「出国税」改め「国際観光旅客税」は、国土交通省の特定財源になることが分かりました。
10年前のガソリン値下げ国会でターゲットになった、国土交通省所管の特別会計に直接入る税収である、特定財源の復活の兆しです。
政府は、先週金曜日、
「国際観光旅客税法案」(196閣法 号)と
「外国人観光旅客の来訪の促進等による国際観光振興法改正案」(196閣法 号)
を閣議決定し、国会に提出。
このうち、後者の法案では、国際観光旅客税は、「観光先進国実現に向けた観光基盤の補充・強化を図るための恒久的な財源」だと法律に明記されることになりました。
国会に提出された改正法案によると、現行の「国際観光振興法」の第12条を一条下げて、新しく次の第12条を挿入する、改め文(あらためぶん、かいめぶん)となっています。新しく挿入される条文は次の通り。
[国交省ホームページから引用はじめ]
第十二条
政府は、国際観光旅客税(国際観光旅客税法(平成三十年法律第号)に規定する国際観光旅客税をいう。第三項第一号において同じ。)の収入見込額に相当する金額を、国際観光振興施策(国際観光旅客の円滑かつ快適な旅行のための環境の整備に関する施策、我が国の多様な観光の魅力に関する情報の入手の容易化に関する施策並びに地域固有の文化、自然その他の特性を活用した観光資源の開発及び活用による当該地域における体験及び滞在の質の向上に関する施策をいう。)に必要な経費に充てるものとする。
2前項の規定の適用については、金額の算出は、各年度において、その年度の予算金額によるものとする。
3第一項の国際観光振興施策として行われる施策は、次に掲げる要件に該当するものを基本とするものとする。
一国際観光旅客税の納税者の理解を得られるものであること。
二先進的なもので、かつ、費用に比してその効果が高いものであること。
三地域経済の活性化その他の我が国における政策課題の解決に資するものであること。
[国交省ホームページから引用おわり]
このような条文を挿入することで、歳入と歳出を紐付けして、特定財源とします。法律(改正法案)では、その条件として、(1)納税者の理解を得られて、(2)費用対便益(コストベネフィット)の良い、(3)地域経済活性化に資するものーーという3つの条件を満たせば、観光庁の特定税源を認める、内容になっています。正直、意味の分からない3条件です。
観光庁の田村長官は、前任が航空局長です。10年前問題になった、道路整備諸税が直接特会に入っていた、道路特会、河川特会は廃止されました。ただ、ジェット燃料税などの一定割合(法定譲与)と、着陸料、電波誘導料が入る、航空特会(空港整備特別会計、空整特会)は、未来からの借金が多いため、今でも一般会計の区分経理として、特別会計とされています。
今回、いわゆる出国税は、年間200億円程度、観光庁だけが使う固有の特定財源となるようです。
報道では、出国税は、今次税制改正で、田村長官の要求を菅官房長官が施行日を年明けの来年平成31年1月7日(月)にずらすことを条件にして満額回答したとされています。観光庁の規模で年200億円超というとけっこう金額ですが、入国者を増やせば、税収も増えるというインセンティブが働くことになります。
財政学の基本は歳出と歳入を紐付けしない「ノンアフェクタシオンの原則」です。新規の歳出について、歳入も考えないといけないとする、「ペイ・アズ・ユーゴー」は原則ではなく例外。その言葉を連呼する国会議員は、間違いなく財務省に洗脳されています。
10年ひと昔。ガソリン国会から10年。財政民主主義の観点からも、本来は特定財源をつくるべきではありません。例えば、問題視されている防衛省ですが、博物館の入場料も無料であり、特定財源はまったくありません。国交省が10年経って、昔を取り戻そうとしているのでしょう。
また、観光庁は学生の海外旅行費用を出そうとしているとの、来年度概算要求を巡る報道もあります。この場合は、納税者の納得を得られるために、特定財源の一部を使うのではないか、と思われます。
その場合は、優秀な学生が海外に行くと、ある一定数が反政権的になり、ある一定数が政権交代ある二大政党論者になりますから、自民党政権か、非・自民党政権下に関係なく、その年の15歳ごろの学生をある一定数以上海外に行ってもらうためのある一定額以上の特定財源にするのなら、私としてはむしろ歓迎したいところです。
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(C)2018年、宮崎信行。
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Miyazaki Nobuyuki