ありがとう存じます。
●政治ジャーナリストが政治家の書き込みを名誉棄損で訴えた
会員制交流サイト「SNS」隆盛による、「やりとりのフラット化」のもと、政治ジャーナリストが政治家を訴えたのは初めてかもしれません。
会員制交流サイト「Twitter」(ツイッター)で、公示後の全国比例の候補者から「発言を心から軽蔑し、呆れています」とのリプライ(私に対するツイート)をされたことで名誉を棄損され、国政支持者であるTwitterフォロワーらによって「炎上」したことで業務を妨害され、精神的苦痛を受けたとして、私・政治ジャーナリスト宮崎信行が、石川大我参議院議員(当時は候補者)を相手取って、110万円の損害賠償を求めた裁判。
●東京地裁の判決は
東京地方裁判所は、きょう令和2年2020年2月14日(金)、
●争われたのは、名誉棄損か、そうでないかの認定だけでした
争われたのは、ちょうどツリーの形になっている3つのツイートのうち1番目の引用リプライ部分も含めた合計4ツイートのやりとりと、それに呼応した私に対する批判的な内容の他のアカウントからの「攻撃」です。
被告側は、私の訴状のうち、本人の書き込みであることなどを認め、ただ一点、「本件のリプライによって原告の社会的評価を低下したとはいえず、原告の名誉は棄損されていないと解する」との判断だけが争われました。
●被告側弁護士「政治ジャーナリストは反論の要請」に「炎上を避ける権利」主張、裁判所の判断は?
裁判中、被告側弁護士が「政治ジャーナリストとしての反論の要請があるのにしなかった」と主張したのに対して、私は「炎上を避けるために反論をしない選択をすることは認められる」と主張。
詳述しますと、被告側弁護士は「原告は元日経新聞に勤めていた政治ジャーナリスト」であり「反論・論評をすることは一般的に当然に要請されていた」と主張。私は「ツイッターをめぐる我が国の諸情勢から鑑みれば、いわゆる炎上を避けるために、反論のためのリプライを、あえてしない選択をすることは日本国憲法20条の表現の自由や、自らの地位及び名誉並びに財産を守る観点からも認められるべきだ」としました。
●SNSはフラット
SNSという新しい媒体によるフラットな言論空間の中で、起きた出来事でした。
実は、7月15日0時59分の書き込みに対して、私は16日の8時台に東京地裁に、自分が書いた訴状を提出。速やかにツイッターで発表しました。数時間後には駅前で他の候補者のチラシを配っていた旧知の関係者から「たいへんですね」と声をかけられるなど、知れ渡ったようです。これにより、炎上は同日中に完全に鎮火。しかし、裁判では自分に不利益なことを自分から言う必要がないので、弁論にのぞみ、結審しました。
●本人訴訟は2万円弱でした
蛇足ですが、宮崎が弁護士を付けずに本人訴訟をしたことに興味がある方もおられるかもしれません。110万円の訴額について、貼用印紙類1万1000円と切手6000円分かかりました。後は霞が関との交通費往復3回分ですので1000円未満。私が民法に詳しいこと、どちらの立場でも身を守るために民事訴訟を研究していたこと、週明け平日の朝に足を延ばせること、決裁を自分一人でできる環境にあることから最速での訴状執筆提出が可能となりましたが、敗訴しました。
●名誉を守る
とにもかくにも名誉というものは私にとってはとても大事なものです。日本というのは能動的に動くと皆ピタッと鳴りをひそめる社会だという感覚も得ました。名誉を守る裁判闘争をやってよかったです。敗訴ですが、満足しています。係争中ということもあってか、出演・執筆依頼もピタッと鳴りをひそめてしまいましたが、Twitterのフォロワーは少なくても、ブログのアクセス数は十年以上安定していますので、レガシーメディア出身の政治ジャーナリストとしてがんばってまいりますので、よろしくお願い申し上げます。
以上です。