【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

どんとこい内閣不信任案 野党仕分けのチャンスだ でも本当に仕分けされるのは・・・

2012年08月05日 21時09分24秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[写真]野田佳彦首相(民主党代表)

 野党7党は2012年8月3日(金)、国会内で党首会談を開き、野田内閣不信任決議案を衆議院に提出する方針で合意しました。通常国会会期末では毎回、内閣不信任案が出されています。衆議院の過半数以上の支持があった衆議院議員が内閣総理大臣になって組閣しているのですから、内閣不信任案が衆議院で可決することは本来的には変なことです。

 今回も極めて珍しい事象が繰り広げられました。

 野党第1党の自民党、召集時は野党第2党だった公明党、野党のたちあがれ日本の第177通常国会で菅内閣不信任案を共同提出した3党が外れていることです。

 そして内閣不信任案には51人以上の署名が必要です。単独で出されるのは自民党だけ。公明党は必要署名の半分以下の21議席しかありません。

 今回の7党首会談を開いたのは、

 座長として、みんなの党(渡辺喜美代表)。
 次に国民の生活が第一(小沢一郎代表)。
 新党きづな(内山晃代表)。
 日本共産党(志位和夫委員長)。
 社会民主党(党首・福島瑞穂参議院議員)。
  新党日本(田中康夫代表)。
 そして、現時点では衆議院議席がない、新党改革(代表・舛添要一参議院議員)。

 の7党です。

 衆議院で3議席を持つ、新党大地・真民主(代表・鈴木宗男さん=非議員)と自民党(谷垣禎一総裁)、公明党(代表・山口那津男参議院議員)、たちあがれ日本(平沼赳夫代表)が参加していません。また、政党法人格がない政治団体では衆院議席がない参院会派「みどりの風」(共同代表・女性4議員)、幸福実現党、大阪維新の会も参加していません。

 言うまでもなく、与党である、民主党(野田佳彦代表)、国民新党(代表・自見庄三郎参議院議員)も参加していません。

 ですから、51議席の乗ったのは、すべては国民の生活が第一の小沢代表の策略ということになります。そのうえで、小沢氏が細川内閣退陣時に、自民党を離党させ首班に担ごうとした渡辺美智雄元蔵相の息子である渡辺喜美さんを担いだ格好になります。しかし、渡辺ミッチーは、小沢さんのせいで自民党内での立場も悪くなり、その2年後に亡くなりました。小沢一郎と仲良くすると不幸になるという法則発動です。このため、第45回衆院選で、渡辺さんの栃木3区に民主党公認候補も推薦候補も立てないで恩義を果たすといういつもながらの公私混同をしています。

 さて、衆議院が首班指名をしている以上あり得ない、内閣不信案ですが、過去に4回可決されています。吉田内閣で2回、大平内閣で1回、宮澤内閣で1回で、すべて当日に解散しています。しかし日本国憲法69条では、「10日間以内に解散しない場合は総辞職しなければならない」とあります。危機管理の鉄則として、仮に今週、不信任案が可決してしまった場合は、党首会談のうえ、10日間に定数是正と特例公債の成立をさせたうえで、衆議院を解散するということになるでしょう。

 野党を仕分けるチャンスです。責任野党である公明党はこの不信任案の共同提出者にならない、と斉藤鉄夫幹事長代行がNHK日曜討論で明言しました。これに先立つ、時事放談では、藤井裕久・民主党税調会長は「消費税増税にともなう公共事業とはすべて防災のことだ」と公明党に秋波を送りました。また、新党大地・真民主も、北海道の小選挙区2議員が連合の支援を受けるためにも、共同提出者にならない可能性が高いと考えます。

 こうなると、小選挙区比例代表並立制のなかで、二大政党的な勢力に収斂されていく中で、中小政党の存在意義としての「オギャー」という泣き声が今回の不信任案といえるでしょう。オリンピック中になぜ目立とうとするのか、狙いが分からないのですが、オリンピック中だからこそ、存在自体に不安を感じているのでしょう。

 野党を仕分けるチャンスです。この中でどういう行動を取るか。例えば自民党出身の3党首と日本共産党の連携を有権者はどう見るか。長年のライバルである共産党の不信任案に公明党はどう振る舞うか。これは、日本の衆議院から共産主義・社会主義者政党をなくすチャンスかも知れません。たちあがれ日本はどうなるか。

 過去4回の不信任案は、吉田首相の「バカヤロウ」発言を懲罰委員会にかけようとした混乱に基づき、鳩山グループが野党提出の不信任案に賛成票を投じ(ただし、鳩山一郎衆院議員は欠席し)た「バカヤロウ解散」。宏池会の大平正芳首相と田中派(後の経世会)との感情的しこりによる清和会の裏切りによる「ハプニング解散」。そして、小沢グループによる「宮澤嘘つき解散」。当然のことながら、内閣不信任案可決はすべて与党内が割れたことで成立しています。

 そういう意味では、二大政党収斂のなかでの野党の仕分けのように見えて、本当に仕分けされるのは民主党衆議院議員ということになります。

 総理には、お母さんの言葉を思い出してほしい。バカヤロウ解散の第15回特別国会の1953年(昭和28年)3月14日(土曜日)の衆議院本会議。「私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になりました改進党並びに両社会党の共同提案による吉田内閣不信任案に対し賛成の意を表明せんとするものであります。(拍手)」。賛成討論に立ったのは、浅沼稲次郎・右派社会党書記長でした。その7年後、統一された日本社会党の党首だった沼さん(浅沼稲次郎さん)は日比谷公会堂で17歳の右翼青年の凶刃で即死します。そのとき、野田さんのお母さんは「政治家は命懸けなのよ」と言ったそうです。野田さんはその後、沼さんと同じ、早稲田大学政治経済学部で学び、衆議院議員になりました。

 総理はあれこれやらないで、まずはお母さんの言葉を思い返して、今週の不信任政局に臨んでほしい。いずれにしろ、通常国会の最後には出てくるんです。ここで与党が団結し、野党の足並みが乱れて断固否決すれば、残り4週間の会期はかなり楽に進めることができるでしょう。

 最高のリーダーは1ミリたりともブレてはいけません。最高の有権者は、うんざりするときはうんざりしても、見るべき時はしっかりと次の投票行動への取材をしなければいけません。

 
内閣不信任案、野党7党提出へ 生活や共産など(朝日新聞) - goo ニュース

 国民の生活が第一、共産、きづな、社民、みんな、日本、改革の野党7党は3日、国会内で党首会談を開き、消費増税関連法案の参院採決前に内閣不信任決議案を衆院に提出する方針で一致した。提出日は参院採決の日程をみながら各党幹事長間で調整する。

[お知らせ]

 衆議院解散の日程を別ブログで解説しています。

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