ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

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小沢一郎氏ら野田内閣不信任案提出、渡辺親子悲劇か?

2012年08月07日 21時08分27秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[写真]内閣不信任案の発議者となった小沢一郎衆議院議員、国民の生活が第一結党大会後の記者会見、憲政記念館(東京・千代田)、2012年7月11日、筆者撮影。

 みなさんは小沢一郎衆議院議員(岩手県第4区、国民の生活が第一)の本名をご存じでしょうか。「小澤一郎」ではありません。「悪魔一郎」です。彼は自分に近づいた者を最後には必ず不幸にする「悪魔一郎」です。例えば、渡辺美智雄さん。細川連立内閣総辞職に伴い、次の首相に、野党・自民党の渡辺美智雄元蔵相を擁立しようとしました。しかし、このときは、お母さんの顔は写真でしか見たことがないけれども立派な親戚を持つミッチーは「ついに俺も総理になれる」と興奮して寝付けず、翌朝寝過ごしまい、小沢議員が指定した「午前11時まで」に電話ができず、総理の座を逃したとされています。その後、ミッチーの電話に小沢さんが出ることはなく、その2年後に72歳で亡くなりました。

 2012年8月7日(火)午後5時半、衆議院議長室で野田内閣不信任決議案が提出されました。手元に現物がありますが、極めて奇妙なことがあります。提出者の順番です。

 提出者は6衆議院議員で、次の順になっています。

 渡辺喜美、穀田恵二、照屋寛徳、田中康夫、小沢一郎、内山晃。 

 これは、会派の議席順ならば、国民の生活が第一の小沢一郎さんが筆頭発議者になるはずです。五十音順ならば、新党きづな代表(統一会派「国民の生活が第一・きづな」)の内山晃さんが筆頭発議者になるはずです。しかし、渡辺喜美・みんなの党代表が筆頭発議者になっています。これは、細川内閣後継で小沢一郎氏に利用されたミッチーを彷彿とさせます。それから、日本共産党が穀田衆議院議員団長(国対委員長)となっています、志位和夫党首(幹部会委員長)の名前は賛成者に入っています。同様に社民党も照屋国対委員長が発議者になっていますが、重野安正幹事長も賛成者に入っています。

 賛成者は67人。みんなの党、日本共産党、社民党、国民の生活が第一・きづな、改革無所属の会(木内孝胤さん、中島政希さん、中津川博郷さん、横粂勝仁さん)、無所属1人(佐藤ゆうこさん=減税日本)が名を連ねています。

 ですから、民主党自民党公明党国民新党たちあがれ日本新党大地・真民主、無所属のうち8人(衛藤征士郎さん、亀井静香さん、平智之さん、土肥隆一さん、鳩山邦夫さん、与謝野馨さん、横路孝弘さん)は加わっていないことになります。

 この後、参議院議長宛にも野田首相問責決議案が出たと報じられています。こちらには新党大地・真民主が加わったようです。

 この理由について、新党大地・真民主衆議院議員の石川知裕さん(北海道11区)は、「(党内で)衆参がねじれちゃった」と説明しました。新党大地・真民主の2人の参院議員(平山誠さん、横峯良郎さん)のうち平山・参院環境委員は閣法で3党合意による衆院修正が入った「原子力規制委員会設置法」の審議で激しく批判したうえ、採決で反対しており、今回の衆参ねじれをうかがわせるものがありました。

 なお、提出者7人、賛成者67人の合計74議員のうち、衆議院議院運営委員会理事は太田和美さん一人。オブザーバーは発言できません。このため、太田理事だけでは、器量不足と考えられます。

 決議文は「野田内閣不信任決議 本院は、野田内閣を信任せず。右決議する。」

 理由は「野田内閣が強行しようとしている消費税増税は、平成21年総選挙の民主党政権公約に違反するものである。国民の多くは消費税増税法案に反対しており、今国会で成立させるべきではないとの声は圧倒的多数となっている。国民への約束、国民の声に背く政治姿勢をとり続ける野田内閣は信任に値しない。これが、本決議案を提出する理由である」となっています。

 「政権公約に違反」「国民への約束」「国民の声」など、小沢グループがよく使うキーワードが散見されます。仮に本会議に上程された場合は、渡辺喜美さんが趣旨弁明に立つということになっているのでしょうが、どうも小沢氏に利用されている気がします。渡辺喜美さん見た目は若いですが、すでに還暦、60歳です。早く小沢から離れないと、お父さんと同じ運命が待ちかまえています。


[写真]在りし日のミッチー。渡辺美智雄副総理・外相(自民党)、外務省ホームページ1992年版外交青書から


[写真]ミッチーの長男の渡辺喜美さん。

 一方、4回ある69条解散の一つ、「バカヤロウ解散」の主謀者である鳩山一郎さんの孫である鳩山由紀夫さんの「政権公約を実現する会」関係者は、同会の中でも賛否が割れており、この決議案が上程された場合は、否決されるとの見通しを示しています。

 このほか、参議院にも総理問責決議案が出たようですから、あす採決予定だった「社会保障と税の一体改革8法案」(衆法2本、閣法衆院修正が6本)の審議が遅れる可能性が出てきました。


[写真]記者会見する中塚一宏・内閣府副大臣、岡田克也副総理、稲盛和夫・京セラ創業者、2012年8月7日午後6時半、内閣府、筆者撮影。

 野田内閣不信任案提出から1時間後、内閣府で記者会見した稲盛和夫・京セラ創業者は、「国家の財政状況はすでに破綻状態に陥っていると私は思っています。公務員も(公的サービスの)受益者である国民もみんなが痛みを感じることが大事です。入るを量って出るを制す(いるをはかって、いずるをせいす)ーー入ってくるものを増やそうとすれば(消費税などの増税で)国民の負担は増えます。しかし、公的分野にかかわる公務員・受益者(国民)の意識改革の徹底で、みんなが辛い目を(共有)するんだ、みんなが耐えていかないといけない。そういう国民的世論を増やしていかないといけない」と語りました。そのうええで、記者の質問に答えて稲盛さんは「(会長として改革にあたった)JALの再建とはまったく違う。(日本の財政再建のためには)税収を増やすことと出費(歳出)を減らすことが必要だ」と語り、むだづかいの削減で収支を改善して再上場を果たす日本航空とはまったく違い、歳入増が必要だとの考えを示しました。この記者会見は、行政改革に関する懇談会の取りまとめ文書「大転換期の行政改革の理念と方向性について」の発表のために、小沢氏の動きと関係なく当初から設定されていたもの。岡田副総理は「今後3年間の集中改革期間を設定し、我が国が直面する財政の危機的状況の下、真に効率的で機能する政府を実現する」としました。


[写真]マイクを直す岡田副総理、稲盛和夫さん、吉川廣和DOWAホールディングス相談役、加藤秀樹・行政刷新会議事務局長、各々行政改革に関する懇談会委員、2012年8月7日、内閣府、筆者撮影。

 衆議院、参議院とも若干審議が止まるかもしれませんが、それはやむを得ない民主主義の手間です。内閣不信任案は否決される見通しですので、上程し、否決すれば後の1ヶ月の会期が楽です。問題は参議院での問責決議ですが、可決されたにしても、一体改革法案は日本国憲法59条の規定にもとづき、8月25日(土)以降に衆議院の3分の2(民主党、自民党、公明党、国民新党、たちあがれ日本)の賛成で可決・成立します。

 わずか5人の新党大地・真民主ですら、衆参がねじれてしまっている現状。これをどう考えるか。小沢一郎氏がいまだにはびこる現状。これをどう考えるか。会期を1ヶ月も残した段階での不信任・問責政局による国会混乱を招いたのは6月26日(火)の一体改革法案の不正常採決を招いた民主党内の恥知らず、恩知らずの火遊びです。しかし、失火責任は日本国憲法で「主権者たる国民」とされた、国民です。

 きょうの時点で抑えておきたいポイントは、この不信任案には、自民党、公明党、たちあがれ日本、新党大地・真民主の4野党が加わっていないという事実。歴史の審判はそんなに遠くない未来に出ます。

 [お知らせ]

 衆議院解散の日程を別ブログで解説しています。

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