事長代行(衆議院会派代表者)の樽床伸二さん、総括副幹事長の逢坂誠二さんら。

 赤松広隆委員長らは、自民党の細田博之さんに「緊急是正0増5減法案」(180衆法27号)の趣旨説明を求めていましたが、出席は得られませんでした。

 樽床法案は、1人1枠方式(設置法の第3条)を廃止し、47都道府県の定数を0増5減(鳥取、福井、山梨、高知、徳島各県を定数3から2に減らす)し、定数を435にして、比例区を全国ブロックにし、その一部に連用制を導入し、2010年国政調査を小選挙区区割りに反映し、さらに次々回にあたる第47回衆院選から定数400にすることを附則に定めた法案です。

 昨年3月の最高裁大法廷判決、2010年国政調査、第44回衆院選の小泉郵政自民党、第45回の政権交代民主党でみられた民意の過度の集約(その都度投票)と強烈なスイングによる政治の不安定化を是正し、消費税増税とセットの身を切る努力、さらには2009民主党マニフェストを同時に達成する法案です。比例区がドント配分と連用制が混在するので少し複雑ですが、中小政党への配慮もあります。

 先週に続き、質問時間は各党に割り振られ欠席政党の質問時間は空回し(からまわし)されました。

 民主党からは今回も後藤祐一さんが立ち、「きょうの野党の欠席は憲法違反的欠席だ」と強くなじりました。これに先立ち、政府参考人(総務省自治行政局選挙部長)は、昨年3月の最高裁判決を国会が反映しないまま、第46回衆院選を実施した場合、事前の差し止め住民訴訟はできないものの、事後に無効とする判決は過去に2回出ており、その2回は事情判決となったものの、今回選挙無効判決が出ることは「可能性として必ずしも否定できない」と答弁しました。

 また、先週の質疑のなかで、平成の大合併により、基礎自治体ごとに選挙区が2つ以上になっている区割りについては、人口の増減と関係なく1つの基礎自治体に集める区割り変更はされないことが答弁で明らかになっています。この辺は選挙の投開票事務は、法定委託事務(自治体からみれば法定受託事務)なので、国費のむだづかい削減のためには、今回の区割り変更で反映させるべきだと私は考えていましたが、これは見送られることになりました。

 審議は全会派を一巡した11時58分にいったん休憩に。午後4時半に再開し、すぐに柿沼正明理事から打ち切り動議が提出され、全会一致で質疑終局を確認。その後の採決では、起立総員の全会一致で、本会議に送られました。

 この先ですが、衆議院の選挙区区割りに関係する法案を参議院の特別委員会(足立信也委員長)が修正協議するのは不自然なので、幹事長会談となり、民自、民自公、全党などにより修正され、今国会中に成立することになると考えられます。

 ところで、民主党の輿石東幹事長は、衆議院本会議で代表質問がされながら、内閣委員会で趣旨説明すらされていない国家公務員制度改革関連法案(労働協約締結権付与、人事院廃止、内閣府公務員庁設置、177閣法74~77号)は衆議院で継続審査になるとの考えを2012年8月27日の記者会見で語りました。この法案は筋が悪く、労働協約締結権付与法案だけにして、人事院は存続するように内閣は法案を手直しして、再提出すべきでしょう。

 いずれにしろ、あす、あさっての幹事長会談が必要になります。一方、党首会談の必要はまったくなく、残り2週間の国会議員同士の国会への厳しい声に対する毅然とした態度を求めます。

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韓国・中国に誤ったメッセージを送る「野田問責」をすべきでない 第180回国会 あと2週間

2012年08月27日 06時32分17秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[写真]民主党国会対策委員長の城島光力さん、城島光力公式ホームページから。

 第180回国会(2012年1月24日召集)は、9月8日(土)の閉会まで残り2週間となりました。参議院での日程を考えれば、衆議院先議の重要法案は今週前半に参議院に送りたいところです。

 参議院には現在、みんなの党提出の「内閣総理大臣野田佳彦君問責決議案」(180決議6号)と国民の生活が第一などが提出した「内閣総理大臣野田佳彦君問責決議案」(180決議7号)の2つの決議案が提出されています。これに加えて、自民党などが新しい問責決議案を出した上で、水曜日にも本会議で採決するのではないかとの観測が出ています。

 自民党はきょう、衆参両院幹部会議を開き、あすには与野党参院国対委員長会談が開かれる見通しです。

 2012年8月10日、我が国の領土でありながら大韓民国が実効支配している日本海の島根県竹島に韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領が上陸しました。また、中国・香港の活動家が我が国の領土である沖縄県尖閣諸島に不法入国するという事件が起きました。

  海上保安庁作製の日本近海海図をあらためて見ました。尖閣諸島に関して言えば、香港の活動家は台湾を越えて、尖閣諸島にやってきた格好です。公海・領海問題に限らず、中華人民共和国が台湾(中華民国)を国内問題として扱うためにも要衝だと見て取れます。さらに、あくまでも外交ゲームとして理解するために、韓国側から竹島を見れば、同国の東側には排他的経済水域がほとんどなく、山口県沖~島根沖~新潟・佐渡島~北海道沖へと続く「大和堆」(やまとたい)という広い大陸棚の海洋資源を考えれば、喉から手が出るほどほしい竹島(海抜135メートル)であることが分かります。

 これについて、玄葉光一郎外相は竹島の領有権に関して、国際司法裁判所(ICJ)に共同提訴することを韓国に呼びかけましたが、日本国総理・野田佳彦名義の親書が日本に郵送で返される事態になっています。オランダにあり、小和田恒・元外務事務次官(国連大使)が裁判官(元所長)を務めるICJですが、李承晩(イ・スンマン)ラインが発表された時点で、我が国のサンフランシスコ講和条約は締結されておらず、我が国は占領下にありましたから、ICJにゆだねるという手はあるはずです。これは、ポツダム宣言受諾を終戦ととるか、東京湾内戦艦ミズーリ艦上での降伏文書調印を終戦と受け止めるかという問題以前に、千島・樺太返還条約が国際法上明々白々に絶対有効である北方領土とは違う問題と私は考えています。ですから、韓国にとってもICJの判断にゆだねるべきだと考えますが、同国は実効支配の現状を続けたいのでしょう。

 総理たる野田さんは2012年8月24日(金)午後6時からの記者会見で「今月に入ってから、我が国の周辺海域において、我が国の主権に関わる事案が相次いで起こっており、誠に遺憾の極みであります。我が国として、このような行為を看過することはできません。国家が果たすべき最大の責任、それは平和を守り、国民の安全を保障することです。国の主権を守り、故郷の領土、領海を守ることです。私は、国政全体を預かる内閣総理大臣として、この重大な務めを毅然とした態度で冷静沈着に果たし、不退転の覚悟で臨む決意であります」と語りました。

 谷垣禎一総裁(シャドウ首相)率いる自民党が、参議院に「内閣総理大臣野田佳彦君問責決議案」を提出することは、韓国と中国に誤ったメッセージを伝える可能性あり、やめるべきです。

 これまで、総理問責は、福田康夫さん、麻生太郎さんがやられています。2人とも首相の子孫です。野田さんは、富山・越中八尾の農家出身の自衛官の息子です。彼が今一人でこの領土に関する問題に毅然とした態度をとり続けているのに、自民党による野田問責は、韓国や中国の政府や国民・人民にあやまったメッセージを送りかねません。

 民主党の城島光力国対委員長は2012年8月26日のNHK日曜討論で「韓国大統領から天皇陛下への非礼な発言を背負って野田総理は一生懸命やっている。問責決議は相手(韓国大統領)に塩を贈ることになる」と強い表現で自民党を牽制しました。城島さんは同日付のブログ「城島光力日記」でも「野田総理は韓国大統領の竹島をめぐる行動と天皇陛下に対する非礼な発言への抗議と撤回を求めているときである。その総理に問責という神経がわからない。まるで韓国の大統領に塩を送るようなものだ。喜ぶのは李明博大統領である。まさしく問責は党利党略のみで国益を大きく損なうことは必至である」と書いています。

 城島さんが属する民社協会は、社民党(日本社会党)が北朝鮮と親しいのと対称的に、韓国と親しく拉致問題でも存在感を発揮しています。李明博大統領の兄は韓日友好議員連盟会長を務めた国会議員だったこともあり、26日のTBS時事放談では、自民党の森喜朗・元日韓友好議員連盟会長が言葉を濁しながらも、「谷垣さんはよく頑張っているが、ここで問責を出すと特例公債法案がどうなるのかよく考えるべきだ」と自制を促しました。

 このほか、参議院自民党1期生が一生懸命審査してきた、平成22年度決算(案)の締めくくり総括質疑に野田総理の出席が必要になりますので、今国会中に決算是認ができなくなる可能性が出てきており、若手に不満が出る可能性があります。

 野党・自民党が国会でのメッセージを間違えた例は過去にもあります。有効な国際法である、1910年の日韓併合条約(大日本帝国と大韓帝国の併合条約、あるいは日朝併合条約、朝鮮併合条約)から100年にあたる2010年、朝鮮半島とのゆかりも強い、横浜でのAPEC(アジア太平洋経済協力)で、菅直人首相が李明白大統領に対して、朝鮮王朝儀軌を返還する条約(日韓図書協定)を締結したのに、自民党の反発で、国会での条約批准が2011年にずれ込んでしまい「日朝併合条約101周年」という画竜点睛を欠く節目となってしまいました。この国会承認の遅れについては、公明党の山口那津男代表も訪韓時に、大統領に早く批准したいと述べています。そもそも朝鮮王朝儀軌は複数存在しています。それにもかかわらず、自民党タカ派は一方的な返還には応じられないと抵抗しました。ところが、返還先が大韓民国だけであり、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に返還するべきだ、という意見がまったく聞かれなかったのは残念なことです。

 一方、2012年8月24日、中韓国交樹立(韓台断交)20周年を迎えました。現在は経済連携協定(EPA)で共存共栄の関係にあるユーラシア大陸の中韓ですが、TPP(環太平洋パートナーシップ)には入っていませんので、ブロック経済化をめぐって、我が国外交は十分にこの点を配慮する必要があります。この中韓国交樹立(韓台断交)については、私は目の当たりにした光景があって、その半年後に、台湾を訪れた際に、空港の大韓航空のブースが電気が消えて人がいなかったことを見ました。韓台断交により、台湾はアジアに国交を持つ国がなくなってしまいました。キリスト教カトリックの総本山バチカン市国のほか、コスタリカなど中南米地域、南アフリカなどアフリカ地域などおよそ30の国だけでした。その後も断交が相次ぎ、20年前の韓台断交は、台湾が外交的に決定的に孤立した出来事でした。この当時台湾の大学に留学していた韓国人学生は突然の決定に居づらかったようですが、台湾人クラスメートは「関係ない」と慰めたようです。

 大韓航空はSanction(経済制裁)で運航をとめていたのでしょう。おそらくくだんの韓国人留学生は、台北-日本-ソウルという航路で帰省したのでしょう。もちろん、日本とも国交はありませんでしたが、日本航空の子会社が羽田空港から台湾便を飛ばしていました。このころ、台湾に進出していた日本の製造業は、すでに台湾の経済水準が高く賃金コストを下げられず、立ち往生することもありました。しかし、その高い経済・知的水準の集積が、2度の政権交代を経て、新しい国民党は中台EPAを実現し、相互的互恵関係で経済が繁栄しているようです。ちなみに、20年前は、日越国交正常化もされていなかった時代です。その後、我が国は英語化の遅れや通関手続きの煩雑さにより、アジアのゲートウェイとしての存在感を挙げられないまま新進党解党などによる「失われた20年」を迎えました。

 この20年のめまぐるしい変化に日本の国会議員はなぜ対応できないのか。それは知らないからです。中国と台湾の違いを説明できない国会議員などいくらでもいます。学力が低いのです。知的水準が低いのです。例えば、なぜ台湾では田中角栄は大悪人なのか。それはアメリカより先に、日中国交樹立(日華断交・日台断交)をしたからで、キッシンジャーも北京で田中角栄をにらんだそうです。そういったことも知らないお寒い現状が日本の国会議員です。私はこの学力不足を前々から極めて深刻にとらえています。

 この中韓国交樹立20年の節目に、「野田問責」をすることはあやまったメッセージを伝えます。それは外交官や支配階級ならまだいいかもしれない。両国の一般国民・人民にも伝わるんです。

 責任ある政治を野党・自民党に求めます。

 第180回国会の意思として、野田問責は絶対にすべきではありません。

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