初代米国総領事タウンゼント・ハリスは初めて訪れた日本について日記にこう書き残してあります。
この文章は下田に駐在した折の日本人の生活を現したものです。
『この土地は貧困で、住民はいずれも豊かでなく、ただ生活するだけで精一杯で、装飾的なものに目を向ける余裕がない。
それでも人々は楽しく暮しており、食べたいだけは食べ、着物にも困ってはいない。
それに家屋は清潔で、日当たりもよくて気持がよい。
世界の如何なる地方においても、労働者の社会で下田におけるよりもよい生活を送っているところはあるまい』
(下田のハリスといえば「唐人お吉」で有名だが、そんな下世話な話は出てきません・・・残念?)
さらに人々の生活風景をこう綴ります。
『柿崎は小さくて、貧寒な漁村であるが、住民の身なりはさっぱりしていて、態度も丁寧である。
世界のあらゆる国で貧乏にいつも付き物になっている不潔さというものが、少しも見られない。
彼らの家屋は、必要なだけの清潔さを保っている』
ハリスの日本に対する好印象は、街並みや人々だけにとどまりません。
初めて下田奉行所から接待を受けて、鯛の吸い物や、鰻の蒲焼などをご馳走になって感激しています。
『料理は立派なもので、見る目も至ってきれいで、清潔なものであった。
私は彼らの料理にはなはだ好い好印象を受けた』
さらに、『我々一同はみな日本人の容姿と態度とにはなはだ満足した。
私は、日本人は喜望峰以東のいかなる民族よりも優秀であることを、繰り返して言う』
私たちが学ばなくてはならない日本の伝統がここには残されています。
ハリスが現在の日本人を見たらどんな日記を書くでしょうか。
繁華街ですれ違うオミズ風の若い娘さんや、そんな娘さんにつきまとう黒服のカラスたちを見るたびに心が痛みます。
時代についていけなくなった中年男の愚痴でしょうか?
驚きです。
空気(と表現しましょうか)の美しい労働者の社会、輝き生き生きとした人々の住まう社会が想像できます。日本の下田にこのような社会があり、ハリスを感動させたのですね!?
確かに、昭和3X年生まれの私も、管理人さんと同じ嘆きを感じることが時々あります・・・それほど、今の社会は混沌としていて、街の美しさも昔と様変わりして・・・人々の美しさの条件もずいぶん変わってしまったような気がします。(私でさえ)
先日の成人式の女性のお化粧や髪型、爪などを見てもそう思いました。振袖にその髪?そのお化粧!?その爪!?・・・もう驚くことばかりでした。
日本人は変わりましたね。「良し悪し」ではないでしょう・・・今が悪いとも言えません・・
でも、昔の「日本人の生き方・生活の美しさ」は例えば、清楚・清貧というような、賑やかに贅沢に飾り立てるものではなくもっと奥の深いところから滲み出るような、人間を底から照らすような美しさがあったと思われますし、それらが現代では評価されていない、語られていないと感じて、誠に残念に思います。
失ってしまえば取り戻せないので、残念ですね。