【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

つかさつかさに民社協会 幹事長「素晴らしいリーダーたち」副総理「非常に立派な人材がそろっている」

2012年08月01日 05時43分10秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

 つかさつかさに民社協会。

 「つかさつかさでしっかり対応する」という野田佳彦総理(民主党代表兼務)の口癖が気になって調べたら、つかさ(司)という言い方は平安時代から定着してきたようで、市場取引を管理する「市司(いちのつかさ」や、地方を管理する「国司(くにのつかさ)」、あるいは後宮の係の名前にもよく使われていて、そこから「つかさつかさで」という言い方が派生したようです。

 昨日の衆議院本会議で、JR西日本労組出身の三日月大造・民主党筆頭国対副委員長が、重要法案が渋滞している内閣委員会理事から報告・相談を受けるシーンが、インターネット中継でも見られました。



 昨日の参院特別委では、川端達夫総務大臣(UIゼンセン同盟組織内)が、今年になってから民主党から58人が離党したので、政党助成金は議員数割りだけで10・3億円減る(計算になるが、実際には党に支給される)と答弁しています。58人が離党とは信じられない数です。これにより私たちは、第45期衆議院を次の選挙で評価することが難しくなりましたが、民主党の骨組みはしっかり残っています。

 民社協会が民主党の骨組みを支えています。まさにつかさつかさに民社協会員が民主党の重要ポストを担当しています。

 国会対策委員長は、城島光力さん(フード連合・味の素労組)で、参院国対委員長は池口修次さん(自動車総連・ホンダ労組)。イチバンの体力仕事になる国対筆頭副委員長は三日月大造さん(JR連合・JR西日本労組)。

 党の選挙・組織のラインは民社協会が独占していて、選挙対策委員長が高木義明さん(基幹労連・三菱重工業長崎造船所)、党本部と県連のパイプ役である組織委員長が古本伸一郎さん(全トヨタ労連)、連合・支持団体とのパイプ役である企業・団体委員長が小林正夫さん(電力総連・東京電力労組)が抑えています。

 さらに両院議員総会長は直嶋正行さん(全トヨタ労連)、常任幹事会議長は中野寛成さん(自動車総連組織内扱い)、さらに中央代表選挙管理委員長は柳田稔さん(基幹労連組織内扱い)。

 そして、ある意味イチバン象徴的なのは綱領策定委員長が直嶋さんということです。言うまでもなく、党副代表は直嶋さんのほか、田中慶秋・民社協会会長がやっており、4人中2人が民社協会。副代表の半数が民社協会というのは以前からよくある配置です。

 国会(ハウス)においては、小平忠正衆議院議院運営委員長(参院は自民党)、中井洽・衆院、柳田稔・参院の両予算委員長、そして総理が政治生命をかけた衆院一体改革特別委員会の中野委員長ら第1委員(会)室の委員長席は多く民社協会員が務めています。

 ですから、小沢グループよりも、民社協会の方が大事なのですが、政治部のデスクは「政治記者にとって野党第3党の民社党担当は左遷ポストだった」という意識がいまだにあるし、正直詳しく知らないので、民社協会を「川端グループ」「旧民社党グループ」と呼んで、蔑んでいます。

 とはいえ、党の責任者、政府の責任者は民社協会の働きを評価しています。

 民主党幹事長の輿石東さんに質問してみました。7月30日(月)の定例記者会見でした。
 
 輿石幹事長は「あなたよく分析してくれたね、今初めて聞いて、あらためてそう言えばそうだ」とおとぼけ。その上で、「それだけ民社協会の経験の(ある)人たちは素晴らしいリーダーだ、ということですね。はい」。そして、一呼吸おいて、「ありがたいことだと思っています」と述べました。

 筆者は「つかさつかさで、役員会メンバーでも国会対策委員長(参院国対委員長含む)、選挙対策委員長も、組織委員長・企業団体委員長も、院においては、衆院議員運営委員長(参院は自民党)、衆参の予算委員長もこういった方たちは民社協会に所属している方たちで、もちろん、民主党として、国会議員として仕事をしているわけですが、党分裂という大きな動きがあったなかで、民社協会の人たち、派手さはないかも知れないけど、堅実に党を支えている」と質問しました。

 この一呼吸おいての「ありがたいことだ」との感想には、輿石さんが民社系と対峙したこともある、旧総評系の日教組組織内だということですが、この分裂政局を経て、「ありがたいことだと思っています」との正直な感想。友愛会創設100周年のきょうをもって、旧同盟と旧総評の対立は終局したと、当ブログ宣言いたします。これからは、「国のためより働く者のため」という意識で、いつまでも天下国家ばかり論じていないで、もっと一人一人の労働者により沿ってほしいですね。

 政府からも民社協会員を絶賛する声が聞かれました。 

 岡田克也副総理の7月27日(金)の記者会見です。

 岡田副総理は「あまり私、そういう目で見ておりませんので、特にコメントはありません。あまり派閥とかグループで見るという、そういうことは私はしておりませんので」と原理主義。そのうえで、

 「一人一人、確かに今、名前を挙げられた方々、非常に立派な人材が揃っているなと改めて思いますけれども、それ以上のコメントはありません」

 そのうえで、党綱領検討委員長を直嶋正行・民社協会国会議員団長が務めているのが象徴的だと指摘したところ、

 「党綱領を直嶋さんが今、責任者でやっておられることは事実です。これを任命したのは私ですから、私が幹事長のときに直嶋さんに頼んだということで、別に民社協会とかそういうことではなくて、適任と思ったから頼んだということで、いいものがまとまることを期待しております」

 と岡田さんは直嶋さんが党綱領策定の責任者にふさわしいのは、「民社協会とかそういうことではなくて、適任」だとしました。

 これを聞いて、「ああ、民社協会はフラタニティーなんだな」と感じました。

 Fraternityは、フランス革命の「自由・平等・友愛(博愛とも翻訳される)」でおなじみですが、実はFraternityには、やや秘密性を帯びた社交クラブという意味合いがあります。世界のエリート候補生が集まるハーバード大学は、田舎にあることもあり、校舎から歩いて5分、10分のキャンパス内に寮があります。この寮のことを「フラタニティー」と呼ぶそうです。世界中のエリート候補が寝食をともにするフラタニティーの中でのインターネット上の会員名簿として始まったのが、フェースブック(FaceBook)です。ザッカーバーグ青年が自分たちのフラタニティーの会員名簿は、学内外性別を問わず、興味があり、付加価値があるだろうと考えたのがフェースブックの創業につながりました。

 小沢グループ(新しい政策研究会)は小沢一郎会長あいさつをマスコミに公開し、独自にインターネットに配信していますが、会長あいさつが終わると記者を締め出しています。一方、民社協会はカメラは頭取りだけですが、会議は記者に公開しています。党代表選の対応だけは非公開にしますが、終了後に三役がブリーフィングをしています。

 だから、民社協会はフラタニティーなんですね。何よりも民主党員であり、国会議員です。いちいち、民社協会だと表で言わない。しかし、あうんの呼吸で、気付いたときには党を支えている。だから、幹事長も副総理も公の場である記者会見で「民社協会」と呼んでいます。

 そのフラタニティー、民社協会をしっかりと理解し、抑えることが、与党にあっても、野党にあっても、民主党を理解する第一歩です。ハーバード大学研究員として一戸建てを借りて夫婦で毎週末ホームパーティを開いていた岡田さんは「民社協会はフラタニティーだ」ということを理解していたのでしょう。ちなみに、岡田さんと直嶋さんは同じタワーマンションの住人です。

 さあいよいよ、きょう2012年8月1日は友愛会創設100周年です。午前10時から、友愛労働歴史館が再オープンします。同じ時刻に、野党「国民の生活が第一」の党本部開きがありますが、そんなものを取材したり、放送したり、興味を持ったりしているうちは民主主義はダメです。

 民主主義社会では、本当に国を思う政治家は、地味なんです。鳩山一郎が公職追放中に軽井沢の別荘で、リヒャルト・クーデンホーフ=カレルギーの著作を「友愛」と翻訳し、自由主義労働運動へラブコールを送りました。この史実が、民主党結党の礎につながっているわけですが、このせいで、現代のインターネット社会では「友愛」というと、「人をあやめる」という意味に転用されてしまいました。「かわいそうに友愛されたな」とか。

 本当に信頼できる人は目立たないけれども、そういう人がいることを有権者が見抜き、評価しないと、日本の議会制民主政治はまったく進歩しません。

 国難の折、今まさに試されているのは、民主党でも民社協会でもなく、有権者の方です。

岡田副総理記者会見録から引用はじめ]

(問)フリーランスで宮崎です。ちょっと唐突かもしれませんが、民社協会についてお伺いしたいと思います。というのは、来週8月1日で民社協会の母体になった友愛会という労働組合ができて100周年になります。この1か月間、民主党分裂騒ぎの中で、ある程度収束したかと思いますが、民社協会の国会議員、今、つかさつかさで民主党の主要なところを占めています。国会対策委員長、衆議院、参議院ともそうですし、また予算委員長も衆議院、参議院とも民社協会の方です。さらに一体改革特別委員会のほうも、衆議院では委員長もそうでしたし、また実務者として答弁に当たっている古本さんもそうです。閣内では川端大臣、それから今、民社協会の会長をやっている田中民主党副代表は、非常に厳しい衆議院での採決の前で党をまとめる役割をしました。こういった民社協会が今、本当につかさつかさで、民社党結党以来、与党を3年間やっているというのは、これが民社党結党以来初めてだと思いますし、また国会議員のメンバーも今一番多い状況になっています。そういった意味で、民社協会の皆さん、あまりスター性はないかもしれませんけれども、縁の下の力持ちで、やっているんじゃないかと思うんですが、どうお感じになられますでしょうか。

(答)あまり私、そういう目で見ておりませんので、特にコメントはありません。あまり派閥とかグループで見るという、そういうことは私はしておりませんので、一人一人、確かに今、名前を挙げられた方々、非常に立派な人材が揃っているなと改めて思いますけれども、それ以上のコメントはありません。

(問)すみません、そこでもう一つだけお伺いしたいのは、一つ象徴的だなと思うのが、直嶋さんが党の綱領の策定委員長をしています。民社協会は以前から、党綱領を作れと、ついては私たちにやらせてほしいというふうなことを長年おっしゃってきたと思います。民主党のマニフェストを守るためと言って党を離れていく人もいる中で、民主党の綱領を作りたいと、そういった形でやっている民社協会、まあ民社協会じゃなくて、民主党議員として直嶋さんはやっているわけですけれども、そういったところでどういったところを今後さらに期待されていかれるでしょうか。

(答)党綱領を直嶋さんが今、責任者でやっておられることは事実です。これを任命したのは私ですから、私が幹事長のときに直嶋さんに頼んだということで、別に民社協会とかそういうことではなくて、適任だと思ったから頼んだということで、いいものがまとまることを期待しております。

[引用終わり]

民主党輿石東幹事長会見録から引用はじめ]

○民社協会について

【フリーランス・宮崎記者】8月1日で「友愛会」が創立100周年で、記念式典があるかと思う。きょうあった役員会でも国対委員長、選対委員長、組織委員長、あるいは国会でも議院運営委員長、衆参の予算委員長は民社協会に所属している方たちだ。もちろん民主党議員として仕事をされているが、今、党分裂という大きな出来事があった中で、民社協会の方たちは堅実に党を支えているように思うが、幹事長として党運営の立場からどうお考えか。

【幹事長】あなた、よく分析してくれたね。今初めて聞いて、ああ、そう言われればそうなのかと。それだけ民社協会の経験の人たちはすばらしいリーダーだということですね。ありがたいことだと思っています。

[引用終わり] 

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