【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

ピエロ渡辺、親子揃って小沢一郎に使い捨てにされる 野田内閣信任

2012年08月09日 20時07分02秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[画像]野田内閣不信任決議案の趣旨弁明に立つピエロ渡辺(渡辺喜美みんなの党代表)、2012年8月9日、衆議院本会議、衆議院インターネット審議中継から。

【2012年8月9日(木) 衆議院本会議】

 野田内閣不信任決議案(180国会決議4号、小沢一郎氏ら提出)が否決されました。筆頭発議者であり趣旨弁明に立った、みんなの党の渡辺喜美さんは、小沢氏に利用されたうえ、使い捨てにされた可能性があります。小沢一郎さんは出席のうえ、白票(賛成票)を投じました。

  政権交代可能な二大政党的勢力への収斂が進む中で、中小野党が仕分けされました。

 国民の生活が第一、新党きづな、日本共産党、社民党、みんなの党が提出した野田内閣不信任決議案が否決されました。この議案には、自民党、公明党、たちあがれ日本、新党大地・真民主の4野党は加わりませんでした。

 記名投票表決(堂々巡り)の結果は、

投票総数332

賛成86

反対246

 で野田内閣不信任決議案は否決され、野田内閣は信任されました。

 午後6時2分開議。全員で、長崎原爆忌およびそれに先立つ広島原爆忌への黙祷。その後、自民党、公明党が退席しました。

 この後、議事進行係の鷲尾英一郎さん(民主党)が「渡辺喜美君ほか5名提出の野田内閣不信任決議案は提出者の希望通り、すみやかに議題にすることを臨みます」と発議し、異議無しで認められました。

 趣旨弁明に立った渡辺喜美さんは「私はみんなの党、日本共産党、社民党、新党日本、国民の生活が第一、新党きづな、有志の無所属議員の諸君を代表して野田内閣不信任決議案の趣旨を説明します」と演説しました。この議案の提出者は、渡辺喜美さん、穀田恵二さん、照屋寛徳さん、田中康夫さん、小沢一郎さん、内山晃さん。賛同者は各党所属全議員と無所属5人の67人。無所属は小沢系3人に加えて、中島政希さん、横粂勝仁さんが入っており、会派結成届の関係から名を連ねたと思われます。それでも、わずか合計73人です。

 会派人数順ならば、小沢一郎さんが趣旨弁明すべきところですが、弁の立つ渡辺喜美さんが登壇しました。あたかも、細川内閣退陣後に、渡辺美智雄さんが担がれたのに、はしごを外され、自民党内での立場を悪くしたのを彷彿とさせました。渡辺さんは「平成21年の民主党政権公約から大きく外れている」としたうえで、財務省批判を繰り広げながら、3党合意について「自民党の公共事業長老派を利するものだ」としました。そして、早稲田大学政治経済学部の先輩に当たる斎藤隆夫・衆議院議員の同じ演壇での反軍演説・粛軍演説を持ち出し、「斎藤隆夫なら公共事業よりも社会保障が大事だと言っただろう」と我田引水演説。その上で、「増税の前にやるべきことがあるだろう」と述べ、元々はみんなの党のスローガンなのに、小沢一郎さんに利用された言葉を絶叫しました。

 「3人しか4人しか残っていないようですが・・・自民党のみなさん、公明党のみなさん」と呼びかけ、「みなさんは増税よりも解散を優先しようとしていたのではないですか」と力なく呼びかけました。親子揃って、小沢一郎に騙されてはしごを外された渡辺親子。「今からでも遅くはない、国会議員は全国民の代表です。自らの政治理念に基づいて行動すべきだ。民主、自民、公明のみなさん、党議拘束を除いて自らの信念を全うしてください」と原理原則を語りました。そのうえで「国民のみなさん、けっして政治をあきらめないでください。3党談合政治を少数政党がちゃぶ台返しをしましょう。次の選挙で、増税派を間接直接に支援した議員に鉄槌を下しましょう」と語りました。

 新進党を解党した小沢一郎さんに近づくと、使い捨てにされ、不幸になります。渡辺親子はそろって不幸になりました。

 反対討論には、民主党から笠浩史さんが立ちました。笠さんは議院運営委員会理事で議場内交渉係を務めています。前職のテレビ朝日記者時代に、小沢一郎自由党党首が連立離脱を一方的に突きつけた小渕恵三首相(自民党総裁)の生涯最後のインタビューの担当者だったことで有名です。小渕さんの子の小渕優子さんは自民党幹事長代理を務めて、あず可決・成立する見通しの「認定こども園法改正案」は2009年3月に小渕内閣府少子化担当大臣がまとめた「小渕報告(小渕リポート)」が出発点となって、6月15日に3党合意した法案です。小渕さんはイキイキとしているようです。

 野党各党共同提出の場合は、賛成討論には他の党首・幹事長が立つものですが、国民の生活が第一は、小沢一郎代表、東祥三幹事長でもなく、鈴木克昌・国会対策委員長を登壇させました。明らかに役不足であり、「増税は国民を裏切るものである」と演説しましたが、鈴木さんが登壇していること自体が、みんなの党を裏切る演説でしょう。そのうえで、「野田総理はあなたはきょうの両院議員総会で解散時期は明示しない」と民主党の内部会議の報道に言及し、古巣への複雑な感情を垣間見せました。「今、私たちがなすべきことは革命的ともいえる行財政改革だ」という浮ついた発言をしました。

 次に反対討論には、与党・国民新党の中島正純さんが立ちました。中島さんは民主党大阪3区公認候補として当選しましたが、政治資金収支報告書の作成に誤りが発覚したことから離党し、国民新党に身を寄せています。

 続いて賛成討論には、日本共産党から、ちゃんと、志位和夫委員長が立ちました。内閣の存否にかかわる議案に党首が演説するのは当然のことです。志位さんは「日本共産党は富裕層と大企業に応分な負担(増税)を求める」ことで、社会保障が充実できるという持論を展開しました。
 


 今回の決議案に加わらなかった健全野党は、自民党、公明党、たちあがれ日本、新党大地・真民主の4党。残念ながら、党首や代表者の話をきょうは聞けませんでしたが、総選挙に向けて演説を聴いてみたいところです。

 これに与党の民主党、国民新党の合計6党が「政局よりも政策を」との立場で一貫しました。まさに政党仕分けが行われ、政権交代可能な二大政党勢力への収斂の歴史的必然のなかで、小沢一郎氏がまとめた中小野党が自ら消えていきました。あすからの残り1ヶ月の国会は巡航速度になりそうです。

 そして、何よりも、有権者を含めて小沢一郎に近づいた人間は必ず不幸になります。

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