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ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。

【国会傍聴記】衆院予算委スタート、自民党・公明党政調会長が質問

2007年10月09日 15時48分05秒 | 第168臨時会(2007年9月~1月)法案の嵐作戦

 衆院予算委員会がスタート!(写真は共同)
 まずは全閣僚がそろって基本的質疑。本会議場から、50座席の第一委員室に舞台が移り、本格論戦の火ぶたが切って落とされました。

 今日の傍聴記はエントリーを2つに割ります。
 1つは谷垣禎一自民党)、斉藤鉄夫公明党)の与党政調会長の総論。それに関連した議員の各論。
 与党の質問はあまり面白くないのですが、参院選後&福田政権発足後最初の予算委員会です。
 政権与党の政調会長がトップバッターですから、政府・与党が今国会にのぞむ姿勢と争点が見えてくるはずですので、詳述します。

 2つめのエントリーはお待ちかねの長妻質問に絞りました(連日、多数のアクセス、コメントありがとうございます)。(【国会傍聴記】長妻さん、年金で具体的答弁引き出す 衆院予算委員会

■国会傍聴記 2007年10月9日衆議院予算委員会(第一委員室)総括質疑①■
(質問者自民党=谷垣禎一政調会長中谷元、中山成彬、細田博之 公明党=斉藤鉄夫政調会長、上田勇、赤羽一嘉)

【自民政調会長、「抱きつき戦術」強調」

 谷垣禎一さん(京都5区)は参院選後の国会運営の構図を、
「政府・与党の政策 は、衆院では通るけど、参院では通らない。逆に
 野党の皆さんの政策は、参院では通るけど、衆院では通らない。
 こんな風になりますと、現状は一歩も動かない」という表現しました。

「(自民党は)誠実に野党のみなさんと対話する。それを積み重ねていく」と福田政権の“抱きつき戦術(クリンチ戦術)”をうかがわせました。

 一方で、民主党の参院選マニフェストをフリップにまとめて、「15・3兆円の財源が必要だ」として、財源の手当てを自民党がターゲットにしていることを示唆するなど、対決姿勢も明確にしました
ちなみに谷垣さんはこのとき、フリップの向きを間違え、1分ほどTV画面からフリップの内容が見えない状態でした。総裁選に出馬した谷垣さんですが、大衆政治家への変身は難しいようですね)。

自民党質疑から見えてきた最大の争点はやはり「インド洋」】

 谷垣政調会長が取り上げた議題は、このほか、中央と地方の格差(地域再生)、年金問題、テロ対策特別措置法の問題など。
 テロ特に関しては、関連質問の中谷さんにお願いするとバトンを渡しました。

 自民党の中谷元さん(高知2区)は防衛大卒の退役自衛官で、衆院議員になってからは防衛庁長官も務めました。石破茂防衛相と並ぶ自民党国防族の中堅です。

 ○福田首相、「インド洋での給油活動は日本のシーレーン防衛」

 テロ特措法の延長(新法制定)に関して、福田首相はこのブログの10月1日付のエントリーの小見出し【インド洋給油活動継続は「シーレーン」防衛の】部分で指摘した通り、海上自衛隊のインド洋での活動は日本のシーレーン(海上輸送路)防衛であるという認識を示しました。
 福田さんは「(インド洋と日本を結ぶ)シーレーン(海上輸送路)は日本の生命線で、テログループが暗躍すれば安心して航海できない」と述べ、安倍前政権の「国際公約」論から、日本のエネルギー確保のためのシーレーン防衛という福田内閣としての新しいパラダイムを予算委でも提示しました。

 ○石破防衛相、「20万ガロン」を謝罪 「作業の単純ミス」強調

 中谷さんは石破防衛相とのかけあいで自衛隊のインド洋上での給油活動継続の必要性について強調しました。

 ここでも民主党の「今後の作戦計画」を想定した上での予防線がありました。
 まず次の記事に目を通してください。
9月21日の共同通信配信記事
 イラク戦争直前の03年2月、インド洋で海上自衛隊が米空母「キティホーク」に間接給油した問題で、防衛省は21日、約20万ガロンとしていた米補給艦への給油量を訂正し、実際は約4倍の約80万ガロンだったと発表した。
 20万ガロンは、政府が国会審議で「給油がテロ対策特措法の目的の範囲内」と説明するために引用されており、防衛省は陳謝した。


 20万ガロンならば、インド洋→イラクの途上で燃料として消費してしますのですが、80万ガロンだとイラクでの活動の時点でも残っていた可能性があります。この数字は当時の福田官房長官が明らかにした数字です。
 これは朝日新聞のスクープで明らかになりました。政府の故意かどうかは別として、政府は野党やマスコミ、そして国民に虚偽の説明をしていたことになります。

 当然、民主党は今後、この数字を攻めるでしょう。

 

 これに先手を打つ形で、石破防衛相は、「給油量訂正は入力ミス」だと陳謝し、「関係者を処分する」考えを表明しました。

【福田首相、「自民党に派閥はない」】

 中山成彬さん(宮崎1区)は「先日の
清和政策研究会(清和研の会合に8年ぶりに小泉元首相が出席した」と国会では異例の派閥の話から切り出しました。福田首相も「派閥は自民党にはない。政策研究グループだ」と答弁、中山さんも「マスコミも派閥という言い方を使わないようお願いしたい」と応じました。

 中山さんは「経団連の御手洗冨士夫会長と話していたら、あそこ(キヤノン)は大分に工場があるけど、『道路があれば宮崎にも作るのに』と言われた」として、九州の道路建設が必要だと指摘。「お金の使い方がまちがっている」と道路特定財源の問題にふれました。ひたすら地元の話をした中山質問はまさに戦後レジーム、あきれたのヒトコトでした。

 農業問題に関して中山さんは農業者の「戸別所得補償制度は前時代的。グランドデザインを示せ」と民主党案にかみつきました。
 教育予算の減少にも苦言を呈しました。

 午後は細田博之さん(島根1区)から。この人も清和研(町村派)です。
政治とカネの問題では「かつての角福戦争など(略)これまでの不祥事は反省する」としました。
 また、中央と地方の格差の問題では「島根をはじめとする“貧乏県”の実態に配慮すべきだ」と切り出し、増田寛也総務相に9月末に島根を訪れた際の感想や地方財政についてたずねました。
 このほか、原子力問題など、通産省(出身官庁)と島根県(父親から次いだ選挙区)という2つの基盤の話を延々としていました。

【公明党は「立党の精神」に立ち返って医療、年金中心に質問】

 続いて公明党政調会長斉藤鉄夫さん(比例中国)が質問しました。まずは「立党の精神」を紹介。連立与党・公明党が自らの存在意義、アイデンティティに悩んでいる姿が垣間見えました。

 公明党の立党の精神について調べたら、太田代表が自身のウェブサイトでこう述べています。

「公明党は真に大衆の心に共鳴し、庶民の汗と涙の分かる政党を渇望する民衆の声に応えて誕生した政党です。私は、今こそ、この立党の精神、原点に立ち返り、新出発する時であると強く思います」

 斉藤さんは産科医・小児科医不足高齢者の医療費負担増国民年金の低年金・無年金者の問題を取り上げます。公明党らしい質問で「立党の精神」に立ち戻った気がします。参院選の獲得議席は9(繰り上げ除く)とせっぱ詰まった公明党。

 舛添厚労相が「与党プロジェクトチームでの議論をお願いしたい」と述べるなど、閣僚は連立与党パートナー=公明党に配慮した発言が見受けられました。

 公明党に配慮し、民主党は配慮しながら攻める。福田内閣がベテランで固められているのも納得です。

 公明党からはほかに小選挙区当選者2人が質問に立ちました。
 上田勇さん(神奈川6区)は安全保障の問題として、拉致問題など北朝鮮問題から話を始めました。そして中小企業対策については福田首相から「大企業に比べて、復調が遅れている」との認識を引き出しました。
 「保育所を出た子どもが毎年50万人、小学校に上がっている」と指摘したうえで、小学校での学童保育の定員はその半数以下で、「施設も劣悪」と善処を求めました。

 赤羽一嘉さん(兵庫2区)は「教育費用の負担軽減こそ政治が取り組む最重要課題だ」として、奨学金制度の維持・拡充を要求。来年度予算での奨学金について質問するという生活に密着した具体的な質問で「概算要求する」(渡海文科相)との答弁を引き出します。さらに赤羽さんは「入学金も切実な問題」、「国民生活金融公庫から融資を受けられない人もいる。その人が民間から融資を受けられるはずがない」とたたみかけました。
 
まさに庶民の身方味方・公明党だなあ、と思うとともに、これだけ切迫した質問が予算委員会初日に出てくる世相に日本の危機を感じました。このとき、自民党議員席からときどき笑い声が出るのが不愉快でした。

 阪神大震災の体験を踏まえて、赤羽さんは「被災者生活再建支援法」も取り上げ見直しの必要性を指摘しました。
 ちなみにこの法律に関しては、民主党がすでに参院にの法律の改正案を民主党が参院に提出しています。
参考エントリー(民主党、能登・中越沖地震含めた被災者支援法案を参院に提出
 最後に「一刻も早い訪中」
を福田首相に要望して、公明党の質問は終わりました。

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