【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

正義は完全に我が党にあり 特例公債法案、衆院財金委で可決

2012年08月24日 12時31分57秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

【衆議院財務金融委員会 2012年8月24日(金)】

 召集日に提出され、2月21日(火)の衆議院本会議で趣旨説明と代表質問があった「特例公債法案」(180国会閣法2号内閣修正)がようやく委員会を可決しました。

 総理入りのしめくくり総括質疑では、民主党から岸本周平さんが2年連続で登場。

 この後、自民党の質疑時間になりましたが、出席を得られず、やむを得ず、質問時間を流す空回しとなりました。

 次に、国民の生活が第一(新党きづなと統一会派)の大谷啓さんが出席して、質問。

 続いて、公明党の竹内譲理事(第46回衆院選近畿ブロック公認の予定候補者)が登場。新進党同期生である野田佳彦首相に「強行採決には反対。このままでは参議院で否決・廃案されてしまいます。参議院で否決された場合は、野党の責任でしょうか」と問い質しました。「子どもっぽいやり方だし、内外の経済界に影響を与える」としたうえで、「総理を見損なったし、反対せざるを得ない」。

 次にこの委員会のキーパーソンである、日本共産党の佐々木憲昭理事が「採決に抗議する。参院で否決・廃案になるという強硬路線はやめなさい。ある人に言わせると、これは自爆テロだ」と強い調子で非難しました。

 つづいて、改革無所属の会の木内孝胤議員が欠席し、空回し。

 午後11時27分に、民主党の糸川正晃理事が打ち切り動議を提出し、採決の結果、質疑終局。

 討論では、民主党の糸川正晃さんが賛成、国民の生活が第一の菅川洋さんが反対、公明党の竹内さんが反対、共産党の佐々木さんが反対しました。

 この後、採決。

 民主党が賛成。国民の生活が第一、公明党、共産党が反対。自民党、改革無所属の会が棄権し、特例公債法案は賛成多数で可決しました。

 自民党は欠席し、無責任野党ぶりを発揮しました。法案は28日(火)の本会議で参院に送られ、参院本会議で趣旨説明のうえ、財政金融委員会(尾立源幸委員長)で審議のうえ、今国会中に成立させることがすべての国会議員の責任です。

 この半年間に、財金委員会は十分な審議を重ね、内閣修正が入った後も、参考人質疑をしました。自民党らが求めた年金交付国債を年金特例債にとりかえる内閣修正について、財金委・厚労委連合審査を提案していましたが、これはできませんでした。しかし、このままでは参院で通らないと主張する野党ですが、この法案はそもそも、「特例公債を38兆円発行する」ということが書いてあるだけの法案です。文字数はわずか400文字ちょっとで原稿用紙1枚余りの短くシンプルな法案です。ですから、この法案は「1文字で1000万円を動かす」法案で、村上春樹もビックリの売れっ子作家ぶりで、財務官僚が勘違いしてしまうのも分かりますが、これ自体はあまり政策的な意味合いがある法案ではありません。それを半年間経って採決して、日頃から傾聴に値する竹内、佐々木両理事が「参院で通らない」ということだけをしめくくり質疑の反対の理由として述べるのは残念なところです。

 ですから、この法案は、参議院で修正協議をする余地もあまりありません。ぜひ参議院で可決・成立してほしいし、ダメならダメで、継続審査ということになるしかないのでしょう。当然にして、総理が野党と何か取引をする必要はまったくありません。

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[お知らせおわり]

tag http://www.kantei.go.jp/jp/fukusouri/press/ 

  


すべての官僚は「予算編成、力抜いている」「緊張に欠ける」との公明新聞社説を熟読すべきだ

2012年08月24日 07時00分13秒 | 第182特別国会(2012年12月)安倍再登板

[写真]Z旗を前にする安住淳さん、民主党国対委員長時代、安住淳さんの公式ホームページから。

 2012年8月21日(火)付公明新聞3面の主張(社説)は先週金曜日に決定した概算要求くみかえ基準を取り上げ「事実上の予算編成のスタートだが」「政府内はどこか緊張感に欠けている」「まさか総選挙の敗北と政権交代を意識して力を抜いているわけでもあるまいが、社会保障と税の一体改革関連法の成立を受けた予算編成に臨む態度がこれでは困る」と批判しました。

 たいへん的を射た指摘だと考えます。

 実は、私もそのように感じていました。

 第45期衆議院の任期は来年8月29日までですから、これが今の任期中で最後の当初予算(案)編成になります。

 第44期衆議院も同様でした。麻生太郎首相がある程度政権交代を見越して、予算を組んだのは間違いないでしょう。このときは、当初予算が成立した直後の4月に補正予算を組みました。一般会計が4月に補正されたのはこのときという禁じ手でした。

 総額14・5兆円もの超大型1次補正予算のうち、4・6兆円は、複数年にわたり執行できる「基金」をつくり、独立行政法人や自治体にあげるというもの。この補正について、当ブログは、蒋介石・国民党政権が中国大陸での主導権をとられはじめたころ、口では「徹底抗戦」を叫びながら、裏では中国歴代王朝の宝物をひそかに台湾島・台北に疎開させていた故事にちなみ、「お前は蒋介石か! 自民党が46基金(4・3兆円)を疎開させる 」と批判しました。

 この46基金は都道府県庁の予算でかなりの部分が未消化で残っていることが会計検査院の検査報告で分かっています。現在、都道府県は、知事も議会もほとんど自民党(自民党系無所属)が与党です。地方議会の組織力がモノを言う、参院選、統一地方選で自民党が党勢を回復してきているのも、この麻生疎開基金が底力になっているのかもしれません。

 公明党幹部が野田総理が平成25年度予算編成に取り組んでいることを批判しているような報道がありますが、公明新聞社説は次のように書いています。

21日付公明新聞「主張」を全文引用はじめ]

 2013年度予算の大枠を示す概算要求基準が閣議決定された。事実上の予算編成のスタートだが、野田首相が「近いうち」の衆院解散を表明したこともあってか、政府内はどこか緊張感に欠けるように見える。まさか総選挙の敗北と政権交代を意識して力を抜いているわけでもあるまいが、社会保障と税の一体改革関連法の成立を受けた予算編成に臨む態度がこれでは困る。国民に負担増を求める重みをかみ締め、政府はたがを締め直してもらいたい。

 民主、自民、公明の3党合意を経て成立した一体改革関連法の意義を一言でいうなら、財政再建と経済成長を同時に推し進める道筋を開いた点にある。13年度予算はその試金石であり、財政規律を維持しながら経済の活性化を図るという、いわば“二兎”を追う中身となる。メリハリある編成が今まで以上に求められる。ところが、今回の概算要求基準では、その視点がまるでぼやけてしまっている。財政再建と経済活性化が共倒れし、文字通り“二兎を追う者は一兎をも得ず”とならないか、不安が尽きない。なるほど、国債費を除く歳出の大枠を12年度当初予算と同じ71兆円以下としたり、日本再生戦略で示したエネルギー・環境、健康、農林漁業の3分野を「特別重点要求枠」として認めるなど、それなりの工夫の跡はうかがえる。

 だが、この程度の措置で、メリハリある予算を組めるとは到底、思えない。

 早い話、特別枠の設置は民主党政権がこれまでの予算編成でも試みてきた手法だが、その効果は皆無だった。各省庁は重点分野に名を借りた便乗要求に走り、かえって財政の肥大化を招いてしまったことは周知の事実だ。

 この苦い経験をどう生かすのか。要求段階で事業を厳しく精査し、真に経済効果が見込めるものだけに絞り込める“装置”を工夫すべきだ。

 一般会計の3割を占める社会保障費の扱いがあいまいなのも気に掛かる。一体改革の趣旨を存分に生かした大胆な予算の組み替えがなければ、幅広い世代から消費増税の支持を集めることはできないことを肝に銘じるべきだ。

 震災復興関連では、要求額に上限を設けない方針だ。被災地の現状を見れば当然だが、12年度予算に多額の積み残しが出たことを踏まえた運用面での吟味が必要だろう。

 公明党の主張を受け、防災・減災事業の重点化を明記した点は評価したい。

[全文引用おわり]


[写真]公明新聞2012年8月21日付社説、上の画像をクリックすると大きくなります。著作権法39条「時事問題に関する論説の転載」にもとづき、全文紹介させていただきます。

 ぜひ、すべての官僚はこの公明新聞社説を熟読の上、9月7日シメキリの概算要求(見積書の提出)にあたってほしいと考えます。

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それから

2012年08月24日 05時58分08秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[写真]安住淳さん、安住淳公式ホームページから。

 21日の岡田克也副総理の記者会見、この日は私は出席していなかったのですが、会見録をみると、朝日新聞記者との間で面白いやりとりがありました。

岡田副総理記者会見録から引用はじめ]

記者

 朝日新聞の伊藤です。岡田副総理のコラムに、「一体改革の成立の瞬間に安住大臣とお話しして、『奇跡のようなものだ』ということを話した」というくだりがあったんですけれども、実際振り返ったときに、つまり本当にもうだめじゃないかと、成立しないんじゃないかと思ったというのは、どの場面とどの場面だったんでしょうか。

岡田副総理
 私は最後は必ず成立するというふうには思っていましたが、やはり三党合意、これがなかなか前に進まないと。特に公明党が慎重姿勢という中で果たして合意ができるかどうかという場面と、最後の政局的に自民党の中でですね動きが出て、本来の良識ある対応が失われかけたという、この二つじゃないですかね。しかし、私はやはり自民党も長らく政権の座にあった党として良識が必ずあろう、通るだろうというふうには思っておりましたので。
 実際「奇跡」と言ったのは財務大臣のほうで、私もそれに同意はしましたけれども、割と私は最後は何とかなるという楽観主義者です。

[引用おわり]

 8月10日(金)、安住さんが岡田さんに「奇跡のようなものだ」と言ったそうです。これは驚きましたね。あの政局感バツグンのアニキが「奇跡のようなものだ」なんて。私は5月8日の審議入り以来、6月8日の3党協議スタート、会期延長後の6月26日の衆議院での採決、内閣不信任案提出を経て8月10日の成立を迎えるまで、一貫して100%絶対に成立すると信じて疑わなかったんですがね(^_-)

 楽観主義者である岡田さんは昨年の第177通常国会の民主党幹事長として、衆参ねじれについて何の根拠もなく「まあ、なんとかなるものだ」と語りました。その結果、当初の国会法改正による両院協議会改革は失敗しましたが、玄葉光一郎政調会長、城島光力政調会長代理、安住淳国対委員長とともに、3党合意(民主党、自民党、公明党の3党協議)体制をつくり、なんとかここまでやってきました。 

 その安住さんが「奇跡のようなものだ」と言ってしまうところが大蔵大臣、財務大臣としての責任の大きさなのかも知れません。それが与党の厳しさです。しかし、次からは安住さんも「まあ、なんとかなるものだ」が口癖になるでしょう。

 震災後本格的な当初予算となる平成24年度予算を編成から成立まで担当。それに先立つ、戦後2度目の4次補正(平成23年度4次補正)を成立させ、超大型歳入法案である消費増税法(社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律 平成24年法律68号)を成立させました。しかし、まだ画竜点睛を欠く部分が一つだけあります。歳入法案のうち、日切れ指定である「新・特例公債法案」(180国会閣法2号、内閣修正)がいまだに衆議院に残っているということです。それと年金交付国債を年金特例公債に切り替える国民年金法改正案(第180閣法26号内閣修正)と、補正予算案(未提出)が必要になってきます。

 民主党代表選で代表が交代する事態になれば、9月下旬にも第181臨時国会を召集しなければなりませんが、新・特例公債法案が未成立の場合も、10月の早い段階で臨時国会を召集しなければなりません。言うまでもなく、国会開会中は内閣支持率が下がり、野党の支持率が上がるというのは、小泉劇場を除けば、セオリーです。仮に代表交代ともなり、9月下旬から、首班指名、組閣、所信表明演説と代表質問、衆参予算委員会の集中審議、各常任委員会での大臣所信聴取と一般質疑となれば、あっという間に政権の足並みは崩れ、スキャンダルも飛び出し、第45期衆議院の民主党政権は悲惨な結末を迎えます。

 そのためには、新・特例公債法案は何が何でもこの会期中に成立させ、秋の臨時国会召集は11月ごろまで引き延ばし、冒頭から補正予算審議に持っていくしか、ありません。たとえ狭い道、ナローパスでも、醜いばかりに政権にしがみつき、第46回衆議院選挙で、倒れるにしても前に向かって倒れないと政権交代ある政治は一からやり直しです。

 頼もしいことに、きょう8月24日(金)、民主党は衆議院財務金融委員会で、新・特例公債法案(180国会閣法2号、内閣修正)、衆議院倫選特(政治倫理の確立および公職選挙法改正特別委員会)で内閣府衆議院選挙区画画定審議会設置法改正および公職選挙法改正案(第180衆法22号)を強行採決します。これは責任与党として100%正しい。罵声を浴びせられスーツのボタンを引きちぎられても、日本を前に進めないといけません。民主党の理事・委員はまったく憂いもなく、事を進めなければいけません。第45期衆議院で、多くの国民の信頼を失いながらも、民主党が政権を担った証になる一つの歴史的な日です。これが与党なんだ。

 少し話が先になりますが、9月22日をもって、輿石東幹事長の任期が切れます。いろいろ言われますが、輿石さんはなかなかの人物です。物事が対立しているときに、少しの冷却期間を置くという方法は、私も記者会見で話を聞いていて、なかなか、人間という集団において参考になる手法だと感じました。

 しかし、次の任期では確実に第46回衆院選と第23回参院選を戦う執行部になります。前回の衆院選のとき、マニフェスト策定の責任者だった直嶋正行政調会長もしっかりやっていましたが、農業のFTAをめぐる記述などに関して、一部衆議院議員からは、「やはり参議院議員だと衆議院で闘っている人の気持ちが分からない面がある」との指摘があったのは事実です。直嶋さんは謹厳実直なため、マスコミで批判されることはありませんでした。ベテラン衆議院議員は、なぜか政調副会長の細野豪志さんのせいにしたりしていました。細野さんを新自由主義者だと決めつけるベテランもいましたが、細野さんは実際には農業政策に強く、新自由主義者ではないと私は思いますが、直嶋会長には文句を言いづらいので、当時30歳代だった細野副会長のせいにしてしまうという、民主党らしいイジメ体質だったと感じます。

 そこで、次の幹事長ですが、民主党員のみなさんは誰がいいと思いますか?

 大臣はできる限り長くやってほしいところですが、実は議会政治の先輩で国会開設750周年が迫る英国でも内閣改造はほぼ毎年行われています。エリザベス女王治世の60年間で、首相は12人しかいません。また、財務卿(財務大臣ですが、唯一呼び名が大臣でも長官でもなく「卿」を使う特別な存在)はさすがに毎年交代はせず、長期に務めます。当然のことながら、玄葉光一郎外相は引き続き務めるべきでしょう。

 ただ、選挙対策、国会対策、資金対策、マスコミ対策、若手の面倒をみられる幹事長としては、安住淳幹事長で第46回衆院選・第23回参院選を迎えるのが、現実的だと考えます。当初予算を編成から成立までやりましたし、巨大歳入法につづいて、日切れの平成24年度の特例公債法を成立させれば、卒業試験は十分に合格です。さらに定年制を越えて、公明党の漆原良夫さんが第46期衆議院の候補予定者になりましたが、漆原国対委員長は「安住ちゃんはかわいい」とインタビューで答えています。

 ちょっと気の早い話をしましたが、まずは区割り審設置法改正および公選法改正案と新・特例公債法案を強行採決して、参議院に送るべきです。否決できるなら否決してみろという態度で大丈夫でしょう。

 まあ、なんとかなるものだ。

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